【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第53話は、アラバスタ編アルバーナ決戦のすべてを詰め込んだ超・大ボリューム完全決着スペシャルです!
ゾロvsMr.1の「鋼鉄を斬る境地」、サンジvsMr.2の誇りと友情を賭けた熱き蹴り技対決、ウソップ&チョッパーの死闘の決着。
そしてルフィとの激闘から逃れるようにして王都へ現れるクロコダイルの気配と、宮殿最上階でルーサスの絶対領域によって響き渡るビビの奇跡の叫びを描きます!
どうぞお楽しみください!
ゴゴゴゴゴゴ……!!
王都アルバーナの地は、もはや狂気の渦の中にあった。
南門と西門の双方から押し寄せる反乱軍の進軍は凄まじい勢いで、数万の足音が重なり合って地鳴りとなり、空を焦がすような砂塵を巻き上げている。
対するアルバーナ国王軍もまた、武器を固く握り締め、城門の前で死を覚悟した陣を敷いていた。
すれ違う誤解と、裏でサー・クロコダイルが糸を引く悪意の仕掛け。このまま両軍が衝突すれば、アラバスタの歴史上もっとも愚かで凄惨な流血が引き起こされるのは時間の問題であった。
その熱狂と絶望が入り混じる王都の街道で、麦わらの一味とバロックワークス最高幹部たちの命を賭けた死闘が、最高潮の火花を散らしていた。
◇
**【ゾロ vs Mr.1(ダズ・ボーネス)――鋼鉄の息吹と一刀流】**
ドガァァァンッ!!
建物の石柱が紙のように切り刻まれ、大量の瓦礫が石畳の上へと崩れ落ちる。
「ハァ……ハァ……!」
ゾロは額から血を流しながら、膝をつきかける体を愛刀『和道一文字』で支えていた。全身には幾筋もの深い傷が刻まれ、その衣服は朱に染まっている。
対するMr.1――ダズ・ボーネスは、一切の傷すら負わずに冷酷な眼光でゾロを見下ろしていた。
両腕のみならず、胸、脚、そして指先の一本一本に至るまで、全身が研ぎ澄まされた鋼鉄の刃(スチール)へと変貌している。
「無駄だと言ったはずだ、剣士。俺の身体は『スパスパの実』によって作られた鋼鉄そのもの。お前がどれほど鋭い斬撃を放とうと、人間が鋼鉄を斬ることなど物理的に不可能なのだ」
Mr.1が刃を鳴らしながら歩み寄る。
「お前の剣技は見事だった。だが、斬れないものを斬ろうとする限界がそこにある。……終わりだ」
ゾロは血の混じった唾を吐き捨て、ゆっくりと立ち上がった。
視界の端で、先ほどビビを連れて宮殿へと向かったルーサスが言い残した言葉が、脳裏の奥底で重く響いていた。
『ゾロ、敵の分子構造は単なる炭素鋼だ。硬度を力で上回ろうとするな。物質が固有に持つ振動の節目を見極めろ』
「……物質が持つ、固有の振動……か」
ゾロは静かに目を閉じた。
荒い息を整え、周囲の音を遮断していく。
風のそよぐ音、砂粒が転がる音、建物の軋む音……そして、目の前に立つ鋼鉄の男が発する、独特の「存在の響き」。
(聞こえる……。木には木の息吹がある。石には石の息吹がある。……そして、鋼鉄には鋼鉄の呼吸がある)
剣とは、力任せに物を叩き切る道具ではない。
斬りたい時に鉄を斬り、斬りたくない時には紙一枚すら傷つけない。
ルーサスが科学的な「分子結合」と「振動の節」として解明してみせた現象は、ゾロという一人の剣士が長年追い求めてきた「物の息吹を知る」という極意そのものであった。
「……感謝するぜ、ルーサス。そして……ありがとよ、鋼鉄野郎。お前のおかげで、俺はさらに強くなれる」
ゾロが静かに構えたのは、一本の刀――『和道一文字』。
腰を低く落とし、刀を鞘に収め、全神経を研ぎ澄ませて居合の構えをとる。
「強がりを……! 死ね! **『滅裂斬(スパーリング・ダイス)』!!**」
Mr.1が全身を巨大な回転刃へと変化させ、地煙を巻き上げて突進してくる! 触れるものすべてを微塵切りにする死の嵐。
だが、ゾロの瞳にはブレも迷いもなかった。
鋼鉄の息吹が、敵の密度の中心が、鋭く研ぎ澄まされた視界の中にはっきりと浮き彫りになって見えていた。
「――一刀流 居合」
間合いが重なった、その一瞬。
**「『獅子歌歌(ししそんそん)』!!」**
一閃。
銀色の閃光が、砂嵐の荒野を横一文字に切り裂いた。
擦れ違う二人。
ゾロは静かに刀を鞘へと収める。カチリ、と鍔が鳴った瞬間――。
「ガハッ……!?」
Mr.1の胸元から、盛大な血飛沫が吹き荒れた。
鋼鉄の硬度を誇っていた全身の刃が砕け散り、Mr.1は信じられないという見開いた目のまま、崩れるように倒れ伏した。
「……次は……ダイヤモンドでも……斬る気か……?」
薄れゆく意識の中で問うMr.1に、ゾロは背を向けたまま、不敵にニッと笑ってみせた。
「ふん……そんなの、時間がもったいねぇよ」
◇
**【サンジ vs Mr.2(ボン・クレー)――誇りと友情の蹴り技】**
ドゴォォォンッ!!
一方、別の街頭では空中を切り裂く凄まじい衝撃波が巻き起こっていた。
「あ~れ~! ワタシの美しきバレエ蹴りを喰らいなさい!! **『あの夏の日の回顧録(メモワール)』!!**」
Mr.2が白鳥の羽飾りが付いた衣装を激しく回転させ、可憐かつ狂暴な連続蹴りを叩き込んでくる。
それに対し、サンジは黒いスーツの裾をなびかせ、炎のような鋭い蹴りで真っ向から迎え撃つ!
バチバチバチッ!!
「ぬおおおぉぉっ! **『首肉(コリエ)シュート』!!**」
「甘いわよ! **『マネマネの小細工』!!**」
パッ! とMr.2が自分の顔を触れた瞬間、その顔が可憐なナミの顔へと変化した。
「ぬはぁっ!? ナミさんっ!?」
あまりの愛らしさにサンジの鼻血が吹き出し、脚の威力が一瞬でゼロになる!
「キャハハ! メロメロになったわね! **『爆撃白鳥(ボムバディエ)』!!**」
ナミの顔をしたMr.2が容赦なくサンジの顔面へと強力な飛び蹴りを叩き込む!
「グハッ……!?」
壁に叩きつけられ、血を吐くサンジ。しかし、すぐさま立ち上がり、煙草を口に咥えて火をつけた。
「フゥ……。おい、クソオカマ」
サンジの瞳に、静かな怒りと絶対の美学の炎が宿る。
「……ナミさんの顔を使っていい気になってんじゃねぇぞ。レディの顔はな、汚すためにあるんじゃねぇ……愛でるためにあるんだよ!」
「なっ……!?」
「それに、お前のその脚……ただの小細工じゃねぇことくらい、俺には分かってる。お前も自分の脚一本で戦ってきた『男』だろうが!!」
サンジの言葉に、Mr.2は一瞬目を見開き、そして表情をガラリと変えた。ナミの顔を解除し、元のオカマの顔へと戻す。
「……ふん! 言ってくれるじゃないの、黒足ちゃん……! いいわ、ワタシも本気で応えてあげるわよ! ワタシのオカマ道のすべてを込めた、最高の演舞を見せてあげる!!」
「来い……! 料理人の足技、骨の髄まで味わわせてやる!」
二人は同時に地面を強く蹴り飛ばした!
「**『オカマ拳法奥義・夢解体ショー(グラン・フルエ)』!!**」
「**『最上級肉(プルミエール・アッシェ)』!!**」
空中で交錯する二つの影。
連続する蹴りの残像が空間を埋め尽くし、最後にサンジの右脚が重力加速度を纏ってMr.2の胴体へと叩き込まれた!
ドカァァァンッ!!
「ガハッ……! 見事……よ……!」
吹き飛ばされたMr.2は倒れ込み、空を見上げながら満足そうに笑った。
サンジは静かに着地し、落ちた煙草を拾い上げて再び煙を吐き出す。
「……悪くねぇ勝負だったぜ、クソオカマ」
◇
**【ウソップ&チョッパー vs Mr.4 & ミス・メリークリスマス――決死のコンビネーション】**
「うわああああっ! 助けてくれチョッパー!! 地面が抜けるーーッ!!」
ズザザザッ!
モグラ人間であるミス・メリークリスマスが地面を高速で掘り進み、ウソップの足元を崩して引きずり込む。
「キャハハハ! 逃がさないよ、ヘタレ男! Mr.4、ぶちかましな!」
「あ……い……」
四百キロを超える巨漢Mr.4が、犬銃ラッスーの吐き出す時限爆弾野球ボールを、巨大なバットで凄まじいスピードで打ち込んでくる!
ドカーーーンッ!!
「ひいいいっ! 鼻が曲がるかと思ったぞ!!」
爆風に吹き飛ばされ、全身ボロボロになりながらもウソップが叫ぶ。
「ウソップ、諦めちゃダメだ! ルフィもルーサスも、ビビもみんな戦ってるんだ!」
チョッパーが『頭脳強化(ブレインポイント)』で敵の動きを解析し、叫ぶ。
「ウソップ! あのモグラババアの掘った穴を利用するんだ! 敵の攻撃パターンは一定だ!」
「よ……よし! 俺様の天才的な知恵を見せてやる!! **『必殺・火の鳥星(ヒノトリボシ)』!!**」
ウソップが放った特大のパチンコ弾がラッスーの爆弾ボールと交錯し、激しい爆風がミス・メリークリスマスを包み込む。
そこへチョッパーが『角強化(ホーンポイント)』で突撃し、Mr.4とミス・メリークリスマスを激突させた!
ドカーーーンッ!!
「やった……! やったぞチョッパー!!」
「うわあぁん! 勝ったぞーーッ!!」
ボロボロになりながらも、二人は抱き合って勝利の声を上げたのだった。
◇
**【宮殿最上階――絶対領域(フィールド)発振と、奇跡の声】**
一味がアルバーナの各地で命を賭した戦いを繰り広げ、道を切り拓いているその頃――。
「ハァ……ハァ……!」
ビビとルーサスは、王都アルバーナの象徴である巨大な宮殿の階段を駆け上がり、ついに最上階の広大なテラスへと到達していた。
そこからの景色は、まさに絶望そのものであった。
城門のすぐ目の前にまで迫る、数万の反乱軍。
槍や剣を構え、血走った眼で突撃しようとする国王軍。
両軍の間合いは、もはや数十メートルにまで縮まっていた。あと数秒もすれば、激しい殺戮の泥沼が始まってしまう。
「そんな……! 間に合わない……! ここから叫んでも、下のみんなには届かないわ……!」
ビビがテラスの手すりにすがりつき、絶望に涙を流す。
だが、その背後で、ルーサスの冷徹かつ静かな声が響いた。
「言ったはずだ、ビビ。真実の伝達は、最も物理効率の高い方法で行う、と」
ルーサスが両手を広げ、右腕に宿る高密度の青白いプラズマと磁場エネルギーを全開で解放した。
バチバチバチバチッ……!!
「――【拡張絶対領域(アルティメット・フィールド)・周波数共鳴ハック】」
ルーサスの身体を中心に、青い幾何学模様の電磁光の波が、円状に大気中へと広がっていく。
それは宮殿のテラスを覆い、城壁を伝い、そしてアルバーナ上空の気層全体へと一瞬で拡張されていった。
「ルーサス……!? これは……!?」ビビが目を見張る。
「大気中の分子振動と、電磁波の周波数を俺の領域で完全に固定した。お前が発する声の音波ベクトルを、この領域全体に『全方位指向性超高出力スピーカー』としてダイレクトに増幅・共鳴発振させる」
ルーサスは静かにビビの肩に手を置いた。
「お前の声は、いまやこのアルバーナの空全体から、数万の兵士たちの耳元へ直接届く。――叫べ、ビビ。この国のプログラムを正すのは、お前の言葉だ」
ビビは溢れ出る涙を拭い、強く頷いた。
胸一杯に空気を吸い込み、テラスから全軍を見下ろして、命の限り叫んだ。
**「――戦いをやめてください!!!!」**
その瞬間――。
ズゥゥゥゥン……!!
アルバーナの空全体が、まるで巨大な鐘のように振動した。
ビビの声は、ただの肉声ではなかった。
ルーサスの絶対領域によって大気中の分子と共鳴し、アルバーナの街全体、南門、西門、そして反乱軍と国王軍の兵士一人ひとりの耳元、さらには脳裏にまで、まるで真上で叫ばれているかのような圧倒的な音圧とクリアな響きで伝播したのだ!
「な……なんだ!? 空から声が……!?」
「この声は……ビビ様……!? ビビ王女の声なのか!?」
国王軍の兵士たちが武器を落とし、空を見上げる。
突撃の最前線にいた反乱軍のリーダー・コーザもまた、馬の綱を引き絞って急停止した。
「ビビ……!? ビビなのか!? どこにいるんだ!?」
ビビの声は、涙と共にアルバーナの空から降り注ぎ続ける。
**「戦わないで……! この戦争は、最初から全部クロコダイルの仕組んだ罠なんです! 国王様はダンスパウダーなんて使っていません! 私たちの国を奪うために、バロックワークスが仕組んだ偽りの争いなんです!!」**
その真実の叫びは、ルーサスの科学的サポートによって一切のノイズを削ぎ落とされ、兵士たちの狂気に満ちた心を静かに打ち砕いていった。
「クロコダイルが……仕組んだ……!?」
「俺たちは……騙されていたのか……!?」
反乱軍の兵士たちの手から、次々と剣や槍が崩れ落ちていく。
進撃の足音が止まり、静寂がアルバーナの街を包み込んでいった。
テラスの上で、息を切らしながら空を見上げるビビ。
その横で、ルーサスは静かに知的な瞳を細め、頭脳空間のシミュレーション結果を消去した。
「……両軍の衝突確率、ゼロパーセントを確認。作戦は成功だ、ビビ」
「ルーサス……! ありがとう……! 本当に、ありがとう……!!」
ビビはルーサスの胸に飛び込み、感情を爆発させて泣き崩れた。
だがその時――ルーサスの鋭い知覚センサーが、砂漠の彼方から王都の地下へ向けて凄まじいスピードで移動してくる、不穏で巨大な生命反応を捕らえた。
(……この禍々しい気配と砂の位相変化は……。ルフィとの激闘から逃れるようにして、あるいはこの宮殿の地下へ潜り込む気か……クロコダイル)
王都の地上での戦いが奇跡的に収束したその裏で、すべての元凶である砂漠の悪魔が、地下聖殿へと姿を現そうとしていた。
アラバスタの運命を決する本当の最終決戦は、いよいよ地下の暗闇へと舞台を移していく――!
ご覧いただきありがとうございます!
第53話をお読みいただきありがとうございます!
アルバーナ決戦完全決着スペシャルはいかがでしたでしょうか!?
ゾロの鋼鉄斬り、サンジの蹴り技決着、ウソップ&チョッパーの奮闘、そしてルーサスの音波ハックによるビビの奇跡の叫び。さらに、ルフィとの激闘から逃れるようにして王都へ現れるクロコダイルの気配という新たな緊張感を交えてお届けしました!
次回第54話では、ついに宮殿地下聖殿にて、すべての決着をつけるルフィとクロコダイルの最終ラウンドが幕を開けます!
どうぞお楽しみに!
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