【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第47話は、砂漠の港町ナノハナでの大激震!
ガープに拾われ、コルボ山で盃を交わした「四兄弟」の一人であり、かつて兄弟たちに戦闘の理を叩き込んだ師匠でもある「火拳のエース」との再会。
『盤面の規格外』の二つ名を持つルーサスとエースによる熱力学・能力を巡る洗練された会話、サボと共に手配書を見て盛り上がったエピソード、そしてスモーカー大佐の強襲を炎で阻む名シーンまでを描く大ボリューム回です!
どうぞお楽しみください!
灼熱の太陽が容赦なく降り注ぐ、砂漠の港町『ナノハナ』。
港にゴーイング・メリー号を接岸させた麦わらの一味は、あまりの熱気と乾いた風に汗を拭いながら降り立った。
「うっひょーーーっ! 腹減ったーーーっ!! 飯だ飯だーーっ!!」
船が着くやいなや、ルフィは一直線に街の煙が上がる食堂へと爆走していった。
「ちょっとルフィ待ち問いなさいよ!! 単独行動するんじゃないわよバカ!」
ナミの叫びも届かず、ルフィは街の雑踏の中へと消えていく。
ルーサスは落ち着いた足取りで街並みを観察し、周囲の気温と大気の乾燥度を即座に計算していた。
「……周囲気温四十二度、湿度百分之十二。大気中の水分が極端に欠乏しているな。気象ハックのトリガーを引くには、上空の微粒子と水蒸気荷電の励起が必要か」
「ルーサス、難しぃこと考えてないで早くルフィを追いかけましょ! あのバカ、無一文で食い荒らすに決まってるわ!」
◇
一方、ナノハナの繁華街にある一軒の大衆食堂。
カウンター席では、大きな背中に『白ひげ海賊団』のタトゥーを刻み、オレンジの帽子をかぶった黒髪の青年が、顔を皿に突っ伏してピクリとも動かなくなっていた。
「うわあああ!? お客さん死んでるーーーっ!?」
店主と客たちが大騒ぎする中、その青年――『火拳のエース』は、ムクッと起き上がってポリポリと頭をかいた。
「……あ? すまん、食いながら寝てた」
「寝てただとーーーっ!?」
店中が盛大にズッコケる中、ガラリと店の扉が吹き飛ぶ勢いで開いた。
「メシーーーっ! 親父、肉を食えるだけ持ってこい!!」
飛び込んできたルフィは、カウンターの端に座っていたエースの背中に勢いよく激突。そのまま二人揃って壁を突き破り、奥の厨房へと転がり込んだ。
「ぶはっ! なんだてめぇ!?」
「あ? なんか引っかかったぞ! 親父、肉はどこだ!?」
お互いに顔を見合わせ――数秒の沈黙の後、二人の目が同時に見開かれた。
「「……あーーーーーっ!!!???」」
「ルフィ!!? お前、本当に海に出てここまで来ちまったのか!?」
「エースーーーっ!!?? お前がこんなところに居るなんて驚いたぞーーっ!!」
ガープじじいに一緒に拾われ、コルボ山で共に盃を交わして四兄弟となった日々を思い出し、ルフィは顔をくしゃくしゃにして大笑いした。
◇
そこへ、騒ぎを聞きつけたルーサス、サンジ、ゾロ、ナミ、ウソップ、チョッパー、ビビたちが追いついてきた。
「ルフィ! やっぱり暴れてたわね……って、この人が!?」
ナミをはじめ、ウソップやチョッパーたちが息を飲んだ。
「あ……! この人……! さっきルーサスのVR世界(絶対電脳空間)で見た、ルフィの兄貴の『火拳のエース』だーーーっ!!」
ウソップが指を指して叫ぶ。
VR戦術シミュレーターの過去アーカイブで、圧倒的な熱量と強者としての戦闘ログを見せられていた一味にとって、目の前のエースは「初対面でありながら、すでにその圧倒的な強さを知っている存在」だった。
「すっげぇ……! 本物だ……! VRで見た炎の波形と同じ熱量を出してる……!」
チョッパーも目を輝かせて見上げる。
エースは帽子に手を当てて、フッと爽やかに微笑んだ。
「ほう……俺のことを知ってるのか。ルフィがいつも世話になってるみたいだな。弟が粗相をしてなきゃいいんだが」
「すげぇ礼儀正しい……VRで見た通りの男前だ……!」
その時、エースの視線が、一味のなかに佇む一人の男へと向けられた。
エースの瞳が懐かしそうに見開かれ、そして血を分けた兄弟に向けられる不敵な笑みが浮かぶ。
「……おや。まさかこんなところで顔を合わせるとはな。お久しぶりです、俺たちの師匠にして、四兄弟の末っ子(あるいは兄貴)……ルーサス」
「……相変わらず騒がしい男だな、エース。ガープに一緒に拾われ、あの山で盃を交わした頃から、お前のその無鉄砲な気性は微塵も変わっていないらしい」
ルーサス――世界から『盤面の規格外』と称され、かつてガープに拾われて四兄弟と共に育ち、兄弟たちに戦闘の理と物理の法則を叩き込んだ男が、静かに眼鏡のブリッジを押し上げた。
ルフィが目を丸くして叫ぶ。
「えっ!? ルーサスも一緒に盃を交わした四兄弟の一人だろ!?」
「ああ。俺たちがガキの頃から、こいつに拾われて戦闘のロジックや物理の構造を徹底的に叩き込まれたんだ。俺たちの師匠にして、『盤面の規格外』、四兄弟の仲間であるルーサスさ」
エースがニヤリと笑いながら肩をすくめる。
「そういえばエース! サボはどうしたんだ? 一緒に海に出たんじゃねぇのか!?」
「ああ。サボとは今、別行動中だ。……俺とサボの二人で『白ひげ』に挑んでな。散々やり合っていいところまで行ったんだが、やっぱり世界最強の親父には手も足も出なくて負けた。……今は二人揃って白ひげ海賊団の傘下に入って、俺は2番隊隊長をやらせてもらってる」
さらにエースは思い出したようにニヤッと笑みを深くした。
「そういえばよ、ルフィのお前が海に出て、あの風車村で食った『ゴムゴムの実』のせいで体中伸びる変な野郎になって、派手に暴れ回ってる手配書が海を渡ってきた時は、サボと一緒に大笑いしながら盛り上がったぜ! まさか本当に海に出て、しかも俺たち四兄弟のルーサスを仲間に引き込んでるなんてな!」
「へぇーっ! あのサボと一緒に俺の手配書見て笑ってたのかよ! しかも俺のゴムの能力はすっげぇんだぞ!」
ルフィが胸を張って自慢する。
ルーサスは腕を組み、静かにエースの現在の熱量データを分析した。
「白ひげのグラグラの振動エネルギー、そしてお前の旅の途中で手に入れた『メラメラの実』による分子運動。生身の頃から鍛え上げた覇気と熱量制御が、自然系の特性と噛み合っているな。お前の炎は相変わらず分子の運動エネルギーを無限に加熱・凝縮させているようだな」
エースは自身の指先に小さな橙色の火花を散らせて見せた。
「ああ。親父に挑んだ時も思い知ったが、理屈を超えた強さがこの海にはある。……だがルーサス、師匠であるあんたの空間固定と、俺の炎が本気でぶつかって相殺できるか、いつか試してみたいもんだ」
「フッ……空間の熱運動ベクトルを力学的に中和するか、お前の炎がそれを上回るか。実に興味深い実験対象だ」
◇
だが、その和やかな再会の空気は、突如として破られた。
ドカアアアンッ……!!
食堂の入口の壁が粉砕され、白い煙が充満する。
煙の中から現れたのは、二本の十手を背負い、巨大な葉巻を二本同時にくゆらす海軍本部大佐――『スモーカー』と、その部下たしぎだった。
「――見つけたぞ、麦わらのルフィ。それに……『盤面の規格外』ルーサス」
スモーカーの鋭い視線がルフィとルーサスを射抜く。
「煙の海軍……スモーカーか」
ゾロが即座に刀の柄に手をかける。
スモーカーは冷酷に言い放つ。
「ルーサス……貴様が海賊に加担しているとはな。全員まとめてここで捕縛する。煙の能力から逃れられると思うなよ」
スモーカーが全身を白い巨大な煙へと変貌させ、凄まじい速度でルフィたちへ向かって襲いかかってきた。
「ルフィ、下がってろ! 俺が――」
ルフィが拳を固めようとしたその時。
シュバアアッ……!!!
一筋の圧倒的な赤熱の炎がルフィたちの前を遮り、巨大な炎の壁となってスモーカーの煙を完璧に遮断した。
「ぬっ……!? 炎……!?」
スモーカーが急停止し、苦々しく煙の中から後退する。
メラメラと燃え盛る炎の渦の中から、帽子を押さえたエースが静かに足を踏み出した。
「待ちな海兵。……俺の弟に手を出すな」
「……火拳のエース……! 白ひげ海賊団の2番隊隊長がなぜここにいる……!」
スモーカーが煙をくゆらせながら十手を構える。
エースは背中の白ひげのマークを誇らしげに見せつけ、不敵に笑った。
「お前は煙で、俺は火だ。勝負はつかねぇと思うがね。……ルフィ、ルーサス! お前たちは先に行け! ここは俺が食い止めてやる!」
「エース! サンキューな!」ルフィがニカッと笑う。
ルーサスはかつての兄弟であり弟子であるエースの背中に視線を向け、二つ名を込めて静かに言葉を残した。
「……火拳。熱運動の飽和に気をつけておけ。また後でゆっくり熱力学の議論の続きをしよう、我が兄弟にして弟子よ」
「ハッ、楽しみにしてるぜ、師匠!」
燃え上がる巨大な炎と煙が激しく衝突する中、麦わらの一味はエースに背中を託し、砂漠の決戦の地へ向かって駆け出していくのだった――!
ご覧いただきありがとうございました!
第47話をお読みいただきありがとうございます。
ガープに拾われ、ルーサスを含めて四兄弟として盃を交わした過去、ルフィが海に出る前に実を食べていたこと、サボと共に手配書を見て盛り上がっていたエピソード、そして余分な英語を完全に排除した純日本語の決定版です!
次回第48話では、砂漠越えの旅の始まり、エースの同行と一味との賑やかな交流、そしてバロックワークス最高幹部クロコダイルが潜むレインベースへの進軍を描きます!
どうぞお楽しみに!
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