以下、登場人物紹介です。
○登場人物
・九十九弁々 琵琶の付喪神。背はやや高め。鉄壁スカート。冷静で大人びている……。
・九十九八橋 琴の付喪神。中背。太眉。勝ち気で無鉄砲……。長袖長ズボンのシマシマパジャマ。
・幽谷響子 山彦の妖怪。みんなの目覚まし。
・射命丸文 烏天狗の新聞記者。鉄壁スカート。
<九十九姉妹ハウス 寝室 朝 晴れ>
ベッドの上の八橋。毛布をはだけ、服もはだけて、大の字になって眠っている。
はだけた服の隙間からへそが覗く。
窓の外には、高くそびえる妖怪の山。
響子 「(遠くから小さく声のみ)ぎゃ~て~」
うむむ、と唸りながら、八橋が上体を起こす。
眠そうに目を擦り、ボリボリと腹を掻く。目が3になってる。
弁々 「おはよう、おたべちゃん。パン、焼けたわよ」
扉を開けて寝室に入ってくる弁々。
既にパジャマ姿ではなく、いつもの格好。両手にはトーストを二枚乗せた皿とスクランブルエッグを持っている。
部屋中央のテーブルに近づき、それを置く。
くああ。
八橋は大口を開けて大欠伸。
フラフラしながら机に近づき、席についてトーストをもそもそ、リスのようにかじる。
八橋 「んむむ……。朝は御飯のほうがいいなあ」
弁々 「あんたが昨日、パンがいいって言ったんじゃないのよ」
八橋 「(手足をバタバタ)ごはんがたーべーたーいー」
弁々 「はいはい、ちょっと待ちなさい。昨日の残り温めてくるわ」
八橋 「御御御付けもね~」
弁々 「ん、もう、わがままなんだから……」
半分寝ている八橋を尻目に、台所へ行く弁々。
食べかけのトーストにバターを塗りながら、視線は遠く窓の外へやる八橋。
青空をバックに、妖怪の山がそびえる。しゅっ、と天狗(射命丸文)が遠くの空を横切る。
ハッ、と気づくと、バターがてんこ盛りに塗られている。あわててバターナイフでバターを削ぎ落とす。
トーストにかじりつくと、弁々がやって来て、白御飯と味噌汁を一人前、八橋の前に置く。
弁々 「はい、御飯。あと御御御付け」
八橋 「(トーストをもぐもぐしながら)……納豆」
弁々 「ん?」
八橋 「納豆が食べたい」
弁々 「(溜め息)まったく」
台所へ歩いて行く弁々。
その間、味噌汁を一口飲んで、頬を赤くしてほぅっと息をつく八橋。
すぐに戻ってきた弁々、パック納豆を八橋の前に置く。
弁々 「はい、納豆」
八橋 「魚はー?」
弁々 「はい?」
八橋 「(手足をバタバタ)やーきーざーかーなー」
弁々、引きつった笑顔で眉をピクピクさせる。無言で台所に消える。
八橋は納豆に醤油をたらす。
窓辺からちゅんちゅんと雀の声が聞こえてきて、窓辺のほうを見やる。ぼーっとしながら練りカラシを絞るので、大量に出てしまう。
八橋は気づかず、箸を逆手に持って、まっ黄色の納豆を混ぜ始める。
ぐるぐるぐるぐる。
さっと混ぜた八橋、そのまま白米にだばーっとかけ、大口を開けてかっこむ。
途端、顔を真っ赤にして口を押さえる八橋。涙目で味噌汁を一気飲みする。それでもげほげほと盛大にむせる。
そこへ、皿を抱えた弁々がやってきて、首を傾げる。
弁々 「どうしたの?」
八橋 「(息も絶え絶え)いや、ちょっと……」
弁々 「はあ? まあ、いいけど。はい、焼き魚」
八橋 「……えー」
弁々 「どうしたの?」
八橋 「……もうご飯はいいやー」
八橋、トーストをかじりながら。
弁々は引きつった笑顔で拳をべきべきと鳴らしはじめる。
弁々 「あ・ん・た・ねぇ~、さっきからワガママばっかり……」
八橋 「(慌てて)ね、姉さんにあげるわよ、姉さんだってご飯、まだでしょ」
弁々 「わ、私はいいわよ」
八橋 「なんでよ?」
弁々 「……お腹一杯だもん」
八橋、テーブルの上に目を戻すと、生八ッ橋の白い空箱が置かれている。
ジト目で弁々を見やる、八橋。
弁々は顔をそむけている。
呆れ顔でトーストをかじる八橋。
サクッ。