おたべちゃん   作:チャーシューメン

1 / 8
以下、登場人物紹介です。

○登場人物
 ・九十九弁々    琵琶の付喪神。背はやや高め。冷静で大人びている……。
 ・九十九八橋    琴の付喪神。中背。勝ち気で無鉄砲……。



「⑨十⑨弁々」

 <九十九姉妹ハウス 寝室 昼 晴れ>

 

 木目の映える、簡素な木製の四角いテーブル。その上に置いてある、白い箱。そのなかに並ぶ、生八ツ橋。

 にゅっ、と色の白い手が伸びる。手は生八ツ橋を取ると、ゆっくりと口元に運ぶ。

 小さな口を一杯に開けてかぶりつく。

 

 弁々   「はむっ」

 

 それでも、半分くらいしか減らない。

 もぐもぐ。むしゃむしゃ。

 簡素な木製の丸椅子に座った弁々は、至福の表情。

 木製の窓枠。その近く、ふかふかとした絨毯の上に、弁々の本体である琵琶が立てかけられている。

 その近くには、木製の簡素なベッド。

 ふと、部屋の反対側を見る弁々。

 マットを敷いたパイプベッドの上で、八橋が「機動戦士ガンダム」のハロのぬいぐるみとじゃれている。

 同じくパイプベッドの上、やはり窓(金属製のサッシ付き)の近くに、八橋の本体である琴が立てかけられている。

 弁々が八橋を見ていると、八橋も弁々に視線を返す。ハロのぬいぐるみをいじりながら。

 無心の空虚なカオ。

 残りの生八ツ橋を口に放り込んで、むぐむぐと口を動かす弁々。

 その間も八橋は、弁々のほうに視線をやりながら、無心にぬいぐるみをいじり続けている。

 ああ、と閃く弁々。

 手についたニッキの粉を丁寧に舐めとった後、その手で、生八ツ橋入りの箱を、スッ、と八橋に差し出す。

 

 弁々   「食べる? ……ああっと……」

 

 八橋を見つめる、弁々の横顔に、だらだらと冷や汗。

 

 弁々   「(ナレーション)っべー、この子の名前、なんだっけ?」

 弁々   「(ナレーション)大体この子、存在感が無いのよね。輝針城キャラの中でも、イマイチキャラが立ってないっていうか。」

 弁々   「(ナレーション)んもうっ、この特徴のないアンニュイ顔! 普段何食って生きてんのかしら、この子。おけらとか、なめくじとか喰ってんじゃないの?」

 

 ぬいぐるみを抱きしめる八橋の、空虚なカオ。

 

 弁々   「(ナレーション)顔からすると、ジミコとかネクラコとかっぽいわね。もしくは、しょうゆとか、きなことかかしら。あ、なんかそんな気がしてきた」

 弁々   「(ナレーション)いやいやまてまて違う違う。たしか、あまーい、なんかのお菓子に似た名前だったような……」

 

 視線を落とすと、手にした生八ツ橋が目に入る。

 

 弁々   「(ナレーション)ああ……」

 

 顔を上げ、悟ったように優しく微笑みながら言い直す弁々。

 

 弁々   「食べる? おたべちゃん」

 八橋   「(すかさず)八橋だよ、姉さん。確かに近いけどさ。」

 

 ジト目で睨む八橋。

 

 八橋   「いい加減、名前覚えてよ。」

 

 膝に抱えたハロのぬいぐるみをぎゅむっと潰す。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。