「ふう…」
俺は飛竜を突破し、安堵していた。今いるのは篝火前。目の前には赤子を抱いた女性の像がある。
休憩を終え、俺はいかにも頑丈そうな扉を左脇にあるレバーを倒して開いた。階段を登ると亡者兵士がいた。パリィ、致命の一撃。これももう慣れた。
前には開けた場所があるのだがそこの中央付近に陣取っている猪のようなものがいる。鎧で完全武装している。あれでは刃が立たないだろう。右に階段。猪の上には通路。
俺は考えた。あの階段はきっと上の通路に通じているはずだ。ならば全力で階段を登り、扉に飛び込めば突破可能か?しかし失敗すれば確実に死が待っている。また賭けに出るか。
俺は全力で走る。亡者の脇をすり抜け階段をかけあがり、クロスボウの狙撃を躱し通路から扉目がけて飛び込んだ。亡者兵士が扉を閉めようとレバーを動かすがもう遅い。
しかし三体程襲いかかってきた。一体目が突きを放つ。パリィして致命の一撃。すかさず2体目が斬りかかる。バックジャンプして躱す。危ない危ない。三体目が近づいて来る後ろに回り込みバックスタブ。
残り一体。攻撃をガードし数回斬りつけて倒す。
そばにあった死体を漁ると鍵を見つけた。素早く拾い、ポーチに入れる。
いよいよ教会内部へと入る。いきなり何かが襲いかかってきた。教会を出て冷静に観察する。バルデルの騎士だった。レイピアで素早く刺してくる。ほとんど隙がない。
彼が一瞬棒立ちになったのを俺は見逃さなかった。素早く斬撃を叩き込む。バルデルは膝をつき倒れた。教会を向くとバルデルが2体襲ってきた。これはまずい。後ろに下がって距離を取る。
一体目が走り寄って来る。大きな突きをしてきた。が、隙だらけだ。右に回避し後ろに回り込みバックスタブ。2体目の攻撃はガードし、後ろに回り込もうとするがなかなか背中を見せてくれない。
こうなれば攻撃を誘発させ隙を作らせるのが得策か。一度ガードを解いた。すると案の定、隙が大きい突きを放ってきた。馬鹿な奴だ。右に避けバックスタブ。
改めて教会内部へと入ると、奥にバーニス騎士が待ち構えていた。左にタワーシールド、右にメイスを持っている。近づいていくと、相手も動き出した。一気に距離を詰める。
その時、右肩に強い衝撃を感じ、よろめいた。それに合わせるかのようにメイスが振り下ろされるのを見て俺は無理やり横にローリングする。さっきまで立っていた場所にメイスが振り下ろされた。
一度後ろに下がり回復をしようとしたが、それより早くメイスが俺の脇腹に直撃して吹き飛ばされた。壁に激突し、止まる。とどめを刺そうとメイスが振り下ろされる。
俺は咄嗟に後ろにあったエレベーターに飛び込んだ。なんとか助かった。が、どうやらスイッチが感圧式のようでエレベーターは動き始めてしまった。
しばらくして着いた所は見覚えのある場所だった。ここがどこだか判るまでそう時間はかからなかった。ここは火継ぎの祭祀場だ。ちょうどいい。篝火で休んでエストを補給しよう。
さっきメイスに殴られた脇腹も痛むことだしな。
しかし、と俺は考える。俺の背中を襲ったあの衝撃は何だったのだろう。角度としては二階から来たように思えた。やはりもう一度赴き確かめるしかないか。
俺は立ち上がり再びエレベーターに乗った。たどり着き扉が開いた瞬間、俺は走り出していた。そうしてバーニス騎士の注意を引き壁際まで誘き寄せる。恐らくここならあの衝撃は食らわないだろう。
と考えていたらいきなりメイスで殴りつけてくる。慌てず横に回避。その隙に一、二撃入れて引き下がる。あまり下がると壁に追い詰められフルボッコになりかねない。
その辺の距離のとり具合が重要であろう。一撃を避け、一、二撃入れて引き下がる。それを繰り返し、ようやくバーニス騎士を倒す事ができた。死体から楔石の欠片を拾い
エレベーターの向こう側にある出口を目指そうとした時、俺は女神像の傍にある死体に気付いた。死体からは綿のようなものが飛び出していた。これは?と考えてすぐに思い当たった。
これは火防女の魂だ。
彼女らは死ぬまで篝火を守り続け、また死してもなおその火を守り続ける。と聞いた事がある。俺はそれをしまい、出口に向けて歩きだそうとしたその時、青い光がピューン、という音とともに向かってきた。俺は左に避け確認する。間違いない。さっき俺を襲った衝撃はあれだ。形からして魔術の一種である『ソウルの矢』だろう。
しかし遠距離武器を持っていない俺は出口に向けて走るしかない。
それがいけなかった。出口を出た先には亡者兵士が三体もいたのだ。普通ならば様子を確認して警戒しながら出ていただろう。
しかし先ほどの狙撃で焦っていた俺はそんな事をするのも忘れ飛び出してしまった。そんな俺が冷静に対処出来る筈もなく、俺は迷わず逃げた。正面の階段を降りひたすら走る。
振り向くと亡者兵士はまだ追ってきている。建物に入り込み階段を降りると篝火があった。亡者兵士はもう追ってきていないようだ。篝火を灯し、休息する。
休息していると、どこからか金槌を叩く音がするのに気付いた。どうやらこの下の階からのようだ。
下に降りると髭を生やした男が武器を鍛えていた。やがてこちらの存在に気づいたのか声をかけてきた。
「よう、新顔だな。俺はアストラのアンドレイ。見ての通り鍛冶仕事なら力になれると思うぜ。」
「そうか、その時はよろしく頼む。」
アンドレイは頷き、再び武器を鍛え始めた。
俺は階段を登り再び最上階へとやって来た。俺は通路を渡り先ほどの亡者を倒し、教会内部へと入った。エレベーターの脇にある階段を登るとバルデル騎士が立っていた。
狭い階段内では不利と判断した俺は、一度階段を降り、エレベーター前で戦う事にした。
難なく騎士を倒して更に狭い通路を進む。
すると亡者が大量に襲いかかってきた。その数、10体近くいるんじゃないだろうか。連中は折れた直剣で斬りかかってくる。
奥に目をやるとさっき俺を撃ったと思われる敵がいた。三又の槍を突き上げながら踊っている。どんな効果があるかは知らないがそれなりに厄介なのだろう。
さっさと倒してしまいたいが亡者の群れが行く手を阻む。
俺はさっき拾ったクレイモアで反撃を試みるが筋力が足りないせいかうまく扱えない。剣に振り回されているようで使い物にならないのだ。
仕方ないのでシミターでのヒットアンドアウェイを繰り返し亡者を倒していく。
最後の亡者が断末魔の悲鳴を上げ倒れたのを確認し、未だに踊っている敵に肉薄する。
相手も槍を構えるがこっちが一足先に斬撃を入れる。
相手が槍で突いてくるのを見た俺は咄嗟に盾を構えるが威力を殺しきれずにわずかにダメージを食らってしまった。
今度新しい盾を買おうかと考えながら、さらに斬りかかった。
力尽き下へ落ちてゆく相手を見、俺は三又槍を拾って二階を探索することにした。
階段の上にいたバルデルを倒すと何やら封鎖された空間があった。
塞いでいた板を壊し先の階段を登ると黄金の鎧を纏った男が牢に閉じ込められていた。
「貴公、まだ人だな?」
「ああ」
「なら話は早い。私を開放してくれないか? 見ての通り閉じ込められていてどうしようもないんだ」
そう言うが俺は牢屋の鍵など持っていない。試しにと万能鍵を使ってみるとすんなりと開いた。随分と適当な牢屋だな。
「助かった。礼は後ほどさせてもらうよ」
俺は来た道を戻って屋上へ続く梯子を登る。
屋根に出る手前、金色のサインが輝いていた。
「これがソラールの言っていたサインか」
そう呟き、触れてみる。
するとソラールが万歳のようなポーズをとりながら現れたではないか。これには俺も驚き訊いてみる。
「お前はソラールなのか?」
「いや、肉体はここには存在しない。俺の精神が具現化したもの、とでもいうのかな。幽霊みたいなもんだ」
「なるほど、不思議な道具だ」
俺は彼に貰った蝋石がしまってあるポーチを見ながら言う。
屋根に出ると、目の前に塔がそびえ立っていた。最上部に鐘が見えるから恐らくあれが鐘楼なのだろう。外側には魔除けのつもりかガーゴイルの像が並んでいる。
俺は鐘楼の入り口に向かおうと歩き始める。その時、さっきまで装飾だと思っていたガーゴイルが動き始めた。
錆びついているせいか、動きはゆっくりだが確実に翼を広げようとしている。
そしてものの数秒でその翼は完全に開き羽ばたかせ教会の屋根に荒々しく着地すると、体に付いた錆を払うかのように咆哮した。
「クソッ、マジかよ!」
「慌てるな貴公。冷静に対処すれば勝てる相手だ」
「ああ、分かった」
俺は走り出す。狙うは比較的安全そうな側面だ。
その時、ソラールが放ったであろう雷のような槍がガーゴイルの頭に突き刺さった。
注意が俺からソラールに逸れた一瞬の隙を逃さずシミタ―での連撃を決める。
錆びついていたせいかわからないが、刃が通ったことに俺は安心する。
ヒットアンドウェイの精神に乗っ取り後方に下がると直前まで俺がいた場所を先端が斧の尻尾が勢いよく振り回される。あのスピードで喰らったら即死確定だろう。
一撃離脱はやはり大切だと再認識し、今度は尻尾に切りかかる。厄介な物はさっさと始末しなくては。
数回斬りつけまたも後方に下がる。同じ動きの繰り返しで退屈だが一番重要なのは生き延びることだ。結果など生きていればいくらでも出せる。
「ソラール、危ない!」
俺は思わず叫んだ。ソラールが斧槍で狙われていたからだ。
ソラールは間一髪盾で受け死は回避された。俺はソラールの元へ駆け寄り
「大丈夫か?」
「ああ、すまないな貴公。俺としたことが」
「気にするな。…来るぞ!」
直後俺たちがいた場所へ斧槍が叩きつけられる。
俺はまた尻尾を狙おうと駆け出す。ガーゴイルは完全にソラール狙いだ。
その隙に俺は目一杯斬撃を繰り出す。最後の一撃でガーゴイルの尻尾は赤い鮮血を撒き散らせながら吹っ飛んだ。
飛び散る血を見て俺は青銅製なのに血が流れているとは不思議だ、とどうでもいい事を考える。
そのまま一気に倒そうと再び接近する俺の視界に赤い炎が入った。何だとその方を見るともう一体のガーゴイルが火を噴いている。
予想外の出来事に俺はソラールに話しかける。
「どうする?」
「俺がこのガーゴイルをやるから、貴公は向こうを頼む」
「わかった」
俺は炎の範囲を観察する。広範囲に及んでいるがそれは前方だけ。側面は無防備だ。
このガーゴイルは損傷がひどく、武器も持ってない上尻尾もついてない。武器はあの炎だけだ。
炎の吐き終わりと同時に側面に突っ込む。
ガーゴイルは距離を取って再び吐こうとするが十分に間に合う…と思ったが予想以上にタイミングが早くギリギリで間に合った、という感じだった。
焦げる臭いが鼻をつきコートが燃えていなければいいが、と一瞬心配になったがそれは大丈夫だろう。
俺は翼膜が無くなり骨組だけになった翼に三連撃を決め、再び退避する。攻撃が単純だからと油断してはいけない。
その時ズーンという鈍い音と共に屋根が軽く揺れる。軽くソラールの方を見ると一体目のガーゴイルが倒れ伏している。彼が倒したのだろう。
そしてまたガーゴイルの眉間に雷の槍が突き刺さる。それによって絶命したのか、二体目も倒れた。
「助かった、ソラール」
「気にするな。人は助け合って生きていくものだろう?」
「そうだな」
互いを労っているとソラールの体が徐々に薄くなっていく。
「いくのか?」
「ああ、また会おう」
「また、何処かでな」
俺は軽く手を振りソラールを見送ったあと、鐘楼に入った。
鐘楼は狭く、一階には何もなかった。右に梯子があり、これで鐘の場所まで行けそうだ。
梯子を登りきり外に出ると、そこには木の板で作られた足場があり梯子が上へと続いていた。
それを登った先には鐘とレバーがある。これを引くと鐘が鳴る仕組みなのだろう。
俺は全体重をかけレバーを引く。
鐘が鳴る。ロードラン中に響くほどに綺麗な音色で。