魔法科高校の劣等生に虚飾の魔女(偽) 作:パンドラ様の二次創作増えて⭐︎
目を覚ましたとき、最初に思ったことは一つだった。
――知らない天井だ。
いや、正確には天井ですらなかった。視界に広がっているのは、見覚えのない木々と、その隙間から差し込む柔らかな日差し。
どうやら自分は、屋外で寝ていたらしい。
「……あれ?」
身体を起こす。頭が痛いわけでも、気分が悪いわけでもない。ただ、妙な違和感があった。
自分の身体が、自分のものではないような感覚。試しに手を開いたり閉じたりしてみる。
問題なく動くし、視界もはっきりしている。
けれど、何度確認しても、自分の身体が変わっていることに間違いはなかった。
辺りを見回すと、近くに捨てられた鏡が落ちていた。それを拾い、自分の姿を確認する。
――白い髪に、水色の瞳、整った顔立ち。
「……パンドラになった」
口に出してみると、改めて実感が湧いてくる。
自分は普通の人間だったはずだ。少なくとも、こんな森の中で目を覚ました記憶はない。最後に何をしていたのかも、どうしてここにいるのかも思い出せない。
ただ、一つだけ確かなことがある。目の前に映っている自分の姿は、どう見ても人間離れしていた。
「さて、どうしようかな」
そう口にしてから、ふと自分の声に意識が向いた。
今の話し方は、普段の自分とは違う。そもそも、この姿で以前と同じような話し方をするのは、少し不自然ではないだろうか。
何より、目の前にいるのはパンドラそのものの姿だ。見た目と話し方がちぐはぐなのも、なんとなく落ち着かない。
どうせなら、話し方も合わせてしまおう。
そう考え、もう一度口を開く。
「……ふふ。こちらの方が、しっくりくるでしょうか」
少し声に出して確かめてみる。慣れるまでは多少違和感がありそうだが、いずれ馴染むだろう。
これからは、この話し方でいくことにしよう。
しばらく考えてみたものの、特に良い案は浮かばない。ここで悩み続けても仕方がないので、とりあえず人のいる場所を探すことにした。
幸い、身体の動かし方に問題はない。歩くことにも違和感はなく、むしろ以前より身体が軽いくらいだった。
森の中を適当に歩き始める。どちらに向かえばいいのか分からないが、いつまでも同じ場所にいるよりはましだろう。
まずは人のいる場所を見つけて、ここがどこなのかを確認しなければならない。
それから先のことは、そのときに考えればいい。
*
それから、少しばかり時間が経った。
現在、私は街の一角にある小さなケーキ屋にいた。
目の前には、綺麗に飾り付けられたショートケーキと、湯気の立つ紅茶。店内には甘い香りが漂い、数人の客がそれぞれ思い思いに食事や会話を楽しんでいる。
「ん……美味しいですね」
フォークで一口分をすくい、口に運ぶ。
ふんわりとしたスポンジに、甘さを抑えた生クリーム。そこに苺の酸味が加わって、なかなか良い味だった。
森を出た後、私はいくつかの街を見て回りながら、自分が置かれた状況を確認した。どうやら、ここは日本らしい。街並みや人々の様子も、少なくとも自分が知っている日本と大きく違うところはなかった。
そして、生活するためには当然お金が必要になる。
しかし、目覚めたばかりの私にそんなものがあるはずもない。身分を証明するものもなければ、住む場所もない。
普通なら、なかなか面倒な状況だっただろう。けれど、私には虚飾の権能があった。
少し試してみたところ、どうやらこの力は想像していた以上に自由が利くらしい。身分証や必要な記録を用意することもできたし、お金を手に入れることも難しくなかった。
もちろん、正規の方法で手に入れたものではない。簡単に言えば、違法な手段で用意したお金である。
とはいえ、今のところ誰かに問い詰められることもなかった。
そのお金を使って、私は街の外れに小さな家を購入した。特別立派な家ではないが、一人で暮らすには十分な広さがある。家具や生活用品も一通り揃え、ひとまず落ち着ける場所は確保できた。
こうして振り返ると、思ったよりも順調に生活を始められた気がする。
「次は何を食べましょうか」
空になった皿を眺めながら、ショーケースの方へ視線を向ける。
まだ食べていないケーキもいくつかある。せっかくなので、もう一つくらい注文してもいいだろう。
そんなことを考えていると、店内に設置されたテレビから音声が聞こえてきた。
『続いてのニュースです。本日、政府は先日発生した核テロ未遂事件について、正式な調査結果を発表しました』
何気なくテレビに目を向けると、画面には、どこかの施設らしき場所と、記者会見を行っている人物が映っていた。
『今回の事件では、核兵器による大規模な被害が発生する可能性がありましたが、ある人物の特殊な能力によって阻止されたことが明らかになりました』
「……」
(核テロですか。随分と物騒な話ですね……)
『政府関係者によると、事件を阻止した人物は、従来の科学では説明できない現象を引き起こしたとのことです。現在、その能力について詳しい調査が進められています』
画面が切り替わり、事件の概要を説明する専門家らしき人物が映し出された。
『一部では超能力と呼ばれていますが、今回確認された現象は、これまでの常識を大きく覆すものです。今後は、この能力の原理を解明するための研究が本格的に開始される見通しです』
――超能力。
――魔法。
そんな言葉が、テレビの中で繰り返されていた。
どうやら、この世界では今まで存在しないと考えられていた不思議な力が、実際に確認されたらしい。
それをきっかけに、研究まで始まるという。
「魔法、ですか……」
私は紅茶を一口飲み、再びテレビを眺めた。
おとぎ話の中に出てくるような力が、現実のものとして扱われ始めている。なかなか面白い話ではある。
「ふふ。これから、どうなるのでしょうね」
そう呟いて、残っていたケーキを口に運ぶ。
テレビでは引き続き、超能力の発見と今後の研究について報道が続いていた。
この日を境に、この世界は少しずつ変わっていくことになる。
そのことを知る由もない私は、目の前のケーキを最後まで美味しくいただくことにした。
マジで初めて書くんで、ミスが多いと思う。