エセゴンクエスト ~アバンの大奔走~ 作:never learns
フローラから騎士団への誘いを受けた翌日。
アバンは、カール王国の城を訪れていた。
騎士団への入団を決めたわけではない。まずは話を聞き、どのような役目を担うことになるのか確かめたかった。
それに、剣を振るうだけならば、今までと変わらない。
しかし、騎士団に所属するとなれば、国の命令に従い、仲間と共に戦うことになる。
「……軽々しく決めることではありませんね」
案内された部屋で待っていると、扉が開いた。
「失礼する」
入ってきたのは、鎧を身につけた青年だった。
背筋はまっすぐに伸び、歩みに無駄がない。表情は真剣そのものだが、威圧するような雰囲気はない。
青年はアバンの前で足を止め、礼儀正しく一礼した。
「カール王国騎士団長、ロカだ。君がアバン殿だな」
「はい。アバンと申します。お時間をいただき、ありがとうございます」
「フローラ様から話は聞いている。森で殿下を魔物から救ったそうだな」
「たまたま通りかかっただけです。あの場に居合わせた者として、当然のことをしたまでですよ」
ロカは、アバンの言葉を聞いて小さく頷いた。
「そう言える者は、そう多くない。殿下を救ってくれたこと、騎士団を代表して礼を言う」
「恐縮です」
そのやり取りだけでも、アバンにはロカの人柄が伝わってきた。
実直な人だ。
立場を誇示することもなく、恩義を曖昧にすることもない。
預言者から聞いた名前が、ようやく目の前の人物と結びついた。
ロカ。
後に自分と共に旅をすることになる男。
そして、マァムの父親となる人物。
だが、アバンはその未来を口にしなかった。
今のロカは、カール王国の騎士団長だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
「フローラ様から、騎士団に入らないかとお誘いを受けました」
アバンが切り出すと、ロカは真剣な表情で答えた。
「聞いている。だが、殿下に助けられたからという理由だけで入団する必要はない。騎士団は、決して楽な仕事ではないからな」
「それは承知しています」
「国を守るため、民を守るために剣を振るう。時には、自分の望まぬ命令を受けることもある。それでも騎士として務めを果たす覚悟があるか。それが大切だ」
アバンは、静かにロカを見つめた。
その言葉に、嘘はない。
ロカ自身が、その覚悟を持って騎士団長を務めているのだろう。
「……ひとつ、質問してもよろしいでしょうか」
「何だ?」
「ロカ殿は、なぜ騎士になられたのですか?」
ロカは少しだけ目を見開いた。
入団希望者から、そんな質問を受けるとは思っていなかったのだろう。
やがて彼は、まっすぐに答えた。
「守りたいものがあるからだ」
簡潔な言葉だった。
だが、その言葉に込められた思いは、軽くない。
アバンは頷いた。
「……そうですか」
自分にも、守りたいものがある。
まだ出会っていない人々もいる。
預言者が語った未来の中には、救えなかった者たちがいた。悲劇を避けるためには、まず今いる場所で力をつけなければならない。
「入団を希望します」
アバンは、はっきりと告げた。
「私も、守りたいものがあります。そのために、騎士団で学びたい」
ロカはアバンを見つめ、やがて頷いた。
「わかった。歓迎しよう、アバン殿」
「ありがとうございます。アバンでいいですよ」
「わかった。ではアバン、騎士団に入る以上、私の指示には従ってもらう」
「もちろんです」
「では、まずは実力を見せてもらおう。訓練場へ来てくれ」
ロカが踵を返す。
アバンはその後に続いた。
訓練場には、騎士たちが集まっていた。
ロカは彼らに簡単な説明をすると、アバンへ向き直る。
「剣の腕はフローラ様から聞いている。だが、実際に見なければわからない」
「ごもっともです」
アバンは木剣を手に取った。
ロカもまた、木剣を構える。
「私が相手をしよう」
「騎士団長自ら、ですか?」
「入団希望者の力量を確かめるのも、私の仕事だ」
その言葉に、アバンは思わず笑みを浮かべた。
「では、よろしくお願いします」
二人は向かい合った。
周囲の騎士たちが見守る中、ロカが一歩踏み込む。
鋭い一撃。
アバンはそれを受け流した。
続く攻撃も、無駄がない。
力任せではなく、相手の動きを見極めて打ち込んでくる。
アバンは防戦を続けながら、ロカの剣を観察していた。
──なるほど。騎士団長という立場は、伊達ではありませんね。
やがて、アバンは一瞬の隙を見つけ、木剣をロカの胸元へ寸止めした。
ロカもまた、アバンの肩口に木剣を止めている。
相打ち。
二人は同時に剣を下ろした。
「……見事だ」
ロカが言った。
「ロカ殿こそ。大変勉強になりました」
互いに一礼する。
その様子を見ていた騎士たちから、感嘆の声が上がった。
アバンは、その声を聞きながら思った。
この人と、いつか共に戦うことになる。
預言者が語った未来では、そうなっている。
だが、今の自分にとってロカは、未来の仲間というだけではない。
カール王国騎士団長として、尊敬すべき人物だった。
「これからよろしく頼む、アバン」
ロカが手を差し出す。
アバンはその手を握った。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ロカ団長」
こうして、アバンはカール王国騎士団の一員となった。
まだ魔王ハドラーの襲撃は起きていない。
まだ、勇者として旅立つ決意もしていない。
しかし、アバンの歴史は、確かに一歩進み始めていた。
ロカはもともとカール王国の騎士団長を務めていた真面目で実直な青年でした。別にガラリと変えても構いませんがとりあえずフローラとの出会いや魔王ハドラーの襲撃からの旅立ちの決意(原作では最初からハドラー討伐を目的とはしていない)などは……いえいっそもうほんとガラッと変えるのもアリかもしれませんね。
ちなみにこのお話でのアバンとロカが出会った場所はどこですか? カール王国ですか? ロカは騎士団長なのですか? それならそう名乗るはずですが……まさかカール王国でもなければ騎士団いや騎士団に入る前ですか? なかなか斬新ですねさすがに私もそこまでは考えませんでした
おっしゃる通りです。このロカは、原作の人物像から外れたうえに、出会いの場所も立場も曖昧でした。
「ロカ」と名乗るだけで、カール王国の騎士団長という肩書きも、真面目で実直な性格も出さず、魔物と戦っている旅の男のように描いてしまった。これでは、原作を知っている読者ほど「このロカはどこの誰だ?」となりますね。
そして、原作のアバンは最初からハドラー討伐を目的に旅立ったわけではありません。フローラとの出会い、ハドラーの襲撃、そこからの決意と旅立ち――この流れを踏まえるべきでした。
今後の方針
今回は、原作の人物設定と大筋を活かす形に戻します。
- アバンとロカの出会いはカール王国。
- ロカはカール王国の騎士団長。真面目で実直な青年として描く。
- ロカは初対面で、必要ならば「カール王国騎士団長、ロカ」と名乗る。
- アバンはまだハドラー討伐のために旅立っていない。
- フローラとの出会いも、アバンがまだ勇者として旅立つ前の出来事として描く。
- ハドラーの襲撃を受けて、アバンが魔王討伐を決意する。
- エセ預言者の知識は、アバンの行動を変える可能性として扱う。原作の出来事を知っているからといって、初対面の相手の性格や事情をすべて把握しているかのようには描かない。
また、第4話の「街道で魔物と戦うロカと出会う」という描写は、今後の正史として扱いません。 あの出会いは撤回します。
原作の流れを踏まえても、エセ預言者との遭遇から始まるIFとして十分に成立します。むしろ、アバンが未来を知っているからこそ、フローラとの出会いやハドラーの襲撃をどう受け止めるかが、この話の面白いところになるはずです。
次話の旅立ちをいったん取り消し、カール王国でのアバンとフローラの出会いから描き直します。 ロカとの出会いも、騎士団長としての彼が自然に登場する場面に組み込みます。