元プロゲーマーのおっさんは、かぐやを知らないがヤチヨとはマブダチである   作:文文文文

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第三話 大切なことは最初に言うべき

 琴はオタ公に暇(いとま)を告げて、ダンと共に市街のミーティングスペースへと移動した。

 空間をプライベートモードにして外部への音漏れを遮断する。

 

「いやー、オタ公さんの誰コレ感ハンパなかったっすね、ダンさん」

「俺って知名度ないんだなって痛感したぜ。元(もと)とはいえ、お前と同じくらい稼いだプロゲーマーのはずなんだがな」

「そりゃ当然っすよ。まったくライブ配信しなけりゃKASSENにも参加してないでしょ。今やダンさんを知ってるのは、ごくごく一部の古参プレーヤーだけです」

「ツクヨミ世界から忘れ去られたみたいで、おじさんは寂しいよ」

「半年ぶりにログインしといて何言ってんすか」

 

 軽口をたたいて、二人は椅子に腰を下ろした。

 

「で、本題だ。お前がよこしたこれに偽情報(フェイク)は含まれるのか?」

 

 ダンの眼光が鋭くなった。声音も固い。

 これとは昼休憩に観たあの動画である。

 

「いいえ、すべて事実です。僕も現地で実況してましたから。加工は一切ありません」

 

 琴もまた、いつも視聴者を沸かせている軽いトークの口調ではない。

 

「そうか……」

 

 ダンは沈黙したが、それは何らかの感情に浸るのではなく、思考を練るためのものだった。

 しばらくして口を開く。

 

「今回のライブ、演出ではないというのが俺の結論だ。根拠は三つ」

 

 琴が無言で促す。

 

「一つ目。あのアキラが公衆の前でチートを使いやがった。雷と乃依もだ。最初はチート行為をしているという演出かと思ったが、あのバトルは真剣(マジ)だ。何度も戦(や)った俺の直感だ。確かに人気取りのためのド派手な演出を好む連中だが、いくらリアリティを追求するためであっても本身(ほんみ)のチートはリスクがでかすぎる。その計算はできるはずだ」

「つまり、リスク度外視の何かがあったと」

「二つ目。一ヶ月くらい前に立川一帯でハッキング騒動があっただろ」

「ええ、たしかダンさんの部署が対応窓口になってましたね。ご苦労様でした」

「あんときの目撃情報で多数寄せられた人型そのものだ、これは」

 

 ダンは複数のウィンドウを表示させた。目撃者が書き起こしたそれらは共通した特徴を持っている。首から上は寺社仏閣でよく見られる灯籠、下は子供くらいの大きさで白一色。

 

「確かにツクヨミのみならず、現実でも一般人のデバイスをジャックしてこの人型を出現させるというのは、ヤチヨの仕業とは思えないですね。彼女が驚かすなら、ツクヨミの内側だけにしそうなものです」

「三つ目。そのヤチヨだが、あいつはかぐやの引退ライブについて何と言っている? ニュース配信やってるオタ公からインタビューを聞きだそうとして、家に呼んだんだろ? 何で釣ったかは知らねえが」

 

 見抜かれていましたかと、琴は苦笑して肩をすくめてみせた。

 

「ノーコメどころか返答なしだそうです」

「……決まりだな。行くぞ」

 

 ダンは勢いよく椅子から立ち上がった。

 

「行くって、これからヤチヨに会いにですか?」

「でなけりゃわざわざフルダイブしねえよ。『かぐやの引退ライブすごかったー、これ演出?』なんてヤチヨにメッセ送ったところで真面目に返ってくる雰囲気じゃないだろ。こういうときゃあな、凸撃が最善手なんだよ」

「実にダンさんらしいっすね。僕も同道しますよ、当然」

 

 ミーティングスペースから出かけたダンだったが、

 

「ああそれと四つ目な。九月初めの花火大会で偶然、かぐやといろPらしき二人に会ったんだわ。築地とか強制送還とか言ってたが、『月から迎えがくる』ってことだとすると、なんとなーく合点がいきそうじゃねえか、これ」

 

 琴は驚愕に目を見開いたのち、深いため息を吐いた。

 

「ダンさん、そういう大切なことは最初に言ってもらえませんか」

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