ということでALHAでございます。もしそういうのがあったらご報告ください。できる限り修正したいと思うので……
今回も引き続き50層ボス戦でございます。
では新話どぞ~!
キリトside
馬鹿ヤローが、ブランシュのやつ……。
「A隊スイッチだ!B隊は石化したメンバーを拾ってボス部屋の外まで退避だ!」
ケイタの声が響く。ブランシュの身に万一のことがあれば代わりのリーダーは暫定的にケイタが務めることになっていたのでこの判断は妥当だろう。
しかし、ここでもうひとつ厄介なことが起きてしまった。ボスのゲージが先ほどブランシュの一撃で最後のゲージに到達したことで遅れて雄叫びを上げる。同時に金属質の皮膚の亀裂からパックリと中が現れ剥がれた皮膚が弾けるように飛散した。
「皆、防御だ!近くにプレイヤーの石像があったら優先的に守れ!」
俺は叫ぶがもうその頃には手遅れになっているプレイヤーの石像も多くブランシュと一緒に突っ込んだ多くのプレイヤーは石の破片と化していた。
「(クッ、せめてブランシュの奴だけでも……)」
幸いにもブランシュはまだ奇跡的に健在だった。故に俺はそれに寄ろうとした……が。
「キリト!駄目!!」
「うわっ!」
俺の体はサチによって突き飛ばされ宙を舞った。
何をするんだと喉まで出かけた声を、俺は彼女を見た途端に飲み込まざるを得なかった。サチの腰から下が色無き石となっているのに気付いたからだ。彼女の下半身がある所はさっきまで俺の体が存在したところ、つまりサチが俺を突き飛ばしていなかったら、俺もそこら中にある石像の仲間入りを果たしていたことだろう。
いつもの俺ならサチの安全を確保することを最優先にした筈だった。だが、俺の心は彼女を助けようという考えの前に奴を許せないという心が先行した。
「うぉおおおおお!貴様ぁああああ!!」
「キ……リト…?」
なぜだか分からない。だけど、今は何よりもあいつを倒したい、殺したいそんな気持ちが俺の心にフツフツと湧き上がってくる。理性ではまずサチを助けないとということは分かっている。だけど、奴に対する戦闘欲を抑えきれない。
体を持ち上げボスに向かおうとする俺をケイタの手が制した。
「どけ!俺はアイツを!!」
そこまで言ったところでケイタが俺の頬を叩いた。
「どうしたんだ!?キリト!!らしくないぞ!!君がパーティーメンバーより私情を優先するなんて!」
「……あ、あぁ。すまない……耄碌してたみたいだ。ありがとう、目が覚めた」
「それならいいけど……疲れてるんじゃないのか?」
「あぁ、戦闘中だから……かもな。少し後ろで休むよ。だけど、サチを運ばないと……」
「後ろは任せてくれ
俺はブランシュの石像を運ぶのをやむなく中断し、ケイタと一緒にサチを運んでボス部屋の外へ出た。その間にも奴の金属質の皮膚が飛んできたがテツオがしんがりを務めてくれたおかげで俺らに当たることはなかった。
破片が当たり砕けゆくブランシュの姿を後にしながら、なんで俺はあの時ボスに向かって行ってしまったのか……考えたが疑問が晴れることはなかった。
コペルside
「なんだよ、今のは……攻撃したところから石化ガスが吹き出たぞ……」
「あんなん、どうやって攻略すれば……?」
ボス部屋の外で待っていた僕達A隊だが、マズイな……。最後の攻防でこちらの士気が落ちてしまった。ブランシュめ……余計な置き土産を……
こうなってくると当然―――
「やだ、オレは抜けるぞ!あんなん勝てる筈がない!」
「ちょっ待って、ボクも!」
「私も抜ける!」
各々がポーチに忍ばせておいた転移結晶で次々と転移をしていく。
「ハッ、情けねぇやつらだぜ、全く!んなんだったらハナっからこんなトコ来てんじゃねぇよ!」
まぁ、カイの言いたいことも分からなくはないが、ある意味ではこれが普通だ。誰だって死にたくはない。一部それを否定しかねないバカもいるが、まぁあいつは例外だ。日常的にスリルを追い求めるような奴を僕は普通とは認めない。
しかし、どうやって攻略していこうか?この段はどうやら本体を攻撃すると同時に石化ガスが吹き出し攻撃したプレイヤーとその周囲にいるプレイヤーを巻き込んで石化させる。
この世界にはガードをしながら攻撃をするなんていうマネは一部の剣技を除いてできない。もし、そんなことが常時可能だったら皆が同じ行動をとっている。またもや例外のあいつらは除くが……
「A隊スイッチだ!B隊は石化したメンバーを拾ってボス部屋の外まで退避だ!」
攻略方法が分からない内に暫定的にスイッチ権限を得たケイタから要請が入る。当然か……、むしろ遅すぎるくらいだ。少なくともブランシュが特攻決める前には本当だったらスイッチはするべきだった。
だけどおかしい。ブランシュの奴はそれこそずっと攻略ギルドの副リーダー以上の役職を持っていた男だ。僕自身彼のことはそんなに知ってるってわけじゃないが、攻略を見る限りではあぁいう暴挙に出るような男じゃなかったはずなんだが……
「コペル! スイッチの要請が出てんだ! ノロノロしてんじゃねえよ!! シリカはもうディアベル達と一緒に出てんぞ!」
「!? あ、あぁ悪い、考え事してた」
「コペルもその辺旦那に似てきてんじゃねぇの?」
……やばい。指摘されると確かにそんな気が……。いやいや!そんなことはない……筈。
「……まずはあいつの攻撃パターン調べる為に少し防御的に戦おう」
「あぁ、あのカウンターガスや自分の外殻飛ばしてきてたやつな。それに外見からして今とさっきじゃ全然違いそうだしな」
カイの言う通り、奴の今の見た目は金属質の殻が全て剥がれ、形や質感こそほぼ同じに見えるが腕はもう動かすことはないと言わんばかりに現実の千手観音像のような姿勢を取って固まっており、剥がれた外殻はその周囲に浮かんでいる。
「大方は予想つくけどね。多分これからの攻撃はあの外殻を飛ばし続けるんだろう。腕のラッシュこそないけどモーションが見えない分よけにくくはなったろう」
「それに石化するブレスは当然のごとく撃ってくるだろうな。こいつの代名詞を取り上げるなんてことはしねぇだろ、流石に」
僕とカイの意見をまとめれば物理は外殻飛ばしオンリー、特殊攻撃は石化ブレスオンリー、カウンターとして攻撃加えたやつに石化ガスと……
「まぁあとは攻撃しながら考えるとするか、行くよカイ!」
「おうよ!」
言うや否や、カイはボスに向かってダッシュする。……あいつ、人の話聞いてたか?
しょうがない、僕もサポートできる位置まで移動しないとな。
(ドックン)
そう思いボス部屋に足を踏み入れた瞬間、僕の心にどす黒い何かが流れ込んできた。幸いすぐに消えたので行動に支障はなかったけど……。瞬間的に攻撃意欲を増やされたような、それでいて相手を攻撃すること以外どうでもよくなってしまうようなそんな感情。
……まさか、ブランシュがあんな暴挙に走ったのは―――
「行くぜ!《チャージ・ミューティレーション》!!」
相変わらず過ぎてカイじゃ判断材料に欠けるな……。あの攻撃はカイの持つソードスキルの中では唯一僕がさっき言った防御しながら攻撃する技で扇風機のように回した両薙を相手に押し付け切り刻む、尚且つ武器を回してる間は特殊攻撃無効まで付く。
そのおかげで石化ガスの無効には成功したがHPが全然減らないところを見るとやたらめったらな防御力は健在か。
「チッ、しゃらくせえ!!だったらこれでも…」
「待て、カイ!今の技以外では確実に石化するぞ!!舞い上がるな!」
「!? そんなこと言ったってよ。もう技止めらんねぇよ!!」
あのバカ!少し考えりゃこれくらい……やっぱり、そういうことか……
……はぁ、どっから移ったんだろうな、このお人好し。
ソードスキルでの攻撃に入ってるカイの目の前に入り盾でガード態勢を取る。犯罪者カラーになるのくらい我慢してくれよ!
「ぐっ!!」
「コペル、お前何して……!?」
ダメージは予想以上になかったな、一切無いとは。あいつ自身の発動していたソードスキルは全10連擊の《旋風独楽》、モーションから見て間違いはないが3連撃で止まっている。アイツ途中で無理矢理止めたのか。
だが、3連発分のノックバックはもろに受け僕の体はボスの方向へと飛ばされ、そして……
「コペル、そのまま行くとまずいぞ!!」
分かってますよ、ディアベル……、こうなること承知で僕はこの行動をとったんだから。
僕の体はボスの体にぶつかり、予想した通り奴の体からガスを噴出させてしまった。
キリトside
「コペル!!」
フロアの外で戦いを見ていた俺は叫ぶと同時に飛び出す。これ以上仲間がやられるのをただ見てるのは耐えられない!
そもそも、さっきのスイッチ時から攻略人数が半減している。フルレイドでも厄介な相手であることには違いない。にも関わらず、残ってる奴らで対応しないのもおかしな話だ。
煙が晴れたそこにはコペルの姿がちゃんとあった。だが盾を持っていない利き手側が完全に色をなくした石と化していた。顔はとりあえず無事なので完全に石化することはなかったと推測できるが片側が石化しているという危険な状況には変わりない。
俺はコペルに走り寄り、抱え上げようとする。が、そうはさせないと思ってるのかどうか知らないがボスの金属片がこちらに向かって飛んでくる。
まずい!この状態じゃコペルを今離したところでガードが間に合わない。回避はもっとありえない。それだと、最悪コペルを犠牲にしてしまう。
仕方ない。俺は抱えてる姿勢を崩さずに金属片のある方向に背を向け、衝撃に備える。俺の防具は革防具だがHPがMAXならば一撃は耐えられると踏んでの行為だ。
不快感に備えていた俺だったが、いつになっても来るべき不快感がない。その代わりに聞こえてきた音が金属と金属が衝突した時に出る音、そしてカイの声だった。
「コペル連れて外に退避してくれ!!キリト!!」
「分かった。助かったよ、カイ」
金属片の方はカイの攻撃によって反射され、そのまま天井に音を立てぶつかったみたいだ。
しかし、この戦いになってから皆どこか変だ。ブランシュの愚行といい、どこか攻撃的になってる。ヒースクリフやディアベルあたりはさっきまでの戦いとほとんど戦法は同じで変わりないように思えるが他の、今攻撃を加えているアスナまでもが若干その兆候が見える。
そんな時抱えていたコペルから話しかけられた。
「キリト、ゴメン。迷惑かけた」
「迷惑だったら1層の時に経験済みさ。意外と無茶する奴だったんだな、お前……」
「気付いたらって感じでね……、それより聞いてくれ、キリト。アイツの能力は石化ブレス以外にもある、一言で言えば戦意の増幅だ」
戦意の増幅?……!? そうか、だからあの時。
「心当たりあるって顔してるね。多分間違いないよ。僕は2度目にフロアに入った時、確かにその能力と思わしき力を受けて、一瞬ボスに特攻を仕掛けようと思った。能力が分かってるにも関わらず……だ。だからコイツの最後の段の本質は“プレイヤーの戦意を掻き立て、その攻撃を圧倒的な防御力で防ぎ、そして攻撃したプレイヤーを石化させ自分の周りに浮いてる金属片でプレイヤーを砕く”これがあいつに与えられているアルゴリズムなんだ」
嘘だろ!俺達は基本的にボスを倒そうという意思でこの攻略に臨んでいる。大なり小なりその意識を持たずにやってる奴なんかいてたまるかって話だ。だけど、ここのボスは戦意を掻き立てその意思を増幅させ冷静な判断を鈍らせる。
……冗談じゃない、皆の攻略しようっていう心すらアイツにとっては俺達を倒すための武器だって言うのか!?
……ここまで来たけど仕方ない。これは何らかの対策を打って出直すべきだ。
「皆!一度退け!コイツは皆の戦意を掻き立て冷静な判断を鈍らせる!!一度出直そう!!」
俺の言葉はここからじゃ届くかどうか微妙だったが、一部の驚愕した顔を見るになんとか数人には聞こえたみたいだ。よし、これで皆が退けばこれ以上の犠牲は……
「そうは行かない。我々には戦って勝ち残る他に道はない!」
そう言ったのは他でもないレイドリーダーであるヒースクリフだった。
「何故だ!ここで退かなきゃ唯々犠牲が増えるばかりだぞ。それにさっきからボスのカウンターでくるガスを避けて大振りな技が出来てない。このままじゃジリ貧だ!!」
「そう思うのなら周りを見るといい。どれだけこの場に石像があるのかな?」
!? 石像……そうか、この場で離脱したら石化したメンバーがどうなるかなんて一目瞭然だ。壊される。プレイヤーカーソルが出てるからまだナーブギアとの接続を保ってることには変わりない。つまり、この場で動ける俺らが全員退避したならば次に狙われるのは石化したプレイヤーしかいない。しかも今彼らはガードすることも避けることもできない。待っているのは死しかない。……だけど!!
「それでもこれ以上先頭の継続は難しいことぐらいあんただって分かるだろう!ここは今無事なプレイヤーだけでも退いたほうがいい!!」
「ふむ。だったら、君らは石化したプレイヤーを退避させてくれ。残っている全員で、だ。
その間の攻撃は私が引き受けよう」
「あんた一人でか?無茶だ。俺もそっちに加わる」
「いや、私一人で十分だ。君はさっきボスの能力をもろに受けて意識が一時的に飛んでいたのではないかい?」
クッ、確かに……。だけど、あのボスの攻撃を一人で受けるなんて……
「心配してくれるのはありがたいが私には隠し玉というのがある。それを用いれば10分は持たせられるはずだ」
10分持たせる……だと?仮にも50層のボスだぞ!……だけど、ここでゴネるよりあいつを信用した方がいいか。
「……あんたを信用するぞ。皆戦いを中断して石化したプレイヤーと一緒にフロアの外へ避難だ!B隊も手伝うんだ!」
「おし来た!行くぞ皆!」
「あぁ!だけどくれぐれもあいつと戦おうなんて思うなよ!その瞬間死が訪れると思え!!」
俺はB隊にも声をかけ、それにダッカーとケイタが応じ、動けるメンバーがフロアになだれ込む。それに反応したのかボスの金属片がなだれ込んだメンバーに向かって飛んでいく。
だが、その間に入りガードの態勢を取ったヒースクリフが飛んできた金属片を全てボスに向かって反射させていた。その金属片がボスに当たると同時にボスのゲージがガクッと減りついにレッドに到達するが、退避すると決定した今となってはどうでもいいことだ。
しかし、盾が光っていることから間違いなくソードスキルの一つではあるはずだが、盾を使うスキルなんて聞いたことがない。気にはなるが、今はそんなのを聞いている場合じゃない。俺は俺のやるべきことをやるだけだ。
一番近くにあったプレイヤーの石像を抱えて俺がフロアの外へ出る時、目の端で信じられない物を見た。
ヒースクリフは自分一人がボスの攻撃を引き受けると言っていたからあの人がボスと戦っているのは分かる。だけど、他の血盟騎士団の一部が再び交戦しているのだ。
その中で唯一女性プレイヤーの姿が確認できる。勿論アスナだ。だけど、ヒースクリフの指示を無視して攻略に当たるなんて彼女らしくもない。
「何をやっているんだ。ヒースクリフが囮を買って出ている間に石化したプレイヤーを回収して回る手筈だろう!なんでアスナ達が攻撃しているんだ!?」
それを聞いたであろうアスナが振り返った時、俺は既視感を覚えた。あの時の……ブランシュの目とほぼ同じなのだ。何かに執着している、故にボスの能力に振り回されている。
だけど、《閃光》の異名を取る程の実力を持つアスナが一体何を執着することがあるんだ?
「今がチャンスってあなたには分からないの!? 団長があのボスの攻略法を示してくれたのよ。ボスの周りに浮かんでいる金属塊を弾いてぶつければボスのHPはかなり減る。ここで退避するよりも攻撃をした方が攻略組の為になる!だから団長が囮をしてくれてる間私達は攻撃しているのよ!邪魔をしないで!!」
ダメだ、完全に狂っている。いつも冷静沈着な判断を下し、攻略組を引っ張ってきたアスナと同一人物とは思えない。
と思っていると再びボスの外殻が剥がれ、全方位に向けて放たれようとしていた。それをチャンスと見たアスナがパリィの姿勢を取って打ち返そうとする。確かにこのまま倒せれば願ったりな話だが……
ボスの外殻は完全に剥がれ、さっきまでのスピードとは別格の速さで飛んでくる。アスナは自分に向かって飛んでくる金属片に狙いをつけて突っ込むと同時に俺はアスナの剣からライトエフェクトが出ているのに気付いた。
それを見た途端俺には悪寒が走った。はっきりとは分からないけどこのまま気のせいだと錯覚したらとんでもないことになる、そんな感じが……
気付いたらアスナの下に走り出していた。だが、遅かった。アスナに迫る金属片は俺よりも早くアスナに到達し、彼女のソードスキルを受けた。
途端、今度はその破片からも灰色のガスが吹き出し、破片こそボスの元に飛んでいったが
ガスはそこで停滞し、アスナを包み込んだ。
おかしいな、ブランシュとアスナが同じような感じで石化するなんて……
最初は誰か庇っての方が美しいと思ったんですけど、書いてる途中で“そういえば、アスナってキリトとお昼寝イベントする前までは攻略の鬼とか言われてたんだっけ?”などということを思い出し、ボスのゲージがレッド行ってるなら能力と相まって突っ走ってしまうのではなどと考えこのような形になってしまった。後悔はしてない。
そして、これがブランシュが暴走してしまった理由です。……おかしい、ボスをこんな強くするつもりはなかったのに、ってか下手すると骨百足さんより強くなってるんじゃ……
あと、少しだけ出てきた神聖剣。圧倒的な防御の下強いって言ったらカウンター系統しか出てきませんでしたね、正直。
そして、ヒーローはまだやってこない、はよ出せという声が聞こえてきそうですねw
さて、長くなってしまったのでこの辺で締めます。
ご感想・ご意見・アドバイス等々ありましたらビシバシとお願いします。
今回はこの辺で……ではでは!