ゴブリン3体との戦闘を終えた俺達はちょうどいい岩の上に腰かけて携帯食料を食べていた。甘い物は戦闘でのストレスを緩和してくれるので推奨されているから持ってきていたが確かにこれは疲れた身体によく効く。
互いに名乗り、素性を確認した俺達はとりあえずこのダンジョン入試が終わるまでパーティーを組むことになった。ちなみに彼女もソロだったが初めての人に話しかけるのが苦手で最後まで余ったからだそうだ。最初にソロに飛び出した俺と最後まで残ってしまった彼女とどっちがマシだろうか。
「よっしゃ、それじゃあ早速使ってみようぜ。俺のこと見てくれよ」
「え、ええ!?い、良いんですか!?」
驚いた少女――――ヒマリと名乗った彼女は目を白黒させている。『鑑定』のスキルはかなりレアだが他にも使用者はいる。だが初対面の人間を鑑定するのはマナー違反とされてかなり拒否感を覚えるらしい。まぁ手札をばらされるような物なので無理もないと思う。
だけど俺はそれ以上に『赤帽子』がドロップして使っている剣とか帽子の詳細を知りたい。ついでに俺自身の情報も知れるなら知りたい。なので頭を下げて頼み込むことにする。
「頼む。俺は自分が何を出来るか知りたいしこの剣とか帽子の情報も知りたい。呪いのアイテムだったら残念だけど普段使いせずにコレクションに回さないといけないし」
「あっ……。それでも売ったり捨てたりはしないんですね……」
「一度拾ったなら俺の物だよ???誰にも渡すわけないじゃん」
「ミナト君は本当に探索者に向いてそうですね」
しみじみと呟かれたがそれは俺にとっては誉め言葉である。この世界で一番なりたい職業に向いていると言われて嬉しくならないはずもない。
「分かりました。じゃあ見てみますね。えっと、『鑑定』っ!!」
「多分スキル名を言う必要はないと思う」
「い、言わないでくださいっ」
改めてヒマリがスキルを使用する。それと同時に俺達の目の前にステータス表が現われた。なんとも不思議な光景だが始めて見たスキルの発動にワクワクが止まらない。どれどれ、俺のステータスとこの剣達の性能は一体どうなっているのか……。
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『
HP:110/110
SP:40/40
【装備品】
『血濡れの赤帽子』
ゴブリン変異種『赤帽子』からドロップした帽子。
布だがSPを込めることで金属兜より高い防御力を得る。
『小鬼殺し』
ゴブリン変異種『赤帽子』からドロップした小剣。
SPを込めることでゴブリン種を威圧し、中確率で『恐怖』のバッドステータスを与えることが出来る。
【戦闘技能】
『万武使役(初級)』
あらゆる武器を扱う才能を持つ。初めて手にした武器でも使える。
現在習得度が低い為全ての武器術の等級は初級術に留まっている。
【スキル】
『なし』
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「お、おぉ……。な、なんか凄くないか俺……?」
ライトノベルとかによくある筋力とか敏捷の数値とかは書かれていないがそれでもなんとなく強そうなのは分かる。【戦闘技能】は文字通りそいつの持っている戦闘技術を表しているらしい。これを信じるのであれば俺はあらゆる武器に対する適性を持っていることになる。どおりで初めて剣を使ったのに綺麗にゴブリン共を斬れるわけだ。
だがそれ以上に喜ばしいのは『万武使役(初級)』を持っているという事は槍とか弓とかも使えるということだ。あらゆるドロップ品を集めて全部使いたいと思っていた俺にとってはこれ以上ない才能だ。まぁ魔法の才能がないのか【魔法技能】の欄はないのだけが少々残念だがそれは高望みと言う奴だ。
「はわ、はわわわわわわ!!?!?こ、ここここ、近衛ぇ!?!??!?」
「ん?どうかしたのか?」
「だ、だって近衛!?だって苗字!!!?」
「えっ。あ、ああー、そっか。忘れてたわ」
「わわわ忘れてたって苗字付きだったことをですか!?そ、それも近衛って!!!??!?」
転生の影響でまるで意識していなかったがこの世界における苗字とはかなり重要な意味を持つ。大勢の日本人は苗字を持っておらず多大なる功績を持つ人間か、その子孫にしか苗字を名乗ることは許されていない。さらに言えば俺の持つ『近衛』の名はその中でも特別だ。
「近衛ってことは『
「いやー、ちょっと問題起こしちゃってさ。兄貴に言われてここに来てんだよね。今は滅茶苦茶楽しんでるけど」
『十天社』、それは現在の日本という国の実質的な支配者だ。文字通り十ある企業でありそれぞれ政治、教育、建築、武具の開発などなどそれぞれに特化している。俺のいる『近衛家』はその中の序列四位の武具開発の家だ。どのみち一般人からしたら雲の上の存在だろう。
「それに俺、現在勘当中。多分その内近衛の文字も消えるからヘーキヘーキ」
「平気じゃないですよぉ……!!」
涙目になっているヒマリには悪いが今考えると勘当されてよかったとも言える。うちには兄貴と言う経営及び開発の天才がいるから何の問題もない。俺なんか政略結婚の弾にされそうだし。それを考えるとこうしてダンジョンに入れる探索者になるチャンスが与えられているのは幸運過ぎると言ってもいい。ここに送り込んでくれた兄貴には心から感謝している。
「そんなことよりヒマリのも見せてくれよ。俺のばっかりずるいぞ」
「うぅ……。わかりましたよぉ……。なんで私ダンジョン関係ないことで心臓を酷使してるんだろう……」
「それに関しては非常に悪いと思っている」
覚悟の準備もさせずにこんな事をして悪いとは思うのだが俺自身も忘れていたので許してほしい。涙目になったままヒマリは『鑑定』を使い再び俺達の目の前にステータス表が現われた。
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『
HP:50/50
SP:100/120
【装備品】
『ナイフ』
何の変哲もないナイフ。
【戦闘技能】
『
音を消し去り移動し、一切相手に悟られず殺す技術。
【スキル】
『鑑定』
SPを消費し視界に入った対象の情報を見ることが出来る。
相手の抵抗が強いほど見れる情報は減っていく。
また相手の強さによってSPの消費量は高くなる。SPが足りない場合使用できない。
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「え、えええええ!?な、なんですかこれ!!?」
「やっぱり暗殺技術持ってんじゃん……」
「お、おかしいですよ!?こ、壊れてるんじゃないんですかこれ!?」
俺の予想通りの【戦闘技能】があった。と言うよりこれ『気配遮断』みたいなスキルで発動する奴を自分の技術だけで再現しているという事ではないだろうか。ぶっ壊れと言ってもいい才能を持っている。さっき見た流れるような首切りは幻ではないと改めて分かった。
『静寂殺技』単体ではダメージを与えるだけの攻撃力がなければ隠れることとかにしか使えないかもしれないけどダメージ与えられるなら凄い手札になるだろう。ヒマリ本人にとっては物凄く不本意だろうが。
「も、もっと可愛らしいデータはないんですか!?お洒落とかそういうのは!!?」
「いやあくまでこれ戦闘関連のデータだし、そういうのは見れないと思う」
「う、うわああああああああん!!もう自分を『鑑定』するなんてこりごりですぅ!!!」
小声で泣き叫ぶという器用なことをしているヒマリを見て俺は愉快な女の子と知り合ったなぁと楽しくなった。やはり探索中にこういう知人が増えるというのもいいものだ。
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