超かぐや姫!~月を斬りたい世話焼き剣士~   作:アキヤマ ハルト

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初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。
アキヤマ ハルトと申します。

リィンカーネーションの花弁の方が現状詰まりに詰まっていまして……GPTで遊びながら話の続きを書いている際に思いついたネタを文章にしたかったのでGPTに任せたらなんか一本の作品ができたので、投稿しようと思いました。

この作品ができた理由は上記した通りですので、もしかしたら文章にAIっぽさが目立っているかも……?自分が判断できるところはある程度修正していますが、検証ついでということもあって文章はAI七割・人間三割ほどになるかと思います。

それでもよい方は楽しんでいただけるとありがたいです。では、どうぞ。


第一話『今は昔、月を斬りたい男子高校生ありけり』

 闘技場のような場所で、ボクと相手の黒装束の忍びのような人は向き合っていた。

 

 視界の前には、【バトルスタートまで、残り3秒】と書いてあり、時間が減っていく。ボクは深呼吸してから、意識を研ぎ澄ませる。肌に触れる服の感触、握っている刀の重さ……それらを感じ取った上で、開始の合図となる音が鳴ると共にボクは目を開いた。

 

「覚悟、ゲンサイ‼」

 

 忍びは声を上げてから、闇に同化するようにして消えてしまった。ステージ全体を利用するようにして縦横無尽に飛んでいるのを感じながら、刀を鞘に納める。

 

 いつでも抜けるように構え、腰を落とすと……気配が横で止まり、武器が振るわれようとしていることに気付いた瞬間に、ボクは刀を一気に振り抜く。

 

「ぎえっ!?」

 

 忍びは刀によって真っ二つになり、同時に視界に【YOU WIN!】と出てきた。ボクは息を吐いてから、時間を確認する。

 

 時刻は午前4時……ボクはその時間を見て、頭を抱えて小さくつぶやいた。

 

「……また、やっちゃったぁ~……」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「河上くーん……? 起きてくださーい……??」

 

 ボクは夢の世界へ旅立っている中で、耳に少しだけ入ってきた声に目を覚まして顔を上げる。

 

「……うぁ、うぅーん……どうかしたんですかぁ、せんせ~……?」

 

 寝ぼけ眼で見える先生の表情はピクピク震えていて、どこか顔が赤くなっていた。先生はそのまま、ボクの頭をわしゃわしゃとしながら、「どうかしたもありませーん‼」と怒ってしまった。

 

 他のクラスメイト達はボクが怒られている姿を見て、笑いが起こっていた。その中には、学校一の秀才と名高い『酒寄彩葉』さんもいた。

 ボクはそのまま、怒られたこともあって目が覚めたので授業を受けていく。数十分もすればチャイムが鳴り、そこで学校が終わって生徒たちは三連休に喜びを顕わにしながら談笑していた。

 

 その人の波の中を通り抜け、彩葉さんがお友達の『綾紬芦花』さんと『諌山真実』さんと話していた。横を通った際に来週に新装開店のカフェに行く約束をしているのが聞こえた。

 

「……ふあぁぁ……さて、どうしよっかなぁ。彩葉さん、今日は何が食べたいかなぁ」

 

 ボクは鼻歌を口ずさみながら、帰路を辿っていく。今日は何を作ったら喜ぶかな、なんて考えながら……。

 

 ボクは買い物を済ませて、彩葉さんが帰ってくる時間ぐらいに完成する程度のタイミングで、鼻歌を歌いながら料理を作っていく。

 

 テンション高めに料理を作っていると、家の外から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。そして誰かが走る足音と共に、隣の部屋に移動した。ボクは料理を作っていた手を止めて、部屋を出てから隣……彩葉さんのドアをノックする。

 

 三回ノックすると、中から彩葉さんが疲れた声で、「どうぞぉ~……」と返してきた。ボクはドアを開けると、中には赤ん坊を抱きかかえている彩葉さんがいた。顔は少し青くなっていて、困ってますというオーラを出している。

 

「わぁ~……彩葉さん、その子はどこから拾ったの?」

 

「え、っと……ゲーミング電柱、から?」

 

「ゲーミング電柱かぁ~……うーん、それは困ったねぇ……」

 

 ボクが頭を捻って悩んでいると、彩葉さんが控えめながらも叫ぶように「ちょ、ちょっと……!?」と声を上げた。

 

「ん~?」

 

「信じるの……? ゲ、ゲーミング電柱なんて普通じゃないのに……」

 

「まぁ、普通じゃないねぇ~」

 

「なら、なんで――」

 

 ボクは(何を言ってるんだろう)と不思議に思いながら、ただ一言返す。

 

「だって、彩葉さんだもん。彩葉さんがそんな嘘を吐くことなんかないと思ってるから」

 

「…………」

 

 唖然とした顔で彩葉さんが止まっていると、抱きかかえられたままジッとしていた赤ん坊が泣きだしてしまった。

 

 泣き声で意識を取り戻した彩葉さんは、あわあわとしだしてしまった。どうすればいいのか分からないようだった。

 

「ど、どうしよう……!?」

 

「ん~……とりあえず、落ち着こっか。彩葉さん」

 

「いや、落ち着いてられないって……! 赤ちゃんが泣いてるんだよ!?」

 

「まぁ、そうだねぇ……」

 

 ボクは彩葉さんの腕の中で泣いている赤ん坊を見つめる。

 

 赤ん坊が泣く理由は色々あったはずだ。お腹が空いているのか、オムツが気持ち悪いのか……それとも、単純に不安なのか。

 

 とはいえ、ボクは赤ん坊のお世話なんてしたことがない。どうすればいいのか分からず、頭を捻っていた。

 

「……そうだ。彩葉さん、子守唄とか歌ってみたら?」

 

「子守唄……?」

 

「うん。赤ちゃんって、歌を聞くと落ち着くことがあるって聞いたことあるよ~」

 

「あぁ、なるほど……。子守唄、子守唄かぁ……」

 

 彩葉さんは小さく呟きながら、何かを考え始める。

 

 そして、部屋の中を見渡していると……ある場所で視線が止まった。

 

「……あっ」

 

「ん~?」

 

 彩葉さんの視線を追ってみると、そこには月見ヤチヨさんのグッズが飾られた神棚があった。

 

 月見ヤチヨさん。ツクヨミの管理人であり、彩葉さんが大好きなライバーだ。

 

 ボクもツクヨミで遊んでいるから知っているけど、彩葉さんのヤチヨさんに対する熱意は凄まじいものがある。

 

 ……まぁ、そのおかげでボクもヤチヨさんの曲には詳しくなったんだけどねぇ。

 

「……うん、あれなら……」

 

「何か思いついた?」

 

「うん。ちょっと試してみる」

 

 彩葉さんは赤ん坊を抱き直してから、小さく息を吸った。

 

 そして、ゆっくりと歌い始めた。

 

 その歌は、月見ヤチヨさんのデビュー曲である『Remember』だった。

 

 ボクも何度も聞いたことがある曲だ。

 

 彩葉さんの部屋では頻繁に流れているし、彩葉さん自身も鼻歌で歌っていることがある。

 

 けれど、こうして子守唄として聞いてみると、なんだか違った曲のように感じるなぁ。

 

 彩葉さんの歌声が部屋の中に響いていく。

 

 すると、あんなに元気よく泣いていた赤ん坊が、少しずつ大人しくなっていった。

 

「……おぉ~?」

 

 ボクが感心していると、赤ん坊は彩葉さんの顔を見上げてから、小さく欠伸をした。

 

 そして、ゆっくりと目を閉じていく。

 

 彩葉さんはその姿を見て、少し驚いたように目を丸くした。それでも歌うのを止めず、赤ん坊が完全に眠るまで歌い続けた。

 

 やがて歌が終わると、部屋には静寂が訪れた。

 

 赤ん坊は彩葉さんの腕の中で、気持ちよさそうに眠っていた。

 

「……寝た?」

 

「うん、寝たねぇ」

 

「……はぁぁぁ~……よかったぁ……」

 

 彩葉さんは安心したように息を吐いてから、近くにあった椅子に腰掛けた。

 

 そのまま、背もたれに身体を預けて天井を見上げる。

 

「……いやぁ、どうなることかと思った……」

 

「あははっ、お疲れ様~」

 

「ほんとだよ……。赤ちゃんって、こんなに大変なんだね……」

 

「まぁ、まだ始まったばかりだけどねぇ」

 

「……それ、今言う?」

 

「ごめんごめん~」

 

 彩葉さんはジトッとした目でボクを見てから、もう一度赤ん坊に視線を落とした。

 

「……でも、よかった。ちゃんと寝てくれて」

 

「そうだねぇ。それにしても、『Remember』が子守唄になるとは思わなかったなぁ」

 

「それな。……でも、流石ヤチヨって感じだよね」

 

「ふふっ、そうだねぇ」

 

 彩葉さんは満足そうに頷いてから、赤ん坊の顔を覗き込んだ。

 

 ……さて。

 

 ひとまず泣き止んでくれたのはいいけど、これからどうするんだろう。

 

「……ねぇ、彩葉さん」

 

「ん?」

 

「この子、これからどうするの?」

 

「…………」

 

 ボクがそう尋ねると、彩葉さんはピタリと動きを止めた。

 

 そして、ゆっくりとボクの方へ顔を向ける。

 

「……どうしよう?」

 

「うわぁ~……」

 

「いや、分かってる! 分かってるけどさ……!」

 

 彩葉さんは声を抑えながら、困ったように頭を抱える。

 

「そもそも、赤ちゃんが電柱から出てくるって何!? 意味分かんないんだけど……!」

 

「まぁ、普通じゃないねぇ」

 

「普通じゃないどころの話じゃないでしょ……。あぁもう、どうすんのこれ……」

 

「うーん……」

 

 ボクは彩葉さんの腕の中で眠っている赤ん坊を見つめる。

 

 ゲーミング電柱から出てきた赤ん坊、かぁ……。

 

 確かに、普通に考えればあり得ない話だ。

 

 それに、この子の親がどこにいるのかも分からない。

 

 警察に相談するにしても、どう説明すればいいのやら……。

 

「……とりあえず、ボクもこの子のお世話を手伝おっか」

 

「……え?」

 

「ん~?」

 

「……いや、待って。今なんて?」

 

「この子のお世話、ボクも手伝うよって」

 

「…………」

 

 彩葉さんは少しの間、ボクの顔を見つめていた。

 

 そして、小さく息を吐いてから口を開く。

 

「……いや、流石にそこまでしてもらうのは悪いって。河上くんだって自分の時間あるでしょ?」

 

「まぁ、そうだねぇ」

 

「でしょ? それに、赤ちゃんのお世話とか絶対大変だし……」

 

「うん、大変だろうねぇ」

 

「……分かってて言ってる?」

 

「もちろん~」

 

 ボクが笑顔で返すと、彩葉さんは呆れたような顔になった。

 

「……河上くんって、たまに何考えてるのか分かんないよね」

 

「あははっ、よく言われる~」

 

「褒めてないんだけど……」

 

「えぇ~……」

 

 彩葉さんはもう一度息を吐いてから、眠っている赤ん坊に視線を落とした。

 

「……でも、ほんとにいいよ。河上くんには普段からご飯作ってもらってるし、これ以上頼るのは……」

 

「ん~……でもさぁ、彩葉さん」

 

「ん?」

 

「彩葉さん一人で、この子のお世話できる?」

 

「…………」

 

 彩葉さんは赤ん坊を見つめたまま、何も言わなかった。

 

 ボクはその様子を見ながら、言葉を続ける。

 

「彩葉さんって、普段から色々と忙しいでしょ? 学校にアルバイト、それに勉強だってあるし……」

 

「……まぁ、そうだけど」

 

「そんな中で赤ちゃんのお世話まで始めたら、また倒れちゃうんじゃない?」

 

「……うっ」

 

 彩葉さんは小さく声を漏らしてから、気まずそうに視線を逸らした。

 

 ……どうやら、心当たりがあるみたいだねぇ。

 

「……一年前のこと、覚えてる?」

 

「……覚えてるよ。忘れるわけないじゃん」

 

「あははっ、そうだよねぇ」

 

 一年前、ボクが彩葉さんと初めてちゃんと話した時のこと。

 

 あの時の彩葉さんは、無理をしすぎて倒れていた。

 

 それからボクが料理を作るようになって、代わりに彩葉さんはボクに勉強を教えてくれるようになった。

 

 ……まぁ、ボクとしては勉強を教えてもらわなくても問題ないんだけどねぇ。

 

 でも、その時間を彩葉さんが楽しそうにしているから、今でも続けている。

 

「……ボクさぁ、あの時は結構驚いたんだよねぇ」

 

「……うん」

 

「彩葉さん、凄く苦しそうだったから」

 

「…………」

 

「だから、もうあんな姿は見たくないんだよねぇ」

 

 ボクがそう伝えると、彩葉さんは黙ってしまった。

 

 ……うーん。

 

 ちょっと真面目な話になっちゃったかなぁ。

 

「それに、困ってる彩葉さんを放っておくのも嫌だしねぇ」

 

「……河上くん」

 

「ん~?」

 

「……ほんと、お人好しだよね」

 

「あははっ、そうかなぁ?」

 

「そうだよ。……まぁ、今更だけどさ」

 

 彩葉さんは呆れたように笑ってから、もう一度赤ん坊に視線を落とした。

 

 そして、少し考え込んでから口を開く。

 

「……じゃあさ、河上くん」

 

「うん?」

 

「手伝ってもらってもいい?」

 

「もちろん~」

 

「……そっか」

 

 彩葉さんは小さく頷いてから、少しだけ笑みを浮かべた。

 

「……じゃあ、お願いしようかな。正直、一人だと無理だと思うし」

 

「うんうん。二人で頑張ろっか~」

 

「……言っとくけど、赤ちゃんのお世話って大変だと思うよ?」

 

「そうだねぇ」

 

「夜中に起きなきゃいけないこともあるだろうし……」

 

「うーん、それは困るなぁ」

 

「いや、いつも夜更かししてるじゃん」

 

「あははっ、確かに~」

 

「……ほんとに大丈夫かなぁ」

 

 彩葉さんはボクを見ながら、どこか不安そうに呟いた。

 

 ……おやぁ?

 

「もしかして、ボクって信用されてない?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど……」

 

「けど?」

 

「……授業中、いつも寝てるし」

 

「うぐっ……」

 

「今日も先生に怒られてたでしょ?」

 

「……あははっ」

 

「笑って誤魔化すなって……」

 

 彩葉さんは呆れたように笑ってから、赤ん坊を抱き直した。

 

「……まぁ、河上くんなら大丈夫か」

 

「おっ、信用してくれた?」

 

「一応ね。……少なくとも、私が倒れてた時に助けてくれた人だし」

 

「ふふっ、そっかぁ」

 

「……でも、夜更かしはほどほどにしてよね。赤ちゃんのお世話するんだから」

 

「はぁ~い」

 

 こうして、ボクと彩葉さんの二人で赤ん坊のお世話をすることが決まった。

 

 ……とはいえ。

 

 ボクも彩葉さんも赤ん坊のお世話なんてしたことがない。

 

 色々と調べなきゃいけないことがありそうだねぇ。

 

「……さて、それじゃあ彩葉さん」

 

「ん?」

 

「まずはご飯にしよっか」

 

「……ご飯?」

 

「うん。ちょうど作ってる途中だったんだよねぇ。今日はサバの味噌煮だよ~」

 

「あっ、そうだった! 今日も作ってくれてたんだ」

 

「うん。彩葉さんの分もあるから、持ってくるねぇ」

 

「やった。……って、あれ? この子はどうしよう……?」

 

 彩葉さんは眠っている赤ん坊を見つめてから、困ったように首を傾げた。

 

「ん~……彩葉さんが食べてる間は、ボクが抱っこしてようかなぁ」

 

「……河上くんのご飯は?」

 

「ボクは後で食べるよ~」

 

「……いや、冷めちゃうじゃん」

 

「温め直せば大丈夫だよ~」

 

「……まぁ、そうだけど」

 

 彩葉さんは少し考えてから、眠っている赤ん坊を見つめた。

 

 そして、ボクの方へ顔を向ける。

 

「……じゃあ、お願いしようかな」

 

「うん、任せて~」

 

「……あっ、でも、ご飯作り終わってないんでしょ?」

 

「そうだねぇ。すぐ終わるから、ちょっと待ってて~」

 

「ん、了解」

 

 ボクは彩葉さんに軽く手を振ってから、自分の部屋へと戻った。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「はーい、お待たせ~」

 

「おっ、きたきた」

 

 ボクがお盆に料理を載せて部屋に戻ると、彩葉さんは椅子に座ったまま、こちらに顔を向けてきた。

 

 今日の献立は、サバの味噌煮と白米。そして、ネギや大根、豆腐などを入れた具だくさんの味噌汁だ。

 

「……あれ? この献立って……」

 

「ん~? どうかした?」

 

「……いや、これってさ。一年前に食べたやつと同じじゃない?」

 

「ふふっ、よく覚えてるねぇ」

 

「そりゃ覚えてるよ。河上くんが初めて作ってくれたご飯だし」

 

「あははっ、そっかぁ」

 

 彩葉さんは懐かしそうに笑ってから、料理に視線を落とした。

 

「……なんか、懐かしいなぁ。もう一年経つんだね」

 

「そうだねぇ。早いもんだなぁ~」

 

「……あの時は、ほんと色々迷惑かけたなぁ……」

 

「ん~? ボクは気にしてないよ~」

 

「……それも知ってる」

 

 彩葉さんはそう言ってから、小さく笑った。

 

 ……うん。

 

 一年前と比べると、彩葉さんも随分と笑うようになった気がする。

 

 まぁ、まだ色々と抱えてるみたいだけどねぇ。

 

「さて、じゃあ赤ちゃんを預かろっか」

 

「ん、お願い」

 

 ボクは手を洗ってから、彩葉さんの腕の中にいる赤ん坊へ手を伸ばす。

 

 そして、頭と首を支えながら、ゆっくりと抱きかかえた。

 

「……おぉ~」

 

「……どうしたの?」

 

「いやぁ、思ってたより軽いなぁって」

 

「……そりゃ赤ちゃんだからね」

 

「あははっ、確かに~」

 

 ボクが笑いながら赤ん坊を見つめていると、彩葉さんは食卓に向き直った。

 

「じゃ、いただきます」

 

「はーい、召し上がれ~」

 

 彩葉さんは両手を合わせてから、箸を手に取った。

 

 最初に味噌汁を一口飲み、その後にサバの味噌煮を食べる。

 

「……んん~……美味しい……」

 

「ふふっ、よかったぁ」

 

「やっぱ河上くんの料理、落ち着くわぁ……」

 

「あははっ、ありがと~」

 

 彩葉さんは幸せそうに頬を緩めながら、ご飯を食べていく。

 

 ボクはそんな彩葉さんを眺めてから、腕の中にいる赤ん坊に視線を落とした。

 

 赤ん坊は気持ちよさそうに眠っていて、小さな寝息を立てている。

 

「……ふふっ」

 

 ……可愛いなぁ。

 

 小さな手に、小さな足。

 

 指なんて、ボクの指と比べても随分と小さい。

 

 それにしても、本当に軽いねぇ。

 

 ボク自身、体格にはあまり恵まれていないけど、それでも赤ん坊を抱きかかえるくらいなら問題なさそうだ。

 

「……んぅ……」

 

「……おや?」

 

 ボクが赤ん坊の顔を見つめていると、小さく声を上げた。

 

 そして、ゆっくりと目を開ける。

 

「……あぅ?」

 

「……あっ、起きちゃった?」

 

 赤ん坊は寝ぼけたような顔でボクを見つめてきた。

 

 そのまま数秒ほど見つめ合っていると、赤ん坊は小さな手を伸ばしてくる。

 

「……ん~?」

 

「あぅ……」

 

 ボクが顔を近づけると、赤ん坊はボクの頬に手を伸ばしてきた。

 

 そして、ペタペタと触ってくる。

 

「……ふふっ、どうしたの~?」

 

「あぅ! あ~!」

 

「あははっ、くすぐったいよ~」

 

 ボクが笑いながら声を掛けると、赤ん坊も嬉しそうに笑ってきた。

 

 ……うわぁ。

 

 すっごく可愛いなぁ……。

 

「……ねぇ、彩葉さん」

 

「ん~?」

 

「この子、すっごく可愛いねぇ」

 

「……ふふっ、そうでしょ?」

 

「うん。なんだか、見てるだけでも癒やされるなぁ……」

 

「……いや、めっちゃ懐かれてるじゃん。私が連れてきたんだけどなぁ……」

 

「あははっ、そうだねぇ~」

 

「……なんか、ちょっと納得いかない」

 

 彩葉さんは少し不満そうに呟いてから、白米を口に運んだ。

 

 ボクはその姿を見て小さく笑ってから、赤ん坊へ視線を戻す。

 

「……ねぇねぇ、赤ちゃん」

 

「あぅ?」

 

「ほら、これ握れるかなぁ?」

 

 ボクは赤ん坊の手に、人差し指を近づけた。

 

 すると、赤ん坊はボクの指をギュッと握ってきた。

 

「……おぉ~!」

 

 思っていたよりも、ずっと力強い。

 

 ボクが少し指を動かしてみると、赤ん坊は離すまいとするように、さらに強く握ってきた。

 

「あははっ、そんなに握らなくても逃げないよ~?」

 

「あぅ!」

 

「ふふっ、元気だねぇ」

 

 ボクは赤ん坊の顔を見ながら、ゆっくりと身体を揺らす。

 

 すると、赤ん坊は楽しそうに手足を動かし始めた。

 

「……おやおやぁ?」

 

「あ~! あぅ~!」

 

「そんなに楽しいの~?」

 

「あぅ!」

 

「あははっ、そっかそっかぁ」

 

 ボクは赤ん坊の頭を優しく撫でる。

 

 すると、赤ん坊は気持ちよさそうに目を細めて、ボクの胸元に顔を寄せてきた。

 

 ……うん。

 

 なんだか、不思議な気分だなぁ。

 

 普段は刀を握っていることの方が多いから、こうして誰かを抱きかかえることなんてほとんどない。

 

 しかも、こんなに小さな赤ん坊だ。

 

 ……もし、うっかり落としてしまったらと思うと、少し怖いねぇ。

 

「……大丈夫だよ~。ちゃんと抱っこしてるからねぇ」

 

「あぅ……」

 

「ふふっ、いい子いい子~」

 

 ボクが声を掛けると、赤ん坊は安心したように笑ってきた。

 

 ……あぁ。

 

 これは、駄目だ。

 

 可愛すぎるなぁ……。

 

「……彩葉さ~ん」

 

「……ん?」

 

「ボク、この子のこと大好きになっちゃいそう」

 

「……ぶふっ!?」

 

 彩葉さんは思わず吹き出してしまったようで、慌てて口元を押さえた。

 

「……ちょっ、急に何言ってんの!?」

 

「いやぁ~……だって、こんなに可愛いんだもん」

 

「……いや、分かるけどさぁ……」

 

 彩葉さんは笑いながら、ボクが抱きかかえている赤ん坊を見つめてきた。

 

「……それにしても、意外だなぁ」

 

「ん~? 何が?」

 

「河上くんって、赤ちゃんとか好きだったんだね」

 

「うーん……ボクも初めて知ったよ~」

 

「……自分でも知らなかったんだ」

 

「あははっ、そうみたい~」

 

 ボクがそう返すと、彩葉さんは呆れたように笑った。

 

 ……まぁ、実際に自分でも驚いているんだけどねぇ。

 

 今まで赤ん坊と触れ合う機会なんてほとんどなかったし、こんなに可愛いと思うなんて予想してなかったから。

 

「……あぅ……」

 

「ん~? どうしたの?」

 

 赤ん坊はボクの服を掴んでから、顔を見上げてきた。

 

 そして、ニコッと笑ってくる。

 

「……ふふっ、可愛いねぇ」

 

 ボクは赤ん坊の頬を指先で優しく撫でた。

 

 すると、赤ん坊は嬉しそうに声を上げて、ボクの指を再び握ってきた。

 

「……おっ、また握ってくれるの?」

 

「あぅ~!」

 

「あははっ、ありがとねぇ」

 

 そのまま赤ん坊と遊んでいると、彩葉さんが箸を止めてこちらを見つめていた。

 

「……ねぇ、河上くん」

 

「ん~?」

 

「……なんか、すっごい楽しそうだね」

 

「そうかなぁ?」

 

「うん。さっきからずっとニコニコしてるし」

 

「あははっ、そっかぁ~」

 

「……ふふっ。でも、分かる気がする」

 

 彩葉さんは小さく笑ってから、赤ん坊を見つめる。

 

「……赤ちゃんって、見てるだけでも可愛いもんね」

 

「そうだねぇ」

 

「……まぁ、さっきみたいに泣かれると困るけど」

 

「あははっ、確かに~」

 

 ボクが笑っていると、赤ん坊は小さな手を伸ばしてきた。

 

 そして、ボクの頬にもう一度触れてくる。

 

「……ん~?」

 

「……ぱぁ……」

 

「……おや?」

 

 赤ん坊が何かを呟いた気がして、ボクは顔を近づける。

 

「……どうかしたの~?」

 

「……ぱぁ……ぱぁ……!」

 

「……ふふっ、何かお話ししたいのかなぁ?」

 

 ボクがそう尋ねると、赤ん坊は嬉しそうに笑ってきた。

 

「……あぅ!」

 

「あははっ、そっかそっかぁ」

 

 ……うん。

 

 何を言ってるのかは分からないけど、楽しそうで何よりだねぇ。

 

「……ねぇねぇ、赤ちゃん」

 

「あぅ?」

 

「君は、どこから来たのかなぁ?」

 

「……あ~?」

 

「あははっ、分かんないよねぇ」

 

 ボクは小さく笑ってから、赤ん坊の頭を優しく撫でた。

 

 ……それにしても。

 

 この子は、これからどうなるんだろう。

 

 ゲーミング電柱から出てきたなんて、普通では考えられないことだ。

 

 それに、親御さんがどこにいるのかも分からない。

 

 ……もしかしたら、何か事情があるのかもしれないねぇ。

 

「……まぁ、今はゆっくりしてていいからねぇ」

 

「あぅ……」

 

「何か困ったことがあったら、ボク達に教えてねぇ」

 

 ボクがそう伝えると、赤ん坊は嬉しそうに笑ってきた。

 

 そして、ボクの服をギュッと掴んでくる。

 

「……ふふっ、いい子だねぇ」

 

 ボクは赤ん坊の背中を優しく撫でながら、ゆっくりと身体を揺らした。

 

 すると、赤ん坊はボクの胸元に顔を埋めて、安心したように目を閉じる。

 

 ……あぁ、そっか。

 

 赤ん坊って、こんなにも無防備なんだねぇ。

 

 自分では何もできなくて、誰かに守ってもらわないと生きていけない。

 

 ……うん。

 

 ちゃんと守ってあげないとねぇ。

 

「……ん?」

 

 ふと、視線を感じて顔を上げる。

 

 すると、彩葉さんがご飯を食べる手を止めて、こちらを見つめていた。

 

「……彩葉さん、どうかした?」

 

「……いや、なんでもない」

 

「ん~?」

 

「……なんかさ。河上くんって、ほんと変わんないなぁって思って」

 

「……ボクが?」

 

「うん。……一年前から、ずっとそんな感じだよね」

 

「……そうかなぁ?」

 

「そうだよ。……困ってる人がいたら、なんだかんだで放っておけないし」

 

 彩葉さんはそう言ってから、少しだけ笑みを浮かべた。

 

「……ほんと、お人好し」

 

「あははっ、そうかもねぇ」

 

「……まぁ、そこが河上くんらしいんだけどさ」

 

 彩葉さんはそう言ってから、再びご飯を食べ始めた。

 

 ……うん。

 

 そう言われると、なんだか照れくさいなぁ。

 

「……あぅ……」

 

「ん~?」

 

 腕の中の赤ん坊が小さく声を上げる。

 

 ボクが顔を覗き込むと、赤ん坊は眠そうに目を擦ろうとしていた。

 

「……おや、眠くなっちゃった?」

 

「あぅ……」

 

「ふふっ、そっかぁ。じゃあ、寝よっか」

 

 ボクは赤ん坊を抱き直してから、ゆっくりと背中を撫でる。

 

 すると、赤ん坊はボクの服を掴んだまま、安心したように目を閉じた。

 

「……おやすみ~」

 

 ボクは小さく呟いてから、赤ん坊が眠りやすいように抱き直す。

 

 ……さて。

 

 彩葉さんがご飯を食べ終わるまで、もう少しこのままでいよっかなぁ。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「……ごちそうさまでした」

 

「はーい、お粗末様でした~」

 

 数十分ほど経って、彩葉さんはご飯を綺麗に食べ終えた。

 

 ボクは赤ん坊を抱きかかえたまま、空になった食器を眺める。

 

「ふふっ、今日も綺麗に食べてくれたねぇ」

 

「そりゃ美味しいからね。……あぁ~、満足したぁ……」

 

「あははっ、それはよかったぁ」

 

 彩葉さんは満足そうに笑ってから、ボクの腕の中で眠っている赤ん坊を見つめた。

 

「……で、この子のことなんだけど」

 

「うん?」

 

「……とりあえず、色々と必要なもの揃えないとだよね」

 

「そうだねぇ。オムツとかミルクとか、他にも色々ありそうだし」

 

「……あぁ、そうだ。オムツ……」

 

 彩葉さんは何かを思い出したように呟いてから、携帯を取り出した。

 

 そして、何かを調べ始める。

 

「……うわっ、めっちゃ種類あるじゃん……」

 

「ん~? 何が?」

 

「赤ちゃん用品。……オムツだけでもこんなにあるんだ」

 

「へぇ~、そうなんだぁ」

 

「……あっ、サイズもあるんだ。そりゃそうか……」

 

 彩葉さんは携帯の画面を見ながら、難しそうな顔をしていた。

 

 ……うーん。

 

 どうやら、思っていた以上に色々と必要なものがありそうだねぇ。

 

「……ねぇ、彩葉さん」

 

「ん?」

 

「明日って、何か予定ある?」

 

「明日? ……いや、特にないけど」

 

「じゃあ、明日は二人で買い物に行こっか」

 

「……あぁ、なるほど。赤ちゃん用品を買いに行くってことね」

 

「そうそう~。せっかく三連休だしねぇ」

 

「……うん、それがいいかも」

 

 彩葉さんは頷いてから、携帯に視線を戻した。

 

「……じゃあ、明日までに必要なものを調べとくかぁ」

 

「そうだねぇ。ボクも調べておくよ~」

 

「ん、お願い……あぁ~、やること多いなぁ……」

 

「そうだねぇ」

 

 彩葉さんは頭を抱えてから、大きく息を吐いた。

 

 ……うん。

 

 やっぱり、思っていた以上に大変そうだねぇ。

 

「まぁ、今夜は今着てるもので問題ないと思うし、明日は残りを買いに行こっか」

 

「……だね。あと、親御さんのことも調べないと……」

 

「そうだねぇ」

 

 赤ん坊を拾った以上、ちゃんと保護者を探す必要もあるだろう。

 

 それに、普通の赤ん坊なのかどうかも分からない。

 

 ……まぁ、そこは明日から考えていこうかなぁ。

 

「……あっ、そうだ。河上くん」

 

「ん~?」

 

「明日、ちゃんと起きてよ?」

 

「……あははっ」

 

「……いや、笑ってるけどさ。今日も授業中に寝てたじゃん」

 

「うぐっ……」

 

「……まったく。赤ちゃんのお世話するんだから、夜更かしはほどほどにしてよね」

 

「はぁ~い……」

 

 ……うーん。

 

 やっぱり彩葉さんには敵わないなぁ。

 

「……さて、それじゃあボクもそろそろ戻ろっかなぁ」

 

「あっ、そうだった。河上くん、まだご飯食べてないんだよね」

 

「うん。流石にお腹空いちゃったぁ」

 

「……そりゃそうでしょ。ずっと赤ちゃん抱っこしてたんだし」

 

「あははっ、確かに~」

 

 彩葉さんは笑ってから、椅子から立ち上がった。

 

「……じゃ、この子は私が抱っこするね」

 

「うん、お願い~」

 

 ボクは赤ん坊を起こさないように、ゆっくりと彩葉さんに渡そうとする。

 

 ……けれど。

 

「……んぅ……」

 

 赤ん坊はボクの服をギュッと掴んだまま、離そうとしなかった。

 

「……おや?」

 

「……あれ?」

 

 ボクと彩葉さんは顔を見合わせる。

 

 そして、もう一度渡そうとすると……。

 

「……ふぇ……」

 

「……あっ」

 

 赤ん坊は今にも泣き出しそうな顔になってしまった。

 

 ボクは慌てて抱き直してから、赤ん坊の背中を優しく撫でる。

 

「おっとっと……大丈夫だよ~。怖くないからねぇ」

 

「……あぅ……」

 

「ふふっ、よしよし~」

 

 すると、赤ん坊は安心したように大人しくなって、ボクの胸元に顔を埋めてきた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 ……あれぇ?

 

「……河上くん」

 

「ん~?」

 

「……いや、めっちゃ懐かれてるじゃん」

 

「あははっ、そうみたいだねぇ」

 

「……なんで!? 私が連れてきたんだけど!?」

 

「うーん……なんでだろうねぇ?」

 

「……いや、こっちが聞きたいんだけど……」

 

 彩葉さんは呆れたように呟いてから、赤ん坊を見つめた。

 

 ……まぁ、確かに不思議だねぇ。

 

 彩葉さんが連れてきた赤ん坊なのに、ボクの方に懐いてしまうなんて。

 

「……ふふっ、大丈夫だよ~」

 

「……何が?」

 

「彩葉さんのことも、きっと大好きになってくれるって」

 

「……そうかな?」

 

「うん。だって、彩葉さんの歌を聞いたら安心して寝てたでしょ?」

 

「……あぁ、確かに」

 

「だから、大丈夫だよ~」

 

 ボクはそう言ってから、赤ん坊の顔を覗き込む。

 

「……ねぇ、赤ちゃん」

 

「……あぅ?」

 

「そろそろ彩葉さんのところに戻ろっか」

 

「……あ~……」

 

「明日も会えるからねぇ」

 

 ボクがそう伝えると、赤ん坊は少し不満そうな顔をした。

 

 ……うーん。

 

 もしかして、まだ離れたくないのかなぁ。

 

「……ふふっ、また明日もいっぱい遊んであげるよ~」

 

「……あぅ……」

 

「だから、今は彩葉さんと一緒にいてねぇ」

 

 ボクは赤ん坊の頭を優しく撫でてから、ゆっくりと彩葉さんに渡していく。

 

 すると、赤ん坊は少し不満そうな顔をしたものの、今度は大人しく抱っこされてくれた。

 

「……ふぅ、よかったぁ」

 

「……なんか、ほんとに河上くんのこと好きみたいだね、この子」

 

「あははっ、嬉しいけど困っちゃうねぇ」

 

「……まぁ、嫌われるよりはいいんじゃない?」

 

「それはそうだねぇ」

 

 ボクは笑ってから、食器をお盆に載せていく。

 

 そして、玄関へと向かった。

 

「……あっ、河上くん」

 

「ん~?」

 

 不意に呼び止められたので、振り返る。

 

 すると、彩葉さんは赤ん坊を抱きかかえながら、ボクの方を見つめていた。

 

「……今日はありがとね」

 

「……ん?」

 

「……いや、正直助かった。河上くんが来てくれなかったら、もっと大変だったと思うし」

 

「……そっかぁ」

 

「うん。……明日もよろしく」

 

 彩葉さんはそう言ってから、少しだけ笑みを浮かべた。

 

 ……うん。

 

 やっぱり、彩葉さんには笑顔が似合うなぁ。

 

「どういたしまして、彩葉さん」

 

 ボクはそう返してから、軽く手を振った。

 

「それじゃあ、また明日ねぇ」

 

「ん、また明日」

 

「……あぅ~!」

 

 彩葉さんの腕の中にいる赤ん坊も、ボクの方へ小さな手を伸ばしてきた。

 

「ふふっ、君もまた明日ね~」

 

 ボクは笑いながら手を振り返してから、彩葉さんの部屋を後にした。

 

―――――――――――

 

「……いただきま~す」

 

 自分の部屋に戻ったボクは、温め直したサバの味噌煮と味噌汁をテーブルに並べてから、椅子に腰掛けた。

 

 そして、携帯を取り出して赤ん坊のお世話について調べ始める。

 

「……ん~……赤ちゃんのお世話、ねぇ……」

 

 検索すると、想像以上にたくさんの情報が出てきた。

 

 ミルクの与え方、オムツの替え方、抱っこの仕方に寝かせ方……。

 

 他にも、気を付けなきゃいけないことが色々とあるみたいだ。

 

「……うわぁ~、これは大変だなぁ」

 

 ボクはサバの味噌煮を口に運びながら、画面をスクロールしていく。

 

 赤ん坊の月齢によって必要なものも違うみたいだし、まずはあの子がどれくらいの月齢なのか確認した方がよさそうだねぇ。

 

 ……そもそも、ゲーミング電柱から出てきた赤ん坊って、何なんだろう。

 

「……ん~……」

 

 ボクは箸を止めて、少しだけ考える。

 

 普通に考えれば、電柱から赤ん坊が出てくるなんてあり得ない。

 

 でも、彩葉さんが嘘を吐いているようには見えなかったし……。

 

 ……まぁ、いっか。

 

「考えても分かんないしねぇ」

 

 そう呟いてから、再びご飯を食べ始める。

 

 とりあえず、今はあの子のお世話をどうするか考える方が大事だ。

 

 それに、あの子がどこから来たのかも、ちゃんと調べなきゃいけないだろうしねぇ。

 

「……ふむふむ、なるほどぉ」

 

 携帯の画面には、赤ん坊を寝かせる時の注意点が書かれていた。

 

 どうやら、寝かせる時は仰向けにして、周りに柔らかいものを置かない方がいいらしい。

 

 他にも、ミルクを飲ませる時の姿勢や、飲み終わった後の注意点なんかも書かれている。

 

 ……うん、覚えることが多いなぁ。

 

「……彩葉さん、一人だったら大変だっただろうなぁ」

 

 ふと、そんなことを考える。

 

 普段から忙しい彩葉さんが、赤ん坊のお世話まで一人でやることになったら……。

 

 ……うん、間違いなく倒れちゃうねぇ。

 

 そう考えると、やっぱり手伝うことにしてよかった。

 

「……よしっ」

 

 ボクは携帯に必要な情報をメモしてから、残っていたご飯を食べ終える。

 

「ごちそうさまでした~」

 

 食器を片付けてから、彩葉さんにも調べたことを送っておく。

 

 すると、すぐに返信が返ってきた。

 

『ありがと! こっちも色々調べてる』

 

「……ふふっ」

 

 ボクは小さく笑ってから、『あんまり無理しないでねぇ』と返信する。

 

 すると、すぐにもう一度返信が届いた。

 

『それ、河上くんが言う?』

 

「……あははっ」

 

 ……まぁ、そうだよねぇ。

 

 今日も授業中に寝ちゃったし。

 

 ボクは『今日はちゃんと寝るよ~』と返信してから、携帯をテーブルに置いた。

 

 ……さて。

 

 いつもだったら、この後はツクヨミに入って誰かと斬り合いをしている時間だ。

 

 昨日も……というより、今日の午前四時まで遊んでしまったからねぇ。

 

「……う~ん、今日はやめとこっかなぁ」

 

 流石に、また夜更かしするわけにはいかない。

 

 明日は彩葉さんと買い物に行く予定もあるし、赤ん坊のお世話だって手伝わなきゃいけない。

 

 それに……。

 

「……ふあぁぁ……」

 

 大きな欠伸が出てしまった。

 

 ……うん、眠い。

 

 ボクは携帯を充電器に繋いでから、ベッドに寝転がる。

 

「……それにしても、赤ちゃんかぁ……」

 

 天井を見上げながら、今日の出来事を思い返す。

 

 突然、彩葉さんが赤ん坊を抱きかかえていたのには驚いた。

 

 しかも、ゲーミング電柱から拾ったなんて言うんだから……。

 

「……ふふっ、面白いこともあるもんだねぇ」

 

 ボクは小さく笑ってから、ゆっくりと目を閉じる。

 

 思い返すのは、赤ん坊がボクの指を握ってきた時のこと。

 

 あんなに小さな手なのに、思っていたよりも力強くて……。

 

 それに、笑った顔も可愛かったなぁ。

 

「……明日も、元気だといいなぁ……」

 

 そんなことを呟きながら、ボクの意識はゆっくりと夢の世界へと沈んでいった。

 

 ……あぁ、そういえば。

 

 あの子って、男の子なのかなぁ。女の子なのかなぁ。

 

 ……まぁ、明日聞いてみればいっか。

 

 おやすみなさぁい……。




はい、読んでいただきありがとうございました。

一応更新は週に2回程度にしようと考えております。感想・評価・誤字報告などお待ちしております。

では、また次の話の時に。
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