以下、登場人物紹介です。
○登場人物
・九十九弁々 琵琶の付喪神。背はやや高め。鉄壁スカート。冷静で大人びている……。
・九十九八橋 琴の付喪神。中背。太眉。勝ち気で無鉄砲……。長袖長ズボンのシマシマパジャマ。
・河城にとり 河童。緑色のツナギを上半分脱いで、上半身は黒いタンクトップ姿
<九十九姉妹ハウス 洗面所 朝 晴れ>
引き戸を開けっぱなしにして、八橋が洗面所に入ってくる。眠そうな顔
鏡の前で大欠伸。
洗面台の周りは、割りと小奇麗で水垢も無い。
洗面台に置いたうがいコップとマイハブラシ(ハンドル部の先にハロのマスコット付き)を取り上げる。
逆さにして置いてあったペラペラの歯磨き粉を手に取り、ブラシに粉をつけようと丸めて押し出すが、出ない。
八橋 「終わっちゃったかー」
空の歯磨き粉をくずかごへポイ。
身を屈め、洗面台下を開いて、中をガサゴソと漁る。
八橋 「ないなあ……」
立ち上がり、洗面台上を見回すと、弁々の分の歯磨きセットが目に入る。
八橋 「(ドアにむかって)ねえさーん、歯磨き粉借りるよー」
弁々 「(少し遠くから)いいわよー」
弁々の歯磨き粉をブラシにつけて(白と小豆色の縞模様)、ブラシをくわえる。
途端、顔をしかめる八橋。
八橋 「あっま、なにこれ?」
歯磨き粉の表面を見ると、「おたべ味・ニッキ風」。
無言で歯磨き粉をくずかごへポイ。
<九十九姉妹ハウス 寝室 朝 晴れ>
歯ブラシ片手に寝室に戻ると、入れ違いに弁々が洗面所に向かう。
すれ違いざま、
八橋 「ねえさん、またヘンなの買ったでしょ? 何よ、おたべ味って」
弁々 「うふふ、いいでしょ? おいしく歯磨きできるのよ」
八橋 「よかないわい。磨いた気がしないじゃない」
<九十九姉妹ハウス 洗面所 朝 晴れ>
自分の歯ブラシを手にとる弁々。
弁々 「あれ? (ドアのほうへ振り向いて)おたべちゃーん、おねえちゃんの歯磨き粉、どこやったー?」
八橋 「(少し遠くから)捨てたー」
弁々 「捨てたぁ? ん、もうっ!」
背伸びして、洗面台の上をあさる弁々。
短いスカートがゆらゆら。
<九十九姉妹ハウス 寝室 朝 晴れ>
寝室中央のテーブルに片膝立てて座る八橋。歯ブラシをくわえている。
手には朝刊『文々。新聞』を持っている。
八橋 「どれどれ、今日の運勢は……末吉。びみょー」
新聞をめくると、洗面台のドアが開いて、弁々が入ってくる。
口元を手で押さえて、顔に縦線が入っている。
弁々 「おたべちゃん……」
八橋 「どったの? ねえさん」
弁々の手に歯磨き粉のチューブがあるのを見て取る。
八橋 「ああ、前買ったやつ、あったんだ。どこにあったの?」
弁々 「洗面台の上だけど。この歯磨き粉、何……?」
手に持って示した歯磨き粉の表面には「ニュータイプ味・バイオセンサー風」。
弁々 「おねえちゃん、ブラッシングの度に宇宙が見えちゃったんだけど……何入ってんのコレェ?」
八橋 「ねえさんには、GN粒子味・対話風、のがよかったかな?」
弁々 「もうコレは禁止!」
歯磨き粉を懐にしまう。
八橋はぷくっと膨れる。
八橋 「えー、横暴よー!」
弁々 「ダメよ、もう、こんな危ないもん。一体何処で買ってくんのよ、こんなん?」
<妖怪の山、滝の裏 朝 晴れ>
にとり 「っくしゅん!」
テント前で、流れる川に釣り糸を垂れているにとり。
ずびび、と鼻をすする。
傍らには、MGサザビーがポーズをキメている。