沈んだ艦娘を妄想しただけです
なので続きません
後悔はしていないはず
────沈む
沈む………………
あれは………艦装
『私の』、艦装………
私は……轟沈した
──後ろから撃たれた。
───撃たれた?誰に……?
この艦隊で被弾したことの無い私が……?
いや違う…………油断はしていなかった
護ろうとしたんだ………
誰を………?
私は『艦娘』
提督のような人間ではない
他の娘もそうだ
死ぬことはない
所詮、"艦"としての魂が抜けるだけだ
でも、私は『死んだ』………?
──なんだろう、不思議な感覚
存在理由以外は、人間とほぼ同じ私達も、こんな『死』を意識する事なんてない
───ああ……あれは何だ……
…………あれは……私の服だ
この暗い水の中を、裸のまま沈んでいってる
冷たいなんて感じない
───“冷たい”………?
冷たいってなんだろう?
鎮守府で食べたアイス?
違う……それは幸せな‘’冷たい‘’
これは……不幸せな冷たさ
変な話だ……冷たさが分からない今、冷たさについて考えるなんて……
『─────!』
何かが聞こえる……
ああ、通信か……
──でも、私にはもう聞き取ることは出来ない
そういえば以前、提督がこう言っていたな……
『──お前達は沈ませない。沈んでも見つけ出して、連れ帰って来る。』
あれは、本当なのかな
──本当に、見つけ出せるのかな?
──私は、どうなってしまうのだろうか………
このまま、海の藻屑になるのかな
(──あの娘は、元気でいてくれるかな)
?……『あの娘』って誰だ?
───思い出せない
一緒に暮らしていた最高の仲間
誰…………?
あなたは誰?
私は………何?
これは何だ?
………これは、髪だ
私の髪だ
───そうだ……提督にこの髪を褒められたんだ。
───そうだ。‘’彼女”も髪が美しかった。
私が軽く嫉妬するくらいだったんだ
そうだ
彼女を助けようとしたんだ
意識がはっきりとしてきた
そうだ、私は助けることが『できた』んだ
仲間を……護れたんだ
「─────!!!」
叫ぶ
「─────!!!」
嗤う
「────…………」
声は出ない
呼吸の度、空気の代わりに水が体内に入ってくる
水圧で身体が押し潰される……
どれくらいしずんでいるのだろう
どちらがうえかもわからない
いしきは、とぎれとぎれになっていく
なんでたすけにこないの?
たすけにくるっていったよね?
わたしをたすけにきてくれるんだよね?
いしきは、また、きえていく
「…………………」
暗い。──いや
此処は?
──身体が動く
私は沈んだ筈だ
──なのに何故、
『ベッドの上に居る』?
頭が重い。
──違う、気持ち的にではない。
これは物理的な重量だ
(!?呼吸ができる?)
おかしい、周りに水が無い
『ヤットオキタカ』
誰かいる………
「────?」
?声が出ない
『……無理スルナ、オ前ハ産マレタバカリダカラナ』
「ワタ……シ………ハ……?」
『沈ンデ魂ダケニナッテイタカラ、器に入レ替エタンダ。──自分ノ名前、分カルカ?』
───名前?
─────名前?
私の名前………何?
『………ヤハリ、記憶ハ無イヨウダナ』
───いや、一つだけ覚えている
「私ハ………待ツ……」
そうだ、誰かを待っているんだ
誰かは解らない………でも、待たなければならない
『……自分ノ名前ヲ思イ出スマデ……ソウダナ、沈ンデキタカラ、《シー》トデモ名乗ッテオケ』
『シー………』
それが私の仮の名前
『サテ……ソロソロ始マルナ』
私の視界がブラックアウトする
意識が覚醒する
───そこは意識の中で無意識に存在する場所
海上だ
──目の前には、数人の少女
「──ヲ級、数1!!第二艦隊!一斉射撃!!」
無数に飛んでくる“それ”を、私は本能のまま防いでいた
───倒さなければいけない
(アレハ……『敵』)
「 ──助ケテ……」
頭の片隅にある、『待つ』と言う言葉も、いつしか消え去っていた
──そして口から出るのは、もう自分とって意味のわからない『たすけて』という四文字だけだった
頭の中でこんな感じの文章になりにくい妄想がいっぱい