ダンジョン世界のコレクター   作:ビスマルク

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遭遇

『ギ、ギギギィ……』

 

「チッ、しけてんな小鬼共が」

 

 ドロップ品を求めて体感1時間ほど彷徨ってゴブリンを狩っていたが最初の『赤帽子(レッドキャップ)』の帽子と剣、二匹目のゴブリンの飾り気のないネックレス以外のドロップ品は手に入らなかった。

 

 今もまた消えたゴブリンからは魔水晶(クリスタル)しか落ちなかった。それを腰のポーチに入れて次を求めて彷徨いだすも流石に8匹くらい新たに倒して出てこないとなると冷静になってくる。ダンジョン入試は時間制限が決められておりそれが過ぎる前に入り口に戻らなければならない。それが出来ずとも即失格にはならないがそれでも減点対象にはなるだろう。

 

「かと言ってリスポーン狙いで死亡は論外だしな……」

 

 リスポーンすれば怪我は消えるがその装備などはダンジョンに入る前に戻る。当然ながら今持っているドロップしたアイテムも消える。あとついでに経験値も0になるので論外中の論外である。

 もっとも記憶は消えないので未知の区域にとりあえずで突っ込む探索者もいるらしいが。その場合いつでも死ねるように自害用の毒を歯に仕込むなどしてるらしい。まったくもって上位の探索者と言うのはガンギマリである。まともな人間ではないと首を振る。

 

「しかし入り口がどこなのかまるで分らん。どこに向かえばいいのやら」

 

 時間を示す腕時計を振ってもうんともすんとも言わない。これにダンジョンから出る為の帰還装置がある方角を示す機能もあったはずなのだがそれも機能しなくなっている。たかだか5mくらいの高さから滑り落ちた結果壊れるとかモンスターとの戦いを想定していないとしか思えない。いや『ダン総』の管理するここら一帯にはゴブリンしかいないから本当に想定していないのかもしれないが。

 

「勉強不足だったな……。こうなった時の対処法がまるで分からん」

 

 最早一人で入り口に戻るのは不可能と言っていいだろう。もう『ダン総』の試験監督が迎えに来るまでサバイバルするしかないかもしれない。でもここは水も食べ物もないのでそこまで長くはいられないだろう。水も俺は水筒一本分くらいしか持っていないし。

 

「しょうがない、人を探すか……」

 

 こうなった以上最善は俺と同じ受験生を見つけて一緒に行動する事だろう。俺が受けたのは『ダン総』の本校だけあって数千人規模で受験生が集まっていた。流石にそれだけの人数をダンジョン入試に一気に行かせることは出来ず、数日に分けられており一日一グループ受けることになってる。それでも一日100人以上同時にダンジョンダイブしている。

 

 ダンジョンダイブする時に使用する転送装置がそれぞれ違うので出る場所は変わるので俺はここまで一人としてすれ違う事すらしていない。まぁソロで入ろうとする奴なんて殆どおらず事前に即席パーティーを多くの受験生が組んでいたが。というかこの試験多分そこから採点されてると思われる。

 

「そりゃダンジョンでは他パーティーと接触する機会もあるだろうしな。コミュ力なくて問題なんて起こされたらたまったもんじゃないだろうし」

 

 それを考えると本当に俺はピンチだ。流石に10匹くらいソロでゴブリン狩りしてれば例年の結果を考えれば十分合格圏内だろうが問題児扱いされるのは間違いないだろう。思わず乾いた笑みが浮かぶ。

 

 (推定)前世の記憶を思い出した結果自分のヤバさを自覚するが後悔してももう遅い。何とか近くにいるかどうかも分からない受験生を探さなければならない。さもなくばこのドロップ品集め出来る探索者という天職につけることがなくなる。

 

「ん?」

 

 洞窟内に反響して僅かな音が耳に入る。微かだが人の声と、恐らくゴブリンの鳴き声だろう。あの不快な嗜虐心の塊のような鳴き声は間違いない。

 

『グギ―――!!』

『ギャ――ギャ!!!』

『ゴ―――ア!!』

 

「ヤダ―――だぁ!!!助――て!!やだ―――!!!」

 

 悲鳴を上げている(恐らく)女子受験生とゴブリンの声。探しても見つからなかった二つの存在の居場所を同時に知り俺のテンションは上がる。新たなドロップ品と巡り会うチャンスに俺がここから脱出する為に必要な受験生。一挙両得のこの機会を逃がすわけにはいかないと全力で走り出す。

 

「まぁそれを抜いてもゴブリンに襲われてる女性ってのはヤバいからな……!!」

 

 モンスターには「人間を苦しめる」といった本能が刻み込まれている。その為の手段を奴らは熟知しているのだ。特にゴブリンの場合は趣味が悪い。アイツらは男は殺すが相手が女だった場合遊(・)び(・)やがるのだ。

 

 モンスターは生殖活動で増えることはない。それは100年以上にも及ぶ研究で分かったことだが嗜虐心を満たす為にそう言った行為を行われることがある。ゴブリンもまたその一種であり、代表格だった。その手の映像が出回ることもあるが見るだけで気分が悪くなる。純愛志向の俺にとっては最悪と言っても過言ではない。

 

「っと、見つけたぞ」

 

 3mほどある崖の下にはニタニタと笑う3匹のゴブリンがいる。更にそのうちの一匹に脚を掴まれて引きずられている栗色の長髪の小柄な少女もいる。必死に脚をばたつかせているが全く抵抗になっておらず余計に傷を増やしている。

 

「放して!!放してってば!!!」

 

 何度も振り回す脚は何度かゴブリンに当たるがダメージになっているわけではない。靴跡すらつかない勢いでは何の抵抗にもならず、余計にゴブリンを興奮させるだけ。それを分かっていても恐怖に支配された少女にはやめることは出来ないのだろう。

 

 この光景はもう見たくない。今すぐにもドロップ品に変えてやらねばならない。コレクター魂と微かな正義感が俺を突き動かした。

 

「行くか……!!」

 

 勇気をもって崖の上から飛び出す。狙いは少女を引きずっているゴブリンと前を行くゴブリンの間。はたして狙い通りの場所に着地できた俺はそのままの勢いで思いきり赤黒い剣を振り下ろし少女の足を掴んでいたゴブリン一体を真っ二つに切り裂く。

 

「さぁ、お宝を出しやがれテメェらぁ!!!」

 

 『赤帽子』とゴブリン9匹を倒して得た経験値によって強化された肉体ならこの程度の高さから飛び降りても動くのに支障はない。俺は戦意を高める為に敢えて二匹のゴブリンを前に吠えた。

 

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