「ヒマリは俺よりも
「はい。でも今の『鑑定』でSPを消費してるみたいですね。一回につき10使うってことはあと10回くらいしか使えないってことになります」
『鑑定』について俺が知っていることは殆どない。ただこれが高位探索者にも求められるレベルのスキルだということくらいは知っている。多分このまま戻ったらヒマリはそう言う必要にしている探索者からスカウトされるだろう。それはそれで彼女の為になるだろうからいいのだが……。
「ヒマリ、ちゃんと契約書は全部読むんだぞ。不審な点があったらちゃんと指摘して聞くんだ。出来るならそれの専門家を呼んだ方がいいからな」
「あの、私なにされるんですか?なんでそんな借金背負わされそうな憐れな子羊を見る目で見るんですか?」
「いやだって『鑑定』持ちは超絶レアじゃん……。知られたら滅茶苦茶人が集まってくると思うぞ」
「言いませんよこんなの!?絶対に人前で使いませんし報告だってしたくないです!!!あとそう言うのに巻き込まれるのは私勘弁です!!!」
「まぁ、それはヒマリの自由だし良いんだが。スキルの報告は探索者組合に必ずしなくちゃいけないぞ」
「それはそうですけどぉ……」
スキルは使い方によっては物凄い大規模災害につながるものもある。それを考えると全ての探索者が得たスキルを把握するというのは組合の重要な仕事の一つだ。なお隠してることがバレた場合重罪なので探索者資格は取り上げられるし二度と取得できない上監獄にぶち込まれるという。
絶対にバレたくないヒマリにとってはこの事実はあまりに酷なのかもしれないが、知らなければ犯罪者になる。ここら辺は常識なので大丈夫だとは思うが念を入れて伝えておく。
「ちなみに組合経由でバレる可能性もあるからな」
「えっ。探索者組合ってそんなにガバガバなんですか?」
「ガバガバというか、なんというか……」
探索者は上に行くほど優遇されることになる。中には苗字付きになっている者もいるくらいだ。その彼らに強く開示を求められたら組合の一職員などは逆らうことなど出来ないだろう。無論探索者組合のバックは『十天社』の一つである『探李家』だからそんなことは早々ないだろうけど。
そこまで聞いてヒマリは心底嫌そうな顔をしていた。本当に表情がコロコロ変わって面白いなこの娘。その上でしっかり自分を持っている所も好印象だ。
「やっぱり世の中権力なんですね……」
「まぁ多分大丈夫だろ。高位探索者のパーティーなら『鑑定』持ちくらいもう既にいるだろうしわざわざ探したりしないと思うぜ。とりあえず超絶レアな有能スキル手に入ったって喜んでればいいさ」
「そうですね……。もう手に入っちゃったんだし開き直るしかないですね」
「うん。その調子だ」
十分休憩もしたし身体の疲れはとれた。ヒマリの方もゴブリンに襲われたせいで受けたメンタルダメージを大分緩和されただろう。立ち上がったその足取りに弱々しさはない。
「それで、これからどうしますか?」
「それなんだけどさ。俺の時計ぶっ壊れちまって時間も方角も分からねぇんだ。ヒマリは分かるか?」
「えぇ……。これ、そう簡単に壊れないって言ってたんですけど……。ちょっと不安になりますねそれ。えっと、試験終了まであと1時間半と言うところです。一番近い転移装置までは向こうですね。距離は分からないですけど」
「オッケー。それじゃあとりあえずその転移装置まで行こうぜ。いつでも脱出出来るって安心感は大切だからな。っと、これ俺のお古だけど使えよ」
「へっ、わっ!こ、これ結構いい小剣なんじゃないですか?」
「実家から餞別代わりに貰ったもんだけど今の俺にはこれがあるしな」
腰に下げている『小鬼殺し』を軽く叩く。ゴブリンしか出現しないこの洞窟内ではこれが一番効果が高い。SPの込め方もなんとなくわかったから次からは特殊能力も使って行けるだろう。それを考慮するなら後一回くらいはゴブリンと会いたいところだ。これの性能を確かめてみたい。ヒマリがいる現状ならバックスタブも期待できるしな。
「そのナイフもいい奴だけどな。多分うちの系列の掘り出し物だ。ちょっと古いけどちゃんと手入れされてるから切れ味も鋭いし」
「そ、そうなんですか。これ、私の孤児院の院長先生から貰ったものなんですけど……。そ、っか。院長先生、そんな凄いものを私に……」
まぁ見る限り大量生産されてる奴だからそこまで高くはないはずだけど。それでもこの手の武器を買ってちゃんと手入れもしている所を見る限り恐らくその院長先生は元探索者だろう。一般人が武器の手入れ方法とか知っているわけもないし。
「何の波乱もなくつきましたね」
「そうそう波乱なんて起きて欲しくないからこれで良いんだけどな」
そんな会話をして先を進んでいけば10分程度で転移装置までついた。この機械もまた『十天社』の一つである機械関連の会社が作ったスキルの人工再現を求めて作られた高性能機だ。
「この装置、壊されそうで怖いんですけど大丈夫なのかね?」
「えっと、確かモンスターの嫌う高周波を出してるだとかで絶対とは言い切れないですけどこの周辺にはモンスターが現われることもない安全地帯を作っている、らしいですよ。詳しい原理は私も知りませんけど……」
ヒマリ曰く更に次の探索からは戻るのに使った転移装置に転送されるので探索の続きをここから出来るという優れものらしい。俺の知っているスキルの中にある『空間操作』はこれを超える利便性なので是非とも仲間に一人欲しいのだがそれは流石に高望みだろう。
「さて、それじゃあ俺はゴブリン相手にちょっとコイツの試しをして来ようと思うんだが」
「じゃあ私も行きます。ここに一人で残されるのも嫌ですし、臨時とはいえパーティー仲間ですから」
「ああ、ヒマリがいてくれるなら心強いな」
というかヒマリが来てくれなかったら俺は試し切りしに行くなんて出来ない。だって洞窟内はどこも似たような景色だから彼女がいないと方角も分からない俺はこの転移装置のある所まで戻ってこれないのだ。
「……ところでミナト君、ちょっと向こうから激しい音がしませんか」
「やめてくれ。気付かないようにしてたんだ。知ったら絶対行きたくなるから。こんな浅い層でこんな激しい音出せるモンスターいるはずないのにいると思ったらレアアイテムドロップするんじゃないかって考えが消えないんだよ」
「ミナト君のそれは最早病気なのでは?」
「否定は出来ない。けどこのまま放置して転移装置の所まで来られるのはイレギュラー過ぎるしな。ちょっと確認は必要だろ」
「確認するのはいいですけど絶対無謀に突撃したりしないでくださいね……?」
ヒマリも俺がどんな人間なのか分かってきたようで何よりだ。扱いが段々と雑になっている気がするけどそれは気にしないことにする。
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