SAO ~属性を操りし豪剣士~   作:ALHA

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まただいぶ日が空いてしまいましたね。
ちょっとリアルがごたごたしてまして、この次の話も結構空くかもしれませんがご容赦を。
では、新話どぞ~


第三五話 ~決着とそれから~

 ひたすら続く森の中、剣と剣がぶつかり、絶え間なく金属音が響く。だが、その音の原因は9割方、プーの魔剣を俺の大剣が防いで出た音で、俺からはほとんど攻撃をしていない。30層での戦いと同じで俺が防戦一方、向こうは剣が届かずって画だが、今回は、俺は攻撃できていない訳じゃない。

 

 だが、プーとしてはこの展開は好きじゃなかったらしく適度に間を取ってとてつもなく不満げにもらした。

「Sigh、勘弁してくれよ、“ゴッドファーザー”。この前と全部、全部、ぜぇーんぶ同じじゃねぇか。俺が勝つにしたってお前ぇ、流石に退屈だ」

「そうだな、目に見える(・・・・・)部分は俺も全く同じにしか見えねぇな。だが、安心しろ。このまま同じ展開にするつもりは一切ねぇ。そろそろコレを使わしてもらおうか」

 

 俺はそう言ってポーチからくすんだ黄色の結晶を取り出してプーの奴に見せる。

「Wow、属性結晶って事ぁ、お得意の《豪大剣》のおでましかぁ?」

「安心しな、ユニークスキルを持ってないプレイヤーには《豪大剣》のスキルは使わねぇ。あくまで俺が使うのはコイツの効果のみ」

「随分、舐めてくれたもんだなぁ。俺なんかユニークスキルを使わねぇでも勝てるってか?」

「そうかもな。だが、俺の本意としてはあくまでお前とフェアにやり合おうって言ってんのよ。お前との一騎打ちなんて今後二度とない。なんせ、お前はここで終わるからな」

「はっ、そういうセリフ聞けるのも最後と思うと俺もmovingだ。but《属性結晶》はお前ぇのいうfareとは違うんじゃねぇのか?」

「お前さんのはドロップとはいえ魔剣、俺のは最高の職人が仕上げたプレイヤーメイドだが使ってる金属が低層のものだからな。その差埋めさ。……とはいえ、それで云々文句を言われるのは癪だ。ならこの結晶の情報をくれてやる。コイツは相手の武器と接触時恐ろしい速度で腐食させるシロモノだ。俺自身の武器は発動中はずっと減り続ける、が!!?」

 言い終わる寸前だった。大した距離もない上にまだ戦わないと多少油断していた。プーの剣、いや、手刀が俺の胸の中心を抉っていった。当然痛かねぇが、HPに少なくないダメージを与えていた。

「てめぇ……」

「Namely、こう戦えって言ってんだろ? 素手なら腐食する部分なんてNothing、違うか?」

「……そうだな。だが、てめぇがそいつを使えねぇなら俺自身戦いやすくなる上に不確定要素はなくなる。俺の勝ち確は揺るがねぇよ。《大地》解放!」

 

 

 一瞬後、その場に俺らはいなかった。二人同時に互いに向って駆け出し、俺は《蛮竜》を、奴はグローブをつけた拳をぶつけ合った。俺はともかく奴のHPにも殆ど変化は見られない。

「刃を直接殴ってくるたぁ、中々面白ぇ事してくれんじゃねぇか。そのグローブか、ダメージ防いでんのは」

「Sure、こいつは“ブレードクラッシャー”、拳を作ってれば、おめぇのバカみてぇにでけぇ大剣でも大抵のダメージは防いじまうシロモノだ」

 《体術》使いなら、喉から手が出るくらい欲しい逸品だろう。30層の俺にそのアイテムがありゃ戦績に黒はつかなかったろうし。尤も、今の俺はそんなちゃちなアイテムに興味はない。

 

「へぇ。だが、両手以外に剣が当たれば問題はないんだろ? それにゲージも若干減ってるぜ。ダメージカットするだけで完全に防げるわけじゃなさそうだ」

「じゃあ、さっさとcritical取ってみな!」

「っ!」

 俺の右胸に奴の左手が突き刺さる。現実なら呼吸困難にでもなりそうな勢いな打撃だが、幸いにもこの世界の仕様ではそういうことは起きない。若干そのあたりは不満があるが、今回ばかりはラッキーだ。

 プーの攻撃は当然容赦なく連続して俺を攻撃してくるが、最初にもらった一撃以外はかろうじて急所への一撃を防ぐ。俺の《蛮竜》はなぜか剣の峰に柄がついている。故に剣を逆手に持って、その柄を掴めば、防御性能は格段に上がるが、奴の攻撃も速く俺のアバターには赤い痕が刻まれる。

 

 だが、これでもヒートアップする訳にはいかない。限界を超えれば俺はまたアバターを動かせなくなる。一瞬でも隙を見せたら確実に死ぬ。全神経をフル起動して奴の致命的な攻撃を確実に避けつつも、ヒートアップできないのはもやもやするが、動かなくなった瞬間死が待っているというのは抑えきれずに多少なりとも興奮してしまう。

 

「おいおい、がっかりさせてくれるなよ。またdefenceばっかりになってるなぁ。俺を倒すって豪語してたゴッドファーザー様はどこ行ったんだ?」

「ほざいてろ、チャンスは来る。必ず……!?」

 何撃目とも知れないプーの拳をパリィした瞬間、《蛮竜》は刀身の半ばからひびが入った後、砕け散った。そこにすかさずプーの右が入り、距離を離される。

「Haha、どうやらそれがおめぇのfateらしいなぁ!lastはおめぇが震えるほど怖がってたこれでTHE・ENDだ」

 再びプーの手に《友切包丁》が握られる。そしてソードスキルのライトエフェクトを纏った刃で俺の首を取りにかかる。レッドにギリ届かない程度の俺のHPで最高性能と謳われるあれを喰らえば、間違いなく死ぬだろう。

 

 

 どうやら、俺の命運は……尽きてねぇみてぇだな。

 

 

 俺の右手は吹っ飛ばされたとき、既にポーチのあるものを掴んでいる。そしてそれを奴が繰り出す短剣が突くであろう場所に向って、突き出した。

 

 きぃいいんという音が響く。その時のプーの顔を見たら疑問府が付いた感じになってたろう。残念ながらそんな暇はなかったが、試合を終わらせるための一言は告げた。“《大地》解放”と。

 

 ポーチから取り出したのは先と同じ《大地結晶》、武器の耐久を著しく減らす能力を持つが、デメリットは他の属性結晶使用時に比べて二倍消耗が激しいというもの。それを奴の剣に使ってやった。

「まだ、クリスタル持ってやがったか!」

「そりゃな。一つだけだとてめぇの油断誘うにゃ心許なかったからな。それと、情報通のてめぇのことだ。言う必要はねぇと思うが、いくら指をスライドさせても属性は取れないぜ。発動者の俺がやらねぇ限りはな」

「あぁ、知ってるさ。次はこれを使っておめぇに罪擦り付けようと思ってたくらいだからな」

 やっぱり知ってたか。《属性結晶》は使用者のみが属性解除できる。そういう言い方をするという事は裏返せば対象の剣に触れて《属性解放》と言えばたとえ所有者と使用者が違っても発動は可能ということだ。相手にいやがらせするにゃもってこいの性能だな。

 しかし冤罪を作ろうとはいい度胸。今回の事件は俺のスキルを知らずにやってしまったから許すが、態とだったら絶対に許さねぇ、はっ倒す。

 

「こっからは俺の時間だ!?」

 俺のセリフを邪魔するように魔剣の一突きが気付いた俺の頬を掠め、連続して俺を狙ってきやがる。

「時間がないみてぇだからな、コイツの冥途の土産におめぇの首、置いてきな」

「冗談。俺がてめぇを牢獄へ送るまで死なねぇよ!」

 

 奴の連撃を掠めつつ、メニューを開き、新調したばかりの大剣を取り出す。《蛮竜》に引けを取らない大きさの刃に柄と刀身の間には鬼の顔がでんとあしらわれている。名も《オニノコワモテ》そのまんまだ。そして、それを大地に突き刺し、その陰に隠れる。

 

「OK、牢屋へぶち込む準備ができた。《豪大剣》対人戦闘のお披露目、付き合ってもらうぜ、プーさんよぉ!」

「!?」

 剣の陰から柄を持ちながら高速の蹴りを繰り出すが、それは当然ながら躱される。そして、その足めがけて今度はプーの剣が下ろされる。

 そこを俺は避けずに足を突き出したままプーのいる方向へ踵を繰り出す。俺のHPは既にレッドゾーン奴の一刃を喰らえば間違いなく死ぬ。それを知って奴も、俺の一撃を躱すつもりはねぇみたいだ。だが---

「が……はっ!?」

「見誤ったな?俺の踵蹴りの威力」

 俺の脚は奴の剣より早くプーの鳩尾にヒットし、それにより奴にはノックバックが発生する。奴からしてみりゃそんな現象が起きる筈はないと思ってたろうに。

 そういう俺は剣の柄を持ってたことで体勢を崩すことなく回転運動で元の位置へ戻る。そして、再び奴の剣の隙を狙って足による攻撃を加える。対人戦用と言ってもただそれだけのことだ。基本は剣の柄を持ちながら回転運動で回避を繰り返し、決定的な隙には体術ソードスキルを見舞う。ソードスキルを使わなくとも《剛力》のおかげで格闘のみでも十分な威力を叩き出し、急所打ちができればノックバックを望める。この戦法に気付いた時、やっと条件の3つのスキルの必要性が分かった。一つでも欠けてたら、使いづらいことこの上ないだろうな。

 

 そこからは俺の一方的展開だった。奴の剣は《大地結晶》の効果で何もしてなくとも耐久は減っていく、故に俺に攻撃を仕掛け続けて、短時間で俺の剣を壊さなければならない。が、耐久がイカれているこいつを壊すのはたとえ大地結晶の力があると言っても至難の業。だけでなく俺の蹴りの連撃を躱しながらともなると至難を通り越して無理ゲーだ。

 

 それでも耐えた方だろう。流石にレッドゲージで時間まで気にする余裕はなかったが、あまり長くない時間の後、魔剣と云われた“友切包丁”は俺の剣の刀身に当たった瞬間刃先が砕けて散った。瞬間にできた間隙、俺の脚は黄色く輝く。俺の十八番《煌脚》はプーの首に左から入ったと同時に手を柄から離し慣性のままに奴の体ごと吹っ飛び、そのまま近くの木に激突した。

「ホールドの効果があるのは知ってるよな、さぁどうするよ?」

「……shit、流石にここまでされちゃloseだな。But、忘れてねぇよな。“次に会った時、最高のショーを見せる”この言葉に嘘はねぇ。Showは、今! startした!」

「へぇ。張本人が《牢屋》へ行って何ができるのか楽しみだわ。回廊、オープン! ……あばよ!」

 抑え込んだまま、黒鉄宮へのゲートを開き、左足で開いた回廊に叩き込み、PoHはこの場から消え去った。

 

 

 

 ……すっきりしないな。結局《大地結晶》を2つ使うなんて事しちまったし、俺の本職の両手剣で決められなかった。実際やってみたらだまし討ちに近い感じになっちまったのは否めねぇ。……駄目だなぁ、どうも目先のスリルにがっついちまう。別に適当に戦ってプーに悟られないように逃がしゃこの後も面白い展開になったかもしれねぇ。まぁ、今回の討伐戦、俺が仕組んだから当人逃がすのはさすがに無しか。それに奴自身も今からショーの始まり云々言ったってこたぁ、なんかしらの準備はしてきたってこったろ。とりあえずはそれに期待、だな。

 

 

 

 

 

「おいおい、流石にプーの仕業じゃねぇとは思うが、いきなり面白い展開に遭遇できるたぁ思ってなかった」

 俺が見た光景、それは“閃光”たるアスナちゃんがなぜかキリト君と剣を交えているものだった。しかも、彼女、俺が見る限り……本気だ。キリト君はあくまで防いでるだけだな。

「なんだなんだ、仲間割れか?」

「おぅ、カイ。ザザは……って見りゃ分かるか」

 二人の対決を興味津々そうに見るカイの後ろにはザザが繋がれていた。カイは微妙にキレた感じで俺に突っかかる。

「全く、弱過ぎてお話になんなかったぜ。旦那よぉ、こんな雑魚任せやがって、どういうつもりさ」

「くっ!」

 あらら、可哀想に。見た目小学生に“弱過ぎ”だの“雑魚”だの言われて……。カイは現実に戻ったら夜道に気を付けた方がいいな。ザザの奴すげぇ眼で睨んでるぜ。

 まぁ俺自身、確かにラフコフ幹部程度じゃあカイとタメ張れるとは思ってなかったが、あくまで主目的はプーと俺の決着を付ける事と言った筈。……と言ったって納得しねぇだろうから新しい玩具をやるか。

「ソイツで不満ならあっちに混ざってくりゃ多少は満足できんじゃね?なんつっても相手は攻略の鬼ことアスナちゃんだ。何で戦ってるのかよく分かんねぇから殺すなよ?」

「おうよ!」

 待ってましたとばかりに戦場に飛び込むカイを見てやっぱガキだなと思うが、俺も目先のプライド回復のチャンスに眩んでプーを牢屋送ってるあたり人のことは言えんが。

 残る回廊は一つ、ここでこいつに使う訳にゃいかねぇが、コペルからジョニーがうろついてるって連絡来てるから目は離せねぇ。

「レオン、たまにはお遣い行ってきな」

「Gau」

 肩から飛び降りたレオンは俺からディアベルと刻まれた紙を持つと風景と同化していく。当然この紙は特別製で裏に宛名をすれば迷宮区にすらテイムモンスターが時間をかけて持っていくという、限りなく用途が限定されたシロモノだが、特定のプレイヤーを呼びつける時ってぇのはその限定的状況にあてはまるだろうな。

 

 しばらくすると、前方から彼の姿がスーッと現れ、レオンが再び俺の肩に乗る。

「こういう時はほんとに便利だな、こいつの能力。ディアベル、来てもらって悪いな。この場を制圧するんでコイツ預かっててくれや」

「了解した」

 短くそう言うとザザを不満そうに受け取る。その理由も大体は分かる。大方制圧できるなら、してからPoHを倒しに行けとか、そんな類だろ。だが、ここでそんな不平を言って時間を取る訳にもいかないから顔に出すだけにしたってトコだろう。じゃあ、さっそく期待に応えてきましょうかね!

 

「《氷結》発動」

 未だ、奴らが気付いていない状況なのでボソッと結晶を“発動”させる。

 発動は《オールデリート》や《属性スキル》と並ぶ《豪大剣》スキルのユニークな性能。効果は各属性結晶のメリット・デメリットを消し、耐久減少を抑制するというもの。これによって属性結晶を使った《豪大剣》のソードスキルメインの戦闘時間を長くできるが、今回は武器負担を考えただけのものだ。解放するまでもない。

 

 《隠蔽最大》を使って戦場のほぼ中央に来たところで氷結結晶を発動した《オニノコワモテ》を地面に突き刺す。すると、突き刺した場所から霜が降りて次第に凍り付きやがて周囲で戦っているプレイヤーの足元にまで到達すると例外なくその足を地面に縫い付けた。

 氷の豪大剣、特殊ソードスキル《アイス・グラウンド》、ボスは勿論、普通のMobの中には効かない奴もいるが、ことプレイヤーにおいては《耐凍結》とかいう超趣味スキルでもとってない限り、防御すらできない拘束技だ。

 戦闘に夢中になっていた連中も、足が凍っているという異常事態に気付くと、何が起こったか分からないといった風に慌ててくれる様は中々に面白い。

 

「おい、旦那!!俺に行かせといて凍らせようってぇのはどういう了見だ、コラ!」

 声のした方を見ると、カイが得物を地面に突き刺し、それにしがみついていた。アスナちゃんと戦っていた筈なんだが……器用なやっちゃな、全く。そんなんで回避してる奴なんてお前……とケイタもいたか。

「別に? キリト君がアスナちゃんに押され気味だから助けに行ったら? と提案したまでだ。ちょっかいを出さないとまでは言ってねぇぜ?」

「ハァ? ふざけんな! 殺すな、まで言ったら最後までやって来いって言ってるようなもんだろ!」

「……漫才はいいから早く氷を解いてくれ、フレッド。動けないってのは中々不快だ」

 それもそうだ。ヒートアップしているカイに構ってなんかられねぇな。キリト君の言うとおりさっさと事件を収めるとしよう。

 

 後ろでぎゃあぎゃあうるせぇカイは無視して最後の《回廊結晶》を取り出す。……と、その前に確認しておかなきゃな。

「アスナちゃん。君、なんであんな事してたん?」

「…………魔……か……」

「は?」

「邪魔をするから!私は守れなかった!だから!こうするしかなかったの!!」

 そのまま泣き崩れるアスナちゃんをKoBの団員が支える。攻撃されてたキリト君は何とも言えないような表情で彼女を見つめていた。

 なるほどね。詳細は分からねぇが、ラフコフ側に仲間を殺されちゃった訳ね。それも中々ショッキングな感じで。で、ねじが外れてラフコフのPKに走ったと、大方こんなとこか。となれば、彼女の処遇はKoBにでも任せるとして、とっとと正真正銘の殺人者アーンド裏切り者共を始末するか。

「さぁ、犯罪者共!!この期に及んで投降の意思がねぇ奴はこの場で告白しな。この場で冥土に送ってやるからよ」

 周囲からなんか“無茶苦茶な”とかいう思念付きの視線が来るが無視。殺すのも奴らの思惑に嵌ってると思うと腹立たしいが、この場でドンパチやられるよりかはよっぽどマシだ。

 

 流石に声は上がらなかった。まぁ、この氷の足枷は何もしなければ10分弱は持つ。動けなければレッドと言えど生意気を言う気にはならねぇか。

 その後、ディアベルを呼び、ザザを含めたラフコフ残党は俺が作った回廊を個々に恨み言を言いつつ渋々くぐっていった。

 

 

 

「今回は急な呼びかけに応じてくれてありがとう、諸君」

 俺は今回の仕掛け人として討伐班の解凍後に声を上げる。といってもここで歓声などは起こらず、見渡せば暗鬱な表情を浮かべてるのが殆どだ。その沈黙を破ったのはディアベルだった。

「……あぁ。だけどこちら側の犠牲者は僕の所から1人、KoBからも2人出ている。とても手放しでは喜べないし、何より裏切ったプレイヤーが多すぎる。被害は甚大と言わざるを得ない。……君なら犠牲者を出さずに事を運べたんじゃないのか?」

「確かにそうかもな。だが、もし初めから氷結結晶を使っていたら多分攻略組に潜り込んでいた隠れレッドは見つからなかっただろうぜ。見つけられなかった場合の将来を考えれば、予想はつくだろう? もし君らに裏切り者がいなかったとしても、それはそれで犠牲者なんて出さずに制圧できたんじゃないのか?」

 棘を感じた俺は弁明するが、納得できない故か、すすり泣く奴もいる。それでも怒声・罵声の類は上がらなかった。

 

 俺がプーと戦い始まる前に奴さん共を凍らせなかったのは、炙り出しが主な所だ。裏切り者は処分しときたかったし、放置すると最悪なケース、ボス戦の時にでも裏切られると板挟みでどちらにも対応しねぇといけねぇ。俺だけならともかくも周りがいると間違いなく死人は出るだろ。しかも、今回の犠牲者よりも大勢。それで攻略ペースを遅らせるのは御免だ。

 まぁ、結果は攻略組ですら犠牲者を出し、アスナちゃんは恐らく精神的ショックからしばらく休養、と。悪い芽摘んだら、良い芽まで摘んじまったみてぇだな。プーの時と同じでまた選択ミスったな。……ともあれ、だ。

 

「まぁ確かに犠牲は出ちまった。だが、ラフコフのリーダーPoHは俺が《牢屋》へ送った。まだ、残党がうろついてるから一安心とはいかねぇが、ラフコフ自体が食い逸れた連中が奴のカリスマと洗脳で集まってた集団だ。自然と分離してくだろうさ。じゃ、適当に解散してくれや」

 プーがあそこまで言った以上、まだ何かやらかしてくる可能性はデカいと思った方がいいだろうが、本人が消えちまった以上恐るに足らねぇ。あくまで身内に限るが。

 

 

 

 その夜のラフコフ討伐戦は一晩おいた朝新聞に載り、追悼の意を込めて殉死者の名も添えられた。しかし、その訃報は一般には霞んでしまった。

 

 “KoB副団長《閃光》アスナ、ギルド脱退”、その記事によって。

 

 

 




 ってことでプーさんにはあっさりと牢屋へ行っていただきました。まぁまだ一つや二つ波乱起こしそうですが、それはまた別のお話で……
 そしてこれを以て《圏内事件》終了。やっと次の章いけますかね。……という訳にはいかず、次は黄金林檎の方の後始末書ければいいかなと思っとります。
 というよりメインはアスナさんでしょう。原作のキリト君より彼女には深いトラウマを背負っていただきました、今後のフラグのために。まぁ、ヒロインが重度のトラウマ抱えるなんて普通だよね?

 今後も感想お待ちしております。投稿スピードは早くしたいんですが、ネタの思い付きにバラけがあり今はダウンしています、が、少なくともフェアリィ・ダンスまでは終わらせる予定ですのでそれまでお付き合いいただければと思います。ではでは!

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