【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第56話は、アラバスタ編を終えた一味が挑む新たな章――『空島編(ジャヤ編)』の開幕超大ボリューム回です!
空から降る巨大船、上を指すログポース、無法者の街「モックタウン」でのベラミー一味からの侮辱と買わん喧嘩。そして原作の名シーンである「黒ひげ(ティーチ)との遭遇」! ルーサスの科学的対峙を描く圧倒的密度でお届けします!
どうぞお楽しみください!
第56話 『空から降る船、嘲笑の街、そして夢を追う男たち』
アラバスタ王国での死闘を終え、ビビとの絆を胸に刻んで出航したゴーイング・メリー号。
青く光る『アーク・リアクター搭載・トレードマークアームレット』を左腕に装着した麦わらの一味は、穏やかな風を受け、どこまでも続く青い大海原を快調に航行していた。
甲板では、ルフィとウソップが釣竿を垂らし、サンジが冷えたジュースをナミとロビンへ運んでいる。ゾロは甲板の隅で巨大な重りを持ち上げて筋トレに励み、チョッパーは調合道具を広げて医療薬品の整理に余念がない。
「あー! 暇だなぁ! なにか面白いこと起きねぇかなー!」
ルフィが甲板に寝そべり、大きな口を開けて欠伸をする。
「バカ言え、ルフィ。アラバスタであれだけ命を張ったんだ、たまにはこういう平和な航海が一番……」
ウソップが言いかけた、その時だった。
ルーサスの頭脳空間に設置された超広域磁場・重力波動センサーが、鋭い警戒アラートを鳴らし響かせた。
「……全員、直ちに衝撃に備えろ。上方高度8000メートルから、質量数千トン級の自由落下物体が本船の真上へ向かって急速落下一中だ」
ルーサスの冷徹な声が甲板に響き渡ると同時に、それまで燦々と降り注いでいた太陽の光が突如として遮られ、広大な海面が一瞬にして暗い影に覆われた。
「え……? 暗くなった……? 雲……!?」ナミが首をかしげて見上げる。
直後――空が割れた。
ドガラガシャァァァァンッ!!!!
凄まじい大音響が鼓膜を突き破り、大気が激しく震動した!
雲を突き破って空から降ってきたのは――全高数十メートルを超える、古びた超巨大な木造の『多層大帆船』だった!
巨大な船体はメリー号の目と鼻の先、わずか数十メートルの海面へと激突し、山のような大津波と白煙を上げる水柱を巻き上げた!
「うわああああああっ!? 船が……船が空から降ってきたあぁぁぁーーっ!?」
ウソップとチョッパーが抱き合って狂ったように悲鳴を上げる。
「な、何なのよ一体!? なんで空から船が降ってくるのよ! どんな気象現象よ!?」ナミが濡れた髪を拭いながらパニックに陥る。
「ししし! すっげぇ! 船が空を飛んでたのか!?」
ルフィは目を丸くし、海面に浮かぶ巨大船の豪快な瓦礫を目を輝かせて見つめている。
ゾロが即座に刀の鍔を外し、サンジが足技の構えをとる中、ルーサスは静かに手を掲げ、落下してきた巨大船の材質、微粒子、および大気データのスキャンを開始した。
「……船体の木材の風化状態、および付着している着生貝類の化石化データを炭素年代測定法で瞬時に算出。この船は約200年前に南の海(サウスブルー)で建造された『セントブリス号』。上空の高度圏に長期間浮遊していたものが、自重と気圧の変動によって落下したものと推定される」
「200年前の船が空に……!? そんなことがあり得るの!?」ナミが絶句する。
さらに、ナミの左腕に装着された『ログポース(記録指針)』が、奇妙極まりない挙動を示し始めた。
ガラス球の中の針が水平を保つことを完全に放棄し、まるで地磁気を無視するかのように、垂直に「真上」――天を指したままぴたりと固定されていたのだ。
「ちょっと待って……! ログポースが壊れちゃったわ! ずっと上を指したまま動かないの! これじゃ次の島へ行けないわよ!」
「壊れてなどいない。物理的な正常動作だ」
ルーサスがナミの腕のログポースを指差し、淡々と科学的メカニズムを解説する。
「グランドラインのログポースは、島々が持つ独自の強大な『磁力線』を記憶・蓄積して次の進路を示す。指針が真上を指し続けているということは、物理的に『この真上の上空高度圏に、下層の島を上回る極めて強力な固有磁場を持つ巨大な陸地が存在する』という何よりの証拠だ」
「真上の空に……陸地……!? そんなのあり得ないわ! 空に島があるなんてお伽噺よ!」
「物理的には十分に起こり得る現象だ」
ルーサスは左腕の『アーク・リアクター搭載アームレット』から立体ホログラムを展開し、空中の大気構造と流体力学モデルを可視化した。
「大気圏上層、高度7000から10000メートル付近には、海水中の塩分と特殊なパイロブロイン物質を大量に含んだ高密度の『積乱雲(帝王雲)』が存在する。そこに強大な上昇気流と特定の磁場干渉が加われば、雲自体が海水や土壌と同等の密度を持ち、雲の上に島や海を形成することが可能だ。……即ち、『空島』は実在する」
「空島……!!!」
ルフィの瞳が、少年のような輝きと大冒険への興奮で満ちあふれた。
「よし! 決まりだ! 俺たち、その『空島』へ行くぞーーーっ!!」
「でも、どうやって空へ上がるのよ!? 船で空を飛ぶ方法なんて分からないわ!」と焦るナミ。
「情報を集めるのが最優先だ」ルーサスが頭脳空間から近隣海域のマップデータを提示する。
「ログポースが次の磁力を完全に記憶するまでの滞在期間を利用し、近くにある情報集積地点……無法者の街『モックタウン』が存在する島へ向かう。そこならば、空島に関する過去の航海記録や古文書データが得られる確率が高い」
◇
数時間の航海の末、ゴーイング・メリー号の視界に鬱蒼としたジャングルと、港にひしめく無数の異様な海賊船群が姿を現した。
島の名は――**『ジャヤ』**。
その港町「モックタウン」は、海軍の管轄が完全に及ばない無法地帯であり、賞金首の海賊、無法者、ならず者たちが夜な夜な酒と女と暴力を貪る危険極まりない街であった。
「よし! 酒場に行って空島の手がかりを聞き込むぞ!」
ルフィ、ゾロ、ナミ、そしてルーサスの4人は、メリー号を港に停泊させ、街の中心にある賑やかな酒場へと足を踏み入れた。
ガラリと扉を開けると、店内には安酒の臭いと荒くれ者たちの下品な怒号が充満していた。
「おいおい……見ろよ、東の海(イーストブルー)の田舎者が入ってきたぜ」
「懸賞金3000万の『麦わら』に、噂の『盤面の規格外』か……? 生ぬるいツラしやがって」
海賊たちの蔑むような視線が注がれる中、酒場のカウンターの中央で豪快に酒を飲んでいた一団が、ニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がった。
大型の黄金の装飾を身に纏い、不敵な笑みを浮かべる男――**『ハイエナのベラミー』**。
懸賞金5500万ベリーを誇り、「夢を見る海賊の時代は終わった」と豪語する新時代の海賊だった。
「ハハハ! 噂の麦わらの一味様かい? で……何を聞きにこの無法者の街に来たんだ?」ベラミーが煽るように問いかける。
ナミが少し身を乗り出し、意を決して尋ねた。
「この近くの海で、空島に行く方法を知っている人を探しているの! 誰か知らない!?」
その瞬間――。
酒場全体の喧噪が一瞬にしてピタリと静まり返り、次の瞬間、爆風のような大爆笑が酒場全体に巻き起こった!
「ギャハハハハハハ! 空島だと!? お前ら、まだそんなガキのおとぎ話を信じてやがるのか!!?」
ベラミーが腹を抱えてテーブルを叩きながら笑い転げる。
「空島だの黄金郷だの……そんなもん全部、現実と戦えねぇ負け犬どもの見せる幻想だ!! 夢を見て海へ出る時代はもう終わったんだよ! 時代の『波』に乗れねぇ愚か者がすがるお伽噺なんだよ!!」
ベラミーの手下たちが大声で笑い転げ、ナミは悔しさに唇を噛み締め、拳を強く握りしめる。
ベラミーはニヤニヤしながらルフィの前に歩み寄り、テーブルの酒瓶を掴むと、ルフィの頭の上から容赦なく酒を浴びせかけた。さらに、ルフィを突き飛ばし、足蹴にする。
「おい、麦わら! 悔しかったら殴ってみろよ! だがな、空島を目指すようなロマンチストのパンチなんて、痛くも痒くもねぇんだよ!」
酒と食べ散らかした飯で汚されるルフィとゾロ。
ナミが怒りを爆発させて叫ぶ。
「ルフィ! ゾロ! やっちゃいなさいよ! こんな奴らブッ飛ばしちゃいなさい!!」
しかし――ルフィは低く静かな声で言った。
「……ゾロ。この喧嘩は、絶対に買っちゃダメだ」
「……応」
ゾロもまた、刀から手を離し、じっと耐えるように目を閉じた。
自分たちの目指す「空島」という途方もないロマンを、理解できない者に笑われたからといって、ここで拳を振るう価値などない――ルフィたちの誇りが、ベラミーたちの浅はかな挑発を完全に無視させていた。
だが――黙っていられない男が一人いた。
ルーサスが静かに一歩前へ踏み出し、冷徹な瞳でベラミーを見下ろした。
「……時代の波、か。己の理解が及ばない物理現象を『お伽噺』と吐き捨て、自身の思考停止と知性の低さを正当化する典型的な認知バイアスだな」
「あぁ……!? 何だとてめぇ……『盤面の規格外』……!」ベラミーの顔から笑みが消え、殺気が跳ね上がる。
「大気圏上層における積乱雲の固形化、および流体力学的浮力モデルすら計算できない無知な単細胞め。お前のような低知能の海賊に、大空の構造を理解するのは物理的に不可能だ。……失せろ」
ルーサスの左腕のアーク・リアクターが青くプラズマ発光し、絶対領域の物理圧力が酒場全体を支配する。ベラミーはその圧倒的な威圧感に一瞬気圧され、唾を呑み込んだ。
ルフィ、ゾロ、ナミ、ルーサスの4人は、酒場からの激しい嘲笑と罵声を受けながら、静かに店を後にした。
◇
酒場の外の表通り――。
悔しさと怒りで肩を震わせるナミの横で、ルフィとゾロは体に付いた酒と汚れを拭いながら歩いていた。
その時だった。
酒場の前の通りに座り込み、巨大なチェリーパイを豪快に喰らい、酒を浴びるように飲んでいる一人の大柄な男がいた。
黒いバンダナを巻き、胸毛をはだけさせ、欠け落ちた歯を見せて下品に笑う男――。
しかし、その全身には痛々しい**焦げ痕や凄惨な裂傷**が刻まれ、分厚い包帯が痛々しく巻かれていた。
(……あの全身の熱硬化性火傷痕、および高密度熱量による細胞組織の破壊痕は……『火』による攻撃の痕跡。……火拳のエースか)
ルーサスは瞬時に男の負傷データを解析し、思考を巡らせた。
そう、この男こそ――白ひげ海賊団2番隊隊長「火拳のエース」から追われ、その圧倒的な炎の力の前に命からがら逃げ延びてきた男、**『黒ひげ』マーシャル・D・ティーチ**であった。
ティーチは全身の激痛に顔を歪めながらも、豪快にチェリーパイを口に放り込み、去っていくルフィたちを見上げて、がははと不敵に笑った。
「ガハハハハ! おいおい、お前ら! さっきの酒場の奴らの言うことなんて、気にする必要はねぇぞ!」
ルフィたちが立ち止まり、ティーチを見つめる。
ティーチは空を見上げ、欠けた歯を見せて魂の底から咆哮した。
**「笑われていこうじゃねぇか! 高みを目指せば、出さねぇ喧嘩にぶつかることだってあるんだ!!」**
風がモックタウンの通りを強く吹き抜ける。
ティーチは拳を固く握り締め、ルフィを見つめて叫んだ。
**「人の夢は!!! 終わらねぇ!!!!」**
その言葉は、酒場でベラミーたちに笑われたルフィたちの胸に、深く、熱く響き渡った。
「ガハハハ! そうだろ!? 人を凌ぐってのは大変なことだ! 奴らに笑われたっていいじゃねぇか! 言わせておけ!」
ティーチは豪快に笑いながら、手元の酒を呑み干す。しかし、その背中に刻まれたエースの炎による火傷痕が激しく痛み、苦々しい顔で顔を歪めた。
(……クソが……『火拳のエース』の野郎……! あの圧倒的な火炎の威力、危うく焼き尽くされるところだったぜ……! だが、俺の計画はここからだ……!)
ルーサスは静かにティーチの前に歩み寄り、眼鏡のない知的な瞳でティーチの全身の生命反応と特殊な身体構造を観察した。
「……異質な生体プログラムだな。お前の身体構造は、通常の人間における解剖学的な単一の生命系ではない。……まるで『二重、あるいは三重の遺伝子構造』が同居しているかのようだ」
ルーサスの冷徹な科学的指摘に、ティーチが一瞬目を見開き、不気味な瞳でルーサスを睨み返した。
「……ガハハ! 『盤面の規格外』ルーサスか。噂通りの気味の悪い視線をしてやがる……。人の体の中身まで透かして見る気か?」
「事実を指摘したに過ぎん。……そして、その全身の重度火傷。ポートガス・D・エースの熱エネルギーから逃げ延びてきたようだな」
「……フン、余計な口を叩くじゃねぇよ。俺は忙しいんでね」
ティーチは不敵な笑みを残し、巨体を揺らしながら街の暗がりへと去っていった。
ルフィは去っていくティーチの背中を、言葉もなくじっと見つめていた。
「ルフィ……あの男、知り合いなの……?」ナミが不安そうに尋ねる。
ルフィとゾロは顔を見合わせ、静かに首を振った。
「あいつ……『あいつ』じゃねぇ」
「ああ……『あいつら』だ」
二人の野生の直感が、黒ひげという男の内に潜む底知れぬ異質さと危険性を、確かに感じ取っていたのだ。
◇
「よし……気を取り直して、空島の手がかりを探すぞ」
ルーサスが端末のホログラムマップを展開する。
「モックタウンの海賊どもは無知だが、このジャヤ島の東の海岸……人里離れた場所に、一人の男が住んでいる。名は**モンブラン・クリケット**。『絵本・嘘つきノーランド』の子孫であり、黄金郷と空島を追い続けている男だ」
「ノーランド……! 黄金郷……!」ルフィの目が再び輝きを取り戻す。
「行くぞ! そのおっさんのところへ!!」
ベラミーたちの嘲笑を背に、そして黒ひげとの運命的な遭遇を経て、麦わらの一味は空島への真の手がかりを求め、ジャヤ島の秘められた東の海岸へと向かって進撃を開始したのだった――!
ご覧いただきありがとうございました!
第56話をお読みいただきありがとうございます!
超大ボリュームでお届けした『空島編(ジャヤ編)』開幕回はいかがでしたでしょうか!?
空から降る200年前の巨大船、上を指すログポース、モックタウンでのベラミー一味からの屈辱と「買わん喧嘩」、ルーサスの理知的煽り。そして原作の名シーンである「黒ひげ(ティーチ)との遭遇と『人の夢は終わらねぇ!』」!
エースの凄まじい強さから逃げ延びて負傷している黒ひげの描写と、ルーサスによる「三重の異質生体構造」の科学的見破りを交えた最高に熱い展開でお届けしました!
次回第57話では、モンブラン・クリケットとの出会い、絵本「嘘つきノーランド」の真実、そして空島へ跳び上がる唯一の手段『ハイパー・ノックアップストリーム(突き上げる海流)』の物理発生メカニズムをルーサスが解明します!
どうぞお楽しみに!
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