デスノイフ 月がリュークに名前書かれる直前から   作:never learns

2 / 2
エピローグ「神の気まぐれと、新世界の神」

 

 

 

ホテルの一室。

 

ドアが開き、夜神月が入ってきた。

 

「ライト!」

 

弥海砂は待ちわびたように駆け寄り、月に抱きついた。

 

「もう! 遅いよ! ずっと心配してたんだから!」

 

「ごめん、ミサ。ちょっと事情があってね」

 

月は苦笑しながら海砂を抱き止めた。

 

「でも、無事でよかったぁ……」

 

「心配をかけたね」

 

しばらくして、海砂は月から離れた。

 

「そういえばライト、聞いてほしいことがあるの」

 

「何だい?」

 

「さっきね、変な人が話しかけてきたの。姿は見えないのに声だけ聞こえて……ライトは無事だって教えてくれたんだよ」

 

「……やっぱり君にも接触したのか」

 

「え? ライトも知ってるの?」

 

「ああ。僕を助けた存在だよ」

 

月は倉庫で起きた出来事を説明した。

 

L、ニア、そして捜査関係者たちが全員死亡し、自分だけが生かされたこと。

 

あの存在が自分を必要だと断言したこと。

 

海砂は驚きながら聞いていた。

 

「すごい人なんだね……」

 

「人かどうかもわからないけどね」

 

「ねえ、ライト。その人って何者なの?」

 

「自分では超常の存在だと言っていたよ」

 

「超常の存在……」

 

「僕にも正体はわからない。ただ、死神ですら姿を認識できなかったらしい」

 

「へえ……」

 

海砂は少し考えた後、ふと思い出したように尋ねた。

 

「ところでライト。さっきから気になってたんだけど、デスノートって何?」

 

月の動きが止まった。

 

「……ミサ?」

 

「え? 何?」

 

「デスノートを知らないのかい?」

 

「うん。ノートでしょ? 何かの本?」

 

月は海砂の顔をじっと見つめた。

 

どうやら、彼女は本当に知らないらしい。

 

「そうか……」

 

月は少し考えた。

 

そして、テーブルの上に置いてあった黒いノートを手に取った。

 

「これはデスノートというものだ。名前を書かれた人間が死ぬ」

 

「ええっ!? なにそれ!?」

 

「死神が人間界に落としたノートでね。僕はこれを使って犯罪者を裁いてきた」

 

「犯罪者を……?」

 

「ああ」

 

月はノートを海砂に差し出した。

 

「触ってみるかい?」

 

「うん!」

 

海砂がノートに触れた瞬間。

 

「……あ」

 

彼女の目が見開かれた。

 

頭の中に、次々と記憶が蘇っていく。

 

死神レム。

 

ジェラス。

 

死神の目。

 

そして、自分自身がデスノートを使っていたこと。

 

「……あ、ああ……!」

 

海砂は頭を押さえた。

 

「そうだ……ミサ、知ってる……」

 

「思い出したのかい?」

 

「ライト……!」

 

海砂は月を見上げた。

 

「ライトが……キラだったんだね!」

 

月は静かに頷いた。

 

「ああ。僕がキラだ」

 

「そうだ……ミサは第二のキラだった……! レムも……レムもいた……!」

 

彼女の目に涙が浮かんだ。

 

「レム……」

 

もういない死神。

 

自分を守るために命を捨ててくれた存在。

 

海砂はしばらく黙っていた。

 

「ミサは……全部思い出したよ」

 

「そうか」

 

月は優しく微笑んだ。

 

「今までのことも、僕たちのこともね」

 

「うん!」

 

海砂は月に抱きついた。

 

「ライト! ミサ、ずっとライトの味方だからね!」

 

「ありがとう、ミサ」

 

 

 

 

 

「ところで、ライト」

 

「何だい?」

 

「どうして今までミサにキラのことを話さなかったの?」

 

「君の記憶がなかったからね。無理に思い出させる必要もないと思ったんだ」

 

「そっか……」

 

海砂は少し考えてから笑った。

 

「でも、これで全部わかったよ。ライトがキラとして世界を変えようとしてたことも!」

 

「ああ」

 

月は窓の外を眺めた。

 

「Lもニアも、もういない。僕を追う者は誰もいないんだ」

 

「じゃあ、これからはずっと一緒にいられるね!」

 

「そうだね」

 

「えへへ。楽しみ!」

 

月は海砂の頭を撫でた。

 

彼女は自分の正体を知っている。

 

それでも自分を支持している。

 

今度こそ、邪魔者はいない。

 

そして、月はこれからもキラとして世界を変えていく。

 

 

 

 

 

 

 

完全なるキラ世界

 

 

 

 

 

 

 

それから数か月。

 

世界はかつてない変貌を遂げていた。

 

犯罪率は急激に低下。

 

殺人、強盗、誘拐、強姦、組織犯罪。

 

あらゆる犯罪が減少し、世界各国で治安が改善していった。

 

キラの存在を恐れる犯罪者たちは、犯罪を犯すこと自体を躊躇するようになった。

 

一方、キラを支持する人々は増え続けた。

 

「キラこそ正義だ!」

 

「キラのおかげで安心して暮らせる!」

 

「犯罪者に人権など必要ない!」

 

そんな声が世界各地で上がる。

 

キラを神と崇める者たちも現れた。

 

各国政府も、もはやキラを無視できなくなっていた。

 

キラを否定することは、国民の支持を失うことにつながる。

 

そして、キラを追うための国際的な捜査体制は完全に崩壊していた。

 

Lもニアもいない。

 

彼らに代わる存在も現れない。

 

何より、キラを追跡することそのものが、世論から支持されなくなっていた。

 

犯罪者が裁かれる世界。

 

犯罪を犯さない人間が安心して暮らせる世界。

 

少なくとも、多くの人々はそう信じていた。

 

そして、その世界の中心には一人の男がいた。

 

夜神月。

 

新世界の神、キラである。

 

 

 

 

 

 

 

新世界の神

 

 

 

 

 

 

 

ある日の夜。

 

月と海砂は一緒にテレビを見ていた。

 

画面には、世界各地でキラを称賛する人々の姿が映っている。

 

「キラ様、万歳!」

 

「キラこそ真の正義!」

 

「犯罪のない世界をありがとう!」

 

海砂は嬉しそうに月の腕に抱きついた。

 

「すごいね、ライト! 世界中の人がライトを認めてるよ!」

 

「ああ」

 

月は満足げに微笑んだ。

 

「ようやく僕の理想が実現したんだ」

 

「ライトは本当に神様になったんだね!」

 

「神様か……」

 

月は窓の外を眺めた。

 

かつては、自分が新世界の神になると誓っていた。

 

そのためにデスノートを使い、敵と戦い、最後には追い詰められた。

 

だが、今は違う。

 

自分を追い詰める者はいない。

 

自分を裁こうとする者もいない。

 

そして、自分の存在を肯定する超常の存在までいる。

 

そのとき。

 

「新世界、そして新世界の神の成就。おめでとう」

 

聞き覚えのある声が響いた。

 

「君か」

 

月は笑みを浮かべた。

 

「わっ! あの人!」

 

海砂も声の主に気づいた。

 

「久しぶりだな、キラ。お祝いの言葉をいいに来たよ」

 

「ありがとう。おかげさまでね。君には感謝しているよ」

 

「なに、気にするな。必要な人間を必要なときに生かしただけだ」

 

「これからも僕を見守ってくれるのかい?」

 

「さてな。気が向いたらまた顔を出すかもしれん。だが甘えるなよ。あれは特例中の特例だ。あんなのは一生に一度あるかないかだ」

 

「仰せの通りで」

 

 

 

月はお辞儀した

 

 

 

 

月は少し考えた後、尋ねた。

 

「一つ聞きたいことがある」

 

「何だ?」

 

「君は一体何者なんだ?」

 

「お前たちの世界の理屈で説明できる存在ではない。まあ、強いて言えば……上位存在とでも言っておこうか」

 

「上位存在?」

 

「人間にとっての上位存在は神だろう? 私はそれより上の存在だ。少なくともこの世界ではな」

 

月は慄いた。

 

「なんと……。……今までの非礼をお詫びしますと言った方がよろしいでしょうか?

 

「クックッ。気にするな。所詮私の存在は神や死神以上の完全なイレギュラーだしな。ではそろそろ行く。せいぜい足をすくわれんことだな」

 

 

 

声は消えた。

 

 

 

 

海砂は月の腕に抱きついたまま、楽しそうに笑った。

 

 

 

「ねえ、ライト。あの人って面白い人だね!」

 

 

 

「そうだね」

 

 

 

「また会えるかな?」

 

 

 

「どうだろうね。というか正確には会ってないけどね」

 

 

 

月はテレビに目を戻した。

 

 

 

画面にはキラを称賛する人々の姿が映っている。

 

 

 

「でも、もう僕たちに敵はいない。しかしリューク。楽しいもの好きが上位様とのやり取りの時はやけに静かだったんじゃないか」

 

 

 

リュークが愉快そうに笑った。

 

 

 

 

「ククク……。これでも少しは空気読むんだぜ。向こうから話しかけてこない限り、こちらからは茶々は入れねえよ。しっかし神や死神以上ときたか……。クックックッ。次の機会があれば、今度は俺も少しばかりおもてなしさせてもらおうかな。……なんにせよ退屈しない世界になりそうだぜ」

 

 

 

月は海砂の肩を抱き寄せた。

 

 

 

「この世界は、僕が守る」

 

 

 

 

 

こうして、夜神月は新世界の神となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇足:超常ちゃんのその後

 

 

 

 

 

 

「いやー、めでたしめでたし!」

 

どこかの世界のどこかの場所。

 

超常ちゃんは満足げに頷いていた。

 

「やっぱり主人公が勝つエンディングはいいものだな!」

 

彼はデスノートの世界を振り返る。

 

「しかし、あの世界もなかなか面白かった。さて、次はどの作品に行こうか」

 

彼の手には、また別の物語へ入り込むための道具があった。

 

「今度は誰を勝たせてやろうかな!」

 

超常ちゃんの気まぐれに、終わりはない。

 

 

 

 

 

完

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。