【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第54話は、アラバスタ編最終決戦の大ボリューム完全決着スペシャルです!
地下聖殿でのクロコダイルとの死闘、ポーネグリフの前で展開されるロビンとルーサスの重厚な対話。そして王都を吹き飛ばす特大爆弾を「電気の力で構築するルーサスの圧倒的物理ハックを描きます!
どうぞお楽しみください!
ズドドドォォォン……!!
王都アルバーナの地下深く――古代文字(ポーネグリフ)が刻まれた冷たく暗い地下聖殿に、重苦しい地鳴りと激しい足音が響き渡っていた。
「ハァ……! ハァ……! くそが……! なんだあの小僧の異常な拳の重さは……!」
王下七武海サー・クロコダイルは、口元から垂れる血を荒々しく袖で拭いながら、暗闇の石造りの廊下を逃げるように走り抜けていた。
レインベースのカジノ、そして広大な砂漠での激突。麦わらの一味の参謀『盤面の規格外』ルーサスによる『絶対領域』の分子ハックで『スナスナの実』の砂化を封じられたばかりか、船長であるルフィが放つ『武装色』の重拳は、クロコダイルの想定を遥かに超える破壊力を秘めていたのだ。
真っ向から殴り合えば、己が一方的に叩き潰される――その屈辱的な現実を叩きつけられたクロコダイルは、王都アルバーナの時計仕掛けの広場に隠しておいた『特大時限爆弾』を起動させ、麦わらの一味もろとも王都全体を丸ごと吹き飛ばす一発逆転の計画へとすがりついていた。
「フン……どれほど拳が強かろうと関係ねぇ……! あの爆弾が爆発すれば、反乱軍も国王軍も、あの生意気な小僧どもも一瞬で塵となる……! 勝つのはこの俺だ……!」
焦燥と執念を滾らせ、地下聖殿の巨大な広間へ足を踏み入れたその瞬間――。
頭上の天井が、爆音と共に粉砕された!
ドガアァァァンッ!!
「逃がさねぇぞ……ワニ野郎ーーーっ!!!」
落ちてくる巨大な瓦礫の群れを突き破り、疾風のごとき圧倒的な踏み込みで舞い降りてきたのは、全身から凄まじい覇気をみなぎらせたルフィだった!
ルフィは血の混じった唾を吐き捨て、その鋭い瞳でクロコダイルを射抜く。
「小僧……どこまでも邪魔をしやがる……!」
クロコダイルの目が血走り、全身から禍々しい砂煙が激しく噴き出した。正面からの純粋な力勝負では勝ち目がない。ならば、この広大な地下聖殿の空間全体を死の砂漠へと変え、相手の呼吸すら奪ってジワジワと殺すしかない。
「調子に乗るなよ東の海(イーストブルー)の雑魚が! **『砂漠の向日葵(デザート・スパダ)』!!**」
ゴゴゴゴゴ……!
クロコダイルが両手を床へ叩きつけると、地下聖殿の強固な石畳が一瞬にして流砂の底なし沼へと変化し、ルフィの足を泥濘のように呑み込もうと蠢き始めた! さらにクロコダイルの右腕がサラサラと解離し、研ぎ澄まされた巨大な砂の刃となって、音もなくルフィの首元を切り裂こうと旋風を巻き上げる!
「そんなの、効かねぇっ!!」
ルフィは両脚の筋肉を爆発させ、流砂が引きずり込もうとする強い引力を力任せに跳ね返した。空中でぐるりと身を翻し、黒く硬化させた右拳を突き出す!
「ゴムゴムの―――**『ピストル』!!**」
「甘いと言っている!! **『三日月形砂丘(バルハン)』!!**」
クロコダイルはルフィの直線的な拳をすれすれで交わし、流体化した左腕でルフィの腕を絡め取った。スナスナの実の真の恐怖――水分を無差別に奪い取る『水分吸出』!
ルフィの右腕から、みるみるうちに生命の源泉である水分が奪われ、皮膚が瞬く間にカサカサの木綿のように乾燥していく!
「ガハッ……!? 腕が……乾いて力が出ねぇ……!?」
「クハハハハ! いくら拳が重かろうと、体の水分をすべて奪われれば人間など一瞬で崩れ去る枯れ木と同じだ! これが砂漠の死闘をくぐり抜けてきた経験の差だ小僧!!」
水分を奪われ、膝をつきかけたルフィ。しかし、その顔に絶望の色は一切なかった。
ルフィは不敵にニカッと笑うと、腰に縛り付けていた巨大な水樽の栓を前歯で豪快に引き抜いた!
「だったら……水を呑めばいいんだろ!!」
ゴクッ! ゴクッ! ガブガブガブッ……!!
豪快に水樽から溢れ出る水を呑み干すルフィ! 水分が体内へ行き渡ると同時に、乾燥しかけていた腕が一瞬で元のハリと弾力を取り戻し、体中に凄まじい生命力が再びあふれ出した!
「なっ……何だと!? 樽の水を呑んで強引に回復しただと!?」クロコダイルが驚愕に目を見開く。
「ルーサスから教わったんだ! お前の砂は、水と重さで固まるってな! 水を呑んで……血を滲ませれば、お前をいくらでも殴れる!!」
ルフィが自分の血と水滴の混ざった両拳を強く握り締め、地面を爆音と共に蹴り飛ばした。
「いくぞワニ野郎ーーっ!! ゴムゴムの――――**『銃乱打(ガトリング)』!!!!**」
「ぬおおおぉぉっ!? **『重力砂嵐(サーブルス・ペサード)』!!**」
ドカドカドカドカアァァァンッ!!
地下聖殿全体を激しく揺るがす、凄まじい衝撃波と連撃の応酬! クロコダイルは極限まで高められた高密度の砂嵐の防壁を展開して防戦を試みるが、ルフィの覚醒した圧倒的な腕力と武装色の連撃は、その砂嵐ごと防壁を粉々にブチ破る!
「ガハッ……!?」
砂化による無効化を完全に封じられたクロコダイルの胸腔へ、ルフィの無数の重拳がダイレクトに叩き込まれ、その巨体は地下聖殿の分厚い壁へとめり込むように叩き伏せられた!
◇
一方、地下聖殿の最奥――古代文字(ポーネグリフ)が刻まれた巨大な黒い石碑の前に、ビビを伴ったルーサス、そしてバロックワークス最高副社長**ミス・オールサンデー(ニコ・ロビン)**が佇んでいた。
静まり返る空間で、ロビンは暗闇の中からミステリアスな笑みを浮かべ、静かにルーサスへと語りかける。
「……不思議な人ね、『盤面の規格外』。あなたのような圧倒的な知識と異能を持つ人物が、なぜ東の海の小さな海賊団に身を置いているのかしら?」
ルーサスは眼鏡のない冷徹な瞳でポーネグリフの表面に刻まれた微細な凹凸をスキャンしながら、淡々と応じた。
「俺の行動ロジックは単純だ。船長であるルフィの意志の実現と、この世界の未解明な物理法則の解明。……ニコ・ロビン。お前が真に探しているのは、この石碑に刻まれた『歴史の真実(リオ・ポーネグリフ)』だろう」
ロビンが一瞬、呼吸を止めて目を見開いた。その神秘的な瞳に驚愕の色が走る。
「……そこまで知っているのね。でも残念だわ。この石碑に書かれているのは、この国の歴史と……古代兵器『プルトン』のありかだけ。私が追い求めていた『失われた空白の100年』の真実なんて、どこにも書かれていなかった……」
ロビンは哀しげに目を細め、静かに、そして絞り出すような声で呟いた。
「20年間……世界政府に悪魔の子と追われ、裏切られ続けながら、私は歴史の本文を探し続けてきた……。でも、世界は私に真実を見せてはくれない。私の夢を叶える術は、もうどこにもないのよ。私の旅は……ここで終わり……」
自分を偽り、世界を敵に回して戦い続けてきた孤独な考古学者。その絶望に満ちたロビンの告白に対し、ルーサスは表情一つ変えず、静かに、しかし断固としたトーンで物理的・情報理論的視点からの結論を言い放った。
「ナンセンスだ。情報の構造すらまともに理解していない者の妄言だな」
「え……?」ロビンが呆然と声を漏らす。
ルーサスは指先でポーネグリフの文字を撫でながら、誰にでも分かるように明快な解説を始めた。
「データベースの構築原理と同じだ。巨大な歴史データというものは、単一のハードディスク(石碑)にすべて収まるわけがない。そんなことをすれば容量がパンクする。
世界中に点在する無数の石碑は、それぞれが分散保存された『データ・クラスタ(情報断片)』に過ぎない。一つの石碑に全容が書いていないのは、情報工学における初歩の冗長化分散保存の設計だ」
ロビンは息を呑み、吸い込まれるようにルーサスの言葉に耳を傾けた。
「個々の石碑に刻まれたデータを読み解き、最後にそれらを一つに結合(デコード)することで、初めて『真の歴史(リオ・ポーネグリフ)』という単一の統合データベースが完成する。……つまりお前の探求は、終わりどころかまだ道半ばに過ぎん。ここで勝手に諦めるのは、物理的にも論理的にも破綻している」
「分散保存……情報を……繋ぎ合わせる……!」
ロビンの瞳に、長年消えかけていた希望の光が鮮烈に宿った。世界政府の迫害の中でただ一人、暗闇の絶望の淵にいた彼女の心を、ルーサスの科学的で冷徹な、だが何よりも力強い道標が救い上げた瞬間だった。
ロビンは静かに涙を拭い、心からの笑みを浮かべた。
「……ふふ、あなたって本当に……面白くて、優しくて、頼もしい人ね」
◇
その時だった。
カチリ……カチリ……カチリ……。
地下聖殿の天井の隙間から、王都の時計仕掛けの広場に仕掛けられていた『特大時限爆弾』が、仕掛けの作動によって地下へと落下してきた!
「きゃあああっ! 爆弾よ!!」ビビが悲鳴を上げる。
直径数メートルに及ぶその巨大な砲弾には、時限式のタイマーが刻まれており、デジタルカウントダウンは残り「5秒」を示していた。
「クハハハハ……! 間に合わなかったな!!」
血まみれになりながらも這いあがってきたクロコダイルが、狂気的な笑声を上げる。
「その爆弾は半径数キロを泥の海に変える特大砲弾だ! 起動回路はすでに完全固定されている! たとえ俺が倒れようと、お前たちもアルバーナもろとも吹き飛ぶのだ!!」
「カウント残り3秒……! ルーサス、どうすればいいの!?」ビビが怯えてルーサスの服を掴む。
だが、ルーサスは表情一つ変えずに、静かに前へ踏み出した。
「問題ない。……ビビ、そしてロビン。小学生でも分かるように説明してやろう。爆弾がなぜ爆発するのか――それは、内部の火薬が一瞬で燃えて、膨大な熱と気体エネルギーを『外側へ押し広げようとするから』だ。風船に空気を入れすぎてパンッ! と破裂するのと同じ理屈だな。
なら、外へ押し広げようとするエネルギーよりも数桁強い『莫大な電磁力で内側へ引き裂く力(重力崩壊)』を作ってやればどうなる?」
ルーサスが両手を掲げ、全身の魔力・プラズマエネルギーを限界まで活性化させる。
「電気の力で超高圧の強力な磁場(ローレンツ力)を一点に集中させると、空間の歪みが限界を超えて『質量のない超小型ブラックホール(特異点)』が生まれる。外へ広がる爆発のエネルギーより強く内側へ引っ張れば、爆発そのものがどこにも逃げられず、自分自身の重みで潰れて『無』に帰すのさ」
ルーサスの指先から、光すら吸い込む漆黒の球体が生成された。
爆弾がドカンッ! と激しい光と熱を放って炸裂した瞬間、その凄まじい爆風と熱量のすべてが、電気で作られたブラックホールの中へと完璧に吸い込まれ、完全消滅した。
「なっ……馬鹿な……!? 爆発が……吸い込まれて消ただと……!?」
クロコダイルが呆然と口を開け、ガタガタと震え出す。王都を吹き飛ばすはずの絶対のカードが、目の前の男の手の平一つで「無」に帰されたのだ。
「物理法則の基本だ。……ルフィ、最後だ。打撃を叩き込め」
ルーサスの合図と共に、空中に躍り出たルフィが全身の覇気を解き放つ!
「お前がどこで何しようと……! ビビの国は……俺たちが絶対に渡さねぇえええ!!」
「ゴムゴムの――――**『重聖砲(バズーカ)』!!!!**」
「ガハッ……!???」
血と武装色を纏ったルフィの渾身の両拳が、クロコダイルの胸腔を完全に打ち砕いた!
ドカアァァァンッ!! と音を立てて地下聖殿の天井が粉砕され、クロコダイルの巨体は王都アルバーナの上空高くへと打ち上げられていったのだった。
◇
地上――アルバーナの宮殿テラス。
気絶したクロコダイルの完全排除を確認したルーサスは、静かに空を見上げた。
「……アラバスタを真に救う最後の処理を行う。――【人工太陽およびノアの方舟プロジェクト】発動」
ルーサスが両手を天高く掲げ、凄まじい高電圧の電気エネルギーを上空の雲へと撃ち込んだ。
「分かりやすく教えよう。なぜ雨が降るのか――それは、温かい空気が空へ昇って冷やされ、水滴になるからだ。
なら、電気の力で大気中の空気を電離させ、疑似的な『高温プラズマ発光体(人工太陽)』を空の中に固定すればどうなる?
地表と空の間に激しい温度差(熱対流)が生まれ、数千平方キロメートル規模の超巨大な大雨の雲が発生する。さらに、あらかじめ散布しておいた触媒と電磁波で水蒸気を結露させれば――ノアの方舟規模の大雨を、人工的に何日でも維持できる」
バチバチバチッ……!!
ルーサスの頭上に眩い人工太陽の光が閃き、次の瞬間、アラバスタの上空を覆っていた砂雲が一気に紺碧の暴風雨雲へと変貌した。
ゴゴゴゴゴ……!
ポツリ、とビビの頬に冷たい水滴が落ちた。
ポツ、ポツ……ザザァァァァァッ……!!
「雨だ……! 雨が降ってきたぞーーーっ!!!」
「アラバスタに、大いなる恵みの雨が降ったぞーーーっ!!」
アルバーナの街中で、反乱軍も国王軍も民衆も、全員が天を仰いで歓声を上げ、涙を流して抱き合った。数年間の乾きと絶望の歴史が、天から降り注ぐ大豪雨によって綺麗に洗い流されていく。
雨の中でルフィがニカッと笑顔を見せて大の字に倒れ込み、満足そうに寝息を立て始めた。
ルーサスは降り注ぐ雨を見上げ、静かに知的な瞳を細めた。
「……気象循環システムの正常化、完了。アラバスタ編……これにて『クリア』だ」
ビビは雨の中でルーサスとルフィ、そして仲間たちを見つめ、溢れる感謝の涙と共に空へ向かって強く微笑むのだった――!
ご覧いただきありがとうございます!
第54話をお読みいただきありがとうございます!
アラバスタ編の完全決着超巨大スペシャルをお届けいたしました!
地下聖殿でのルフィとクロコダイルの泥沼の肉弾戦、ポーネグリフの前で「データベース分散保存論」を用いてロビンの夢と心を救うルーサスの重厚な対話シーンを大ボリュームで復元いたしました!
さらに、風船の破裂に例えた「電磁ブラックホール」での爆弾完全消滅と、「人工太陽のプラズマ熱対流」を利用したノアの方舟規模の大雨の科学的メカニズムなど、見どころ満載でお届けしました!
次回第55話からは、アラバスタ王国での大宴会、そしてビビとの感動的な別れを描いていきます!
どうぞお楽しみに!
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