怠惰な聖女は現状維持を主に求める 作:あるき
「いつの間にベッドに」
着替えた覚えが無いのにはネグリジュに変わっているのは、不思議だけどきっと誰かが気を利かせて着替えさせてくれたんだと思う。多分ウチのシスター達でしょ。じゃなかったら怖すぎるし、考えたくも無い。
「うーん、ちょっとは楽かな?」
まだ少し頭がぼんやりとはするけれど、それはきっと寝ぼけているのもあるだろうし起きたばっかりだから仕方ない。少なくとも、昨日みたいな事にはならない筈だ。それも含めてシスター達に謝らなくてはいけない。ううっ、多少。いやかなり面倒臭い。こう言う自分から迷惑かけた時って結構相手に声掛けるのにハードルが上がるんだよね。あぁ、嫌だな。でもそのままって訳にもいかないもんね。申し訳無いって言う気持ちよりも、面倒臭い気持ちが上回ってしまっている。
洗面台で顔を洗いながら、昨日の事も水に流れないかななんて現実逃避をしてみたり。部屋の中でウロウロしたりした後。いつもの脳内モーニングコールによって、部屋から出た。昨日は肉体的に足取りが重く、今日は精神的な問題。明日は何なんだろう。考えたくも無いな。
「そうだ、毎朝お祈りしている時に近くにいるシスター達にお礼を言ってそこから、伝えていって貰おう」
なんか言われたら主の命によりその場を動く事が出来ませんでしたとでも言っておこう。毎回話聞いてよって言われるし間違ってはないだろうし。そこからどうなるかは文字通り神頼みと言うか神のみぞ知ると言うか。やかましいね。
自分でも聞いてられなくなったので、キリの良いところで切り上げ祈りのポーズ。そして対象が来るのをじっと待つ。数分で神が顕現し、軽快なトークが始まったのだけれど。何か様子がおかしい。
いつもに比べて元気がない。トークのキレも落ちているし。毎回限界を超えてきて、こちらが圧倒されるぐらい喋り倒しているのに。今日は何か悩みがあるのか、時折言葉に詰まりながら喋っている。明らかに変だ。最初はたまたまそう言う日もあるのかと思ったけど、どうも気になる。なので思い切って尋ねてみる事にした。言うまでも無く、面倒臭いけどね。
「何かありました?」
話の区切りを待ってそう聞いてみると、一瞬固まった後しらばっくれた。いやいや、明らかになんかあったでしょ。うー面倒臭い、主の為に一肌脱ぎますか。仕事だし。
「私って聖女なんです」
知ってました?と首を傾けてみると。何言ってるんだコイツと言う目で見られる。煩いな、分かってるよ。まだ話は終わってないんだから続きを聞いて欲しい。
「聖女って人の怪我を回復させたり、傷を癒したりするのがお仕事なんです。でも、それだけじゃないんですよ。心の傷や悩みだってお仕事の範囲内なので」
私で良ければ、いくらでも吐いてください。
そう言うと、主は教えてくれた。昨日私が倒れた事によって自分が負担になっているのじゃないかと思った事。もう関わらない方が良いんじゃないかと思い、今日が最後にしようと思った事。
「あぁ、成程」
そんな事かと思ってしまった。すると、それが漏れていたのか。凄い顔をされてしまった。そんな顔出来るんだ。どうやら、この神様は私を失いたくないらしい。そりゃあ二年も祈っていたら愛着ぐらい湧くか。
「大丈夫ですよ。昨日はちょっと調子が悪かっただけですから」
だから貴方は全く悪くないですよと慰める。怒られると思いながら、そっと髪を撫でてみる。抱きつかれて少し苦しくなったけど、声には出さない様にしてそのまま撫で続ける。
「大丈夫ですからね。私は何処にも行きませんからこのまま」
現状維持でお願いしますね。私はガラ空きの耳元にそう囁いた。
毎回続くか分からない