怠惰な聖女は現状維持を主に求める   作:あるき

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現状維持が一番

 

聖女。

 

その世界には、昔から神に与えられた力を行使し人々を痛みや苦しみから解放させる存在がいた。

 

「今日も相変わらず美しい。まるで宗教画の様……」

 

「絵になるとは正にこの事を言うのね」

 

シスター達のそんな声が、主の像に祈りを捧げる聖女(わたし)の耳に届く。そして私は思うのだった。

 

あぁ、やっぱ聖女は最高ですわ。と。

 

毎日長時間神に祈りを捧げるのは、正直かなり辛いけど。逆に言えばほぼ一日祈ってるだけでこうやって好感度が上がって、美味しいご飯とフカフカのベッドでゆっくりと眠れるのなら何一つ不満は無い。

 

……ずっと正座してて足痛いなとか、もうお腹空いちゃったんだけどお昼はまだかなとか思うぐらいはきっと神も許してくれると思う。

 

とにかく!私は今の生活に何不自由無い。たまに治療の依頼があったり、偉い人からの相談があったりするけど。それをこなせばシスター達から尊敬の目で見られる。それがこそばゆくもあり、嬉しくもある。だから、私は現状を維持したい。もっと偉くなりたいとか、更なる回復魔法を覚えて多くの人を救いたいなんて言う高尚な考えは私には一ミリも無い。自分の事しか考えてない自己中であり、どうしようもない人間なんです。なので。

 

「いくら主からのお願いとは言え、それを聞く事は出来ないのです」

 

これで何回目だろう。主である女神様から直々に昇格試験を受けないかと言う相談を受けた。教会の本部から昇格試験を受けてランクアップをすれば、待遇が良くなったりするらしいけれど、仕事の量も増えるらしい。前、突然『たまに教会から離れて、遠くへお出かけしたりとかどうですか?』と言う不穏な言葉から察するに出張もある事が予想される。断じてあってはならない。そんなの絶対NGだ。

 

前から言っている通り。繰り返しにはなるけれど、私は適度にだらけつつ、良い感じに仕事をして。承認欲求を満たされて美味しいご飯を食べて眠れればそれで良い。それが私のポリシーである。例え神様であろうともそれを邪魔する事は許されないし、許さない。

 

そして今日もなんとか昇格試験のお話を丁重にお断りし、お昼の時間を理由にその場から逃げた。

 

「ふぅ……」

 

食事の時間は安らぎの時間だ。誰にも邪魔されず、一人ゆっくりと時間を気にせずに食事を摂る事が出来る。祈りの時間は、ほぼ主である女神様のマシンガントークに付き合う事になり、肉体的と言うより精神的に疲れる。面倒だから適当に相槌を打っているとたまに昇格試験の話を混ぜてくるので油断ならない。だから、食事の時間と睡眠の時間が私にとって幸せな時間だ。

 

ああ、食事が終わればまたマシンガントークが始まるんだろうなぁ。いっそ、寝てしまおうか。お腹も満たされた事だし。そう思いながら、私は食事を終わらせ。また女神像へ祈りを向かうのだった。

 

そもそも昇格試験なんて難しそうだし、勉強なんてしたくないんだよね。疲れるし。楽をしたいんだ私は基本的にさ。

 

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