現代ダンジョンものとはどこまで現代によっていればいいのかたまにわからなくなる。
現代から未来でも現代ダンジョンとしてもいいのだろうか。あと世界崩壊してるけどいいのだろうか。
様々な疑問抱きつつ初投稿です。
目を覚ました時俺こと『近衛ミナト』が感じたのは鈍い痛みだった。頭を抑えて震える脚に鞭打って立ち上がってみればそこは暗い洞窟の中。何があったのかと周囲を見渡せば大体5m程度の崖が上にあるのに気付く。
「あそこから落ちたのか……」
どうにも記憶が混濁して確証はないのだがそれが間違いないことは全身の痛みが教えてくれる。関節を守る防具と頭にヘルメットをかぶっていたおかげで死ぬことはなかったのは不幸中の幸いと言うべきなのか。
しかし、そもそもの問題として何故こんな所にいるのかという疑問が浮かぶ。俺は昨日、いつものようにゲームを周回し終えて眠りについて――――。
「いや、おかしいだろ。俺は今日『ダン総』の入試を受けに来て……」
そこでようやく違和感の正体に気付く。脳に二人分の記憶がある。名前こそ同じ『近衛ミナト』だが生きてきた年月もその過程も似ても似つかない二人の人間の記憶。しかもそのどちらも俺自身の物だと断言できるくらいには違和感はない。
「転生、って奴か……?ゲームではあんまり見ない展開だが、ライトノベルではここ最近よくある話……だったか」
転生、それが自分の身に起きている事象だと仮定する。これを証明する方法などないのでこれはもう置いておいた方がいいだろう。今すべきことは現状の確認だ。痛む頭をこねくり回して何が起きたかを思い出す。
そして思い出したのはあまりに情けない少年のこの世界でのあれこれだった。実家がダンジョン関連の大企業の一つであり、俺はその次男だった。家柄を笠に着て悪行三昧は流石にしていないがその一歩手前まで行きそうだった。
「ミナト。お前は『ダンジョン総合活動学園』に行け。そこでダンジョンについての知識を蓄えろ。出来なければ家の敷居をまたぐことは許さん」
兄にそう言われ家を蹴りだされたことも思い出せる。そう言われたことに対する苛立ちもあるが一番大きいのは納得だった。
そりゃ遊び呆けてた愚弟に対してならそれくらい言ってもいいだろう。そう思うくらいには苦労させてきた。前世を思い出した今からすればあれくらいでも優しいくらいではと思うくらいにはクソガキだった。
「で、兄貴を見返してやると意気込んで入試のダンジョン探索でこのざま、か」
そもそも最初の何も分かっていないルーキーがソロでダンジョンダイブとか馬鹿なの死にたいのと言われて当然の行動だ。多分試験監督もこいつは絶対に不合格になるだろうと考えているだろうことは容易に想像がつく。俺だってあちらの立場だったら絶対に同じこと考えるから間違いないだろう。
「確か、ダンジョン内では死んでもダンジョン外でリスポーンするんだったか。それで今回の入試では一定以下の成果を上げないと不合格、と。ここで死んだら間違いなく不合格になるだろうな」
学園側のスタンスを考えるとその一定はかなり低いと思われる。『ダン総』ではいわゆる生産職の指導もしているのだ。戦闘能力だけを見ているわけではないだろう。
恐らくはこのダンジョン実習の前に行われた筆記試験でそこらへんの適性を見ているのだと予想出来る。なのでここで一定以下の成果を上げれなくても生産職として見込みがある生徒は合格できるはずだ。
「問題としてはここで何の成果もあげれなければ俺は間違いなく不合格になることくらいか」
基本的なことは学んで答えを書いていたが筆記試験では穴が多かったとも思う。それを考えればこの実習で点数を稼がねば入学もクソもなく、家から追い出されることが確定する。兄はやると言ったら絶対やる。間違いない。そして追い出されたら俺は確率100で野垂れ死ぬしか選択肢がなくなる。今のこの世界は結構ヤバめなのだ。
「と言っても時計が壊れて時間が分からねぇし、残り時間がどれくらいあるのやら……」
ゴブリンに追われ逃げた結果前方不注意で崖から落ちた。その結果が全身打撲程度で済んだのは幸運と言っていいだろう。だがその幸運がいつまで続くかも分からない。二人分の記憶処理をしていたせいで体感時間もごちゃごちゃになっていて不味い状態だと反芻する。と言ってもゴブリン見て逃げ出したの試験開始から5分程度経ってからだったから試験終了3時間までなら余裕があると思いたい。
俺は手に持っていた片手剣と腕に取り付けてある小型の
「な、なんだ……!?」
装備の点検に意識を割いていたことにより気付くのが遅れたが離れた場所から重い生き物特有のズシリとした足音が響く。それは間違いなくこちらに近付いてきている。俺は咄嗟に岩陰に隠れることにした。
「『
現われたのはさっき俺を追いかけてきたゴブリンより一回り身体が大きく、本来であれば緑色だった体色を赤に染めた上位種だった。咄嗟に隠れたはいいがこのままでは見つかることは確定した未来。逃げるかを検討し始めた俺の目に『赤帽子』の右手が入る。具体的にはその右手に握られている剣が。
「……………………」
光を吸収してるかのように赤黒くなっている剣は140cmくらいしかない『赤帽子』には少々大きいように見える。不気味に見えるそれがしかし、俺にとっては非常に魅力的に見えた。
今この瞬間までどう逃げるかを考えていた思考が切り替わる。その剣はただの剣ではなく間違いなく魔剣と言えるものだ。もちろん上位種とはいえゴブリンが持っている魔剣が伝説球だったというわけではない。それどころか生産職が初めて打つ魔剣よりも明らかに等級は低い。
「欲しい……」
だが今の俺にとってそれは間違いなくこれ以上ないお宝だった。足元に落ちていた小石を拾い上げて反対側に投げ込む。そこにあった大岩に当たり静かな洞窟内に音を響かせた。『赤帽子』は大きな耳でその音を捉え顔を向けた俺に背中を見せた。
(死・ね!!!)
『赤帽子』の背後を取り、その無防備な首に持っていた短剣を突き刺す。硬い表皮をそれでも体重全てを使った剣は貫き『赤帽子』は赤の血を吹き出す。一撃で死ぬことはなく手足をばたつかせて抵抗されて剣を持っていた俺も振り回される。返り血を浴び、服を赤く染めながらも必死で話さないようこらえた。『赤帽子』は暴れまわったが致命傷に違いはなくやがてその身体から力は抜けて倒れ伏す。
光の粒子になり消えていく『赤帽子』の死体を前に上手くいったことに安堵の息を吐きつつ、こんなにも簡単に仕留められる幸運など早々ないと気を引き締め直す。やがて『赤帽子』は跡形もなくなり、自分の中に力が入ってくることを実感した俺は『赤帽子』が
「…………」
モンスターを倒せば必ずドロップする
手に持った魔剣が確かにあることを実感した俺は前を向く。そこにゴブリンはいない、探さないといけない。先程まで確かにあった恐怖は今や物欲センサーによって圧し潰されて消えていった。
恐らくだが俺の目は爛々と輝き表情は狂喜に満ちているだろう。分かっていてもまるで治す気にはならないが。
前世のゲームにおいてドロップ品や武具防具に目がなかった俺には今やモンスターとは脅威ではなく様々なドロップ品を落とす動く宝箱にしか見えない。
「ひゃあ!!我慢出来ねぇ!!!!小鬼狩りじゃああ!!!!」
今この瞬間、装備狂いのドロップ狂いが目を覚ました。あらゆるモンスターの天敵たる男の産声が洞窟内に響く。傍から見た者がいれば断言するだろう。コイツに近づいたら絶対ヤバい、と。