以下、登場人物紹介です。
○登場人物
・九十九弁々 琵琶の付喪神。背はやや高め。鉄壁スカート。冷静で大人びている……。
・九十九八橋 琴の付喪神。中背。太眉。勝ち気で無鉄砲……。
<九十九姉妹ハウス 寝室 昼 晴れ>
ベッドの上に腰掛けている八橋。
呆けたようなカオでハロのぬいぐるみを抱きしめながら、部屋中央の木製テーブルの前に座る弁々の方を見ている。
弁々はくりっと首をかしげて聞く。
弁々 「おたべちゃん?」
八橋 「(すかさず)だから八橋だって」
ジト目で弁々を睨む八橋。
……。
しかしそれ以上の反応は無い。
再び呆けたようになり、ぬいぐるみをぎゅ~っと抱きしめる。
弁々は眉を潜める。
スっと立ち上がり、八橋の前まで行く。
八橋は特に何の反応も示さない。
弁々はしばし逡巡した後、意を決した顔で、八橋の手の中からハロのぬいぐるみを奪い取る。
八橋 「んあ? なにすんの、姉さん」
弁々を見上げる八橋のその顔。眉を顰め、弁々を訝しむようにしている。明らかに生き生きとした、感情の乗った顔。
弁々 「あ……、いや。別に。」
弁々の頭に???とハテナマークが浮かぶ。
弁々 「(愛想笑いを浮かべ)なんでもないわ、おたべちゃん。」
八橋 「またぁ!」
勢い良く立ち上がる八橋。
驚いた弁々はぬいぐるみを抱いたまま一歩下がる。
八橋 「八橋だって言ってるでしょー? 妹の名前も覚えらんないなんて、湖の妖精以下だわよ、姉さん!」
八橋は腰に手を当て、弁々を責めるように人差し指を立てる。
気圧されて、たははと愛想笑いを浮かべる弁々。
八橋 「だいたい、姉さんはいっつもいっつも……」
言葉の途中で、弁々がぬいぐるみを八橋に押し付ける。
途端に八橋は言葉を切って、ぬいぐるみを抱きしめて、脱力したように座り込む。
その表情は無心。
弁々のこわばった笑顔、その頬を一筋の冷や汗が伝う。
弁々 「キエェェイ!」
怪鳥のような叫び声を上げながら、すらりと伸びた生足を一閃。
八橋の腕の中にあるぬいぐるみを、部屋の隅まで蹴り飛ばす!
八橋 「あぁん!」
ぬいぐるみは壁にあたって、ぼてん、と床に落ちる。
足を上げたままの弁々を、キッ、とにらみつける八橋。
八橋 「んもう! 何すんのよ! 家庭内暴力反対ー!」
弁々 「(スカートを直しつつ)いや、その……。ねぇ?」
八橋 「意味分かんない! 脳みそまであんこになっちゃったんじゃないの? この公式ゆっくり!」
ドタドタと荒い足音をたて、ぬいぐるみの方に駆け寄る八橋。
しゃがんでぬいぐるみのほうに手を伸ばす。
弁々 「いや、それは蛮奇ちゃん……」
ふと気づく弁々。
八橋は、ぬいぐるみの上に突っ伏すようにして動かなくなっている。
不審に思った弁々が覗きこむと、ぬいぐるみを抱えて、また空虚な顔になっている八橋。
なにやら黒~い気配がぬいぐるみから放たれる。ぬいぐるみハロの陰は濃い。
気配に気圧されて一歩引く。戦慄する弁々。
弁々 「(慌てて)おたべちゃん、ガンダム禁止!」