トーカティブとの死闘から生還したものの、6人のうちラピ、ミハラ、ユニの3人が負傷という満身創痍の状態だった。これ以上の野営や戦闘は不可能と判断した私たちは、救援要請を発信するため、エリア内にそびえ立つ旧時代の電波塔を目指して歩みを進めた。
どうにか電波塔にたどり着き、無線端末にしがみつくようにしてシフティーとの通信を試みる。
『――こちらオペレーターのシフティーです! ……って、指揮官様!? 無事だったのですか!?』
シフティーの安堵の声に、指揮官が急ぎ現状を伝える。だが、通信の向こうでシフティーの息が呑まれるのが聞こえた。
『そ、そんな……! シュエンCEOの妨害工作で連絡が取れなかった間に、中央政府の記録では、あなたたちが勝手に軍規を破ってニケを連れ出し、地上へ失踪したことになってしまっています……!』
「なっ……!?」
絶句する指揮官。シフティーは焦った様子で言葉を続けた。
『このままでは、勝手にニケを連れ出して地上で勝手な行動を起こしたとして、即座に軍法会議に掛けられてしまいます! ……ですが、そんなことより今は救出が先決です! 近くの廃滑走路へ向かってください。そこへ至急、救援用の輸送機を手配します!』
◆
シフティーの指示に従い、ボロボロになりながらたどり着いたのは、雪に埋もれた荒涼とした廃滑走路だった。
だが、運悪く、その上空や周囲には無数のラプチャーの群れが引き寄せられて集まり始めていた。このままでは、救援の輸送機が飛来した瞬間に撃墜されてしまう。
「くっ……! 迎撃するわよ!」
アニスがアサルトライフルを構え、ネオンがショットガンを撃ち鳴らす。私も折りたたみストックを展開した特注AK-47を構え、アンダーバレル・グレネードをラプチャーの群れの中心へと撃ち込んだ。
負傷したラピやワードレスの二人を守りながら、私たちは必死に弾幕を張る。
しかし――。
「……っ! あそこです! 対空火器を備えた大型ラプチャーが、滑走路の空域を狙っている!」
ネオンが絶叫した。頭上の雲を割って現れた対空ラプチャーが、まさに飛来してきた救援輸送機めがけて赤外線照準を絞ったのだ。
(間に合わない……ッ!)
誰もが絶望を覚えたその瞬間だった。
――ズドドドドンッ!!
上空の輸送機から放たれた凄まじい精度の重銃撃が、一瞬にして対空ラプチャーの弱点を正確に撃ち抜き、木端微塵に粉砕した。
「……あれは……!」
呆然と見上げる私たちの頭上から、流線型のポッドが次々と投下され、轟音とともに滑走路へ着陸する。
「……来るわ。『アブソルート』が」
ラピが息を呑みながら呟いた。
砂煙を割って現れたのは、エリシオンが誇る最強にして最高峰の部隊――エリートニケ部隊「アブソルート」だった。
「まったく、手のかかる新人ね。これだから無能な指揮官は嫌いなのよ」
冷徹で鋭い声とともに歩み出てきたのは、アブソルートのリーダー、ウンファだった。
その背後から、大柄な銃火器を携えたエマと、小柄ながら凄まじい戦闘オーラを纏ったベスティーが続く。
「ラピ! 無事だったのね、よかったぁ……!」
ベスティーが怪我をしたラピを見つけて駆け寄り、エマも優しい笑みを浮かべて負傷者たちを労う。ラピたちとアブソルートは以前から面識があったようで、緊迫した空気の中にわずかな安堵の空気が走った。
だが、ウンファだけは冷ややかな視線を地面に伏せる指揮官へと向け、吐き捨てるように言い放った。
「中央政府の命令違反、そして地上での醜態。……言い訳はアークに戻ってからたっぷり聞かせてもらうわよ、新人」
救世主の登場に胸を撫で下ろしつつも、アブソルートの容赦ない威圧感に、私たちは再び冷たい現実へと引き戻されるのだった。