『グギィ!?』
「チッ、やっぱ頭は硬いな。角も邪魔だし」
金髪の少女の相手をしていたゴブリンオーガは意識をそちらに割いていたこともあり無防備になっていた頭に『小鬼殺し』は当たったが流石にゴブリンの強化種、多少の出血はあれどそれ以上の怪我は見えない。
「誰だ!!」
「ドロップ品狙いの乱入者だよ」
名前を名乗ると後々面倒になるかもしれないので適当に誤魔化しておく。タイマンを邪魔された少女は非常に不機嫌になっているが周囲の護衛は逆に助かったという安堵の表情を隠しもしない。
「おおっ!!この状況で助けに来てくれるとは相当な
「頼む!!本当に頼む!!殿下に何かあれば我々だけでなく一族まで巻き込まれかねん!!!」
「ゴブリンを殲滅できればそちらに助力できる!!!そしたらそのままその我儘娘を担いで逃げて欲しい!!!」
「いや本当アザッス!!!そのまま貰ってくれるとなお嬉しい!!!」
「アンタの護衛ああ言ってるけどどんだけ我儘放題だったの???」
「余はただ単に家訓に従っているだけである。だというのに不思議よなぁ」
軽い嫌味を言っても本当に意味が分かっていないように首を傾げる少女を見てこれは多分前世の記憶が蘇る前の俺以上の問題児なのだと判断する。この場でしか関わる予定がないのが幸いだ。絶対に名前は憶えられてはいけないと改めて決める。間違いなく騒動に巻き込まれるからだ。
『グォオオオオオオオオオオオガ!!!!』
「おっと!!」
「ふんっ!!」
目の前でコントをしていることに怒ったのかゴブリンオーガが俺と少女の二人に向かって棍棒を振り下ろす。その太さから同時に俺達二人を狙っても当たると判断したのだろう。咄嗟に左右に別れて跳ぶ。
『ブオラッ!!』
「そこから横薙ぎしてくるか……!!」
地面にぶつかり瓦礫と破片が周囲に飛び散る。頬を軽く切り赤い血が流れるが気にしている余裕はない。こちらに向かってくる棍棒をどのように対処するかを考える。思考に一瞬、同時に身体が反射的に動き対応する。
腕に取り付けたバックラーで受けるのも受け流すのも不可能だろう。それだけの力と勢いがある。触れれば恐らく地面を転がるか壁に叩きつけられる。それだけ大きな隙を見せれば確実に追撃されて殺される事だろう。ならば方法は一つ、避けるしかない。
(近衛の血を継いでるだけあって高性能で助かるな!!!)
スパイン・ヒップ・リフトの要領で膝を曲げて背中を地面と平行になるまで傾ける。少し間違えれば一瞬で挽肉になるだろうその判断は成功したらしく目の前を棍棒が通り過ぎて行った。歯を食いしばり振るわれた棍棒の余波を耐えながらすぐさま体勢を戻しゴブリンオーガの膝に『小鬼殺し』を突きこむ。
『ゴオオオオオオッ!?』
「大人しくしてろよボケ野郎……!!」
当然それだけで止めを刺せるわけもない。だがこれでこの傷が治るまでの間歩くことは難しくなる。それは機動力という戦闘にとって1・2を争う程に大事な要素を奪われたのと同義だ。理屈を理解しているわけではないだろうが自分が不利になったのが分かったのかゴブリンオーガは滅茶苦茶に棍棒を振り回し始める。
「クソッ!!」
「危ないであろう!!余の初陣で人死にを出すつもりか貴様ッ!!」
膝から『小鬼殺し』を抜くのに手間取り反応が遅れた俺の首根っこを掴んだ少女が無理矢理引っ張り込んでくれたおかげで棍棒の嵐に巻き込まれずに済んだ。だが俺達が離れたことに気付いていないのか、それとも気付いていながら再び近づけさせたくないのか振るわれる棍棒が止む気配はない。
「おい、貴様のせいで近付くのも面倒になったぞ」
「止めを刺すのに苦労しそうだな。近づいてぶっ殺す方法はあるけど賭けになる。乗るか?」
「ふん、余の戦いに勝てる可能性がある上での闘争などありえん。余は1パーセントでも勝つ可能性があるなら全ペットする主義だ。そしてそれで負けた事はない。喜べ、貴様と余の勝利に賭けてやる」
(ヒマリと違い)鎧の上からでも分かるほどに豊かな胸を張って宣言するその姿は非常に頼もしい。人を率いる才能というのはこういうのを言うんだろう。俺とは縁遠い才能で少し羨ましいがそうもいっていられない。
少女の護衛達もなるほど凄腕なのだろう。次々とゴブリンを退治しており既にその数は半分にまで減っている。このまま包囲網を突破出来るようになればゴブリンオーガと戦い続ける大義名分がなくなる。それは非常に困る。コイツが落とすだろうドロップ品を俺は欲しい。
「余を助けに来たことは評価してやる。ここから出た後は褒美もやろう。余の側近として働きたいというのであれば無茶を通せ。それ以上を望むのであれば更なる活躍を果たして見せよ」
「(コイツの落とすドロップ品)その為なら命くらいかけてやるさ……!!」
「ふふん、なかなかいい気概を持っているではないか。貴様の事、少し気に入ったぞ」
「は?そ、そうか。ありがとう」
ドロップ品のことにしか頭が行ってなくて話を聞いていなかった。この少女は何を言っていたのだろう。だがまぁ機嫌がよくなっているので悪いことではないだろう。それよりも今はお楽しみの時間だ。
『小鬼殺し』に
「俺の後に続けッ!!!」
「余の行く道を切り開いて見せよッ!!!」
「いやふざけんな行くな馬鹿ッ!!!」「何危険なことしてんだもう少し待ってれば逃げ出せるんですけど!!」「殿下お願いだから待ってください何でもするから本当お願いしますッ!!!」「いやなんかコイツら増援呼んでるっぽいぞ。あのデカブツ殺さないと多分逃げられないわ」
後ろから聞こえてくる護衛達の声を無視して走り出す。狙いは一点、最初に俺が傷つけた頭部……ではなく柔らかい首元!!!『赤帽子』と同じくどんな強化種であろうとゴブリンならばそこが最大の弱点になる!!!
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