この話は以前投降したものの最後が気に入らなくて少し書き直したものになります。
フレッドside
俺は目の前の扉をノックする。部屋の場所は1万コルふんだくった鼠のに教えてもらっているので間違いないし、恐らくはいる筈なのだが、返事はない。
「(う~ん、もうちょっと時間をおくべきだったか?)」
現時刻6時半、人を訪ねるには早すぎるといっても過言ではなかろう。アルゴからのメールの音で起こされたのが6時、情報とコルの交換は10分とかからず終わり、この後適当に駄弁ってればよかったのだが、アルゴの奴には即行で帰られる。曰く「眠い!!」だと。依頼したのが俺だから強く出る訳にはいかず、じゃあどうしよう→突入と相成ったわけだ。
だが、当人が出ないんじゃ出直すしかないか、と思った時だった。
「……誰、ですか?」
「(お、ラッキー)……俺はフレッドってもんだ。ここはヨルコさんの部屋で合っているかな?」
「………」
再び、静寂が訪れる。このままじゃ埒が明かないな、ったく。
「《圏内殺人》それのトリックが分かった。そしてその犯行があんた
言い終えた瞬間、バタンと音を立てて開かれる戸。その向こうに居たのは暗色系の髪の女性プレイヤー1人だけだった。
「カインズという男は……いないか。まぁ、俺みたいに急に人に尋ねて来られたらアウトだもんな」
「……あなたには、もうバレてしまっているみたいですね」
「まぁな。動機含めてってわけじゃないが、トリックそのものに関しては答えは出ている。君が全くの初対面である俺に対して扉を開けた時点で確信に至ったがな。本当だったら被害を受けた俺としては直ぐに公表して疑いを晴らしたいところなんだが、あぁいう方法を取ったからには何か事情があると踏んでここに来た。もし、此処で何も喋らなければ俺は即座に世間に知らせる。事情を話し俺が納得できるものであれば、まぁ黙っててやらないことも無い。どうする?」
「……分かりました。じゃあ中に」
顔を見るにやっぱ訳ありか。これが演技なら大した役者だよ。
「その前に一つ聞かせてもらっても良いですか?被害を受けたっていうのは?」
「ん?あぁ、中層のプレイヤーまで噂が広がってるかどうかしらねぇけど、俺はエクストラスキル《豪大剣》を所有している。その効果の一つにイモータルをぶった切れるって能力がある。そのせいでちょいと知り合いに犯人じゃね?って疑われた訳」
そういうとヨルコというプレイヤーは明らかにバツが悪いような顔をして面を下げる。
「……そうでしたか。申し訳ありません。ご迷惑をおかけしてしまったみたいで。この方法なら誰にも迷惑がかからないと思ったのですが」
「まぁ、普通ならな。じゃあ、早速答え合わせと行こうか。こんなことした理由はその後ゆっくり聞かせてもらおうか」
「分かりました」
それから俺は自分の推理をヨルコに披露した。まぁ顔を見てりゃ分かる。大方当たりだ。
持論を展開した後、俺はヨルコに向き直り、続ける。
「まぁ俺の推理はこんなトコだ、大体合ってるかな?」
「……こんなに早く解かれるとは思ってませんでした」
「だろうな。まず被害者が実は加害者でしたなんて漫画じゃあるまいし、普通は起こらないと思うのも一般人からしたら無理ない。まぁだがこの世界のルールに基づいて推理していけばここに辿り着く。『あり得ないものを排除していった結果、残った可能性がどんなに受け入れがたいものでも、それが真実』ってどっかの誰かさんが言ってたぜ、っとこんなことを話に来たんじゃなかったな。俺がここまで出張ったのはなんでこんなことをしたか?だ」
「それも実は分かってるんじゃないですか?さっき情報屋の方が私とカインズの事を調べてる人が居るけど情報を買うか?ってメールが来てましたよ」
……さすがは鼠の。こんな時でも商売は忘れないのな。俺にその事隠してたのは大方急な依頼且つ徹夜でやらされる羽目になった仕返しってとこか?
「さぁな。俺が奴に調べてもらったのはあんたとカインズに関係があるか?それと今のあんたの居場所の二点だけだ。結果知ることが出来たのはPN.yorukoとPN.caynzは今は亡きギルド《黄金林檎》に所属していた。そして今あんたがここに居るということだけだ。あぁ因みにこの情報は口止め料払ってるから暫くは公表されないぜ」
ってか1万コルの大半がこの口止め料だ。さすがにここまで言えば鼠の……ってかどんな馬鹿だって俺が考えてる事は分かる、死亡偽装のトリックが分かるかどうかはともかく如何にしてか死んだ筈のカインズは生きており、あれは演出だったという事が判明する。
「分かりました。あなたには全てをお話します。フレッドさんも知っての通りだとは思いますが私とカインズは同じギルド《黄金林檎》に所属していました。攻略ギルドという訳でもなく総勢八人の、安全を第一に宿屋代と食事代だけを稼ぐギルドに所属していました」
ふむ、この辺りの事は奴が調べてくれた事にあったな。「《黄金林檎》は中層ギルドであり崩壊するまで特段変わったところはないギルドである」と。
「でも、半年前、去年の秋の事でした。最前線でもない中層のサブダンジョンで狩りをしていると今までに見たことが無いモンスターに遭遇しました。黒くてすばしっこいトカゲみたいなモンスターで一目でレアモンスターだと分かりました。偶然誰かが投げた剣が当たったようでなんとかそのモンスターは狩れたんです。そしてドロップしたアイテムを見たら全員びっくり。見た目はすごい地味な指輪だったんですけど装備するだけで敏捷値が20もアップするものだったんです。そんなアイテム未だ最前線でもドロップしてないと思います」
「確かにそんなアイテム俺自身聞いたことが無いな。だが、なるほど。そのレアアイテムがギルドが消滅する原因になった訳だな」
「……どうだったんでしょう。その指輪をどうするかでギルド内で、売却して売上を分配するか、使用して普段の狩りの効率を上げるか、という話になって確かに揉めはしたんです。で、埒があかなかったので多数決にしようって事になって……結果は五対三の売却でした。そこで私を含む3人のプレイヤーも納得はしてたんです。勿論、そんなレアアイテム中層の商人さんには扱えないものだったので最前線のオークショニアさんに委託することにしたんです。私達中層のプレイヤーには最前線での相場とか情報が不足していたのでそう言った事を調べる為にグリセルダさんが最前線に一泊する予定で出かけて行ったんです。……でも、帰ってこなかったんです」
「たしか、殺されたんだったか?」
「……はい。未だに信じられないんです。強くて、頭がよかったあのグリセルダさんが、当時はまだ手口が広がる前だったとはいえ《睡眠PK》なんていう杜撰な手段で殺されたことが」
繋がったな。鼠のから聞いていた最後の情報には崩壊の際にレッドが関わっていた噂があった。理由はこの事件が起きて以降《圏内PK》という手法が広がり始めたからだ。俺が推理を公開しなかったのはこれが一番大きい。最初に《圏内殺人》と聞いたときに、見間違えの線と同時に俺はレッドの犯行の線も僅かながら疑っていた。しかも、異常な殺し方を茶の間に提供するのがあいつ《PoH》のやり方だ。まぁ、結果それ自体は自殺偽装だったわけだが、収穫としてPoHの影は見れた。
「(となれば)……なぁ、ヨルコさん。あんた、その事件の犯人に心当たりないかい?」
そう言うと、顔をあげて「一人だけ」と言って更に続ける。
「……私達《黄金林檎》は先ほど言った通り中層で狩りをするようなギルドだったんですが、解散後このギルドから攻略組のギルドに移った人がいました。名前はシュミット」
「シュミット?《ドラゴンナイツ》にいるあいつか?」
あいつとは当然ながら面識はある。最初からではないがディアベルの部下でそれなりに攻略にも参加してるプレイヤーだ。タイプはガードランサー、鉄壁の守備を以てボス戦等のレイドでは壁戦士を勤めている。
「シュミットをご存知なのですか?」
「まぁな。攻略に出てるプレイヤーなら大抵は分かる」
それを聞いた彼女は少し逡巡して何かを決意したかのように強い瞳で俺に頼んできた。
「シュミットに会わせて頂くことはできいないでしょうか?」
「会ってどうするかは……聞くまでもないか。確実に事件のことをシュミットに伝え半年前の事件との関連を強調する、目的はそれかい?」
「……えぇ。十中八九シュミットはあの事件に関して何かしらには関わってると思うんです。私たちのギルドが解散して以降、彼だけが大幅に実力を上げたんです。私たちはどうしても知りたいんです。グリセルダさんの事件の真相を……!」
「(……すげぇな)」
素直にそう思う。ギルドを組む前は赤の他人だったんだろうが、中層ギルドということを考慮して長くて一年とちょっと。それだけしか一緒にいなかった人の死を悼むことはできても、親族でもない限り俺は事件解決まで漕ぎ着けようとは思わねぇだろう。……気に入った。
「事情の件は大方了承した。俺の方からは口外しねぇが、君らの求めるものが見つかったら君ら自身からこの事件を公表してくれ。じゃなきゃひたすら俺が迷惑を被る。そしてシュミットの件に関しては俺より適任がいる」
「適任……ですか?」
「あぁ、この件を調べてるやつは俺の他にもいる。この件は強い怨恨が引き起こしたデュエルによるものという仮定で推理している連中がな。怨恨の線で当たれば被害者と思われているカインズと繋がりのある君の所には再びその件に関して聴いてくるだろうよ。俺はちょっと顔に出やすいらしいからな。事情を全部知ってる俺よりも何も知らない第三者の方がバレる確率も激減する。そういうこったよ」
彼女は少し迷っていたようだが、また少し考えた後、頷いた。
「分かりました。それとこの事件の真相は終わったら必ず……」
俺はその言葉を聞いて彼女の部屋を後にした。さてと、じゃあ俺はどうしようかねぇ……
鼠の情報と併せて考えると半年前のラフコフ結成前になるから馬鹿な模倣犯が睡眠PKをしたとかじゃない。イコールシュミットが犯行を犯したわけでは多分ない。急に攻略組のトップに上がってきたところを見るとなにかしらレッドに協力し利を得たのは事実だろうが、実行犯があいつだとすると《ドラゴンナイツ》にいる理由は……動向探り? ないな。
プレイスタイルを見れば分かるが奴は自身の命第一の男だ。攻略速度を下げるレッドに賛同する意味が分からない。まぁだからレッドと分かった上で協力したんじゃないだろうな。
それとも報酬に釣られたか? ネトゲーマーの弟曰く「この界隈でのレアアイテム争奪戦は熾烈を極める。持ってるだけでも優越感に浸れるのは言うまでもないが、そのゲームの中で頂点に立つのに持つ者と持たざる者では歴然の差」らしい。まぁだから“レア”アイテムとか言われるんだろうけど。だが、この世界で頂点なんてのは二の次だ。さっきも思ったがあくまであいつは自身の命第一だ。売って金にし、防具を強化すれば生存率は遥かに増すし、その上で攻略隊に加われば全層クリアまで多少ながら短縮できるだろう。そのまま使っても当然ながら生存率は増す。どちらにしても彼の利にはなる。
「(だったらやることは決まってくるな)」
第51層ランベルド
てな訳でやってきたのはここ第51層新生《ドラゴンナイツ》ギルドホーム。この層は大半の場所がだだっ広い草原で構成され、50層のごみごみとした狭っ苦しい50層主街区《アルゲード》と対を成す様な構成となっている。主街区ですら遊牧民が住むような仮住居とでも呼ぶべき造りの家が多く並ぶ風景だ。その中でもドラゴンナイツのホームは一際大きく、とはいっても会議をする為のテーブルが真ん中にどんと置いてあり後は少数の部屋があるだけだ。ギルドホームとしては使いにくい事この上ないが、ギルマスのディアベルがそれでもここに固執した理由は50層での《セイントセーバーズ》の被害者の慰霊、そしてその50層を乗り越えた証としてここに決めたんだろうと思っている。
来た理由は当然シュミットの反応を見る為だ。少なくとも圏内殺人の報は最前線プレイヤーには全員に行き渡っているはずだから、自分の命に執着がある彼ならば詳細も聞いている筈。何らかのアクションは起こすだろう。
ホームの守衛は二人。まぁいつものメンバーなわけだが、ここは普通に話しかける。
「やぁ、ドラゴンナイツの諸君。アポはないんだがシュミットさんはおいでかな」
「あぁ、どうも。シュミットなら今日は攻略に参加すると聞いているのでしばらくすればここに来ると思いますよ。でも、急にどうしたんですか?」
「何、ちょっと聞きたい事があったんだ。まぁ今いないんなら、後で出直すわ」
「……聞きたい事ってもしかして昨日の事件の事ですか?」
去り際にもう一人の門番が少し表情を曇らせた感じで俺に問いかけてくる。
「驚いたな。なんで分かったん?」
「そりゃ分かりますよ。昨日の事件の後、シュミットさん血相変えて僕ら含めた10人ほどで《黒猫》のキリトのトコ行って、恐喝まがいの事してたんですから。僕ら自身殆ど聞かされないまま、ブロックを手伝わされたんですよ。で、今日あなたが訪ねてきたんだったら100%なんか関係があると思うでしょう?」
確かにそうだ。しかし、恐喝とは穏やかじゃない、あとでディアベルの方から直々に叱ってもらう事にするとして。まぁいないならいないで、ここにいる意味もそんなにないからな。
「まぁ、そう言う事なんだが、本人が居ないなら意味も無いからな。また後で寄らせてもらうよ、……と」
「なんだ、来てたならついでに寄っててくれても良いんじゃないか? フレッド」
「俺にも予定がある、直ぐに目的の人物に会えないならいる意味も大してないさ」
俺が立ち去ろうと振り向くと、ディアベルの一行がホームに向かって来ていた。
「で、目的の人物というのはシュミットのことかな?」
「噂は早いもんだ。だが、ここの守衛から大抵のことは聞けたからな。もう帰ろうかと思ってたトコ……」
そこで言葉を切りふと考える。レアアイテムの件は当然ながらギルド内だけの秘匿情報、外の人間が分かる訳はない。外の人間が知る為には偶然アイテムドロップの場に居合わせたかもしくはストーキングしていたか、はたまた内部情報提供者―スパイ―がいたかの主に三択。
一番目はあるかもしれないが、八人もいて誰一人その存在に気付かない“偶然の”通りがかりがいるか? もし気が付いていたのであれば、さっきの話で出て来ない筈はない。
ならば二番目は? 可能性としては低いと見るべきだろう。確かに中層の連中はレッドのターゲットになり易かろうが、八人パーティよりももっと低人数で行動している組を襲うのがベターだ。まぁ、俺も人の事言えた話じゃないが、俺とは別の意味で頭のねじが外れてるような奴らだから考えなんか分かったもんじゃないから可能性は無きしにあらず。で、そのスト―キング中にレアアイテム拾ったのを確認したからスト―キング続行……までは良いがその後ホームでの密談なんか聞こえる訳はない。“聞き耳”って線もあるが、流石にホームでの密談となるといささか目立つ。素振りでギルドリーダーが持ち出したって分かったら大したもんだ。
ならば残るはスパイの存在、か。当然可能性としては一番高い。シュミットがそのスパイと言うのはさっきの事からも考えづらい。だとしたら―――
「なぁディアベルさんよぉ、ちょいと俺の企みに乗ってくんねぇ?」
本当に申し訳ありませんでした。早い内にお知らせするつもりがこんなずるずると引きずる事になってしまって……
本当は今日もう一話上げる予定でしたがちょっと推敲が間に合わないと思われるので明日この話の続きに関しては上げさせて頂きます。
まぁこの半年何があったかは多分興味ある方なんて皆無だと思わるので書きませんが、出来る限り投稿は続けさせていただく所存なので今後ともよろしく願います。
追記:急用にて月曜の投稿に関しても延期させていただきます。予告してできないとかもう……ね。
とりあえず次の日曜までに二話あげるのでそれでご勘弁を(これも守れなかったらどうしよう……)