魔法少女まどか☆マギカ Magia Primordialis 作:THE1003
少女は、夢を見ていた。
そこには空がなかった。
地面も、海も、星もない。ただ、果てしなく広がる白い空間があった。
上下も左右もわからない場所で、少女はひとり立っていた。
自分の足元を見下ろす。
見慣れた服。肩まで伸びた茶色の髪。
どれも自分のものだとわかる。
けれど、それ以外は何ひとつ思い出せなかった。
――私は、誰?
問いかけても、答えはない。
少女は胸元に手を当てた。
自分の中に、何か大切なものが欠けている。
そんな感覚だけが、はっきりと残っていた。
声がした。
少女は顔を上げた。
少し離れた場所に、誰かが立っていた。
長い髪。人の姿をしているのに、人間とは違う何かを感じさせる佇まい。顔立ちは光に霞み、どんな表情を浮かべているのかもわからない。
けれど、その声には不思議な温かさがあった。
「あなたは……誰?」
『今のあなたには、答えられない』
「どうして?」
『あなたが、あなた自身を見失ってしまったから』
少女は唇を結んだ。
わからないことばかりだった。
ここがどこなのか。
目の前の人物が誰なのか。
そして、自分は何者なのか。
「私は、何をすればいいの?」
その問いに、相手は答えなかった。
やがて、静かに手を伸ばす。
『ごめんなさい』
たった、それだけだった。
「いったい何を…」
私は差し出された手を見つめた。
触れようとした瞬間、白い世界にひびが入った。
無数の光が生まれ、遠ざかっていく。
その向こうに、一瞬だけ何かが見えた。
燃え上がる街。
崩れ落ちる建物。
夜空を覆い尽くす、巨大な影。
そして、その前に立つ少女たち。
彼女たちは必死に何かと戦っていた。
誰かが泣いていた。
誰かが祈っていた。
誰かが、もう二度と戻らない人の名を叫んでいた。
少女は手を伸ばした。
「待って……!」
何を待ってほしいのか、自分でもわからなかった。
ただ、あの光景を見過ごしてはいけない。
そんな確信だけがあった。
次の瞬間、世界が砕けた。
⭐︎
「――っ!」
少女は目を覚ました。
窓から差し込む朝日が、白い天井を照らしている。
静かな部屋だった。
余計な家具はなく、机とベッド、衣装棚があるだけ。壁には何も飾られていない。棚にも、思い出の品と呼べるようなものは見当たらなかった。
生活に必要なものだけを用意した部屋。
少女はゆっくりと上半身を起こした。
心臓が早鐘を打っている。
「……夢?」
呟いてみても、答えはない。
夢の内容は、すでに薄れ始めていた。
白い世界。
見知らぬ誰か。
ごめんなさい、という言葉。
それから、燃え上がる街と、戦う少女たち。
どれも現実とは思えなかった。
けれど、胸の奥に残った感情だけは消えてくれない。
何かを忘れている。
何かをしなければならない。
そんな焦りが、理由もなく心を締めつけていた。
「……考えても、仕方ないか」
少女は小さく息を吐き、ベッドから降りた。
今日は学校がある。
制服に着替え、髪を整え、朝食を用意する。両親は海外へ出張していて、しばらく帰ってこない。家事も身の回りのことも、自分ひとりでこなす生活には慣れていた。
困ることはない。
寂しいとも思わない。
玄関を出る直前、少女はふと振り返った。
誰もいない部屋。
整然と片づいた家具。
静まり返った空間。
そこにいるはずのない誰かの気配を、感じたような気がした。
「行ってきます」
無意識に、そう口にしていた。
返事はなかった。
少女は少しだけ不思議そうな顔をしたあと、玄関の扉を閉めた。
⭐︎
見滝原市。
春の風が吹く、穏やかな街。
少女の名は、
どこにでもいる中学生。
――少なくとも、彼女自身はそう信じていた。
自身の左手中指にはめられた変わった装飾の入った指輪を横目に学校へ向かう。
しおりは、まだ知らない。
遠い昔、誰にも知られることなく生まれた最初の祈り。
その祈りから生まれた、ひとつの役割。
それらすべては、今はまだ、深い沈黙の中に眠っている。
そして、一度きりの奇跡のような出会いを果たす。
その出会いが、彼女の心に何を残すのか。
まだ、誰にもわからない。
彼女の物語は、ここから始まる。
AIパワーを借りようとして失敗しました。