【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第5話は、ルーサスによるチート級の技術指導回&コルボ山の主との本気連携バトル回です!
前世の物理・武術の理、武装色・見聞色・覇王色の詳細なメカニズム解説、六式、そして4人の圧倒的な連携戦闘からダダンたちの爆笑リアクションまで、超大ボリュームでお届けします!
義兄弟の杯を交わしてから、俺たちのコルボ山での生活は完全に「超感覚的な技術特訓」の日々へと移行していた。
ダダンの庵の裏手にある開けた空き地。毎朝、東の空が白む前から俺たち四人はそこに集まり、全身が汗と泥にまみれるまで肉体と技術を追い込んでいた。
「くっ……痛ぇ! なんでルーサスは全然力入れてなさそうなのに、俺の鉄パイプが簡単に弾かれるんだ!?」
ドガァン!
地面に激しく倒れ込んだエースが、荒い息を吐きながら立ち上がった。
目の前に立つ俺は、腕を組んだまま一歩もその場から動いていない。手に持った鉄パイプすら、軽く添えているだけだ。
「力に頼り切っているからだ、エース。どれだけ筋肉をつけて力任せに振り回しても、エネルギーの伝達効率が不完全ならただの自爆にしかならない。俺が今使ったのは、相手の攻撃の軌道を『円』の動きで受け流し、そのエネルギーを倍にして叩き返す――流動の武術(流水拳)の理屈さ」
「相手の力を倍に……!?」
頭に汗をかいたサボが、目を丸くして身を乗り出してきた。
「そうだ。物理学で言えばエネルギー保存の法則と運動量の転換だ。相手が『10』のベクトルで突っ込んできたら、それを正面から『10』の力で受け止める必要はない。相手の力線の方向を滑らかにいなし、円運動によって威力を保持したまま、そこに自分の『10』の力を乗せて『20』の衝撃として相手の重心に叩き返す」
俺はサボに向き直り、「全力で打ち込んでみろ」と合図を出した。
「よし……覚悟しろよ、ルーサス!」
サボが俊敏な踏み込みから、鋭い鉄パイプの突きを放ってくる。しっかりと腰が入った、ガキとは思えない上質な一撃。
だが――俺はその突きの側面にそっと手のひらを添えた。
打撃の軌道に逆らわず、円を描くように優しく滑らせて攻撃のベクトルを横へ逸らす。勢いを削がれたサボの体が前に突っ込んだ瞬間、俺はガラ空きになったサボの胸元へ、最小限の力で掌打を軽く添えた。
ポンッ!
「うわぁっ!?」
サボの身体が、まるで巨大なスプリングに弾かれたかのように宙を舞い、自分が踏み込んだ以上の凄まじい勢いで後ろの草むらへ転がり落ちた。
「な、なんだ今の……!? 自分の突きの勢いがそのまま跳ね返ってきたみたいだ……! 吸い込まれるように体勢を崩されたぞ……!」
「これが『受け流し』だ。相手の威力が強ければ強いほど、跳ね返る威力も跳ね上がる。力任せに殴ってくる猪武者ほど、この技術の前には無力になる」
◇
「す、すっげぇぇぇ!!」
ルフィが目を輝かせ、ピョンピョンと跳びはねながら俺に飛びついてきた。
「ルーサス、俺にも教えてくれ! 相手のパンチを倍にしてぶっ飛ばしたい!」
「お前にはお前だけの、最強の教え方があるさ、ルフィ」
俺は足元から小石を一つ拾い上げ、ルフィの目の前で指で挟んで見せた。
「ルフィ、お前の『ゴムゴムの実』の能力は、単に『身体が伸びる』だけの能力じゃない。ゴムの本質は『弾性エネルギーの蓄積』と『復元力』だ。今までのお前は、腕を後ろに伸ばすことばかりに気を取られて、伸ばした反動に自分の体が振り回されていた。だから威力が逃げ、狙いも外れていたんだ」
「反動……?」
「そうだ。大事なのは『軸(体幹)』だ。人間の体には体幹と呼ばれる中心軸がある。足の裏で地面をしっかり捉え、腹横筋と背筋を締め、骨盤から肩までをブレない一本の芯として固定しろ。後ろに引っ張ったゴムのエネルギーを、体幹という土台で受け止め、一直線の『点』に向かって開放するんだ」
「引き絞って……お腹に力を入れて……芯を作る……こうか!?」
ルフィが「ぬぬぬ……」と唸りながら、腹にぐっと力を込め、背筋をピシッと伸ばした。軸が完全に固定され、先ほどまでブレていた身体の揺れがピタリと止まる。
そして、後ろに深く引き絞った右腕を、一直線前方に打ち出した!
『――ゴムゴムの、ピストル!!』
ドォォォン!!
「うおっ!?」
反動で後ろに倒れることもなく、完璧な軸から打ち出されたルフィの拳は、十メートル先にある巨大な岩を、まるで砲弾のように一直線に穿ち、跡形もなく破砕した。
「当たった……! 反動で転ばねぇし、めちゃくちゃ重ぇパンチが出たぞー!!」
「さらに言えば、ルフィ。ゴムの伸縮は強力な『波(振動)』を生み出す。今後、硬い外甲を持つ敵や、ロギア(自然系)などの実体がない能力者、武装色の防御を固めた相手と戦う時、表面を殴ってもダメージは通らない。拳が当たったその瞬間に筋肉を細かく微振動させ、相手の皮膚の奥へ衝撃波を流し込む『内部破壊(寸勁)』の感覚を体に染み込ませろ。お前のゴムの体なら、体内の波を何倍にも増幅できる」
「内部破壊……! 相手の仲身(なかみ)をドカンと壊すんだな! 覚えたぞ!」
目をキラキラと輝かせるルフィを見て、エースとサボはゴクリと唾を呑み込んだ。前世の知識と科学的な身体操作を合わせたルーサスの指導は、彼らの常識を根本から塗り替えていた。
◇
「……なぁ、ルーサス」
それまで食い入るようにその光景を見ていたエースが、静かな、だが熱く滾る瞳で俺を見つめてきた。
「お前が前に言ってた『覇気』ってのも……この体の使い方と関係があるのか?」
「もちろんだ、エース。覇気とは魔法なんかじゃない。生き物全員に眠っている『潜在能力』であり、高次元の身体機能と精神エネルギーの同期現象なんだ」
俺は地面に腰を下ろし、三人に向き直った。
「覇気には大きく分けて三つの種類がある。第一に『見聞色(けんぶんしょく)』。これは相手の『気配』や『感情』、次に繰り出す『動作の波動』を感じ取る力だ。生き物は動く直前に脳から微弱な電気信号(生体波動)を発している。見聞色は、五感の先にあるその波動を皮膚と神経で察知する技術だ」
「動作の電気信号……! だから相手の攻撃が見なくても分かるのか!」サボが感心したように呟く。
「第二に『武装色(ぶそうしょく)』。これは自分の『意志』と体内の生体エネルギーを極限まで高めて細胞を硬化させ、見えない鎧を身に纏う力だ。打撃の威力を跳ね上げるだけでなく、実体がないロギア能力者の実体を捉えることができる唯一の対抗策でもある」
「実体を捉える……! ロギアにも攻撃が通るのか!」エースの目が輝く。
「そして第三に『覇王色(はおうしょく)』。これは数百万人に一人と言われる、己の『王の資質』や『威圧感』を精神波として全方位に放出し、格下の相手の意識を直接刈り取る力だ」
俺は右手をかざし、体内の生体電流と精神エネルギーを一瞬だけ同調させた。
バチバチッ……!!
俺の手元で目に見えない強烈な磁場が形成され、周囲の空気が重圧で微かに軋む。
「身体の軸を整え、呼吸を深め、全細胞と意志を同調させる癖をつければ……数年後には見えない鎧を纏う『武装色』も、周囲の気配を察知する『見聞色』も、お前たちの体に確実に覚醒する。……そしてエース、ルフィ。お前たちにはおそらく『覇王色』の資質もある」
「「えっ……!?」」
「自分の意志を信じろ。覇気は身体操作の果てにある技術だ」
さらに俺は、足裏の電荷と急速な筋収縮を爆発させ、一瞬で空中へと跳び上がった。そして何もない空気をガツンと蹴りつけ、そのまま宙に留まってみせる。
「なっ……!? 空中に立ってる……!?」サボが叫んだ。「それ、海軍の超人が使うっていう『月歩(ゲッポウ)』か!?」
「そうだ。海軍の超人格闘術『六式』も、全ては身体機能の限界突破と物理特性の応用だ。空気を圧縮して蹴る『月歩』、筋力を一瞬で爆発させて移動する『剃(ソル)』、相手の攻撃の風圧を感じて身体を紙のようにしならせる『紙絵(カミエ)』……これらは全て、適切なトレーニングと神経の集中で、ガキの俺たちでも習得可能な技術体系なんだよ」
俺は空中に立ったまま、地上で息をのむ三人を見下ろし、口元を不敵に吊り上げた。
「前世の武術の身体操作、エネルギーの流動、六式、そしてルフィのゴムの物理特性……。これらを全てその体に叩き込めば、お前たちが海に出る頃には、海軍の大将や新世界の猛者どもとも対等以上に渡り合える」
「……クソっ、最高じゃねぇか……!!」
エースが全身の血を激しく沸き立たせ、ギラギラとした野生の目で鉄パイプを構え直した。
「やってやるぜ! 内部破壊も、空を飛ぶ技も、覇気も……全部身につけて、俺は世界で一番強い海賊になってやる!!」
◇
その日の夕刻。修行を終えてダダンの庵に戻り、飯を食っていた時のことだ。
「おい、ガキども。明日からまた森へ行くなら、ひとつだけ言っておくぞ」
大きな肉を咥えたダダンが、忌々しそうに顔をしかめながら俺たちを睨みつけてきた。
「奥の深い森には絶対に入るな。あそこには、大昔からこの山を支配している『コルボ山の主』って呼ばれる化け物虎がいる。並の猛獣とは桁が違う強さだ。昔、街のハンターたちが束になって挑んで返り討ちに遭ったそうだからな。死にたくなきゃ近づくなよ!」
子分たちも青ざめた顔で「そうだぞ! あの主だけは絶対ヤバい!」と深く頷いていた。
だが、そんな忠告を聞いておとなしくなる俺たちではない。
「……へぇ、山の主ねぇ」エースが口元を不敵に歪める。
「俺たちの修行の成果を試すには、打って付けの相手だな」サボもニヤリと笑った。
◇
翌日。俺たちはダダンの制止を無視し、コルボ山の最も深い原生林へと踏み込んでいた。
湿った土の匂いと、重苦しい静寂が周囲を包み込む。
「ルーサス……なんか、変な感じがするぞ。皮膚がピリピリして……奥から何かデカいのが来る気がする」
歩いていたエースがふと足を止め、森の奥を見つめた。サボも「あぁ……空気が重い。心臓の鼓動みたいな振動が伝わってくる」と身構える。
俺は頼もしく微笑んだ。
「素晴らしい感覚だ、二人とも。それこそがさっき話した『見聞色の覇気』の芽生え(プレリュード)だよ。主が動く直前の強い殺気と気配の波動を、お前たちの神経が皮膚で捉えたんだ」
「これが『見聞色』の気配察知……!」
「感覚を忘れるな。敵の攻撃の軌道も、すべてその波動で事前に予知できるようになる」
直後――凄まじい風圧とともに、巨木を薙ぎ倒しながら奴が現れた。
ゴォォォン……!!
「「「「ウオォォォォン!!」」」」
現れたのは、ダダンが言っていた通り、大人数人を一口で丸呑みにできそうな圧倒的巨躯を誇る巨大虎――『コルボ山の主』だった。鋭い眼光と丸太のような前足、全身から放たれる殺気が原生林を揺らす。
「出たな、山の主! ダダンがビビってた化け物もお前で終わりだ!」
「今日からこの山で一番強いのは、俺たち4人だ!!」
エースとサボが叫び、鉄パイプを構える。
「出たなー! 今日の晩飯はトラ肉の丸焼きだー!」
ルフィも涎を垂らしながら身構えた。
「行くぞお前たち! 覚えたての理(ことわり)を叩き込んでやれ!」
俺の合図とともに、実戦が始まった。
エースとサボが左右へ疾走する。身につけた『剃』の応用で地面を爆発的に蹴り、一瞬で主の死角へと肉薄。主が巨大な爪を振り下ろすが、エースは見聞色で感じ取った波動から攻撃軌道を完璧に見切り、流水拳の理屈でその軌道を紙一重でかわす。そしてサボと共に、鉄パイプで主の膝関節を正確に打ち抜いた。
ドカン!!
衝撃が走り、巨大な虎が一瞬体勢を崩して膝をつく。
「そこだ、ルフィ!!」
「おう!! 『ゴムゴムの――ピストル』!!」
サボの肩を足場にして空高く跳躍したルフィが、これまで叩き込まれた「体幹の軸」を完全に固定し、一直線に主の眉間へと拳を突き出す。
だが、主も山を統べる大悪魔。巨体に見合わぬ素早さで強烈な尻尾を横薙ぎに払い、空中のルフィを撃ち落とそうとした。
(――ルフィには触れさせん)
俺は足裏の電荷を爆発させ、瞬時にルフィの頭上へと跳躍する。
『――【磁界偏向バリア(ローレンツ・フィールド)】』
バチチチッ!!
俺の身体から放射された強烈な電磁波が、主の尻尾の直撃を完璧に弾き飛ばした。
「今だルフィ! 表面じゃなく、内部まで衝撃波を叩き込め!」
「サンキュー、ルーサス! 『ゴムゴムの――内部破壊(インパクト・ブロー)』!!」
俺が作った完璧な隙を利用し、ルフィの引き絞られた拳が主の眉間に直撃する。
表面の硬い皮ではなく、ゴムの振動波が主の脳髄と巨大な頭骨の内部を直接破壊した。
ズゴォォォン!!
「ガハァッ……!?」
コルボ山の主は悲鳴を上げる暇もなく白目を剥き、地面へと凄まじい地鳴りを立てて崩れ落ちた。
◇
「おいおい……今日の夕飯の肉はいつもより重ぇなー!」
「ひっかけるツルが食い込むぜ……ヘヘッ!」
その日の夕刻。俺たち4人は、倒した『コルボ山の主』の巨大な死骸に頑丈なツルを巻きつけ、4人で力を合わせて引っ張りながらダダンの庵へと帰還した。
庵の玄関前に到着するやいなや、ルフィが勢いよく扉を蹴り開けた。
「ダだーーーん! 肉持って来たぞーーーっ!!」
ガラガラガッシャーン!!
「うるっせぇなガキども! 玄関を破壊すんじゃねぇ……って、あぁぁぁ!?!?」
文句を言いながら顔を出したダダンが、庭にデデンと転がされた巨大な虎の首と死骸を目にした瞬間――
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!? Plan!?!?!?」」」」
ダダンを含め、居合わせた山賊全員の目が飛び出し、顎が地面にめり込むほどガバッと外れた。手に持っていた酒瓶や肉がガラガラと地面に転がり落ちる。
「な、なななな何だコリャぁぁぁぁ!? こ、これ……まさか……ッ!?」
鼻水を垂らしながらガタガタと震えるマグラに、エースが腕を組んでドヤ顔で言い放った。
「なんだもクソもねぇだろ。ダダンが昨日ビビってた『コルボ山の主』だよ。4人でサクッと狩ってきたぜ!」
「狩ってきたぁぁぁ!? あの山の主をぉぉぉっ!?」
ダダンの目玉が再びポンッと飛び出しかける。
「バカな……! ハンターの小隊すら壊滅させたあの化け物を……ガキ4人で……!? お、前ら、一体どうやって……!?」
「へへーんだ! ルーサスに教わった『ないぶはかい』で一発だぞー! トラ肉の丸焼き食おうぜー!」
ルフィが目を輝かせて跳びはねる横で、俺は静かに笑いながらダダンを見つめた。
「ダダン、約束通り『主』は倒したよ。今日の夕飯は宴会だな」
「な……なんなんだお前らはぁぁぁ!! 化け物かァァァっ!!」
山賊たちの悲鳴のような叫び声が、夕暮れのコルボ山にいつまでも響き渡っていた。
理(ことわり)の力を携え、兄弟たちを導く俺・ルーサス。
四人の規格外の強さと絆は、ダダンたち山賊の常識すらも豪快に置き去りにして、どこまでも高く突き進んでいくのだった。
ご覧いただきありがとうございました!
面白かったら評価やブックマークをしていただけると、すごく執筆の励みになります!
次回はサボの過去(貴族の出自)と、グレイターミナルを巻き込む事件(貴族とブルージャムの陰謀編)へと向かっていきます!