ミステリアス少女は私と仲良くなりたいらしい   作:一般通過影

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いちごパフェ

 

今までで1番苦しかったお昼休憩を終え、午後の授業が始まったのだが⋯⋯予想通り授業中も人の視線を感じ、やりずらいことこの上無い1日だった。

 

「あ〜なんかどっと疲れた」

 

ようやく授業が終わり、この注目から逃れることができる。 紬と話す時間存外悪くなかったけど、この注目を受け続ける空間はあまりにも私に毒で、一刻も早くこの場から離れたい。

 

「ね、やよい。 どこいくの」

「⋯⋯」

 

終礼が終わった瞬間に席から立ち上がり、早歩きで教室から出ようと矢先昼休憩時にも聞いた声に遮られた。

 

「えっと、何か用?紬」

「うん、一緒にいこ」

「一緒に⋯?」

 

早くこの場から逃げたいだけなのに、神様はそれすら許してくれないらしく、視線と一緒に紬が私に話しかけてくる。

今日突然紬が私にやたらと絡みだしたからクラスの人達が気になるのはわかるが⋯⋯私も同じ気持ちなのだ。

 

「だめ?」

「いや⋯⋯そんなことはないけど」

「やった」

 

土曜日から私のことを友達と言い張ったり、お昼ご飯の時間だけではなく放課後にも話しかけてきて、いちばん困惑しているのは私なのだ。 私はただ傘を貸してあげただけで、特にこれと言って紬と接点はなかったというのに。

 

「わたし、友達が出来たらパフェ食べに行きたかった」

「いや、私達は友達じゃないしそもそもパフェは1人でも行けると思うけど⋯?」

「⋯⋯友達とたべたら美味しくなる。 だからいこう、やよい」

「あーあー、わかったから引っ張んないでよ⋯」

 

腕をぐいぐいと引っ張られ、思っていたより力が強くて体勢が崩れかける。 元々断る気は不思議と起きなかったしもちろん行くんだけど、お願いだから私にあんまり引っ付かないで欲しい、私の平穏がまた崩れる。

 

「それで、どこのお店に行くの?」

「勘で行く。 わたしにまかせて」

「え、嘘本気⋯?」

「うん、本気と書いてまじと読む」

「まぁおすすめのとこがある⋯はずだよね?じゃあ、いこっか」

「!うん、いく」

 

嬉しそうな紬と共に教室から出て2人隣に並んで歩く。

 

「⋯ちょっと?」

「ん、これぐらい普通」

 

いつの間にか紬が私の手を掴んで繋いできた。 見られたら何に勘違いされるかわかったものじゃないから振りほどきたいのだが⋯⋯私は紬に少し甘いのか、可哀想に思えて振りほどこうにも振りほどけない。

 

「紬って人との距離感イマイチ掴めてないでしょ」

 

同性に興味はないからなんとも思わないが、もし男だったら変な勘違いをしてしまいそうな程、紬は距離が近い。 ちゃんと話して数日の人間になぜここまで近い距離感で来れるのか、全くもって不思議だ。

 

「んーん、そんなことない」

「そんなことなくないよ、紬は人との距離感を勉強した方がいいんじゃない?会って間もない私と手を繋いだりするのはあんまりしないことだと思うけど」

「大丈夫、やよいはいい人」

「ふーん⋯⋯」

「んっ、いたい⋯⋯」

「勝手に手を繋いだ罰」

 

自慢げな顔を見せつけてくる紬に軽くデコピンをして歩く。 紬の手ってちっちゃくて冷たいな。

 

「寒いね」

「段々寒くなってきたからね」

「うん、やよいは、寒いの強い?」

「普通かなぁ、紬は?」

「ん、むり⋯もう私の身体は凍てついて温めてくれないと氷漬けにされる」

「そう?じゃあもう着込まないとね」

「⋯⋯ん、そういうことじゃない」

「寒いのを楽しむ人ってこと⋯?」

「そんなわけない、怒った」

「あ、ちょっ⋯ごべんて」

 

背伸びをして私のほっぺを引っ張ってきた。 やりやすいように少し屈んであげると、紬との距離はずっと近くなって、この光景はまるで⋯⋯

 

「なんだか、恋人みたい」

「あ、同じこと思った。 まぁでも私達は友人以前に同性だけどね」

「友人ではあるけど、そうだね。 ついたよ」

「え?ここ?」

 

紬が足を止め、前の看板を見てみると某チェーン店で、そりゃあパフェはあるだろうけど⋯思ってたのと違う。

 

「⋯⋯今度いく時は私が見つけるね」

「またあそんでくれるの?」

「⋯⋯⋯」

「やよい、やよい、わたしとあそばたいの?」

「それはべつに」

「がーん」

「じゃあ、お店入ろ」

「がーん⋯⋯」

 

口を滑らせて失言をしてしまい、それを逃すまいと私を揶揄うように言ってくる紬につい子供っぽくいじけてしまった。

 

もしかして明莉もいつもこんな気持ちだったりするのだろうか、口に出すつもりのなかった素直な言葉を吐いてしまい、恥ずかしいっていうかなんというか。

それは帰ったら聞いてみることにして私たちはお店の中に入った。

 

「がーん」

「⋯何にしよっかなー」

 

がーんとしか言えない紬が奥の席に腰を下ろしたので、私は対面の手前側に座りパフェを2つ頼んだ。 お店の雰囲気は至って普通のファミレスで、私も来たことがある。 何か特別感がある訳じゃないけど、今回は目の前に紬がいて、その事実が私の心をほんのりと浮つかせた⋯⋯ような気がする。

 

「紬ってなんか変な力でもあるの?」

「がーん⋯⋯⋯」

「聞いてないし⋯ほら、パフェ届いたよ」

 

パフェが2つ机の上に届き、私はいちごパフェ、紬は抹茶パフェを選んだようで、パフェを受け取って紬の方へパフェを置いてあげる。

 

「いただきまーす⋯んまっ」

「がーん⋯⋯むぐむぐ⋯」

「いつまでいじけてるの?」

「やよいがそのパフェくれたらなおるかも」

「まぁいいけど⋯⋯はい、どうぞ」

「がーーん」

「不正解を引いたっぽいなこれ⋯」

 

対面にいる紬の方に私のいちごパフェを置くが、何かが違うと言わんばかりに紬が「がーん」としか言わず、また何かを要求しているようだ。

 

「んと、何して欲しいの?」

「がーーーん⋯⋯むぐむぐ」

 

一応聞いてみたが、抹茶パフェを食べながら案の定がーんとしか言わない。 すると隣から若い男女の声が聞こえ、私はそっちを無意識に見ていた。

 

「ほら、あーん」

「あ、あーん⋯⋯」

「おいしい?」

「う、うん!」

 

なんて初々しいカップルなのだろうか、お幸せに爆発して欲しい。 こんな所であーんをするなんて勇気の塊だと思、う──って、まさか⋯⋯。

 

「⋯まさか、あれ?」

「ぴんぽーん」

「マジかぁ⋯」

「まじだぁ」

 

私が紬の方へと視線を戻すと、私がパフェを口の中に入れるのを待っているようで口を小さく開けて待っていた。

 

「うーん、うーん⋯⋯」

「がーーーん、なきそう」

「わかった、わかったから⋯ほら、あーん⋯?」

「あーーむ⋯⋯おいしい」

 

どうして私がこんな恥ずかしいことをしなきゃならんのだ、今すぐにでも死にたい。

紬をこんなに甘やかしてしまう私にも落ち度はあるが、とはいえそれでも紬は私に容赦がなさすぎるのではないだろうか、もしかして何かの復讐でもされてる?

 

「もうやんないからね」

「⋯⋯がーん」

「いやもう絶対やんないから!!」

 

紬は「仕方がない」と言い、自分の抹茶パフェに視線を戻してスプーンで掬ったかと思いきや──

 

「やよい、あーん」

「は⋯⋯?」

 

突然立ち上がったかと思うと、落ちないように手を添えながら私の口元へ掬った抹茶パフェを押し付けてきて───!?

 

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