以下、登場人物紹介です。
○登場人物
・九十九弁々 琵琶の付喪神。背はやや高め。鉄壁スカート。冷静で大人びている……。
・九十九八橋 琴の付喪神。中背。太眉。勝ち気で無鉄砲……。
<九十九姉妹ハウス 寝室 昼 晴れ>
ベンベンベベベン、ベンベンベベンベン……。
ベッドの上に腰掛け、光り輝く弦を持つ琵琶を演奏する弁々。
白くてしなやかな指先が、よどみなく光弦を弾く度、渋い音が鳴り響く。撥は使っていない。
対面には同じくベッドの上に腰掛ける八橋がいる。
脇にはハロのぬいぐるみ。しかし、顔に当たる部分には、大きく張り紙。
「ガンダム禁止!」
しかもかなり達筆。
ベッドサイドテーブルの上には、マスターグレードνガンダムがポーズをキメている。
八橋 「ホントにもう……。いつになったら、ちゃんと名前覚えてくれるのよ。妹の名前、忘れる? フツー。」
やれやれ、といった感じで脱力し、ベッドの上でだらける八橋。
弁々 「(演奏しながら)失礼ねぇ。ちゃんと覚えてるわよ。ちょっとド忘れちゃっただけじゃない。ええと……。」
ちら、と中央の木製テーブルのほうを見る。
白い箱、其の中には、弁々の食べかけの生八ツ橋が並んでいる。(歯型がついているものもある)
弁々 「ああ、そうそう、おたべちゃん」
八橋 「やーつーはーしー!」
仰向けに寝っ転がったまま、
八橋 「何度言ったらわかるのよ~。ホントマジ、妖精以下なんじゃないの~?」
弁々 「だってぇ、おたべちゃんの名前、難しいんだものぉ」
八橋 「たった四文字がぁ?」
八橋は上半身を起こす。
指でスカートに浮かぶ光る弦を弾く。弁々の演奏が続く中で、ポロリン、と雅な音がこだまする。
八橋 「この名前はねぇ、昔のえら~い奏者にあやかった名前なのよ。姉さんだって知ってないと恥ずかしいわよ。奏者の嗜みよ、嗜み」
演奏の手を止める弁々。
弁々 「へえ。どんな人なの?」
八橋はしたり顔。
八橋 「どんな人って、決まってるでしょ」
しかしすぐに、こめかみを指でグリグリしながら、難しい顔をする。
八橋 「そりゃもう、すごいエラい………。なんかの雅な感じの……。えーっと……。け、け、け………」
やがてぽへっ、と息を吐いて。
八橋 「なんだっけ?」
弁々 「やっぱり、おたべちゃんで十分じゃないの。」
ベッドに身を投げ出し、仰向けに勢い良く寝っ転がる八橋。
やれやれ、といった感じで、演奏を再開する弁々。
ベンベンベベベン、ベンベンベベンベン……。
八橋 「あー、逆シャアの台詞なら全部暗唱できるのになぁ~。」
弁々 「おねえちゃんも、トトロなら暗唱できるよ。」
素早く指を動かしながら、横目でニヤリと笑う弁々。
弁々 「奏者の嗜みよね」
八橋はベッドから顔だけ持ち上げて。
八橋 「(真顔)いやそれは違うでしょ。」