木々の隙間から、柔らかな陽光が降り注いでいた。
風が吹くたびに枝葉が揺れ、重なり合った木漏れ日が地面の上をゆっくりと移動していく。
どこからか聞こえてくる小鳥の囀り。
湿った土と草木の匂い。
そして、時折頬を撫でていく、秋の涼やかな風。
ベルノンの町からほど近い森は、穏やかな朝の空気に包まれていた。
そんな森の中を、二人の冒険者が歩いていた。
一人は、栗色の髪を左右にまとめた女剣士、セネカ・ロッソ。
もう一人は、大きなリュックを背負った小柄な少年、ニッペである。
目的は、冒険者ギルドで受注した食料調達の依頼。
森で採れる食用の植物や果実、場合によっては獲物の肉などを集め、依頼主である酒場へ届ける仕事だった。
戦闘を前提としない、比較的危険度の低い依頼である。
少なくとも、今のところは。
「森の空気は気持ちがいいですねぇ。のどかだし、へいわですぅ」
ニッペは大きく息を吸い込むと、満足そうに微笑んだ。
厚手の服にマフラー、ニット帽という相変わらずの格好である。
秋とはいえ、まだそこまで冷え込んでいない森の中では、どう考えても暑そうだった。
しかし、本人はまったく気にしていない。
「平和なのはこのあたりだからよ。奥行ったらやばいのの巣だから。ほらそこ、それ食えるキノコ」
セネカは足元を指差した。
苔むした倒木の陰に、茶色い傘を広げたキノコがいくつか生えている。
ニッペはしゃがみ込むと、それを一つずつ丁寧に採り始めた。
「おお~。これも食べられるんですねぇ」
「そうよ。似たようなので毒持ってるやつもあるから、勝手に採って食べンじゃないわよ?」
「はぁい」
ニッペは素直に頷き、採取したキノコを背中のリュックへしまった。
その様子を眺めながら、セネカはふと眉を上げた。
「にしてもまぁ、よく入るリュックねぇ、それ。従姉弟が作ってくれたんだっけ?」
森へ入ってからというもの、二人はそれなりの量の食材を採取していた。
キノコに木の実、食用の野草。
それらを次々と放り込んでいるにもかかわらず、リュックが膨らんだ様子はない。
元から大きなリュックではあるが、それにしても収納力がある。
冒険者向けの荷物袋としては、なかなか優秀な代物だった。
「はいぃ。従姉弟がですね? うちはドジで間抜けで鈍くさいから、全部ここにいれておけって」
「スッゲー言うわね、アンタの従姉弟……」
セネカは思わず顔を引きつらせた。
ドジ。
間抜け。
鈍くさい。
たった一言の中に、三種類もの悪口が詰め込まれている。
しかも、それを言われた本人が、まったく気にした様子もなく話しているのだから恐ろしい。
(……いや、まあ、確かにちょっと抜けてるところはあるけどさぁ)
セネカは横目でニッペを見た。
少年は相変わらずにこにこと笑っている。
どうやら、従姉弟に悪く言われたという認識すらないらしい。
(どんな従姉弟なのよ……)
少し気になったが、今は仕事中である。
セネカはそれ以上追及せず、採取を続けることにした。
「あ、野草ですぅ。煎じると身体にいいんですよ?」
しばらく歩いたところで、ニッペが草むらの一角を指差した。
そこには、細長い葉を伸ばした野草が群生していた。
ニッペはそのうちの一本を摘み、葉の形を確かめるように眺めている。
「ふぅん? そういやアンタ、料理出来るとか言ってたわね」
「はいぃ。従姉弟がですね? うちはバカでアホでオタンコナスだから、料理ぐらい身に着けておけって」
「――ホントスゲー言うわね! アンタの従姉弟!」
思わず声が大きくなった。
先ほどより悪口が増えている。
しかも、最後にオタンコナスまで追加されていた。
(何!? アンタの従姉弟、悪口の種類だけは豊富なの!?)
セネカは額を押さえた。
しかし、ニッペは至って平然としている。
むしろ、従姉弟から料理を教わったことを誇らしく思っているようだった。
セネカは何とも言えない気分になった。
言葉だけを聞けば、ずいぶん口の悪い従姉弟である。
だが、その従姉弟はニッペのためにリュックを作り、料理まで教えているという。
悪口と面倒見のよさが、奇妙な形で同居していた。
(……まあ、仲は悪くないんでしょうけど)
セネカはそう結論づけ、野草の採取へ戻った。
◇
それからしばらく。
二人は森の浅い区域を歩き回り、食用のキノコや野草、木の実などを集めていった。
セネカが食べられる植物を見分け、ニッペがそれを採取してリュックへしまう。
役割分担は、思っていた以上にうまくいっていた。
ニッペは動作こそのんびりしているものの、言われたことには素直に従う。
採ったものを丁寧に扱うため、食材を傷めることも少ない。
何より、荷物を背負っているにもかかわらず、疲れた様子をまったく見せなかった。
(……まあ、ポーターとしては悪くないか)
セネカは内心で評価を改めた。
戦闘能力については依然として不明だが、少なくとも荷物持ちとしては十分に役立っている。
これなら、今回の依頼も問題なく終えられるだろう。
そんなことを考えながら、セネカは周囲を見回した。
「このあたりは、大体採れたわね。ニッペー、次行くよ」
「はぁい。……あれぇ?」
返事をしたニッペが、不意に足を止めた。
「如何したのよ」
「セネカさん、見てくださぁい。美味しそうな果物がなってますよ?」
「んん? ――ああ、確かにあるわね。いい感じに熟してんのが」
ニッペの指差す先。
少し離れた場所に立つ大きな木の枝に、赤みを帯びた果実がいくつも実っていた。
陽光を浴びた果皮には艶があり、遠目にも十分に熟していることが分かる。
食料調達の依頼としては、なかなか魅力的な獲物だった。
ただし、一つ問題がある。
高いのだ。
果実が実っているのは、地上からかなり離れた枝先。
木登りをするか、何らかの道具を使わなければ手が届かない。
セネカは少し考えたあと、肩をすくめた。
「けど、あんな高いとこの取りに行くより、そこら辺に落ちてる――」
ふよふよ。
「やつ、を――」
ふよふよふよふよ。
「……拾っ……て」
ふよふよふよふよ。
ぱしっ。
「採れましたぁ!」
「うおおぉオぉぉオぉオォおおオォっ!??」
森中に、セネカの絶叫が響き渡った。
枝に止まっていた小鳥たちが、一斉に飛び立つ。
近くの茂みからも、小動物が慌てて逃げ出していった。
だが、セネカにはそんなことを気にしている余裕などなかった。
目の前で、信じられない光景が繰り広げられていたからだ。
ニッペが、浮いている。
地面から両足を離し、何の支えもなく宙に浮かんでいるのだ。
しかも、羽ばたいているわけでもなければ、何かに吊り下げられているわけでもない。
ただ、ふよふよと。
まるで風に乗った綿毛のように、のんびりと空中を漂っている。
そのまま木の枝まで上昇し、実っていた果実を一つもぎ取ったのである。
「セネカさぁん、採れましたぁ」
ニッペは嬉しそうに果実を掲げた。
実に満足げな表情だった。
しかし、セネカにとっては果実などどうでもよかった。
「採れましたぁ、じゃねえよ!! 飛んだ!!? あんたいま飛んだか!!? と言うか浮いたか!!?」
「? はいぃ、浮けますよぉ?」
ふよふよ。
「ま、マジで浮いてる……」
セネカは口を半開きにしたまま、宙に浮かぶニッペを見上げた。
何度瞬きをしても、光景は変わらない。
ニッペは確かに浮いていた。
しかも、本人にとっては呼吸をするのと同じくらい当たり前のことらしい。
驚いているのはセネカだけだった。
(飛行魔術!? いや、だとしたら遅すぎだし、高度も出てない! どっちかってぇと重力を無視してる飛び方だわ)
セネカは必死に頭を働かせた。
飛行魔術そのものは、存在する。
魔力を用いて身体を浮かせ、空中を移動する術だ。
ただし、習得難度は高く、誰でも気軽に扱えるようなものではない。
それに、セネカの知る飛行魔術は、もっと明確に推進力を伴うものだった。
少なくとも、目の前の少年のように、何の予備動作もなく、ふわふわと浮かぶものではない。
魔力を練り上げる様子もなかった。
呪文を唱えたわけでもない。
魔法陣が現れたわけでもない。
気がついたときには、なんかすでに浮いていたのである。
(……ホント何なのよ、コイツ)
セネカは眉をひそめた。
冒険者歴十一年。
これまで様々な魔術や特殊能力を見てきたつもりだった。
だが、こんな奇妙な浮遊の仕方は初めてである。
そして何より。
(――ちょっと待て)
セネカは、はっとした。
今朝の面接。
自分は確かに尋ねたはずだ。
何か得意なことはないのか、と。
剣が使えるか。
魔法が使えるか。
戦闘で役に立つ能力はあるのか。
それに対するニッペの答えは、料理、荷物運び、火起こしだった。
なのに。
「浮けるなら最初にそう言えやぁぁぁぁぁぁ!! 聞いてねえぞ、わたしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」《/b》
セネカの心からの叫びが、森の奥まで響き渡った。
木々に止まっていた鳥たちが、再び一斉に飛び立つ。
今日だけで何度、彼女の大声に驚かされたことだろう。
森の動物たちにしてみれば、いい迷惑である。
「ぜぇ……ぜぇ……」
セネカは肩で息をしながら、膝に両手をついた。
今朝は酒を飲みすぎて頭が痛かった。
今は目の前の少年のせいで頭が痛い。
どうやら、頭痛とは当分縁が切れそうにないらしい。
「何だかすみませぇん」
ニッペが申し訳なさそうに頭を下げた。
もっとも、何について謝っているのかは、本人もよく分かっていない様子だったが。
「……あ、謝る気あんの? まぁ、いいわ」
セネカは額を押さえた。
ここで怒鳴り続けても仕方がない。
そもそも、ニッペにとっては空を浮くことなど、ごく当たり前の行為なのだろう。
当たり前すぎて、特技として申告する必要すら感じなかった。
そう考えれば、一応の説明はつく。
納得できるかどうかは別として。
セネカは大きく息を吐き、改めてニッペを見つめた。
「アンタ、飛べんのね」
「はいぃ。うちのいる雪国では、みんなとべるんですよ?」
「はあっ!?」
またしても素っ頓狂な声が出た。
みんな。
今、確かにみんなと言った。
つまり、この少年の故郷では、空を飛ぶことが特別な能力でも何でもないということになる。
「特にですね? 従姉弟が一番はやぁくとべるんですよ? うちは一番おそぉいです」
「そ、そうなの」
セネカは引きつった笑みを浮かべた。
何だろう。
先ほどから、聞けば聞くほど訳が分からなくなっていく。
(マジで何なのよ、アンタの従姉弟……)
リュックを作れる。
料理を教えられる。
口が悪い。
そして、雪国で一番速く飛べるらしい。
ニッペの話に登場する従姉弟は、情報が増えるたびに人物像がますます謎めいていく。
もっとも、セネカにとって本当に問題なのは、従姉弟の方ではなかった。
(と言うか、国中の奴が全員飛べるって何? 魔法使いの国だったりすんの?)
セネカは腕を組んだ。
魔術が盛んな国というものは、確かに存在する。
幼い頃から魔術教育を受けられる土地なら、一般的な国より魔術師の割合が高くても不思議ではない。
だが、住人全員が飛べるとなれば話は別だ。
飛行魔術は、決して簡単な術ではない。
習得には相応の才能と訓練が必要であり、熟練の魔術師でも扱えない者は珍しくない。
それを、誰もが当たり前のように使える国。
そんな場所が本当にあるのなら、冒険者の間で噂になっていてもおかしくないはずだった。
しかし、セネカには心当たりがない。
少なくとも、スノウロア皇国にそんな話は聞いたことがなかった。
(……やっぱり、スノウロアじゃないのかしら)
セネカはちらりとニッペを見た。
当の本人は、先ほど採った果実を大切そうにリュックへしまっている。
そして、何事もなかったかのように地面へ降り立った。
とん。
軽い着地音。
それだけだった。
魔術を使った反動もなければ、疲労した様子もない。
あまりにも自然な動作だった。
(……いや、考えたって分かんないわよね)
セネカは眉間を揉んだ。
どうにも、この少年には自分の常識が通用しないらしい。
ただ、一つだけ確かなことがある。
ニッペは、ただの荷物持ちではない。
少なくとも、空中にあるものを採取するという点では、普通のポーターには真似できない能力を持っている。
セネカは木の上を見上げた。
まだいくつもの果実が、枝先で赤く色づいている。
それから、ニッペを見る。
ニッペもこちらを見た。
「?」
こてん。
「…………」
セネカはしばし沈黙した。
そして、ゆっくりと口を開く。
「……ねえ、ニッペ」
「はいぃ?」
「あの上の果物、全部採れる?」
「はいぃ。できますよぉ?」
「…………」
セネカは再び木を見上げた。
あれだけの果実を持ち帰れれば、今回の依頼の報酬もかなり期待できる。
しかも、ニッペなら木に登る必要すらない。
危険な枝先に足をかけることもなく、ただ浮いて採ってくればいいのだ。
セネカの頭の中で、先ほどまでの混乱が少しずつ別の感情へ変わっていった。
(……待てよ?)
これは。
もしかして。
(……結構、使えるんじゃない?)
借金を抱えたB級冒険者の目に、ほんのわずかな希望の光が宿った。
一方、そんな彼女の思惑など知る由もなく。
「じゃあ、いっぱい採ってきますねぇ」
ニッペはにこにこと笑いながら、再びふよふよと浮かび上がった。
セネカはその姿を見上げながら、ぽつりと呟いた。
「……ホント、何なのよアンタ」
返事の代わりに、頭上からのんびりした声が降ってきた。
「ニッペともうしますぅ」
「それは知ってるわよ!!」
今日何度目か分からないセネカの突っ込みが、森に響いた。
◇
「――フッ!!」
ザシュッ!
『ギュアアアア!』
鋭い一閃が、森の静寂を切り裂いた。
草むらから飛び出してきた大きな鳥が、断末魔の鳴き声を上げて地面に倒れる。
セネカは剣を振り抜いた姿勢のまま、獲物が動かなくなったことを確認した。
「うし、大陸鶏ゲット! コイツは金になるわよぉ~」
満足げに笑いながら、仕留めた鳥を持ち上げる。
大陸鶏。
アルゼリオン王国をはじめ、大陸の広い地域に生息する大型の鳥類である。
普通の鶏よりも一回り以上大きく、発達した脚と鋭い嘴を持つ。
野生の個体は気性が荒く、迂闊に近づけば怪我をすることもあるが、その肉は非常に美味とされていた。
特に、脂の乗った腿肉は酒場でも人気が高い。
「そうなんです?」
ニッペが興味深そうに首を傾げた。
「需要があるからね。コイツの唐揚げはビールによく合うのよぉ。冒険者達は必ず頼む一品ね!」
「なるほどぉ」
ニッペは感心したように頷いた。
一方、セネカは獲物を眺めながら、すでに頭の中で報酬を計算していた。
(ふっふっふ……いいじゃない、いいじゃない!)
今回の依頼は、持ち帰った食料の量によって報酬が変わる。
つまり、採れば採るほど儲かるというわけだ。
それに、ニッペという便利な荷物持ちまでいる。
これほど条件のいい仕事も、そうそうない。
「うしっ! 次、魚いくわよ魚! このあたりの川はベルノントラウトがよく住み着くのよ」
「お魚さんですかぁ。釣り道具用意しますね?」
「お、気が利くじゃーん!」
ニッペは背中のリュックを下ろすと、中をごそごそと探り始めた。
やがて取り出したのは、釣り竿と糸、釣り針などの一式だった。
どうやら、釣り道具まで持参していたらしい。
(……ホント、何でも入ってんのね、そのリュック)
セネカは感心しつつも、今さら深く考えないことにした。
何しろ、持ち主は空を浮く少年である。
少々変わったリュックくらいで驚いていては、身が持たない。
◇
森の中を流れる小川は、澄んだ水を絶え間なく運んでいた。
水底には丸い石が転がり、その間を小魚たちが素早く泳ぎ回っている。
ところどころにできた深みには、ひときわ大きな魚影も見えた。
ベルノントラウト。
この地域の河川に生息する淡水魚で、引き締まった身と程よい脂が特徴の魚である。
焼いても煮ても美味しく、町の食堂や酒場では定番の食材として扱われていた。
「よし、あそこね」
セネカは流れの緩やかな場所を見つけると、釣り糸を垂らした。
ニッペもその隣にちょこんと座り、見よう見まねで竿を構える。
「お魚さん、釣れるといいですねぇ」
「釣れるわよ。ここ、結構いい場所だから」
水面を眺めながら、セネカは口元を緩めた。
森での採取。
獲物の狩猟。
そして、川での釣り。
どれも冒険者にとっては珍しくない仕事である。
しかし、今日はいつもよりずっと気楽だった。
荷物を持つ必要がない。
採取した食料の置き場所を心配する必要もない。
そして何より、隣には楽しそうに釣り糸を垂らす新しい仲間がいる。
(……まあ、悪くないかもね)
セネカは小さく笑った。
昨日までは、マークスとルミンがいた。
長年連れ添った仲間たちとの冒険は、確かに楽しかった。
それが突然終わってしまったことには、まだ寂しさが残っている。
けれど。
新しい冒険というのも、案外悪くないのかもしれない。
そんなことを考えていた、そのとき。
「……あ」
「ん?」
「セネカさん、引いてますよぉ」
「おっ、マジ!?」
セネカは慌てて竿を握り直した。
糸の先で魚が暴れ、水面に大きな波紋が広がる。
「よっしゃあ! 大物来たぁ!」
森の中に、景気のいい声が響き渡った。
◇
「あ、セネカさん。あっちに野草の群生地がありますよぉ?」
「でかしたぁ! 根こそぎ――は、拙いからほどほどに採るわよ!」
「はぁい」
川での釣りを終えた二人は、再び森の中を歩いていた。
ニッペが見つけたのは、木々の間に広がる小さな草地だった。
そこには食用に適した野草が、青々とした葉を茂らせている。
セネカは早速しゃがみ込み、慣れた手つきで採取を始めた。
もっとも、全部採ってしまうわけにはいかない。
植物を根こそぎ持ち去れば、次に同じ場所を訪れたとき、何も残っていないということになりかねないからだ。
採取資源を適度に残すのは、冒険者にとって大切な心得の一つである。
セネカも十一年の経験から、そのあたりは十分に理解していた。
……金に目が眩んで、一瞬忘れかけたが。
「このへんの葉っぱも食べられるんですかぁ?」
「それは駄目。苦いだけじゃなくて腹壊すわよ」
「おお~、そうなんですねぇ」
「こっちの細い葉のやつは大丈夫。スープに入れるとうまいわよ」
「なるほどぉ。覚えておきますねぇ」
ニッペは素直に頷き、教えられた野草を丁寧に摘んでいく。
採取したものは、すべて背中のリュックへ。
キノコ。
木の実。
果物。
野草。
大陸鶏。
ベルノントラウト。
その他にも、森で見つけた食用植物や小さな獲物が次々と加わっていった。
そのたびに、ニッペはリュックを開けては食料をしまい込む。
セネカも最初こそ収納力に驚いていたが、やがて気にしなくなっていた。
何しろ、どれだけ入れても問題なさそうなのだ。
ならば、遠慮する理由もない。
(よっしゃ! これなら結構な報酬になるわね!)
借金。
生活費。
装備の手入れ代。
そして、今夜の酒代。
次々と頭に浮かぶ出費を、セネカは獲物の数で塗りつぶしていった。
そうして。
気がつけば、太陽はすっかり高く昇っていた。
◇
昼を少し過ぎた頃。
「――で」
セネカは腕を組み、目の前の光景を眺めていた。
足元には、採取した食料を確認するために並べられた品々。
キノコ。
野草。
木の実。
果物。
大陸鶏。
ベルノントラウト。
その他諸々。
その量は、どう考えても二人で半日かけて集めたとは思えないほどだった。
しかも、それらはすべて、たった一つのリュックから取り出されたものである。
セネカはしばらく無言で眺めていたが。
ついに、我慢できなくなった。
《b》「いくら何でもリュックに入りすぎだろ!!?」
森に怒号が響いた。
「いっぱいとれましたねぇ」
ニッペは嬉しそうに笑っている。
「採れましたねーじゃなくて! どーすんのよ、こんな馬鹿みたいな量! こんなの持ち運べないでしょ!」
セネカは両手を広げた。
確かに、今回の依頼は大量の食料を持ち帰る仕事である。
だから、できる限り採取しようと考えた。
考えたのだが。
流石に限度というものがある。
目の前に並んでいる食料は、明らかにその限度を超えていた。
これだけの量を運ぶなら、荷車が必要になるだろう。
下手をすれば、荷車一台でも足りないかもしれない。
ましてや、二人で持ち帰るなど到底不可能である。
「あーもう、調子乗りすぎたぁ。帰りのこと計算に入れ忘れるとか、冒険者失格でしょ!? 金に目が眩んだ……」
セネカは頭を抱えた。
自分で自分が情けなくなる。
十一年も冒険者を続けてきたというのに、こんな初歩的な失敗をするとは。
しかも、今回は新人を連れているのだ。
本来なら、経験豊富な自分がしっかりと手本を示さなければならない。
それなのに、報酬に目が眩んで採取しすぎるなど。
(……あぁぁぁ! 何やってんのよアタシぃぃぃ!)
セネカは深いため息をついた。
とりあえず、持ち帰れる分だけ選別するしかない。
残りは……。
残念だが、諦めることになるだろう。
そう考えた、そのときだった。
「よいしょ」
ひょいっ。
「――――――」
セネカの思考が停止した。
ニッペが。
リュックを。
持ち上げた。
それだけである。
それだけなのだが。
先ほどまで大量の食料を詰め込んでいた、あの巨大なリュックを。
小柄な少年が、まるで空っぽの袋でも持つかのように、軽々と背負っていたのである。
膝を曲げて踏ん張ることもない。
重さに身体を傾けることもない。
ただ、ごく自然な動作で。
ひょいっ、と。
「…………」
セネカは目を見開いたまま固まっていた。
理解が追いつかない。
いや、正確には理解したくない。
あれだけの食料を詰め込んだリュックが、軽いはずなどないのだ。
普通なら、大人の男が数人がかりでも持ち上げるのに苦労するだろう。
それを、目の前の少年は何の苦もなく背負っている。
「? どうかしましたぁ?」
ニッペが不思議そうに首を傾げた。
その顔には、何の疑問も浮かんでいない。
どうやら本人にとっては、ごく当たり前のことらしい。
セネカのこめかみが、ぴくりと引きつった。
空を浮く。
何でも入るリュックを持っている。
そして、信じられない量の荷物を軽々と背負う。
今日一日で、いったい何度この少年に驚かされれば気が済むのだろうか。
セネカは大きく息を吸い込んだ。
そして。
「どうかしてんのはお前だぁぁぁぁ!!」
森の奥まで響き渡る大絶叫を上げた。
驚いた鳥たちが、またしても一斉に飛び立った。
今日という日は、どうやら森の動物たちにとっても厄日らしい。
◇
「……あ~、まぁいいわ。考えてみればウチらにとっちゃメリットしかないしね」
セネカは大きくため息をついた。
目の前では、ニッペが相変わらず巨大なリュックを背負っている。
その中には、今日一日で採取した大量の食料が詰め込まれていた。
大陸鶏。
ベルノントラウト。
食用のキノコや野草。
そして、色とりどりの果物。
本来なら荷車を何台か用意して運ぶような量を、この小さな少年は何の苦もなく背負っているのだ。
最初こそ驚いたセネカだったが、冷静に考えれば悪い話ではなかった。
むしろ、これほど優秀な荷物持ちなど、滅多にお目にかかれない。
(……まぁ、戦闘能力は相変わらず分かんないけどさ)
少なくとも、今回の依頼に関しては大活躍だった。
これなら報酬も期待できる。
酒場の借金を返しても、十分に釣りが来るかもしれない。
「おそれいりますぅ」
ニッペがぺこりと頭を下げた。
「……ほめちゃいねーのよ」
セネカは呆れたように肩をすくめた。
もっとも、その口元には小さな笑みが浮かんでいた。
なんだかんだで、悪くない一日だった。
新しい仲間。
初めての依頼。
予想以上の収穫。
昨日までの自分には想像もできなかったが、これからの冒険者生活も案外うまくやっていけるかもしれない。
そんなことを考えた、そのときだった。
――ズズズゥン。
「――っ!?」
セネカの表情が変わった。
地面が、微かに揺れたのだ。
いや。
揺れたというより、何か巨大なものが地面を踏みしめたような振動だった。
森の奥から、低く重い音が伝わってくる。
風が止んだ。
先ほどまで聞こえていた小鳥の囀りも、いつの間にか消えている。
「…………」
セネカは無言で森の奥を見つめた。
背筋に、冷たいものが走る。
冒険者歴十一年。
幾度となく危険な魔獣と対峙してきた彼女には、理屈では説明できない感覚があった。
死の気配。
それが、近づいてきている。
「セネカさぁん?」
ニッペが不思議そうに首を傾げた。
「……ニッペ。帰るよ」
「ぇえ?」
セネカは低い声で告げた。
普段の軽薄な調子は、そこにはない。
(……アタシの勘がやべぇっつってる。こっちになんか来る!)
セネカは剣の柄に手を添えた。
森の中で、何かが動いている。
それも、一体や二体の小型魔獣ではない。
もっと大きく、もっと重い何か。
ドドドドド……。
地響きが近づいてくる。
ドドドドドドドドドド……!
木々が揺れた。
枝が折れ、葉が舞い散る。
ドドドドドドドドドドドドドドド!!
その音は、もはや地鳴りに近かった。
「……嘘でしょ」
セネカは呟いた。
そして。
それは、姿を現した。
『――ゴガアアアアアアアアアアアッ!!!』
凄まじい咆哮が、森を震わせた。
木々の間から飛び出してきたのは、巨大な猿だった。
いや。
猿と呼ぶには、あまりにも異形だった。
筋肉質な巨体。
盛り上がった肩と胸。
地面を抉るほど太い脚。
そして、何より目を引くのは、
通常の猿と同じ位置に生えた二本の腕に加え、その下からもう一対の腕が伸びていた。
いずれも丸太のように太く、握り締められた拳は岩塊を思わせる。
全身を覆う毛皮は、血を思わせる鮮やかな赤。
剥き出しになった牙の間からは、荒々しい呼吸とともに白い息が漏れていた。
そこにいたのは、紛れもない怪物だった。
「――なっ……!」
セネカの喉から、掠れた声が漏れた。
知っている。
この魔獣を、彼女は知っていた。
直接戦ったことこそない。
しかし、冒険者であれば知らない者はいないほど有名な危険種だった。
「――【
『――ゴガアアアアアアアアアアアッ!!!』
再び咆哮が響き渡った。
A級に分類される大型魔獣。
その名が示す通り、極めて凶暴な性質を持ち、四本の腕から繰り出される攻撃は岩を砕き、大木をへし折る。
分厚い筋肉は生半可な刃を通さず、一度暴れ始めれば周囲の地形すら変えてしまう。
単純な膂力だけで言えば、昨日討伐した
しかも、厄介なのはその食性だった。
暴虐狒々は雑食性であり、植物から小動物、大型の獣に至るまで、口に入るものなら何でも食べる。
特に食欲が旺盛な個体は、食料を求めて広範囲を移動することが知られていた。
「――ふわぁ」
そんな怪物を前にして、ニッペも驚きの声をあげている。
「何で……コイツが……!」
声が震える。
(――A級魔獣が近くにいるなんて聞いてないわよっ!? くっそ、ギルドの奴らぁ……!)
森の浅い区域で受けられるD級採取依頼。
少なくとも、セネカがギルドで確認した時点では、危険な魔獣の出没情報などなかった。
もしA級魔獣が確認されていたなら、ギルドは必ず注意喚起を行うはずだ。
しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
問題は、なぜこの怪物がここにいるのかということだった。
(……だとしても、何で真っ直ぐこっち来た? このあたりにコイツが餌にするようなモンなんて――)
そこで、セネカの思考が止まった。
(――あ)
ゆっくりと視線を動かす。
ニッペ。
その背中。
巨大なリュック。
中には、大量の食料。
肉。
魚。
果物。
野草。
それらが、文字通り山ほど詰め込まれている。
『グルルルルルッ……!』
暴虐狒々が低く唸った。
その視線は、セネカではなく、ニッペの背中へ向けられていた。
「ふぇ?」
ニッペが首を傾げる。
(――そうかっ!! ニッペの荷物かっ!!)
セネカは歯噛みした。
(やらかした! やっぱ調子に乗って集めすぎたか!!)
狒々は、食料の匂いに引き寄せられたのだ。
森の深層から移動してきたのか、それとも元々この近くを徘徊していたのか。
今となっては、どちらでもよかった。
目の前にA級魔獣がいる。
それがすべてだった。
「――ニッペぇぇ!! 荷物置いて逃げるよっ!! ほらダッシュ!!」
セネカは叫んだ。
食料など惜しくない。
今日一日の成果がすべて無駄になったとしても構わない。
命さえあれば、また稼げる。
借金だって返せる。
だが、ここで死んでしまえば、それまでだ。
セネカはニッペの腕を掴もうとした。
しかし。
「――できません」
返ってきたのは、予想外の言葉だった。
「――あぁっ!?」
セネカは思わず振り返った。
ニッペは、いつものようににこにこと笑ってはいなかった。
その小さな顔には、珍しく真剣な表情が浮かんでいる。
「食料をまってるひとがいます。なら、おいていけません」
「――こんっ……!」
セネカは言葉を詰まらせた。
確かにそうだ。
依頼主は、食料を必要としている。
だからこそ、冒険者ギルドに依頼を出したのだ。
ニッペの言っていることは、決して間違っていない。
だが、それは。
今、この状況で言うべきことではない。
「――状況考えろバカガキっ!! 冒険者は命あってだ!!」
「でも――」
『ゴガアアアアアッ!!』
四本の腕のうち、一本が大きく振り上げられる。
それだけで、周囲の空気が押し潰されるような圧迫感が生まれた。
セネカの背筋に、ぞっとするほど冷たいものが走る。
「――ニッペぇぇぇ!!!」
セネカは咄嗟にニッペへ飛びついた。
小さな身体を抱え込み、そのまま横へ跳ぶ。
直後。
ズドオオォン!!
凄まじい衝撃音が響き渡った。
狒々の拳が、二人のいた場所へ叩きつけられたのだ。
地面が爆ぜた。
土砂が舞い上がり、砕けた石が周囲へ飛び散る。
衝撃で近くの木々が大きく揺れた。
「えほっ……! ――っぶねえ!」
セネカは咳き込みながら立ち上がった。
間一髪だった。
あと一瞬遅れていれば、二人まとめて肉塊になっていただろう。
セネカは背後を振り返った。
そこには、狒々の拳によって大きく抉られた地面があった。
ぞっとする。
あんなものをまともに受ければ、盾ごと身体を粉砕される。
B級冒険者である自分ですら、正面から戦って勝てる相手ではない。
「セネカさ――」
ガシッ。
セネカはニッペの両肩を掴んだ。
その顔を、真正面から見据える。
「いいかガキっ。アンタが冒険者としてやってくっつーなら、よく覚えとけ」
低い声だった。
怒りを押し殺したような、しかし、どこか切実な響きを持った声。
ニッペは目を丸くして、セネカを見つめた。
「――冒険者はなぁ! 他人を犠牲にしたとしても、自分の命を優先しなきゃなんねぇ生き物なんだよっ!!」
「――」
ニッペは黙っている。
セネカは続けた。
「誰かを守るなんざ綺麗事は、テメェの命を碌に護れねぇ馬鹿の戯れ言だ!!」
それは、十一年間の冒険者生活で彼女が学んだことだった。
冒険者という職業は、決して華やかなものではない。
英雄譚に描かれるような、勇気と友情だけで乗り越えられる世界ではないのだ。
実力の足りない者は死ぬ。
判断を誤った者は死ぬ。
そして、時には仲間を助けようとした者まで、道連れになって死ぬ。
セネカは、そんな光景を何度も見てきた。
だからこそ、生き残ることを何よりも重視してきた。
逃げるべきときには逃げる。
捨てるべきものは捨てる。
どれほど悔しくても、どれほど惨めでも。
生きてさえいれば、次がある。
「だから生き抜かなきゃなんないんだよ。犠牲にするモンのためにも!」
セネカの声が震えた。
恐怖からではない。
いや、恐怖もあった。
だが、それ以上に、目の前の少年へ伝えなければならないという思いがあった。
冒険者になったばかりの、この世間知らずな少年に。
命を懸けるということの意味を。
「だからアンタも犠牲にしろ。食料だろうと何だろうと――」
そこで、セネカは一度言葉を切った。
そして。
「
「――ぇ?」
ニッペが小さく声を漏らした。
セネカは、その肩から手を離した。
「アタシが囮になる。だからアンタは町に逃げろ。んで助け呼んでこい」
「――え、え?」
ニッペは困惑したように瞬きを繰り返した。
当然だろう。
先ほどまで、他人を犠牲にしてでも生き残れと言っていた人物が、自分を犠牲にすると言い出したのだから。
だが、セネカにとっては矛盾していなかった。
少なくとも、彼女自身はそう考えていた。
自分はB級冒険者だ。
十一年間、修羅場を潜り抜けてきた。
相手がA級魔獣であっても、時間を稼ぐ程度ならできるかもしれない。
しかし、ニッペは違う。
今日登録したばかりのE級冒険者。
戦闘経験もない。
少なくとも、セネカはそう認識していた。
そんな少年を、この怪物の前に置いておくわけにはいかない。
「安心しろ。死ぬ気はない。少しでも応援が来るまでの時間を稼ぐだけよ」
セネカは笑ってみせた。
いつものような、少し不敵な笑みだった。
しかし、その額には冷や汗が浮かんでいる。
勝算など、ほとんどない。
A級魔獣を相手に、B級冒険者が単独で時間を稼ぐ。
言葉にすれば簡単だが、実際には命懸けどころの話ではない。
それでも。
他に方法はなかった。
「でもぅ……セネカさ――」
「――いいから行けよクソガキがぁ!!! それともアタシを殺してぇのかぁ!!?」
「――」
ニッペの言葉が止まった。
セネカは、少年の目を真っ直ぐに見つめた。
その視線に込められていたのは、怒りではない。
ただ一つ。
生きてほしい。
それだけだった。
ニッペは、しばらく黙っていた。
何かを言いたそうに口を開きかける。
しかし、結局何も言わなかった。
そして。
――ダッ!
小さな足音が、森の中へ遠ざかっていった。
セネカは、その背中を見送った。
追いかけようとはしなかった。
ただ、少年の姿が木々の向こうへ消えるまで、じっと見つめていた。
(そう、それでいい)
胸の奥で、何かが静かに落ち着いた。
(何かを犠牲にしなきゃ、冒険者は務まらない)
ニッペは逃げた。
それでいい。
今の彼に必要なのは、怪物へ立ち向かう勇気ではない。
生き残るために、何かを捨てる覚悟だ。
今日、そのことを学んでくれたのなら。
少なくとも、自分がここに残る意味はあった。
「――ハァ。バカだよなぁ、アタシも……」
セネカは小さく笑った。
自分で言っておきながら、何とも滑稽な話である。
他人を犠牲にしてでも生き残れ。
そう教えた本人が、真っ先に他人のために命を懸けているのだから。
マークスとルミンがこの場にいたら、何と言うだろう。
きっと呆れるに違いない。
いや。
あの二人なら、こう言うかもしれない。
――やっぱりセネカはセネカだね。
「まぁ、でも」
セネカは剣を抜いた。
使い慣れた刃が、木漏れ日を受けて鈍く光る。
左腕にはバックラー。
何度も命を救ってくれた、小さな盾。
十一年間、苦楽を共にしてきた相棒たちだった。
「これも、らしいっちゃらしいか……」
『――グルルルルルゥゥ……!』
暴虐狒々が唸った。
四本の腕を地面につき、巨体をゆっくりと持ち上げる。
その視線は、もはや逃げていった少年ではなく、目の前に残った女冒険者へ向けられていた。
セネカは剣を構えた。
膝を軽く曲げ、重心を落とす。
呼吸を整える。
恐怖は消えない。
心臓は早鐘を打ち、握った剣の柄は汗で湿っている。
それでも、足は震えなかった。
十一年間。
この足で、何度も死地を踏み越えてきたのだ。
今さら、怪物一匹を前にして逃げ腰になってたまるものか。
「待たせたわね、クソザル」
セネカは口の端を吊り上げた。
いつもの、擦れた冒険者の笑み。
英雄でもない。
勇者でもない。
ただ、十一年間生き残ってきただけの、一人の女冒険者。
だが。
それがどうした。
「さ、こいよ。アタシを――」
剣先を怪物へ向ける。
赤い巨体が、怒りに満ちた咆哮を上げた。
それに負けじと、セネカも声を張り上げる。
「冒険者セネカ・ロッソを舐めんなよっ!!」
森が震えた。
怪物が吠えた。
そして、一人の冒険者が地を蹴った。
第四話 了