でも、一週間に1回は最低でもあげようと思ってるので、これからもよろしくどうぞ。
ってことで、第八話どぞ~
今、第二層主街区はとてつもなく騒がしい。
理由は簡単、この層に俺ら攻略組以外のプレイヤーが雪崩のように転移門から現れ、カーニバルらしきものが行われているからだ。
っつってもその気持ちが分からないではない。
なにせ、一ヶ月というこの短い期間で一層での死亡者数はゆうに千を超える数だ。
はじまりの街にこもってたやつからしたら絶望しかなかったろう。
だが、その絶望は完全とは言えないが、払われ新たに攻略に意欲を沸かすものも先ほど転移門から現れたやつの中に少なからずいるみてえだ。
ちなみに俺以外の三人は皆勇者インタビュー的なとこに引っ張りだこだ。
めんどいんで俺は蹴ったが、っつ~より逃げたが。
ここは一層はじまりの街の中の宿屋だ。
ここは俺のギルドの仮住まいとして10日毎に千コル払って宿屋そのものを貸し切ってる状態だ。
で、なんで戻ってきたかといえば……
「よぉ、リズ。調子はどうよ?」
「あぁ、フレッド。まぁぼちぼちって言ったとこかな。アンタからもらってる鉱石をバンバン剣やら槌やらにしてるから熟練度はそろそろ100に届きそうって感じ」
「ほぅ、早いな。ほかの職長たちはやっと50到達したって感じだったのによ。まぁいいや、武器研ぎよろしく頼むよ。コペル達のも預かってきている」
まぁこういうことだ。
ボス戦で下がった武器の耐久値戻し兼ウチのギルドの職長達の熟練度チェックって言ったところだ。
ちなみに職長達以外は基本自由だ。
鉱石だのの素材は基本職長達以外には渡しちゃいねえ。
一点突破でできる限り早く武器だの装備だのを整えられるようにするためだったんだが、リズに関しては異様に早い。
今のところ皆やる気のようで……俺としては一ヶ月で全員50超えるか超えないかぐらいの予測だったが、何回か帰ってきてる内にそれは間違いと感じ始めた。
そん中でもリズのスピードは早いんだが……
とは言っても、前に帰ってきた時のスピードからして、だいたい彼女がそろそろ100に到達しそうだってのはなんとなく想像はついていた。
武器を研いでもらってる間、暇なんでリズに提案してみる。
「100に届きそう、か……そろそろ露店でも出してみるか?」
「え!露店!?」
「そう。まぁ、100くらいがいい目安だろ。そろそろ外客相手も慣れておかんと自分の店持つなんて夢のまた夢……だぜ?」
そう言いながら、俺は手に持ってるアイテムを差し出す。
「これは露店を出すリズ、お前への餞別だ。受け取りぃ」
「そうそう。さっきから思ってたんだけどそれ、何なの?」
「《ベンダーズ・カーペット》と呼ばれるアイテムだ。こいつは露店販売するなら割と必要になってくるアイテムだ。まぁ、熟練度100突破の前祝とでも思っといてくれや。」
「あたし、まだ突破はしてないんだけど?」
「だから言ったろ?前祝だって、さ。あ、ちなみにこのアイテム、ストレージには入れられないから注意しといてくれや」
「あ、だからこんなかさばる物をわざわざ持ち歩いてたのね」
「そうゆーことだ。だけど、こいつはアイテムだの装備だのを入れて持ち運ぶことができる。しかも重さはどれだけアイテム詰め込んでも重さは一緒っつー優れモンだ。有効に活用してくれや」
「分かった。じゃあ、これは受け取っておくよ。」
俺の手から《ベンダーズ・カーペット》を受け取ると、何かに気づいたように俺に聞いてくる。
「あ、……そういえばそろそろフレッド達の剣強化したほうがいいんじゃないの?結局ココの攻略はあんたに関しては何も強化しないで何とかしちゃったみたいだけど……」
「そうさなぁ。まぁ勿論、第二層攻略までには依頼はするつもりだけど俺やカイのは素材が素材だしなぁ、まぁもうチョイ集めてからにしておくよ。4人いれば何とかなるっしょ」
そう、俺が今武器強化で迷ってる原因はそこだ。
俺の両手剣《ギルタナス》やカイの《ルーター》はコペルの《アニールブレード》やシリカの《ソニック・エッジ》と比べて添加する強化素材が異様にきつい。
こいつの強化試行上限は7回、俺の理想としては(1S3H3D)狙いな訳だが、強化素材があのイシ○ブテのレア素材だったり、二層に出てくるミノタウロス型Mobから取れる《トーラスの角》と呼ばれるアイテムだったりでまだ十分な素材があるとは言い難い……
とは言っても、イシ○ブテのレア素材に関しては必要最小限のアイテムはある。
だが、勿論、素材を無駄にはしたくないのでリズの熟練度が高くなってからと思ってる。
まぁ、正直雑魚Mobどもと戦っても割ときつくなってきてるのは事実な訳だが……
「……あ!リズ余ってる両手剣二本程貰ってっていいか?」
「?……いいけど、性能はあんたのより相当下がるわよ?」
リズがポカンとした様子で聞いてくる。
まぁ、確かにわざわざ今持っているのより性能の劣る武器を持ち出す意味は分かりにくいだろうな。
「あぁ、ちょいと一日から三日ばかし、武器がいらない場所に出かける予定だからな。もし、リズがその間に熟練度100に到達してたら俺の剣を強化しといてくれ。素材と剣は置いていく」
そう言って、彼女の前に《丈夫さ》用強化の素材と剣を置く。
「……分かったけど、この素材は……《丈夫さ》ね。熟練度100に到達し次第強化はしておくけど、成功率は保証できないし、その用事終わってからここに持ってきても変わんないんじゃないの?」
「ま、これから手に入れるスキルの調子を確かめたいからこの両手二つでいいよ。それに成功率も問題ない。だけど、この層での強化は必須。だったら、リズの調子いいタイミング……まぁ、100突破ぐらいがちょうどいい感じだろう。ってことでよろしく!」
「はいよ。あ、カイ達の剣は持っていってね」
「うっす」
俺はリズから渡された剣を持ちホームを出て、憂鬱な2層に再度足を踏み入れた。
2層フィールド
俺は今、コペル達を連れてある場所へと向かってる。
集める時にあの騒がしい連中に見つかって、ひと悶着あったが、まぁ、巻いてきた。
「で、旦那よぉ。俺らは今どこへ向かってるわけだ?道ともいえない道ばっか通ってよぉ?」
「超簡単に言うとエクストラスキル獲得クエストを受ける為」
「「「なっ!?」」」
「いや、三人とも同じ反応せんでも……」
声のほうは一瞬、足を止めたみたいだけどすぐについてきたようだ。
「でも、どうしてフレッドさんがそんなことを……?」
「忘れたのかよ?俺ベーターだぜ?テストの時に見つけといたとこがあんだよ」
「あんたも暇だねぇ。こんな道ともいえない道をよくもまぁ、行ったもんだよ……」
シリカとコペルから不本意な反応をされるが、まぁ今は置いておこう。
ボス攻略参加は本サービスの時のお楽しみにとっておいたから、色々なところを探索した記憶がある。
もちろんベータと情報が違う可能性もあるが、こんな分かりにくいとこにあったクエストだったら多分変わってはいないだろう。
「あ、それとおまえら連れてきたけど、受けるか受けないかは自由だで?」
「なんだそりゃ?ここまで来たんだから受けるに決まってんじゃん?」
「まぁそりゃあ構わねえが、難易度が高すぎんだよ、……あらゆる意味においてな」
ここにいた俺以外の三人が頭にはてなマークを浮かべていたが、まぁすぐに意味は分かる。
「さて、着いた」
「本気でよく、見つけたな。こんなとこ」
「俺の好奇の趣くままに行った結果だ」
俺がカイの言葉を一刀で伏せると、なんとこんなとこに先客がいたようだ。
「まさか、こんなとこで会うとは……」
「あれ、キリトさん?なんで、顔にペイントなんか……?」
「旦那、まさかとは思うがクエストクリア、ってぇのは」
「……うん、まぁ、そういうことだ。素手で岩を壊せ、終わるまで顔にペイント。それがこのクエストだ」
先客……キリト君は今、目の前で素手で岩割の途中だった。
しかし、キリト君の顔のペイント……言ってしまえばキリえもんといったところか?相変わらずここのジジイはいい趣味している。
俺もここに来て、クエストを受けた時は偉そうなひげを書かれて困ったものだが、まぁ今回は
まぁ、今は先客に挨拶するとしておこう。
「よぉ、キリト君。立派なひげだことで……」
「うっ、フレッド……。よくこんなとこ見つけたな。あんまり今の姿は見られたくなかったよ」
「だろうな。今、そこでシリカは爆笑こらえてるとこだぜ?」
そう言ってやると俺の後ろで吹き出しそうになってるシリカがハッと気づいたように手を顔の前で振って取り繕う。
実際のとこ、コペルもフードの奥で笑いそうになってたんだが、まぁ黙っといてやろう。
「……ここに来たってことは、あんたもこのクエを?」
「そりゃあな。じゃなきゃ、こんな超メンドい場所までは来ねえよ」
「このクエストの内容知っていながらやるってのは、さすがってとこだよ、あんた」
キリト君の精一杯の皮肉なんだろう……、だけど、このクエストには抜け穴があることを含めて知っている俺としては馬耳東風といったところだ。
「キリト君だって知ってたからここへ来たんじゃないのか?」
「俺のほうはアルゴに教えてもらったからさ。あいつはここにはもういないけどな」
なるほど、《鼠の》の情報か……。そいや、あいつもこのクエ発見してたな。
あのひげはこのクエを途中で放り出した証だしな。
だけど、俺はそんなことにはならねえぜ、キリト君には悪ぃがな。
「フッ、そうか。だったら、まぁ、見てなよ。俺はひげを書かれずにこのクエストをクリアしてみせてやんよ」
「「「「?」」」」
まぁ、後ろの三人にも別に教えてはいないからな。
そして俺はあの忌々しいくそジジイの家に入ることにした。
がちゃ
「なぁ、どういうことさ?このクエストはひげを書かれなきゃフラグが立たねえんじゃないのか?」
俺が目の前のジジイに話しかけようとしたらカイがさっきの言葉を疑問に思ったようで話しかけてきた。
「まぁ、見てなって。あ、お前ら隠れてたほうがいいかもだぜ?巻き添え食うかもだから」
俺は一応、三人に警告を促したうえでジジイに話しかける。
「入門希望者か?」
「あぁ」
「修行の道は長く厳しいぞ?」
「問題ない」
短い問答の後、ベータ通りに小屋の外に連れ出され、キリト君のいる岩とは別の岩の前に案内される。
「汝の修業はたった一つ。両の拳のみで、この岩を割るのだ。為し遂げれば、汝に我が技の全てを授けよう」
「OK」
「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。汝には、その証を立ててもらうぞ」
そして懐から墨の瓶とでっけえ筆を取り出す。
……さてと。
そして目の前のひげおやじの手が動き出すその直前、俺は《跳躍》スキルを発動して後ろに大きくバック転をして筆を躱す。
「……ほぅ、主、中々やりおるのぅ。我が筆を避けたとは中々の体が作られておるようじゃな」
「そりゃどうも」
そう、これがベータ時に発見したことだ。
ここを見つけた時、俺はリアル職場仲間二人とパーティーを組んでいたのだが、その内の一人がこのクエを受けるときに、躱したらどうなるんだろうということで挑戦したところ、何とか初撃を躱すことに成功した。
まぁ、この二人は本サービスには仕事の都合上ログインできんかったみてえだがな。
そして、この後……
「ふむ、久しぶりに血が騒いできおった……、主にはわしと対決してもらおう。ルールは簡単じゃ。わしが諦めるまで、我が筆を避けてもらおう。もし先にわしが降参したら主には我が技の全てを授けよう。ただし、最後まで躱し切れなかったら、主にはこの岩を割ってもらうぞ」
「上等」
こういうフラグが立つ。
ただし、ジジイの筆はソードスキルさながらのスピードを持っているために躱すのは容易ではない。
そのための《跳躍》だ。
スキルにはスキルで対抗しねえとな。
あとはシステム外スキルの《見切り》をどれだけ活用できるか……だな。
ベータ時とは違うとこを見せてやんぜ。
そして、筆を構えたジジイが……跳んだ。
「……っ!」
いきなりトリッキーな……
これも俺はバック転で躱すが、ジジイの動きが異様に早い。
俺が正位置に戻った時には、すでにジジイの顔が目の前に迫っている。
だが、俺の《跳躍》もなめてもらっては困る。
さらに後ろに正位置のまま跳び、横一線に薙ぎ払われた筆の一線を躱す。
あの後、同じような攻防を繰り返しているが、このジジイ、腹の立つことにソードスキルさながらのスピードの癖にそのあとのディレイが一切ないというより隙がない。
俺自身の《跳躍》も別にソードスキルを発動しているわけではないから、ディレイは課せられないがマジで精神が削られる。
さすがは体術マスターといったところか……、だが俺にもジジイに対するアドバンテージがないではない。
このジジイは単発のソードスキルを常時発動しているかのような動きだが、あれは動きを先読みはしていない。
対して、俺は最初2回のバック転以外はジジイの目を見ながら動いているために、何とか動きを先読みして、《跳躍》フルブーストで躱すことができてる状態だ。
……ってか、ジジイ、てめぇスタミナありすぎだろ!
正直、このスタミナは予想外だ。
「っ!!?」
っぶね!今頭上風が切ったぜ!?幸い墨は付いていないみてえだけど、そろそろやべえな、これ。
と思ってると、ふと目の前のジジイの筆が止まった。
「?」
俺がはてなマークを頭に浮かべてると、ジジイがしゃべり始めた。
「見事、見事じゃ。主になら我が技の全てを授けるにふさわしい者じゃ。さぁ受け取るがよい」
そして、俺のウインドゥに無機質な機械音で表示される、獲得スキル《体術》の文字……
ヒューッ、あっっぶなかった、リアルで。
あと10分もやってたら俺の精神が先に尽きてたぜ。
……だが、この後、完全に気が緩みきった俺に悲劇が襲う。
「隙あり!!」
「!?」
あんな緊張が解けきった後じゃ、さすがに躱すことはできず、俺の顔に一閃……
「っな!ジジイ、てめえ、降参したじゃねえか!」
だが俺の言葉はシステムに想定された言葉だったらしくジジイが繋げてきた。
「はっはっはっ。油断大敵じゃ、弟子よ。こんな簡単に師匠越えされてはたまったもんじゃないからのぅ。まぁ老い先短い老人の軽いお遊びじゃ。すぐにその墨は落としてやろう」
……くっ、まさかこのクエにここまでの展開が設定されているとは……
試合には勝ったけど、勝負には負けたとはまさにこのことを言うのだろう、非常に悔しい。
俺の顔についた墨をジジイが自分の手ぬぐいで落とし終わると俺に最高のドヤ顔を向けて言ってきた。
「まだまだよのぅ、弟子よ。これからは油断せずに精進するとよかろうぞ、ふぁっはっは!」
……真面目に腹立つな、あんのくそジジイ。
俺がジジイに殴りかかろうとすると、後ろからコペルとカイに取り押さえられた。
「離せ、てめえら。俺はあのジジイを一回ぶん殴らねえと気が済まねえ!」
「まぁまぁ、落ち着きなって、フレッド。油断したあんたが悪いんだからさ」
「そうそう。それに旦那だってちゃんと目的のものは手に入れたんだろ?じゃあいいじゃねえか」
まぁ、それはそうだが、てめえらは一体なんで笑ってやがる……、まさか。
「なぁ、シリカ」
「えっ、は、はい」
シリカも笑ってやがったところを見ると……
「てめえらは俺の顔にあのジジイが書いたひげ面を見たんだな?」
「え、えと……は、はい」
「そして、そのひげはお前らにとってとっっても面白いもんだった、と?」
「……ご、ごめんなさい!とっっても面白かったです!!!」
そのセリフを皮切りに周りから、大爆笑が上がる。
それと同時に俺を拘束している手も離れる。
「最っ高だったぜ!旦那!!いつもすましてやがる旦那がまさかあんな顔になるとは思わねえもんな、普通!!」
「本当にね!あれは記録媒体があったら、たとえ超高価でも撮っておきたかったよ!!」
「…………」
俺は無言でウインドゥを開き、リズから預かってる両手剣を取り出す。
「!?ちょ、ちょっと落ち着けって!旦那。無言はリアルで怖ぇって!!わっ、マジで振ってきやがった!?」
「ま、待てって。リアルに落ち着け!フレッドお前、オレンジになるぞ!!」
さすがに
その後、数十分ほど奴らと鬼ごっこをしたが、シリカに(笑いながらだが)止められたので、まぁあいつらがこのクエストを受けることで許すことにしてやった。
え?結果?当然無理であいつらもなかなかのひげを書かれてたから腹抱えて笑ってやったよ。
カイはベータの俺と同じ感じの偉そうなやつを、コペルは《鼠の》と同じ3本線といったところだったな。
ホントはシリカの奴も受けさせてやりたかったが、流石にこれを割らせるのはかわいそうだったので、まあやめてやった。
その代わり、あとでちゃんとバツは受けてもらうよ、ぎりぎり可能なレベルのものを一人でね。
まぁ、一回俺を怒らせたらどうなるかっていうのはこいつらに知ってもらうにはいい機会にはなったかもな、代償は大きかったけど……
しかし、予想外にカイが割るのに時間かかったせいで攻略が遅れたんは誤算だったな。
フレッドは怒らせると怖いですよ?
第一層を攻略後もキレてましたけど、本気で怒るとあの比ではないです。
それと、剣の強化素材はどうするか迷ったんですが、それぞれの剣固有の強化素材が必要なものとして認識しております。
最後に、ご意見・ご感想・リクエスト等々ございましたら、メッセージか感想欄に飛ばしていただければと思います。
では今回はこのへんで、ではでは!