やはり俺には、あいは手に負えない。   作:わらびもち抹茶風味

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 次回の更新は11/9(月)を予定してます。


ゆーだいど

 肉体が浮上しているかのような、あるいは何者かの手により、掬(すく)い上げられているかのような——そんな感覚が、意識を蝕(むしば)む。

 それは、二度目の生を授かった——あの日、あの時の感覚に酷似していた。

 

 俺は——。

 雨宮吾郎は——。

 

 いや、ここでは「星野アクア」に改めよう。

 

 話を戻すが、彼の意識は途絶(とだ)えたはずだった。

 暗い海中で、冷たい気泡に蔽(おお)われたまま、確実に潰えたはずだった。

 

 それなのに——。

 彼は、彼自身を感じている。

 

 これは、願望なのだろうか。

 生まれ直したい、やり直したい、と。

 そう切実に願った——結果なのだろうか。

 

 だが——。

 願望は、正しく叶うとは限らない。

 それは、移ろう天候のように、転がる骰子(さいころ)のように——気まぐれだからだ。

 

 現に、彼が夢見で抱いた願望は、歪曲という像(かたち)を以て成就した。

 例えば——。

 

 周りに重荷を背負わせ、身勝手に旅立ってしまったから。

 誰かに、身近な人に、その愚行(ぐこう)を咎(とが)めてもらいたかった。

 

 その願望は、彼の遺骸(いがい)の前で叶えられる。

 しかし、一人の少女に憎悪を押し付けてしまった。

 

 ——それだけではない。

 

 彼を悼(いた)み、それでも前向きに。

 所詮は路傍(ろぼう)の石だったと割り切り、代え難い明日を歩んでほしかった。

 

 その願望は、記憶の彼が色褪(いろあ)せてゆくことで叶えられる。

 しかし、一人の少女の原動力を奪ってしまった。

 

 これは、まるで——。

 

「呪いだね」

 

 束の間に現れた——灰色の少女は、静かな笑みを浮かべている。

 そうして、見計らっていたかのように、予見していたかのように——言葉を紡いだ。

 

「君の母親……ううん、あの星野アイでさえ」

 

 ——その呪いを断ち切れなかったのだから。

 

「でも……彼らなら、きっと」

 

 だから少女は、自らの願望を——呪いを、忌憚(きたん)なく口にする。

 

「星野アクア、君に幸あらんことを」

 

 たとえ——。

 その願いが、欺瞞に満ちていたとしても。

 その望みが、悪夢に等しかったとしても。

 

「現在の君は、1112450492回目だ。1112450493回目の世界にて、事態の好転に期待するよ。語呂に至っては丁度アイドルだし、特異点に成り得る事象や存在が、現れるといいね」

 

 少女は人差し指を唇に添え、密かに微笑む。

 そして——。

 

「おっと……これは、私の願望だったね」

 

 その独白は儚い零露(れいろ)の如く、来る夜雨に流され消えていった。




 ???「ずっと、悲しいまま?」
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