ニセ絶望を贈ろう系剣士の彼女探し。   作:テムテムLvMAX

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 暇つぶしになれば幸い


1話 絶望を贈ろう……住所は?

 グラムレンは難儀な男だった。

 

 彼は己が転生者であり、尚且つ見知った世界に来たのだと把握してしまっていた。

 

 グラムレンは律儀な男だった。

 

 彼は己が知り尽くしている未来、あるいは起こりうる事象において誰かの不幸を見過ごすことが出来なかった。

 

 グラムレンは遊び心のある男だった。

 

 彼は己の力が望んだものになるように努力を惜しまなかった。その結果どう見られるのかを想像せずに。

 

 グラムレンは、少し考え無しの男であった。

 

 彼は言葉より先に行動が先んじてしまった、言葉なき善意は時として悪意よりも厄介だと知らなかった。

 

 グラムレンはいつしか、重い縁の多い男になってしまった。

 

 しかし、本人はそれを全く知らないでいた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 グラムレン、本名をグラムレン・レリアージャ、レリアージャ家の長男として生を受けて早16年、転生者であることを加味して精神的年齢は40年目となる、ただ振る舞いは肉体年齢相応の若々しいものである、精神だけが無駄に年を取ったような形だった。

 

 彼は今、自らの力を活かして冒険者として生活していた。

 

 冒険者とは、この世界特有の職業である、世界を旅し、宝を見つけ、あるいは恐ろしき魔物を狩る、それによって財を成す、知と力と勇気によって人々に夢を売る仕事だ。

 

 彼としては夢を売るよりも、全てが己の裁量任せな自由気ままな所が気に入っていた、何分やりたいことの多い人生を過ごしてきたのだから、身分は身軽がよかった。

 

 やりたいことも落ち着き、本格的に冒険者として過ごそうと決めた彼は、旅立ちの準備に入っていた。

 実家に頼れない状況である彼は実家の近くにあるホテルを一室借り、そこを自室としていた。

 

 

「ふぁ、あわ……ねみ…………あーはいはい、ちゃんと磨きますよ」

 

 

 あくびを噛み殺し涙目になりつつ、ベッドに腰掛け、窓から差し込む朝の光に微睡みを感じながら、膝に乗せた刀を磨き上げる。

 

 この剣の名は『マサムネ』、とある鍛冶屋を助けた時に礼に作ってもらったオーダーメイドの一点物、前世が日本人であるグラムレンには刀が一番しっくりきたのだ、命を預け、命を切る道具として。

『マサムネ』は魔剣であるため僅かながら意思を持つ、構え、磨け、嫌だ、そうだ、簡単な意思疎通をする程度、好みがある程度のものだ。

 

 ゆっくりと時間を掛けて磨いた『マサムネ』の刀身は鏡のように光り輝き、それを覗く彼の顔を映し出している。

 

 グラムレンこだわりの黒髪長髪片目隠し系ミステリアススタイル、もとい、陰キャ仕草が似合いそうな幸薄の顔、もとい、ヴィジュアル系バンドにいそうな目つきの悪さと色白な肌に漆黒と言えるほどの艶のある髪が映える、無駄に顔立ちは良く目鼻は通っているので、かえってメカクレはマイナスになっているのに気が付いてない。

 

 

「セフィ◯スにはならなかったな……」

 

 

 実際はそっちを意識した容姿だが、どう足掻いても顔立ちからしてゴールデンボン◯ーにしかならなかった。女々しくて辛い。と言うかセ◯ィロスはメカクレではない。

 

 哀れ。端的に『マサムネ』から送られてきた言葉に腹を立てた。

 

 

「誰がだ、誰がこれでも前世より億倍イケメンだぞ」

 

 

 草。グラムレンと生活するうちに身につけた煽り言葉と語彙は彼の精神を逆撫でしていく。

 

 

「この駄剣が……もういい、俺が悪かった」

 

 

 適当に会話を切り上げて『マサムネ』を鞘へ戻すと、自身も立ち上がり、装備の点検をしてから身につける、彼は身軽さを第一に、〝当たらなければどうということはない〟と言う名台詞を信じて金属装甲のある軽鎧を好んでいた。

 更にその上から黒いコートを着る、セフィロ◯に引っ張られすぎている。

 

 

「フッ……絶望を贈ろう、なんてな」

 

 

 ごっこ遊びをしつつ、グラムレンは己の手帳をコートの内ポケットから引っ張り出す、それはまだ真新しく、書き込まれた文字数も少ない。

 少しめくるだけで目的のページへと辿り着く、この手帳は彼の冒険者としての活動を書き込む予定だ、その日のことや、受けたクエストの内容や情報など、雑多な事に使うためだ。

 して、記念すべき1ページ目には冒険者としての目標を一つ、書いてある。

 

 

 〝とびきりの彼女を見つける〟

 

 

 それはもう清々しいくらいに見開き丸ごと使って描かれた大きな目標だ。

 冒険者は宝を探す、なら己も冒険者らしく宝を探そう、そうだ俺のにとってのお宝はなんだろう、だとしたら一生大事に出来る彼女だろう、とそういうロジックが働いて、ごっこ遊び厨二病罹患中の精神年齢四十すぎのヴィジュアル系16歳の男は冒険へ繰り出すのだ。

 

 

「行こう! 俺の彼女を探すぞ〜!」

 

 

 不安。『マサムネ』の誰に伝えるでもないため息のような思念が、主人たるグラムレンのアホには届かない。

 

 

 

 

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