【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第57話は、空島への鍵を握る男「モンブラン・クリケット」との出会い回です!
モックタウンを後にした一味がたどり着いた東の海岸。そこで待ち受ける栗頭の男の悲哀と、400年前の真実。そしてルーサスが物理法則(海底火山のマグマ爆発と密閉空洞の断熱膨張)を用いて、空島へ行く唯一の手段「ノックアップストリーム」の発生メカニズムを完全解明する科学的感動回をお届けします!
どうぞお楽しみください!
モックタウンの喧噪を後にした麦わらの一味は、激しい荒波を越え、ジャヤ島の秘められた東の海岸へとたどり着いた。
周囲にはジャングルの鬱蒼とした緑が広がり、海岸の砂浜にはまるで難破船の残骸を無理やり繋ぎ合わせたような、奇妙で巨大なバラック小屋が建っている。
「ここが、ルーサスが言ってたおっさんの家か?」
ルフィが首をかしげながら、浜辺に転がる陶器の壺や金貨の残骸を興味津々で見つめる。
「ああ。記録データによると、この海岸に住む男こそが……かつて北の海(ノースブルー)で『大嘘つき』として処刑された大航海士モンブラン・ノーランドの子孫、モンブラン・クリケットだ」
ルーサスが左腕の端末を操作しながら淡々と告げる。
「ノーランド……? なんか聞き覚えがある名前ね……」
ナミが顎に指を当て、幼い頃の記憶を辿るように呟いた。
「北の海出身の人間なら、赤ん坊でも知っている有名なお伽噺だ」
ルーサスが淡々と解説を始める。
「今から約400年前、北の海の提督であったモンブラン・ノーランドという男が、偉大なる航路(グランドライン)の探索から戻り、国王にこう報告した。『東の海域にあるジャヤという島で、山のような黄金が輝く広大な黄金郷を発見した』とな」
ナミやウソップがゴクリと息を呑む中、ルーサスは続ける。
「真偽を確かめるべく、国王は自ら大艦隊と兵を引き連れ、数々の苦難を乗り越えてジャヤ島へと向かった。……だが、半年かけてたどり着いたジャヤ島には、黄金郷どころか、何の変哲もないただのジャングルが広がるばかりだったのだ。
激怒した国王によって、ノーランドは捕らえられ、『王と民を騙した大嘘つき』として打ち首の刑に処された。死の間際、処刑台の上でノーランドはこう叫んだという。『黄金郷は海へ沈んだのだ!』とな。だが、群衆はそれを最後の足掻きと笑い、彼は『うそつきノーランド』として絵本に描かれ、400年もの間、世界中で嘲笑され続けることとなった」
「……そんな悲しい絵本があったのか」ウソップがしんみりと呟く。
その時だった。
ザァァァ……! と波の音が響き、浜辺のバラック小屋の扉がガタガタと音を立てて開いた。
そこから現れたのは、頭に栗のような髪型を乗せ、全身に潜水服の重装備をまとった大柄な男だった。顔面には無数の潜水病の傷痕が刻まれている。
「……てめェら、何の用だ。ここは海賊の巣窟モックタウンじゃねぇぞ。さっさと失せな」
クリケットが不機嫌そうに一味を睨みつける。
しかし、ルフィはそんな威圧感などどこ吹く風とばかりに、ニカッと笑った。
「おっさん! お前、黄金郷を探してんだってな!? すっげぇじゃねぇか!」
「なっ……!?」クリケットの表情が凍りついた。
モックタウンの海賊たちからは「嘘つきの子孫」「間抜けな夢追い人」とバカにされ続けてきた禁句の言葉。それを初対面の少年から真っ直ぐ向けられ、クリケットは怒りを滲ませた。
「ガキが……! 俺を馬鹿にしに来たのか……! 俺が……俺たち一族がなぜ400年もこの海で潜り続けているのか、分かってもいねぇくせに……!」
クリケットは絞り出すような声で、胸の奥に秘めた熱い誇りを語り始めた。
「俺たちモンブラン一族にとって、ノーランドは『大嘘つき』なんかじゃねぇ……! 絵本じゃ嘘つきの代名詞にされてるが、一族に伝わる古文書や日誌に残るノーランドは、仲間想いで、誠実で、生涯で一度たりとも嘘をついたことがない本物の大航海士だったんだ!
一度も嘘をついたことがない男が……命を懸けて『黄金郷があった』と言ったんだ! なら、嘘であるはずがない!!」
クリケットが固く握りしめた拳を震わせる。
「俺はノーランドの無実を証明するために潜ってるんじゃねぇ。誇り高き先祖が、死ぬ間際まで愛した『真実』がどこにあるのか……それを俺自身の目で確かめるために、毎日毎日、潜水病で体が破裂しそうになりながら海底を探し続けてるんだ!!」
男の魂の叫び。誇りを守るための命がけの孤独な戦い。
その熱い吐露を受け、ルーサスが静かに一歩前へ踏み出した。そして、クリケットの足元に転がっていた海底の陶器の破片を拾い上げた。
「……陶器の釉薬の成分、および付着している貝殻の堆積層データから算出。この壺は間違いなく400年前の古代文明、それもサウスブルーの古い様式と一致する。つまり、お前が海底から命がけでサルベージし続けている黄金の遺物は、紛れもない本物だ」
クリケットは目を見開き、息を呑んだ。
「なっ……お前、一目で俺の拾ったものが本物だと……!?」
「科学的根拠に基づく事実を述べたまでだ」
ルーサスは眼鏡のない冷徹な瞳でクリケットを見据えた。
「『嘘つきノーランド』の絵本は、後世の無知な人間が作り上げた愚劣な寓話に過ぎん。400年前、ノーランドが発見した黄金郷は、このジャヤ島に確実に実在した。……正確には、黄金郷が存在したジャヤ島の半分が、何らかの巨大な地殻変動によって海中へ沈んだか、あるいは空へと弾き飛ばされたのだ」
その言葉に、クリケットの目から大粒の涙が溢れ出した。
長年、たった一人で「ご先祖様は一度も嘘をついていない」という誇りを胸に、海底に潜り続けてきた男の戦いが、ルーサスの科学的で絶対的な分析によって、完璧な『真実』として肯定された瞬間だった。
「お前たち……本当に、俺の言葉を……ノーランドの真実を信じてくれるのか……!」
◇
クリケットのバラック小屋に招かれた一味は、手作りのスープを囲みながら、空島への手がかりについて話し合っていた。
「空島へ行く方法だと……?」
クリケットは煙草の煙を吐き出しながら、険しい顔で首を振った。
「そんなもの、あるわけがねぇ。ロマンを追うのは勝手だが、空の海へ行くなんて不可能な話だ。……だが、一つだけ奇妙な噂がある。数百年に一度、この海域で起きる『突き上げる海流(ノックアップストリーム)』の噂だ」
「ノックアップストリーム……!」ナミが前のめりになる。
「そうだ。海底の特定の地点から、突如として数万トンの海水が異常なまでの高圧と爆発的なエネルギーで真上の空へ向かって噴き上がる。下手をすれば島一つが丸ごと飲み込まれ、どんな船も一瞬で粉々になる『死の海流』だ……。そんなものに巻き込まれたら、空島に行く前に全員海の藻屑だ」
クリケットの警告を聞き、ナミが青ざめる。
「ちょっと待って! 海流が空へ噴き上がるなんて、そんなの物理的にあり得ないわよ! どうやったらそんな化け物みたいな海流が起きるっていうの!?」
ナミの疑問に対し、ルーサスは不敵な笑みを浮かべ、左腕の『アーク・リアクター搭載アームレット』から巨大な立体ホログラムの地球物理モデルを展開した。
「……ナミ、物理法則の基本を思い出せ。なぜ水が激しく噴き上がると思う? 地下で水が沸騰し、逃げ場を失って爆発する『間欠泉』や、ペットボトルを振って蓋を開けた時の炭酸の噴出と同じ理屈だな」
ルーサスがホログラムの海底地形を指し示す。
「このジャヤ島の真下の海底深くに、超高熱の『海底火山マグマ溜まり』が存在する。そこに、何らかの地殻の亀裂から海水が大量に流れ込み、マグマの熱で一瞬にして超高圧の水蒸気へと相変化する。
密閉された地下空間で体積が何千倍にも膨張した水蒸気は、逃げ場を求めて海底の火口(ヴェント)から限界突破の勢いで噴出する。これが『ノックアップストリーム』の正体だ」
「す、水蒸気の爆発的な膨張……!?」ナミが驚愕する。
「そうだ。計算上、この噴出エネルギーは秒速数百メートルに達し、海面上の空中にまで到達する。つまり――この激流の発生タイミングと正確な位置を俺の絶対領域で予測し、その中心にメリー号を突入させれば、船ごと『空島』の高度圏へ一気に跳ね上げることが可能だ」
「なんだって……!? じゃあ、本当に空へ行けるのか!?」ウソップとチョッパーが飛び上がって喜ぶ。
「ししし! すっげぇじゃねぇか! 行こうぜ、空島へ!!」ルフィが満面の笑みで拳を突き上げる。
しかし、クリケットは苦渋の表情で顔をしかめた。
「おいおい、待て……! 理屈は分かったが、その『発生のタイミング』なんて誰も予測できねぇんだ。運が良ければ数年起きないし、悪ければ明日起きるかも知れねぇ。そんなの賭けにもならねぇよ」
「予測が不可能、か?」
ルーサスは冷徹な瞳を細め、手元の端末でジャヤ島周辺の地殻変動データ、重力波、および海底の微小地震波のシミュレーションを高速で走らせた。
「人間の観測技術では不可能でも、俺の頭脳空間とアーク・リアクターの演算能力の前では誤差の範囲だ。……ジャヤ島周辺の地殻ひずみとマグマの蓄積圧力を常時ハックすれば、発生の瞬間を秒単位で予測・特定できる」
ルーサスが端末をパチンと閉じて、全員を見渡した。
「準備をしろ。空島への出航は――もう間もなくだ」
クリケットは、目の前で信じられないような超科学の演算を平然とやり遂げる少年(ルーサス)を見て、呆れと感嘆の入り混じった笑みをこぼした。
「……お前ら、本当にイカれた一味だな。だが……悪くねぇ」
ジャヤ島の東の海岸で結ばれた、夢を追う男たちとの絆。
麦わらの一味は、雲の海へと飛び立つ歴史的瞬間へ向けて、いよいよ最後の準備へと突入していくのだった――!
ご覧いただきありがとうございます!
第57話をお読みいただきありがとうございます!
北の海で有名な童話『うそつきノーランド』の詳しい物語と、モンブラン一族が「ノーランドは生涯一度も嘘をついたことがない誠実な男だったから」と信じ続ける熱い誇りを描かせていただきました!
さらに、ルーサスが海底火山のマグマ爆発と水蒸気の断熱膨張に例えて「ノックアップストリーム(突き上げる海流)」の発生メカニズムを完璧に科学的解説する大満足の回となりました!
次回第58話では、クリケットの金を奪ったベラミーをルフィが一撃でブッ飛ばす名シーン、そしてルーサスの絶対領域サポートを受けて激流に乗り、空島へと跳び上がるクライマックスを描きます!
どうぞお楽しみに!
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ご覧いただきありがとうございます!
【今後の更新ペースにつきまして】
これまで毎日複数話のペースで怒涛の更新を続けてまいりましたが、作品の今後の更新ペースを少し調整させていただきます。
今後は「不定期更新」で無理がない程度に自分が投稿のをペースに投稿していく予定です!
楽しみにしてくださっている皆様には少しお待たせしてしまう形になりますが、ルーサスの活躍や一味の熱い冒険をより一層ハイクオリティでお届けできるよう執筆してまいりますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです!
今後とも
「【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者」をよろしくお願いいたします!