翌日の昼、ハッザーンは団員を全員、倉庫の跡に集めた。
二十人の男たちが、半円を描いて立つ。その中心に、ハッザーンが立っていた。セネトは、いつものように輪の一番外側にいた。
「依頼主から、催促が来た」
ハッザーンが、低い声で言った。
「秘聞の館を、今夜潰す。館の中にある帳面、手紙、情報の記録は、全部焼け。依頼主は、この町の裏を握る女が邪魔らしい。……報酬は、十分に出るそうだ」
団員たちの間に、ざわめきが広がった。何人かが、曲刀の柄を握りしめた。
ハッザーンの目が、輪の外側に向けられた。
「セネト」
セネトは、顔を上げた。
「お前が行け。正面は他の者たちが引きつける。お前は、裏口から入れ」
「……分かった」
「そして」
ハッザーンは、そこで一度、言葉を切った。
団員たちが、静まり返った。誰もが、首領の次の言葉を待っていた。
「館の女主人を、討て」
風が、止んだ気がした。
セネトの体が、凍りついた。
館の女主人。
ハッザーンは、名前を口にしなかった。誓約を、一文字も破らなかった。秘聞の館の女主人、と。この町の誰もが知っている呼び名で、ただ、それだけを。
うなじの焼き印が、脈打ち始めた。
誓約は、こう結ばれていた。セネトは、生涯、団の剣として、首領の命に従う。
首領が、命じたのだ。
「……ハッザーン」
セネトの声が、掠れた。
「他の命令にしてくれ。館は潰す。帳面も焼く。でも、それだけは――」
焼けた。
言い終わる前に、うなじの蛇が、焼けた。拒もうとした、ただそれだけで。皮膚の下で、蛇がとぐろを巻き、首筋を締めつけてくる。息が詰まる。セネトは膝をつきかけて、かろうじて踏みとどまった。
団員たちが、息を呑んだ。
ハッザーンは、表情を変えなかった。
「誓約を忘れたか、セネト」
「……忘れて、ない」
「なら、命に従え。お前は、俺たちの剣だ」
ハッザーンは、輪の中を歩いて、セネトの前に立った。見下ろす。切れ長の目に、冷たい光が宿っていた。
「心配するな。俺は、誰の名も口にしていない。誓約は守っている。……守っていないのは、お前のほうだろう?」
セネトは、何も言えなかった。
蛇の熱が、ゆっくりと引いていく。拒むのをやめたからだ。命令を受け入れた、と蛇が判断したからだ。
ハッザーンは、背を向けた。
「日が沈んだら、出る。それまで、各自準備しておけ」
◇
セネトは、野営地の外れで、曲刀を研いでいた。
しゃっ、しゃっ、と。砥石の上を刃が滑る。手が、震えて、何度も刃の角度がずれた。
遠くから、団員の誰かが、こちらを見張っているのが分かった。ハッザーンの命令だろう。逃げないように。館に知らせに走らないように。
手紙は、書けない。
書いて渡す相手もいない。見張りの目を盗んで、町まで走ることもできない。
――いや。
セネトの手が、止まった。
外套の内側の布袋に、指を入れる。昨夜彫り上げたばかりの駒が、一つ。
野営地の端を、町の子供が一人、通りかかった。この前、手紙を届けてくれた男の子だ。薪拾いの帰りらしく、小さな背中に枯れ枝の束を背負っている。
セネトは、何気ないふうを装って、男の子に手招きをした。
「やあ。この前は、ありがとう」
「あ、お兄さん! またお手紙?」
「いや。今日は、手紙はないんだ」
セネトは、男の子の手のひらに、駒を一つだけ乗せた。それから、飴を一つ。
「これを、秘聞の館のお姉さんに届けてくれるかい。何も言わなくていい。渡すだけでいいから」
「これだけ?」
「これだけ」
男の子は、不思議そうに首をかしげたが、飴をもらってうれしそうに駆けていった。
見張りの団員が、ちらりとこちらを見た。子供に飴をやるのは、セネトの悪い癖だと、団の誰もが知っている。見張りは、すぐに目を逸らした。
セネトは、研ぎかけの曲刀に視線を戻した。
手紙のない、駒だけ。
何年も、手紙に添えて送ってきた駒。それが、一つだけで届く。
――ネフィなら、分かる。
分かってくれ、と、セネトは祈った。
それから、刃を研ぐ手に力を込めた。
刃ではなく、峰のほうを。
◇
夕暮れ時、旅人とパイモンは、秘聞の館に呼び出された。
カウンターの上に、木彫りの駒が一つ、ぽつんと置かれていた。手紙は、なかった。
「今日の昼過ぎに、届いたんだ」
ネフェルが、駒を指先でつまみ上げた。
「いつもの坊主が持ってきた。手紙はなし。何も言わずに、これだけ渡せって頼まれたそうだ」
「手紙がないのか? じゃあ、どういう意味なんだ?」
パイモンが、首をかしげた。
ネフェルは、駒を手のひらの上で転がした。
「何年も、手紙に駒を添えて送ってきた男が、駒だけを寄越した。手紙を書けない状況にいるってことさ。見張られてるか、書く時間もないか。……それでも、何かを伝えなきゃいけなかった」
ネフェルは、窓の外の暮れなずむ空を見た。
「今夜だよ。砂鱗団が、来る」
ヤフォダが、ごくりと喉を鳴らした。
「姐さん。あたい、町の子供たちを家に帰しとく。館の周りにいると危ねえから」
「頼むよ」
ヤフォダが飛び出していくと、ネフェルは旅人に向き直った。
「旅人。正面を頼めるかい。連中は、たぶん正面から騒いで、注意を引きつける。本命は裏口から来る」
旅人は、うなずいた。それから、ネフェルに聞いた。裏口には、誰が行くのか、と。
ネフェルは、少しだけ笑った。
「あたしは、奥の部屋で待ってるよ。裏口から来る男は、きっとあそこへ来るから」
◇
日が沈んで、一刻ほど経った頃だった。
館の正面の通りに、松明の灯りが一斉に現れた。
砂色の外套の男たちが、十人以上。曲刀を抜き放ち、館の扉に向かって突進してくる。
「来たぞ、旅人!」
パイモンが叫んだ。
旅人は、剣を抜いて扉の前に立った。戻ってきたヤフォダが、その隣に並ぶ。腰の小さな装置が、かちりと音を立てて起動した。
「へっ、秘聞の館に正面から殴り込みとは、いい度胸じゃねえか!」
戦いは、激しかった。
砂鱗団の男たちは、砂漠の戦を生き抜いてきた傭兵だった。曲刀の扱いは荒々しく、けれど無駄がない。旅人とヤフォダは、背中合わせで、次々と襲いかかってくる刃を受け止めた。
三人目を倒したとき、旅人は気づいた。
正面の連中は、本気で館に押し入ろうとしていない。騒いで、暴れて、こちらを扉の前に釘付けにしているだけだ。
――本命は、裏口。
「ヤフォダ、ここ頼めるか!」
パイモンが、旅人の代わりに叫んだ。ヤフォダが、にやりと笑った。
「任せとけ! 姐さんのところへ行ってくれ!」
旅人は、館の脇の路地へ駆け込んだ。
◇
館の裏手の、小さな中庭だった。
月明かりの中に、黒い外套の男が立っていた。
曲刀を抜いて、裏口の扉へ向かって歩いていく。足取りは、重かった。一歩ごとに、何かに引きずられているように。
旅人は、男の前に立ちはだかった。
セネトが、足を止めた。
残された右目が、旅人を見た。それから、パイモンを見た。
「……どいてくれ」
静かな声だった。
「頼む。どいてくれ」
旅人は、動かなかった。
セネトの肩が、小さく震えた。うなじのあたりが、月明かりの中で、ほのかに赤く光っていた。焼き印だ。何かに反応して、熱を帯びている。
「……ごめん」
セネトが、動いた。
速かった。
曲刀が、水を纏って、弧を描く。旅人は剣でそれを受けた。重い。腕が痺れるほどの衝撃が来た。けれど――
刃ではなかった。
峰だった。
セネトは、峰で打ってきていた。水の刃も、斬るためではなく、弾き飛ばすためだけに振るわれていた。
旅人は、反撃した。セネトはそれを紙一重でかわし、また峰で打ち返してくる。舞うような足さばき。外套の裾が翻るたびに、水の帯が月明かりにきらめいた。
「あいつ、手加減してるぞ!」
パイモンが、叫んだ。
「本気なら、旅人がもう斬られてる! あいつ、わざと峰で――」
正面の騒ぎを片付けたヤフォダが、路地から駆け込んできた。
「旅人、加勢するぜ!」
ヤフォダの装置から、小さな機械の猫が二匹、勢いよく飛び出した。セネトの足元に絡みつこうとする。
セネトは、水の刃を一閃させた。機械の猫は、壊されなかった。ただ、ふわりと水の膜に包まれて、ころころと地面を転がっていった。
「なっ……あたいのを、無傷で……!」
ヤフォダが、目を丸くした。
セネトは、旅人の剣を峰で弾き上げた。旅人の手から、剣がわずかに浮く。その一瞬の隙に、セネトは旅人の脇をすり抜けた。
裏口の扉の前で、セネトは一度だけ振り返った。
「……ありがとう。止めようとしてくれて」
それから、扉を開けて、館の中へ消えていった。
旅人は、すぐに後を追おうとした。
その背中に、パイモンがしがみついた。
「待て、旅人! ……あいつの顔、見たか?」
旅人は、足を止めた。
「あいつ、泣いてたぞ」
月明かりの中で、パイモンの声が、小さく震えていた。
◇
奥の部屋で、ネフェルは盤の前に座っていた。
蝋燭が一本。アシュルは、ヤフォダに預けて二階へ上げた。部屋の中にいるのは、ネフェルと、盤と、何年も前から動かない駒たちだけだった。
正面の騒ぎが、壁越しに聞こえていた。刃の打ち合う音。怒号。ヤフォダの威勢のいい声。それが、少しずつ静かになっていく。
裏口の扉が、開く音がした。
足音が、廊下を近づいてくる。重い足音だった。一歩ごとに、何かを引きずるように。
奥の部屋の扉の前で、足音が止まった。
「……開いてるよ」
ネフェルは、盤から目を上げずに言った。
扉が、ゆっくりと開いた。
セネトが、立っていた。
抜き身の曲刀を、右手に下げていた。刃先から、水滴がぽたぽたと床に落ちている。黒い外套は、ところどころ裂けていた。旅人とやり合ったのだろう。
うなじが、赤く光っていた。
焼き印が、熱を帯びて脈打っている。束ねた髪の隙間から、その光が漏れ出していた。蛇が、皮膚の下でのたうっているのが、ここからでも分かった。
「来たね」
ネフェルは、ようやく顔を上げた。
セネトの右目が、ネフェルを見ていた。濡れていた。月明かりのせいではなかった。
「……ネフィ」
声が、震えていた。
「逃げてくれ。今からでいい。裏口から出て、旅人のところへ――」
「逃げないって、言ったろ」
ネフェルは、ゆっくりと立ち上がった。
法器は、手に取らなかった。匣も、棚の奥にしまったままだった。何も持たずに、ただ、盤の前に立った。
「命令されたんだろう? 秘聞の館の女主人を討て、って」
セネトの顔が、歪んだ。
「名前は口にしていない。誓約は守っている。……ハッザーンも、なかなかやるね。あたしでも、同じ手を使ったかもしれない」
「笑い事じゃない!」
セネトが、叫んだ。
初めて聞く声だった。アアル村の焚き火の傍らでも、砂漠の夜でも、この男がこんなふうに声を荒げたことは、一度もなかった。
「命令に逆らえば、蛇が締めつける。従えば、君を斬ることになる。……どっちにしても、もう、どうにもならないんだ」
セネトの手の中で、曲刀が震えていた。
蛇が、命じていた。斬れ、と。首領の命に従え、と。焼き印の熱が、うなじから腕へ、腕から指先へと這い下りて、曲刀の柄を握る手を、無理やり持ち上げようとしていた。
セネトの腕が、ゆっくりと上がっていく。
本人の意志とは、関係なく。
ネフェルは、それを見ていた。
そして――両手を、広げた。
盤の前で。何年も動かない駒たちを背にして。胸を、無防備に晒して。
「斬りな」
静かな声だった。
「あんたになら、構わない」
セネトの目が、見開かれた。
「何を、言って――」
「あたしの罪だ。あの夜の血は、あたしが流させた。ハッザーンの親父の首も、イアブ族の戦士たちも、ウヌ族の女や子供も。……あんたがその代価を何年も払ってきたなら、最後の一太刀くらい、あたしが受けて当然だろう?」
ネフェルは、笑った。
いつもの涼しい笑みではなかった。昔、アアル村の焚き火の傍らで、初めて負けたときに浮かべた、悔しそうで、それでいてどこか嬉しそうな、あの笑みだった。
「それに、あんたの剣なら、きっと痛くない」
曲刀が、振り上げられた。
蝋燭の灯りが、刃に反射して、ぎらりと光った。
うなじの蛇が、勝ち誇ったように、赤く燃え上がった。
ネフェルは、目を閉じなかった。
翠色の瞳で、まっすぐに、セネトの右目を見つめていた。覗くためではなかった。ただ、最後まで、この男の顔を見ていたかった。
刃が、止まった。
ネフェルの額の、指一本分手前で。
セネトの腕が、震えていた。肩が、背中が、全身が、がたがたと震えていた。歯を食いしばった口元から、血が一筋、顎へと伝った。
「……できるわけ、ないだろ」
掠れた声だった。
「僕が、何のために……何年も、何のために……」
セネトは、曲刀を、横に投げ捨てた。
盤から離れた、部屋の隅へ。刃が床を滑って、壁にぶつかって止まった。盤の上の駒は、一つも動かなかった。
その瞬間だった。
うなじの焼き印が、爆ぜるように燃え上がった。
◇
セネトの喉から、声にならない声が漏れた。
焼き印が、赤く、赤く、燃えていた。もう、皮膚の下に収まっていなかった。黒い炎のような何かが、うなじから這い出して、セネトの首に巻きついていく。とぐろを巻く蛇の形をして。
蛇が、締めつけた。
セネトの膝が、崩れた。両手で首を掻きむしる。けれど、指は蛇をすり抜けた。蛇は、肉の外にいて、同時に肉の内にいた。誓約の呪いそのものだった。
「セネト!」
ネフェルは、駆け寄った。
床に倒れ込むセネトの体を、両腕で抱きとめる。重かった。昔、アアル村で、熱を出して倒れたこの男を背負って長老の家まで運んだことがある。あの頃より、ずっと重かった。
首に巻きついた蛇に、手を伸ばす。触れた瞬間、指先が焼けるように熱くなった。それでも、ネフェルは手を離さなかった。草の元素の力を込めて、蛇を引き剥がそうとする。
蛇は、びくともしなかった。
誓約の根は、命そのものに張っている。ラウマの言葉が、頭の中で響いた。外から剥がせるものではないのだ。
セネトの顔から、血の気が引いていく。唇が、紫色に変わっていく。残された右目が、焦点を失いかけていた。
「……ネ、フィ」
掠れた声が、漏れた。
「いい、んだ……これで……」
「よくない!」
ネフェルは、叫んだ。
北の大陸情報網のボスが。秘聞の館の女主人が。声を荒げたことなど、この何年、一度もなかった。
「よくないよ、セネト! あんた、何のためにここまで――」
扉が、開いた。
旅人とパイモンが、駆け込んできた。その後ろに、ヤフォダ。それから――
「そこまでだ」
低い声がした。
旅人たちの背後の廊下に、ハッザーンが立っていた。抜き身の曲刀を下げて。その後ろに、砂鱗団の男たちが数人。正面で倒されたはずの男たちも、何人か混じっていた。
旅人が、剣を構えた。ヤフォダも、装置に手をかけた。
ハッザーンは、それを一瞥しただけで、部屋の中に入ってきた。ネフェルの腕の中で、蛇に締めつけられているセネトを見下ろす。
表情は、変わらなかった。
「やはりな」
ハッザーンは、静かに言った。
「斬れなかったか」
「……あんた、こうなると分かってて命じたのかい」
ネフェルが、ハッザーンを見上げた。翠色の目が、燃えていた。
ハッザーンは、答えなかった。代わりに、セネトの首に巻きついた蛇を指さした。
「誓約に背けば、蛇がこいつを締め殺す。止める方法は一つだけだ。こいつを俺たちのところへ連れ帰り、改めて誓約に従わせる。そうすれば、蛇は鎮まる」
ハッザーンは、ネフェルの目をまっすぐに見下ろした。
「選べ、女主人。ここでこいつを抱いたまま、死ぬのを見届けるか。それとも、俺に渡すか」
部屋の中が、静まり返った。
セネトの喉が、ひゅう、と細い音を立てた。息が、もうほとんど通っていなかった。
ネフェルは、腕の中の男を見下ろした。
残された右目が、かすかに開いていた。ネフェルを見ていた。何か言おうとして、唇が動いた。声は、出なかった。
けれど、ネフェルには分かった。
――いいんだ。
ネフェルは、唇を噛んだ。血の味がした。
それから、ゆっくりと、腕をほどいた。
ハッザーンの部下が二人、セネトの体を両脇から抱え上げた。ハッザーンが、セネトのうなじに手をかざして、短く何かを唱えた。砂漠の古い言葉だった。
蛇の締めつけが、ほんの少しだけ緩んだ。セネトの喉が、大きく息を吸い込んだ。けれど、目は開かなかった。気を失ったまま、だらりと首を垂れていた。
「行くぞ」
ハッザーンが、部下たちに命じた。
旅人が、一歩踏み出した。ハッザーンは、振り返らずに言った。
「手を出すなら、こいつの蛇をもう一度締め上げる。……それでもいいならな」
旅人の足が、止まった。
ハッザーンたちが、セネトを連れて部屋を出ていく。
扉のところで、ハッザーンが一度だけ足を止めた。
振り返る。ネフェルを見る。切れ長の目が、まっすぐに、彼女の翠色の目を捉えた。
「次は、お前が来い」
静かな声だった。
「俺は、誰の名も口にしない。誓約は守る。……名を口にせずに、待っていてやる」
それだけ言って、ハッザーンは闇の中へ消えていった。
◇
部屋の中に、静寂が戻った。
パイモンが、何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。ヤフォダは、両手で口を押さえて、立ち尽くしていた。
ネフェルは、床に膝をついたままだった。
腕の中には、もう誰もいなかった。指先に、蛇の熱で焼けた痕が残っていた。
部屋の隅に、曲刀が転がっていた。
セネトが投げ捨てた、砂漠の曲刀。刃ではなく、峰のほうだけが、丁寧に研がれていた。
ネフェルは、這うようにしてそれに近づいた。両手で、拾い上げる。重かった。柄に、まだ、あの男の手の温もりが残っていた。
ネフェルは、曲刀を胸に抱きしめた。
背後で、盤の上の駒が、蝋燭の灯りの中に静かに佇んでいた。
一つも、動いていなかった。
あの男は、最後の最後まで、この盤を守ったのだ。
今後の方針
-
今迄みたいにぴったり10話で本編まとめて
-
5話くらいでポンポンいろんなキャラ書いて