活動報告の方にも書いたんですが、改稿の方は延期いたしました。
本当に申し訳なかったです。
そして本日から復帰いたします。って訳で新話の方早速どぞ~!
フレッドside
解除薬、それを依頼した47層のNPCが言うには体の凝りを取るものらしいんだが、……どう考えても凝りなんてレベル超えてんだろ!
……まぁこの際そいつは置いといて、だ。相変わらず、ヒースさんの知識の多さには驚かされる。俺自身βの頃は自分の好奇の赴くままに道ともいえぬ道を行ったりしていたもんだから人の事言えねぇかもだが、こんな最前線のこんな辺鄙な場所のクエストをよくもまぁ見つけたもんだ。まぁもしくは……っと、んなんを考えてる場合じゃねぇな。こんなのは考えても答えの出ない問題だ、もっと決定的なものがなけりゃな。
で、だ。解除薬に必要な素材をドロップするMobは《マンドラゴリラ》根っこが人の形をしているとされる植物《マンドラゴラ》をモチーフにされているMobだろうがコイツは根っこの部分がゴリラの形、ってかゴリラそのものらしい。POPする時は体が地面に埋まってる状態で登場し、引き抜くと同時に奇声を上げる。その声は麻痺効果のある攻撃でほぼ確実に麻痺る。麻痺っつーのは石化ほど絶望的な状態異常じゃあねえが、治療手段がなけりゃ石化とほぼ同等の恐ろしさがある。なぜって麻痺の効果は自然治癒までにおおよそ10分かかる。そんな時間あったらバトルヒーリングでもない限り雑魚相手でも死は免れない。下手すりゃ攻撃されてる間ずっと死に対する恐怖を感じる都合上、一発で全てが台無しになる石化よりも精神的な意味で恐ろしいデバフかもな。
でもって、その麻痺してる間にゴリラが自慢のパワーでプレイヤーが回復しない内に叩き潰す、と中層プレイヤー達じゃ若干キツそうだが俺らだったら難なく攻略できんな。
「お前とコンビ組むってのも久々だな。俺が留守ん間、戦闘してないから鈍ってる……なんてこたぁないよな?」
「誰に聞いてんだよ、旦那。俺がそんな大人しそうに見えんなら、リアルに戻った後、眼科行った方がいいぜ?」
そりゃそうだ。コイツが俺に言われたからぐらいで戦闘訓練を怠けるなんて事があったら怠けてる間アインクラッドの天候は全フロアで雪になってんな。
「じゃ、まぁボチボチと《マンドラゴリラの薬根》狩りを始めるとしましょうか。一応作戦としては俺がゴリラを引っこ抜くから、お前は声を回避して潰せ。いいな?」
俺はそう言いながら昨日ホームに帰ってからリズに文句を言われながら作ってもらったあるものを取り出す。それを見たカイは―――
「でっけぇえ!!」
―――だった。
まぁ分からなくはない。なんせ刃渡りはおおよそ2m、刀身だけで俺の身の丈を軽く上回る。大人の俺の身長でさえ上回るような大剣だ。子供のカイが見たら驚くんは無理ないこったろう。
「おい!また心ん中子供とか思ったろ!? 旦那の顔見りゃ一発で分かんだからな?」
……うん、ここは相変わらずの通常営業か。少しは変わってくれることを願ってたんだが無駄だったか。
「まぁいいや。それも重要だけど、旦那、そのバカでけぇ剣なんだよ?」
「コイツは武器カテゴリー《豪大剣》にある固有名“ワイルド・ドラゴン”だ。日本語なら“蛮竜”ってとこかな」
「名前なんてどうでもいいんだよ!問題なのはそんなん振り回せるかっていうこったよ!」
あぁそういうことね。全くいらねぇ心配を……
「問題ねぇよ。昨日の内に大体の確認はしといた。要求筋力値にしたって《剛力》持ってる俺には無いに等しい話だしな」
多分《豪大剣》に属する剣ってのはこういうバカみてぇにでかい剣だからこそ条件の一つに《剛力》が必要だったんだろうな。
「……ってかさ。さっきから気になってたんだけどよぉ、これ例のゴリラなんじゃね?妙にでかい花なんだけどよぉ?」
カイが俺が寄りかかってる植物を指差して指摘してくる。見ると確かに怪しそうな花ではある。件のゴリラは引っこ抜かない限り触れてもノンアクティブらしいからありえなくはない。それに索敵に反応こそないがもしかしたらレオンみたいに俺のサーチングを上回るハイディング性能を持ってるかもしれないことを考えると引っこ抜く価値はあるな。
「可能性はあるな。うしっ、カイ防御準備。出て来次第、即効で潰せ!」
「それはいいんだけどよ、旦那もオート防御あんだろ?“疾風結晶”使ったらいいんじゃね?」
「簡単に言ってくれるな。あれは一般プレイヤーに需要こそ少ないが“結晶”の名に恥じない高価なアイテムなんだ。ボス戦以外ではそうそう使えるようなシロモノじゃねぇよ」
属性結晶の今の俺のストックはボス戦で使っちまった疾風と火炎を一つずつ除いて疾風×1、氷冷×2、大地×1、他のプレイヤーと比べたら確実に多いが雑魚に使ってられるほどホイホイ使える数はない。それにわざわざあらゆる噂を検証してやっとこさこれだけかき集めたのを雑魚に使うのはいくらなんでももったいない。
「まぁ安心しろ。基本的な属性攻撃は結晶なしでもできはするさ。雑魚なら基本技で十分屠れるだろ、両手剣スキルも使えないわけじゃあるまいし」
「はいはい、分かったよ。じゃあさっさと引っこ抜いてくれや。ぶった斬ってやっからよ!」
カイに唆されて俺はゴリラのものと思わしき植物の茎を掴む。《剛力》を持ってる俺からしたらこの程度引っこ抜くのはたやすいだろうな。カイを見ると防御姿勢は既に整っている。じゃあ、行くか!
「よっこい……せぇやぁ!!」
「PigyaaaaaaaaaaaaaaaaAA!!」
うっせぇ!!予想違わずマンドラゴリラだったんはいいけどこれヤベェ!!頭に直接大音量のデータを送り込まれてるっつーことだとは思うんだが予想以上に刺激が強ぇ……。これならボスMobの一撃食らってた方がマシとも思える違和感がしばらく続いた後、急に止んだ。カイがぶった斬ったな。
俺はポーチに入れておいた消痺結晶を掴んで回復する。さて、俺も参戦させてもらおうか。
「行くぜ、《
豪大剣基本2連擊、焼鬼。結晶なしでも放てる炎属性を纏った剣がゴリラの体をV字に切り裂く。さすがに植物+動物、炎はよく効くようで元々3分の1程度減っていたゲージの残りを全て持って行き切傷から噴く炎が奴を構成しているポリゴンをも燃やし尽くした。
「やっぱ、炎が弱点か。ま、弱点が分かっちまえば簡単なことだわな」
「見た目も派手だし、威力も相当だな。旦那のソレ。俺もそのスキル使いたかったなぁ」
「やめとけって。おそらくユニークだろうから俺しか持ってないだろうけど、結晶使った時の不愉快さは真面目に半端ねぇぞ?」
「それでも、さ。実際結晶使わなくてもさっきの威力は出せんだろ?だったら何も問題ねぇじゃねえか」
さすが、カイ。派手さと強さがありゃ大きめのデメリットでも背負うか。だけどさ……
「お前だってチートじみたスキル持ってんじゃねぇか《両薙》未だに誰も習得してねぇんだろう?」
「そりゃそうだけどよ。やっぱ斬撃が飛ぶってかっけぇだろ!両薙じゃ斬撃が飛ぶなんてことねぇしな……」
まぁ確かに憧れではあるか。実際俺も子供ん時はよくアニメや漫画の超常じみた斬撃には惹かれるもんがあったってのは事実だし、弟……天馬も俺がこっち来るまではそういうのハマってたしな。
「で、肝心のアイテム出たのかよ?マンドラゴリラの薬根……だっけか?」
「おぉ、そういやなんであんなゴリラ倒してるのかってそんな事情だったな。さてさて、と」
俺はメニューを開き、アイテム欄を確認する。勿論今まで手に入れたことのないアイテムだから一番下にあるだろうと欄をスクロールしていく、が。
「……ねぇな。ドロップしなかったか。ま、そんなこともあらぁな、次行くぞ、カイ」
「へぃよ。ま、一匹程度じゃ物欲センサー引っ掛かったなんてのは言えねぇな、とっとと終わらしてさっさと夜狩り行こうぜ」
夜狩りねぇ……、俺としてはまだ中断しときたいとこなんだが、一ヶ月以上我慢させといて、再び我慢期間入ったら本気で早い内に鬱憤爆発してギルド抜けられる事態になりかねねぇな。……ま、いっか。一応俺のポーチに《大地結晶》忍ばせときゃ何の問題もねぇ訳だし。
……あれから何時間経ったっけ?朝の十時には開始して今俺の視界は夕焼けのオレンジに包まれている。ってことは軽く6時間は経ってる、と。
一応、俺達はカイが最後を決める時に限っては薬根も多少は出るんだが、俺の時に限ってそれが全く出ない……俺の時だけセンサー働いてる?
「旦那、根っこいくつ集まったよ?」
「……残念ながらセンサーにリアル引っかかったようで0だよ」
「えっ、旦那それマジで言ってる?」
流石に予想外だったのかいつもの調子で詰ることもなく素直に驚いていた。まぁそりゃそうだ。クエストのキーアイテムなので多少レア扱いされてるにしても6時間やって1個も手に入らんのは激レアなアイテムでもあるまいし……常軌を逸している。驚きの耐性が付いてきたカイといえど驚愕は必至か。
「まぁ、そんな分かり易い嫌な顔するな。当人であるあれが一番辟易してるところなんだから……と」
サーチングに反応アリか。五人のカーソルはグリーン……今この辺には血盟騎士団とセイントセーバーズのリーダー死亡の為残党管理をしているドラゴンナイツのツートップギルドが急を要するということで俺ら関係者以外立ち入り禁止を設けている。まあゲームである以上リソースは限られてくるんで当然っちゃ当然の処置なワケだが、俺の記憶する限りこの解除薬のクエストに名乗りを上げていて尚且つ5人での参加は一組しか思い当たらない。
「あぁ、やっぱりあんたらか」
「そういうそっちこそあんたらか、さ。黒猫団諸君。君らがこんなとこまで来てるということは素材は集まったってところか?」
「えぇ、自分たちはサチの分だけで良かったんですけど多少POPに恵まれなかったみたいで今になってやっと収集完了であとは依頼人に報告するだけです」
単純に羨ましい。俺としてもとっとと終わらせてあとは通常営業と行きたいのにドロップ率に多少どころじゃない難が出ているんで終われない……はぁ。
「羨ましい限りだな。俺らは二人分稼がないといけない上にドロップ率が恵まれてないらしくてな。俺だけだったら未だに一つも取れてない状況だよ」
「げっ。それホントかよ。ツイてないってレベルじゃなくね?」
全く……、ダッカーの言うとおりだ。豪大剣手に入れてしまった運で他の運要素に多大なる下降効果がついちまったんじゃ……
「なぁ、フレッド。話からするとカイが倒した時はアイテムは出てんだよな?」
「あぁ、その通りだが……、なんか思い当たることでも?」
俺の返しにキリト君が迷う素振りを見せた後、もしかしたらと続けてきた。
「いやな、フレッドの豪大剣って属性結晶使うってのが大前提の代物だったろう?」
「まぁそうだわな。つっても、結晶みたいなレア品こんな雑魚どもには使ってないけどな」
「そっか……、俺一回だけ「火炎結晶」使ったことあるんだけどな。その時、今まで確実にドロップをしていたMobがその時に限ってドロップしなかったことがあるんだよ。もしかとは思ったんだんだけど……、使ってないならその話はないな。忘れてくれ」
「…………あぁ、確かにその線はなさそうだな。まぁ俺らだけでもPOP率に関しては割と好調だからな。」
俺がキリト君の推察に冷や汗を流しているのがバレたらしくカイの奴が俺の肩に……ではなく手が届く上限の高さであろうトコに手を置く。
「旦那、そこで黙るってことは何か心当たりあるな、おとなしく白状しな」
「……はい。確か一人で豪大剣の熟練度上げしてた時属性攻撃で仕留めるとドロップがなかったような……ことを思い出しました」
訪れる静寂。そして数瞬後―――
「「「「「「はぁああああああああ……」」」」」」
―――俺を除くその場にいた全員からため息が上がった。
「なぁ、旦那。なんであんたキレてるときとボケてるときの落差そんなに激しいの?」
あれから黒猫団諸君と離れた後POPしたマンドラゴリラを属性攻撃を使わず倒した結果、出ましたよ、件の根っこ。
おかげでカイはさっきから俺を詰っている。まぁ、カイが詰りたくなると思うのも無理はないが仕方あるまい、俺自身ですらよく分からないんだし。
耳にタコができるほど延々詰られていい加減反論してやろうかと思った頃、森の出入り口にいたヒースさん御一行を見つけた。彼らは森にいるプレイヤーを管理している、全員出てきたら封鎖を解除しないといけないのでまぁ当然の処置だろう。
「やぁ、ヒースさん。俺らは回収終わったぜ」
「ふむ、君にしては随分時間がかかったね。君らでラストだったよ。大方、属性攻撃で敵を倒してしまった為に問題のアイテムが出なかった、といったところかね」
「あぁ、大正解だ。俺の方はリアルラックのなさが原因だけどこのバカは調子乗って属性攻撃で決めてたんが原因だ」
カイ、てめぇが返答してんじゃねぇよ! 他人に言われるのはスッゲェ腹立つんだわ。そしてヒースの付き添い二人! てめぇらもあぁやっぱり的な顔してんじゃねぇよ!!
……まぁいいや。今はそんなことどうでもいい。俺はできるだけカイ達に対する怒りを抑えてヒースに話しかける。
「ヒースさん。ちょっとこの後話があるんだが、時間は取れるかい?」
さて、相変わらずなフレッドとカイのコンビでした。
そしてユニークスキルホルダー二人の話し合いが次回内容です、大方の人は予想付きますかね。
そしてここからは事務報告です。
前書きでも書きましたが、本当に申し訳ない。予想以上に改稿版へのモチベーションが上がらず、一度は捨てたこの小説を続けることに相成りました。
次回以降もできればこの小説読んでいただければ嬉しいです。
今回はこのへんで、ではでは!