では早速どぞ~
「悪かったな、なんか無理に時間を空けてもらったみてぇで」
「何気にすることはない。私も君とはいつか是非ちゃんと話してみたいと思っていた。それに50層を攻略した直後だ。別段急ぐ用もないさ」
あの後、日を改め、ということで現在、根っこ採取の翌日俺はKoBの本部に招かれて俺とヒースクリフのみがだだっ広い部屋の中央で話している。
相変わらず……戦闘時のみならいざ知らず、こんなお喋りの間でも隙がないというか話し相手である俺を威圧しているかのような緊張感を漂わすな、このお人は……。まぁ俺の考えてる通りならこの空気も当然か。
「まぁ、まずは互いにおめでとうといったところか。お互いに奥の手を見せる結果になったのは痛かったかな?」
「ふむ、まぁあれは仕方なかろう。仮にもハーフポイントのボスだ。むしろ我々の奥の手とあれだけの被害ですんだことは誇るべきことだろう」
あれだけ……ねぇ。96人の攻略組が参加した50層ボス戦で攻略組屈指のギルド・セイントセーバーズのリーダー・ブランシュを含め24人の被害、つまりは4分の1も死亡した戦いの被害をそんな言葉で済ませられるのはあんただけだろうよ。
「で、だ。フレッド君、私に話したいことがあるとのことだったが、一体何の用だろうか?」
ま、そうだわな、とっとと本題に入ろう。俺だってここに50層で死んで逝った奴の追悼会をしようって訳じゃねぇ。気付いた事をありのままに伝えることにしようか。
「じゃ、お言葉に甘えて。単刀直入に聞こう。ヒースクリフ、あんたは茅場晶彦か?」
「……ほぅ、なかなか面白いことを聞く。なぜそう思ったのか、参考までに聞かせてもらえないかな」
ド直球に聞いてもポーカーフェイスか。少しくらいは怒りでも見せるかと思ってたが。まぁいい、だったら疑う理由を話していこう。
「あぁ。もとよりそのつもりだ。まず、俺はこの世界に茅場晶彦は潜り込んでいると思っていた。その理由は実に簡単だ。MMORPGじゃなくてもゲームなんてもんはそれこそ自分がやらなければ面白さなんてのは欠片もねぇ。俺にはリアルでゲーマーの弟がいるがあいつのやるゲームを見てても何ら面白みは見出せなかったが自分がプレイすれば見ただけじゃ分からなかった面白さが多少は理解できた。茅場はこの世界を作り出し観察することこそが至上の目的てなことを言っていたが、このゲームがスタートしてから現在まで約一年と少し……ただ、観察するだけってのは退屈すぎんだろ」
「なるほど、一理はあるが、それでなぜ私が疑われることになるのかな?」
「まぁ話は最後まで聞こうぜ?当然容疑者8000人の中であんたが最も怪しいと疑う理由は二つほどある。一つにあんたのそのエクストラスキル《神聖剣》だ。この世界を観察するという茅場の主目的を達成するには、まぁ一番手っ取り早いのはそれこそ外から眺めるのがそうだが、もしゲームの中でそれを達成したいのであれば絶対的な防御力を以てゲームオーバーにならないことが良策と言える。コペル達に聞いたとこによるとそのスキルは非常に防御向きな性格してんだろ?」
「なるほど。そうなると確かに君の私に対しての容疑は分からなくはない。しかし、それだけで私を疑うというのもどうかと私は思うがね」
「勿論、それだけじゃねぇ。二つにあんたのボス戦へ意欲を示したタイミングだ。アンタは20層攻略でソロとして参加し、21層の攻略あたりからKoBというギルドを作り上げ、あとは今のように攻略組の中でも最王手なギルドだ。だけど妙なんだよな、俺はそれまでもそれからも攻略組の一角として前線へ入ってきたが参加するまであんたの噂は一切聞かなかった。俺はあんたを見た瞬間からポテンシャルはおそらく俺よりも高いと思っていたのに、なんで最初から攻略組に入らなかったんだろうと疑問に思ってた。あんたの性格見るに『今まで怖かったんだけど、攻略組の活動を見て俺自身にもできることがあるんじゃ』とかはねぇと思うしな」
俺が冗談っぽく笑うと、向こうもふふっと言って続ける。
「確かに私のガラではないが、万一という可能性もなきしにあらずではないのかな、もしかしたら今の私はただ強がってるだけで現実では引っ込み思案な大人なのかもしれない、もしかすると君のように英雄願望が強い人間なのかもしれない。現実の私自身を知る人間ならまだしも性格のことなどこの世界で初めて会った君には分かるはずはないと思うのだが」
……別に俺は英雄願望が強いわけじゃねぇぞ。ただ単にこの前はカイに対する言い訳で言っただけだし、ヒースクリフは知らねぇはずだが黒猫団助けた時だってたまたま上から乱入したからそれに合わせたジョークのつもりで言ってるからな。
俺は誰に向けてかよくわからない言い訳を頭の中に押し込めて再びヒースと話す。
「まぁ、確かにそうだ。今の俺にホントのあんたを確認する術はない。だけど、あくまで疑いの根拠の一つだ。よくよく考えてみればという色の方が強いかな?そういった点でもう一つ、あんたの伝説ってのも俺が怪しいと思ってる根拠の一つだ」
「伝説?」
自身は全く身に覚えがないといった風に首を傾げるヒースを置いて俺は説明を続ける。
「あんたのトコの団員がよく漏らしてるみたいだぜ?『団長様はHPがイエローに陥ったことは未だない』ってな。じゃあ逆の話、どうすればイエローに陥らないかと考えると……」
「なるほど、ゲーム開発者の茅場晶彦であればイエローに陥るような情報を前もって知っておりそれを回避していったと、そういうことかな?」
「まぁそういうことだ。せっかく中から観察しててもこの世界で死んじまったら意味ねぇし。ボス戦なんかで皆の目が光る中で死んだら復活なんてできないしな。だけどさ」
俺はここで一旦区切り用意された茶を口に入れてから再び口を開く。
「50層を超えて今後戦闘は激化する傾向になるだろうが、果たして情報だけでなんとか切り抜けられるか?当然前情報を持ってるってのは一般プレイヤーからしたら相当なアドバンテージだが、知ってても避けきれない攻撃も当然あるんじゃないか?ならばそういう攻撃に対してどういう対策を打つか?簡単な話だ。圧倒的な防御力……つまりはあんたの持つスキル《神聖剣》、その能力がどんなにいかれた物でもユニークスキルという特別なスキルを冠していればプレイヤーからしたらそれを認めざるを得ないし、自分達のトップがそれを持っていれば攻略組の士気が上がる……故に俺はあんたを茅場晶彦だという結論に至った」
「…………」
だんまり、か。まぁいいさ。俺の狙いはあくまで気付いたことを伝える。それだけなん……
「仮に今の君の言ったことが真実、つまりは私が茅場晶彦だった場合、君はどうするつもりかね?今君が言ったことは君自身の推論であり、証拠が何一つないようだったが、私が認めなかったらこれを世間に言うつもり、かな」
へぇ、口を開いてくれるたぁ驚きだな。俺的に次口を開くときは『出て行ってくれないか?君の妄想には少し付いていけそうにないのでな』的な感じで追い返されるとでも思ってたんだが……
俺は両手を挙げ冗談めかしてヒースの発言に答える。
「まさか!そんな馬鹿げたことしたって大抵は最強エクストラ同士が喧嘩したって思われる程度だろうよ。仮に俺の話を信じた奴が攻略組にいたらそれこそ士気に関わる。攻略を楽しみたい俺にとってそんなギスギスを攻略組全体に持ち込むなんて馬鹿げた考えは俺の頭の中に一つの塵ほどもないさ」
「だとすると、君の行動は少し理解できないな。いくらなんでも軽率すぎる。一切の確証がないまま、疑いをかけてる本人に直接連絡を取るなんていう事ほど愚かしい行動はないように思うのだが……?」
そりゃあそうだろうよ。証拠が一切ない推理、これが商業漫画の世界だったら絶対にありえない話だ。まぁ、だけどさ……
「そんな堅い事言いなさんな。確かにあんたが茅場であればおそらく疑いを持つ俺をこの世界から強制退去させる術もあんだろうがな。俺は茅場明彦という人間を雑誌、そして始まりの日に会った時ぐらいしか接点はない。けど、それらの情報を元にたとえどんなことをやっても強制退去なんていう暴挙は恐らく取らないっていう憶測が俺にはある」
まぁそういう暴挙に出たところで首を絞めるのはそれこそ
「理由を聞いていいかな?」
ヒースは今までの会話の中で一番興味ありげにずいっと前のめりに聞いてくる。
「当然。茅場晶彦という人間は天才ではあるが子供のような感性を持っている。世界を頭の中で創り上げその世界で冒険してみたい、誰しも子供の頃に抱いていた幻想だ。しかし普通の人間であれば幻想は幻想、大人になるにつれて現実ではありえないモノに対しての興味は薄れ現実を見、そしていつの間にかそんなことを思っていたことすら忘れていく。だが、茅場明彦は違った。あいつは子供の幻想を現実にし、そしてこのSAOの中でGMという名の神になり一般のプレイヤーができないようなこともできよう。しかし、もしそんな権限を使ってプレイヤーを排除することを主目的にするようなイカれた思想持ってるような奴だったら、この世界にいるプレイヤーはもっと死んでるぜ。それこそ大量の有益な情報を流し、その情報源に回避不能のトラップをめちゃくちゃに仕掛けるとか、な」
「……全く、実に感情的な推理だ。で、君は証拠も持って来ないのに私に何を求めるのかな?」
「まぁまぁ、慌てなさんなや。俺自身の目的は茅場=あんたって事をただ言いに来ただけ。ほら、俺って考えてることが顔に出やすいじゃん? で、感の良いあんたぐらいにもなると疑惑に気付いちまうかもしれない。昨日の昼くらいまでは証拠が揃ったら言いに行こうと思ってたんだが、昨日カイに考えていることが顔見でバレちまったからもうあらかじめ言っておくか的な考えになったんよ。あんただったら、たとえこの推理がハズレだったとしても気にも止めなさそうだからな。故にあんたには何も求めてなんかないから安心しな」
そう言って席を立つ俺になんとも不思議そうな顔をして、ヒースが聞いてくる。
「おや、本当それだけなのかな?」
「何度も同じこと言わせんな。俺は楽しみたいだけ。うちのギルドは確かにSAOのなるべく早い開放を望んじゃいるが、俺個人の意見としては100層まで存分に楽しむっていうのが主目的だ。まぁあいつらも生きてここを出れればと思ってるのが大半だろうから問題はないだろうよ。ただ、引き止めてくれた礼に俺から一言言わせてもらおうかな」
俺は一拍おいてこの本部に来て初めて相手を威圧するように話す。
「俺はあんたの邪魔は基本しない。だけど、あんた自身が俺の楽しみを邪魔するようなら全力で潰しに行く! ま、そういう状況にならないことを祈ってるよ」
入ってきた扉に向かって歩き出し、それに手をかけたところでヒースのつぶやきが聞こえた。
「面白い男だな、君は」
「……ふっ」
さて、現時刻12時30分ジャスト、フィールドに出るのもいいがカイに飽きるほど夜狩り連れてけ連れてけうるさいしなぁ。久しぶりに昼寝でもして体調でも整えるか。
んなことを考えてると前方からグリーンカーソルが寄ってくる、……あぁアスナちゃんか。
「ハロー、ご機嫌はいかがかな?」
「……それ、私が機嫌悪いこと分かって言ってますよね?フレッドさん」
おぉおぉ、怖い怖い。まぁ、それくらいの絶対零度の視線で接してくれた方が俺としてはスリルを楽しめるからいいもんだ。
と思っていたら急にシュンと項垂れいつもの彼女からは想像できないほど弱気な感じになっていた。
「……すみません。私の愚行で迷惑をかけてしまったみたいで……」
「それは俺に言うこっちゃねぇな。俺は遅刻してボス戦に挑んだだけ。君からは何ら被害は受けてないよ。むしろ遅刻した俺が君らや50層で死んじまった奴らに詫び入れないとな」
聞いたところによればアスナちゃんはボスの「戦意の増幅」にもろ引っ掛かり撤退中の部隊を煽動し犠牲を増やし挙句に自分も石化してしまったらしい。まぁ部隊を預かる身としては精神的に相当きついだろうな。俺自身も遅刻して犠牲増やしたようなもんだからこれでも多少は責任感じてるんだぜ?帰りに黒鉄宮に行って死んでった奴らに献花ぐらいはしてってやろうというくらいにはな。付き合いが割と長かったセイントセーバーズの奴らも大勢死んだっていうしな。
「まぁ今は君自身が助かっただけでも良しと思っときな。『他人を救いたくばまずは自身の命から救え』親父から教わった数少ない信用ある言葉だ。自身の命を救えもしないのに他人の命を救うなんて身の丈に合わないことはやめとけ、生きてなんぼってこった。今回君は弱かった、自分の命を救えない程にな。だが、君は生きた。運のいいことにな。攻略組にいる時点で常に死とは隣り合わせ、それは奴らも重々承知してたはずだ。だったら君が今することは死んでいった奴らに未来永劫謝り続けることじゃない、強くなれ。それこそ自身どころか今度は他人を救えるくらいにな。それが君が負うべき責任だと俺は思うぜ」
こんなセリフを言うがこれでアスナちゃんが真の意味で立ち直るとは到底思っちゃいない。だけど、俺に彼女を完全に慰める方法なんて思いつかない。人の心を考えるなんて高等なこと俺にはできない。
だからこそ逆に焚きつける。俺にとって彼女がここで50層での罪の意識に苛まれてリタイアなんてのは非常に困る。彼女が攻略組全体のブースターであり、彼女が意気消沈してしまえば同時に攻略組全体の士気が落ちる。当然ながらそいつは俺の望むことじゃない。
「……確かに、そうですね。私が今後何もしなければそれは死んだことと同じ。生き残った私がやるべきことではないですね。ありがとうございます」
言葉を鵜呑みにするんなら信用もできんだけどなぁ~、顔暗いまんまだし、前みたいな覇気もないし……これ以上俺じゃどうにもなんないな。しょうがない彼に丸投げするか。
「フッ、どういたしまして。あぁそうそう。後でキリト君にお礼言っときなよ。彼、君が石化した後、
あえて、必死の部分を強く言う。実際俺が見たわけじゃないんで脚色してある。人ってのはこういう沈んでる時、誰かに頼られてると思うと回復が早い……らしい。キリト君達攻略組が彼女を必要としている事実に気づいてくれりゃいいんだけどなぁ……
「……そうですか。時間が空きましたら」
そう言ってアスナちゃんはさっきまで俺がいた部屋へ走り込んでいってしまった。う~ん、重症だな、ありゃ。後でキリト君にはこの前助けた礼ということでアスナちゃんの慰めを担当してもらうことにしよう。
「ずいぶん早い帰りだったな、フレッド。どうだったGM様との会合はさ」
「無事帰れてる時点で聞くこっちゃねぇな、それ。まぁ大方俺が今気づいてることは話してきたつもりだ。中々話してる時はスリリングだったぜ、いつ消されるかわからない緊張感は中々のもんだぜ」
帰ってきて早々コペルに捕まった。俺のギルドの中でヒース=GMの憶測を教えてある一人だ。他にはデルタにも教えてある、まぁ消された時は彼らに情報垂れ流して世界を引っ掻き回してくれって言ってあったが無用な心配だったな。
「だけど、フレッド。この時点で消されてないって事は彼がGMじゃないって証明じゃないのか?」
「証明にはならんな。いろいろと不確定事項が多い。ほんとに消せる権限を持ってるのか、とか、彼が正体に勘づいていると思った程度でプレイヤーを消すような人物なのかとかな」
しかし、さすがはコペル、この情報を知ったくらいで慌てふためいたりしないから優秀な参謀を持ったもんだ。
「まぁ、僕はフレッドに助けられてる立場だからね。SAOをちゃんと攻略して現実に返してくれるならそれで文句はないさ」
「……だからさ、人の顔見て考えてること読むのやめようぜ?しかも、それが正解だとなおさら腹が立つ」
「そりゃ仕方ない対価と思わないと。毎度毎度スリルだなんだと言って危険に突っ込む阿呆なリーダー様に毎回毎回肝を冷やしつつ静観してあげてるんだからさ」
「はいはい。ありがとさん。お前には感謝してんよ。じゃあ、俺は夜狩りに向けて久しぶりに昼寝してくるから今日は活動お休みってことで、伝えといてくれ」
そう言って俺はまた文句を言ってきたコペルをスルーして部屋へ入ってった。
またもや、とんでもなく日にちが空いてしまった、申し訳ない。ついでに50層戦のエピローグ的話だというのにオチない……誰か文章力分けてください……
そして、大事件というのは推理が得意でもないALHAがキリト君がヒース=茅場と推理した情報を元にフレッドなりの推理を展開した挙句、一切証拠ねぇし、途中で何言ってるかわからなくなってしまったことです。……いや、訂正はしましたけどね。多分今回は輪にかけて文章の稚拙さが目立ってしまったんではないかと……
さて、本編。フレッドさんはどうしようもなくSAOの継続を願っています。これはこれでプレイヤー達に対するフレッドの嫌いな「裏切り」なんじゃと思う方いらっしゃるとは思いますが、まぁちょっとした理由も考えてますんでご容赦願います。
で、次回予告遂に本編より「圏内事件」でござぁます。いやぁ、オリジナルは文が稚拙になりやすい上に、設定も自分で考えてかないといけない(その分、オリ設定を活かせる場所でもあるんですが)ので大変ですが、元があるので多少は更新速度早められるかなといった具合です。一切執筆してませんけど……
さて引き続き、ご感想ご意見ご要望お待ちしております。じゃんじゃん持ってきちゃってください。あんまり批判があると作者の心が壊れそうになりますがそれをバネにして少しでも良き作品になるよう頑張ります。
今回はこのへんで、ではでは!