そのスキルは強力だが使うと女の子になってしまい……?
みたいな一発ネタです。
多分そんなに長く続かない。
レーンディアの街、その付近にある中規模のダンジョンでスタンピードと呼ばれている魔物の氾濫が起こっていた。
ダンジョンから溢れ出てくる魔物を集まった冒険者達が討伐していく、次第に魔物の流れも収まりスタンピードも、もう終わりだろうと皆が思った、その時だった。
ダンジョンから1体の巨大な竜が飛び出してくる、それはメタルドラゴンと呼ばれる竜の中でも防御に特化した個体だった。
「メタルドラゴン!?なんでこんなところに出てきやがるんだ!」
「あれの防御を抜けるような奴はこの場に居ねーよ!」
「でもあれを通したら街が大変なことなるぞ!」
Sランク冒険者でも討伐に10分は掛かるとされる魔物だこの場にいる冒険者では倒す事は難しい、その場に居るほとんどの人間はそう思っていた。
そのような状況でフードを目深に被った一人の人物が前へと出た。
「沈黙の射手か……」
「いくらアイツでもあれは無理だろ」
その人物はAランクの冒険者で、普段からフードで顔を隠し、必要最低限しか会話をしない事、また特殊な武器を使う戦闘スタイルから『沈黙の射手』という二つ名で呼ばれていた。
沈黙の射手は、この世界には存在しない、異なる世界で拳銃と呼ばれている武器を両手に構え、メタルドラゴンへと銃口を向けた。
乾いた音が響くと同時に銃口から金色の弾丸が2発放たれメタルドラゴンに直撃、メタルドラゴンは一瞬叫んだ後、絶命した。
「嘘だろ?」
「やったのか!?」
周囲が歓声に包まれる中、メタルドラゴンの死体が地上に落下してくる、その衝撃で風が吹き上がり、沈黙の射手のフードが捲れ上がった。
歓声がやむ、一瞬の沈黙の後、辺りが騒がしくなっていく。
「お前女だったのかよ!?」
「しかも若い……」
「こんな可愛い子だとは思ってなかったぞ」
「え?女?」
フードの下に隠されていたのは金髪碧目、10代後半のように見える少女だった。
辺りが騒がしくなっていくのに耐えられなかったのか少女はフードを再び被り、その場から逃げ出した。
これが先日起きた、俺がSランク冒険者になったきっかけの出来事だ。
その後王都にある冒険者ギルドの本部へ行って正式にSランクへと認定されたりだとかなんだかんだ色々あった後、拠点にしているレーンディアの街へと戻って来てからは1週間くらい引きこもり続けている。
顔を、そして女であることを隠していた事に関しては複雑な理由がある。
俺は小さな村に『シルヴァ』という名の男として生まれ、自然と冒険者に憧れて、中規模ダンジョンが近くにあるレーンディアの街までやってきた。
ダンジョンの上層で細々と魔物を狩っている最中、うっかりミスしてゴブリンに腹部を刺されたタイミングで現代日本で過ごしていた前世の記憶を思い出し、それと同時に不思議な力が使えるようになった。
この力はスキルと言われるものらしく数百人だか数千人だかに1人しか手に入れられない強力なものらしい。
スキルのおかげで命は助かったんだけど……。
ここで得たスキルが厄介な物だった。
俺のスキル『金の弾』は、弾丸や魔力の弾を飛ばすことのできる2丁の拳銃と、2つ金の弾丸を生成するスキルで、金の弾丸は防御に特化したメタルドラゴンだろうと2発で倒せるくらいには強力だ。
魔力弾による射撃もそこそこの威力が出るので、余程強い相手でなければ魔力弾だけでも戦える。
これだけなら良いスキルに思えるが、一つだけ大きなデメリットがある、銃と弾丸を生成した後、体が女になってしまうんだ。
しかも一度金の弾丸を撃ってしまうと24時間は男に戻れない。
『金の弾』で2つの弾丸ってか?下ネタじゃねーか!
とはいえ強いのは事実でこのスキルがなければSランクの冒険者になんてなれていなかっただろうから憎むに憎めない。
前世の俺としても、これまで生きてきた今世の俺としても冒険者として成り上がって強い魔物を倒していく事には憧れがあるからね……。
要するに俺は戦闘時に時々女になり日常生活は基本的には男として過ごしている、その為フードで顔を隠したり、なるべく喋らないようにして性別がわからない様にしていたんだけど……。
スタンピードの時に女の状態で顔を晒してしまって全てが無駄になってしまったという訳だ。
あの場にはレーンディアを拠点にする冒険者がほとんど揃っていたし、他の街から来た冒険者もいた。
ソロ専門なおかつ顔を隠してほとんど喋らない変な奴として元々注目を浴びてたからか情報が広まるのも早かった。
あのスタンピードがきっかけで俺が女だという情報は広く知れ渡ってしまったという事になる。
その事について俺のスキルについて知っている、ギルドの支部長や受付嬢のユイさんと話し合った結果、流されて結局女冒険者として活動する事になってしまったし……。
現実逃避のつもりがどんどん思考が暗くなっていた、このまま考えていても好転はしないだろう。
仕方ない、憂鬱だけどそろそろギルドに行くかぁ……。
そのままスキルを発動して女になり、いつものフード付きのコートを着てギルドへとやってきた。
顔馴染みであるユイさんの元へと向かう。
「お待ちしておりました、Sランクである
知ってる、というかそれが理由で現実逃避してたんだよなぁ……。
「詳しい話をさせていただきたいので、私についてきていただいてもよろしいでしょうか?」
俺は頷き、ユイさんの後に続いて応接室へと向かった。
中には支部長が腕を組んで待ち構えていた。
「よう、やっと来たか、数日前から呼び出してたんだがな」
「……嫌な予感しかしなかったので」
「お前に依頼したいのはこれだ、古い知り合いの貴族から依頼されてな」
そう言って支部長が書類を俺の前に置いた、古い知り合いって言い方断りづらいなぁ。
「俺の知り合いの娘を護衛するだけの簡単な依頼だ、断る理由はないだろう、受けてくれるよな?」
「簡単なら俺がやる必要はないのでは?それに知り合いの貴族の娘ってことは貴族令嬢でしょう?それなら騎士とか使用人とか色々といるんじゃないですか?」
「護衛対象が行こうとしているオークション会場は女性しか入れないらしくてな、女騎士もいるが実力的に心許ないらしい、だから護衛を頼むのに丁度良い奴が居ないか相談されたってわけだ」
「丁度良い奴ねぇ……」
「実力もある、素行も問題がない、それに加えて周囲に紛れて護衛してほしいみたいだからな、顔もまだ広く知られていないお前なら適任だろう、武器もスキルで出せるしな」
まぁ確かに、俺が女だという噂自体はすぐ広まったが、近くで顔を見れた人物はごく僅か、実力も考慮すると適任なのかもしれないが……。
「そもそも俺は男なんですが……」
「書類上は女にしてあるし、肉体的にも女になれるんだから問題ないだろ」
あるだろ!色々と!
「そもそも俺に護衛は向いてないですって、沈黙の射手とか呼ばれてるんですよ?」
「性別がバレない様にしてただけで、もうバレてるんだから気にする必要もない筈だ、話せない訳ではないだろう?」
「そうですけど……」
「それにお前ももうSランクになったんだそろそろ人との関わりを……」
「わかりましたよ!受けます!受けますよ!」
なんだかんだ支部長とユイさんにはお世話になってるし、色々と面倒を見てもらってるからなぁ……人と関わった方が良いというのは本心だろうし断るに断りきれなかった、勿論打算もあるんだろうけど。
「話は纏まったようですね、そういえばシルヴァさん宛に手紙が届いていましたのでここで渡しておきます」
俺宛に手紙?珍しいな、ユイさんから受け取った手紙を確認する……母さんからか。
なになに?2歳年下の幼馴染、サーシャが冒険者を目指してこっちに来るからしばらく面倒を見てやって欲しい?レーンディアに着くのは……護衛依頼の翌日じゃねーか!
ただの護衛だから大丈夫だとは思うけど……絶対に金の弾丸は使わないようにしないと!サーシャが来るタイミングで男に戻れなかったら詰む!!!
~スキル『金の弾』~
魔力弾を発射できる2丁の拳銃と、専用の金の弾丸を生み出すスキル、使っている間は体が女性になる。
女の子になっている間は拳銃を自由に出し入れ可能。
金の弾丸を使用すると24時間の間男に戻ることができなくなるだけではなく……?