目が覚めるとそこにいた。
どこが中世的な、レンガ造りの街並みに、木造の露店が立ち並ぶ、THE・RPGといった風の街並み。
人々の身なりはどこか貧相で古めかしく、しかし表情はハツラツとしていた。
自身の服装はというと、生前来ていたであろう、黒のTシャツに、高校のジャージパンツを履いている。しかしどうだろう、靴を履いていた覚えはないのに、好んで履いていたバスケットシューズを履いている。白と黒を基調とした、レザー作りのスニーカーだ。
周りの人々は自身を訝し気な目で見るばかりだ。しかしその眼には、自身が急に現れたという事象が伺える色はない。
つまり、無意識のうちにどこからかこの町に向かってきたのか、あるいは急に現れたということを認識しないように、あの少女の計らいだろうか。事実はわからない。考えたところで
仕方がないだろう。
そこでふと気づいた、視界がやけにクリアだということに。
生前の俺は、視力が悪くメガネを常日頃着用していた。しかしメガネを着用している感覚はないし、実際に触れてみてもメガネがあるようには思えない。
だとすれば、これはあの少女が言っていた「サポート」ということだろう。
最強の力だとか、なんでも防ぐ盾なんかよりは明らかに目立たないが、これは喜ばしいことだろう。戦闘があるとすれば、メガネを失えば自身は役立たずとなる。
「ちょっと!!!そこどいて!!!」
大通り風の道の真ん中で突っ立って考え事をしていたからか、通行の邪魔をしてしまったようだ。苛立ちを孕ませた声で、行商人風の男にそう叫ばれた。
「あぁ、すいません。」
そう言って俺は脇に体を寄せた。
「まったく...気をつけろよ!死ぬぞ!」
そう言って行商人風の男は荷車を引いて立ち去って行った。
...そうだ、どこか空想的に考えていたが、この世界は、まさに生きた世界なのだ。
自身が考えていたような、ゲームだとか、漫画だとかの世界ではないのだ。
そうとすれば、まず俺は何をしたらいいんだろう。何から手を付けるべきか。
そこで一つ考え付いた、情報収集だ。わからないことがあったら周りの人に聞けと、小学校の先生に耳が腐り落ちるほど教育されていた。つまりは、やることと言ったら情報収集だろう。
何も知らない、片田舎の若者を装って、お人好そうな人に話しかけることに決めた。
あそこは...なんだろう、武器を装備した人々が集まっている建物を見つけた。
看板に見える文字は...見慣れない文字だ。ロシア文字とアラビア文字を掛け合わせたような文字。残念ながら、俺は読むことができない。
...待て、文字が読めないということは、言葉が通じない可能性がある。意気揚々と話しかけても言葉が通じなければ、俺はまず言葉を学ぶところから始まる。どんなに時間があったところで、いつその堕ちた神々が攻めてくるかわからない。
しかし、そんな心配は杞憂に終わった。
犬のような耳と尻尾を生やした、ブロンドヘアーの少女が話しかけてきた。
「ねぇ、君!そんなところで何してるの?」
思わず体が跳ねてしまった。仕方がないだろう、目の前に急に鋼鉄の壁が建てられた気分だったのだ。
「...俺?」
「そう、君!見慣れない格好だったからさ、どこからか出稼ぎにでも来たのかなって思って!」
「...そうそう、田舎から出て来てさ、まずは情報を集めようと思って。」
「そうなんだ!じゃあさ、私が案内してあげるよ!」
「いいの?そんな、悪いよ。」
「平気平気!バスタでは助け合わなきゃ!」
バスタ、この町の名前だろうか、はたまたこの冒険者ギルド風の建物の名前だろうか。
「ところで!君!名前はなんていうの?私はミリア!」
「ミリア、いい名前だね。俺は...ユウガ。好きに呼んで。」
「ありがとう!ユウガ...?もいい名前だね!あんまり聞いたことがない名前だけど!」
確かに、現代的とは言え、日本風の名前なものだから違和感を抱くのは仕方がないだろう。
そこでふと、さっきまで考えていたことをミリアに解決してもらうことにした。
「ねぇ、ミリア。この建物ってなんなの?」
「え、知らないの?ここは冒険者総合ギルド「ベルク」だよ!何個もあるギルドを取りまとめている施設だよ!」
なるほど、つまり、さっきの会話で出てきた「バスタ」はこの町の名前、このギルド風の建物はまさにギルドということで間違いなさそうだ。
「俺のいたとこだとこんなん無かったからさ。」
「そうなんだね!ねぇユウガ!情報収集って言ってたけど、何からしようとしてたの?」
「そうだなぁ...まずは誰かに話を聞こうとしてたんだけど、訛りが出るのが恥ずかしくてさ、話しかけられずにいたんだ。」
「訛り?全然ないけどね!普通って感じ!」
「ほんと?ありがとう。それはよかった」
「どういたしまして!それで、何か聞きたいことはある?」
「そうだねぇ...恥ずかしながらなんだけどさ、世界情勢的なのに疎くてさ、その辺から聞きたいんだよね。」
「へぇー!珍しい!みんな知ってるものだと思ってた!
そうだねぇ、話すと長くなるからご飯でも食べながら話すよ!私が奢ってあげる!」
「ほんと?お言葉に甘えちゃおうかな。」
「うんうん!さ、ついてきて!」
そう言って、ミリアと俺はギルドの中に入っていった。
入り口で見かけた、武器を装備していた人々は、受付のようなところで手続きをしており、それが終わるとさっさとギルドから立ち去って行った。
そのため、食堂のような所に人はあまりいなかった。
係の者の案内があるわけでもなく、ミリアは奥の席に歩いていく。自身はそれについていった。
席に着き、ミリアが飲み物と、あまり聞き取れなかったが、肉料理のようなものを注文したところで話が始まった。
「まったく知らないって事にして話すね。」
「うん、よろしくお願いします。」
「はーい!任せて!
まず、この世界には神様が五体いるの。「炎神ヴァルグレオン」、「水神アステリア」、「風神ゼフィルディア」、「地神ドルガルド」、「雷神ライゼルガ」。この神々は五原神って呼ばれてて、魔法の属性にもなってるんだ!」
「なるほど」
「うん、でね!この世界には種族がおおまかに5種類いるんだけど、人間族、龍族、妖精族、魔族、魔獣族の5種類。私は獣人なんだけど、人間族に分けられるんだ。」
「なるほどね。その龍族とか妖精族って、この町にいるの?」
「ううん、基本的にギルドとか町にいるのは人間族だけ。でも、妖精族は一部の種族だけが生産職とかやってるよ!」
「なるほどねぇ...それで?」
「そう、それで、魔獣族以外の4種族は対立することもなく平和に過ごしてたんだ。魔獣族だけは例外だよ、人間族と妖精族に被害を及ぼすからって、200年前くらいに、各種族の長たちが話し合って討伐してもいいってなったんだ。」
「ふんふん...」
「だけど最近、魔族の長が入れ替わってね...魔獣族を使役するようになっちゃったんだ。」
「えぇっ」
「びっくりだよねぇ...まぁ、それは魔族以外の3種族が力を合わせて止められたんだけど...問題はこの後。」
「ほぅ」
「五原神のうちの三体、雷神と、水神、風神が気を病んじゃったんだ...」
「やばいじゃん」
「そう、やばいの!特に被害はないんだけど、これからどうなるかわからなくて...」
「...気になったんだけどさ、神ってそう簡単に拝むことできるの?」
「?なぁに?拝むって。」
「...会う、みたいな感じ。」
「なるほどね、そう簡単には会えないけど、この世界の各地に塔があって、そこに神々が住んでるんだ。」
「ほーん...」
「まぁざっくりとだけどこんな感じかな!ほかに気になることはある?」
「魔族って、今は何してるの?」
「魔族の長だけは倒したんだけど、魔獣使役反対派と中立派だけ残して神に処刑されちゃったんだ。」
「へぇ...」
「それで魔族の勢力は一気に少なくなっちゃってさ...見ることぐっと少なくなっちゃった。」
...この世界、思ったより荒れていなかったが時間の問題だろう。魔族の長を討伐したところまではよかったのだろうが、問題はそこから。五柱しかいない神が三柱も堕ちるなんてことがあるのだろうか。精神が弱すぎやしないだろうか。
しかし、おおまかなこの世界の情勢を知ることはできたが、話に出てきた魔法の話や、魔獣族の事、どういった流れで討伐するのかや、堕ちた神々の居場所を知らなければいけない。
「ねぇ、ミリア。」
「なぁに?」
「魔獣族って、どうやって討伐するの?」
「そうだねぇ...基本的にはベルクで依頼を受けることができるんだけど、難易度が高い依頼は個人ギルドに依頼されるんだ。具体的には難易度1~3はベルクで、4~5は個人ギルドに依頼がされるって感じだね。」
「そうなのかぁ。その個人ギルドってどうやったら入れるの?」
「お、志が高いね!そうだねぇ、難易度3の依頼をこなしていけば、いずれ個人ギルドから声がかかる、かもって感じ!」
「へぇ。冒険者の位?みたいなのってあるの?」
「うん、あるよ!6段階あるんだけど、一番下から「コール」「アイアン」「シルバー」「ゴールド」「アダマンタイト」「タングステン」って感じかな。私はシルバーだよ!」
「へぇ、強いんだね。」
「そう!頑張ったんだよねぇ」
「それで、内訳はどんな感じなんだ?」
「うんうん、コールとアイアンが五割くらい占めてて、シルバーが四割、ゴールドが一割くらい。アダマンタイトは20人くらいしかいなくて、タングステンは4人しかいないんだ~」
「えぇっ、じゃあ、個人ギルドはタングステンとかアダマンタイトの人が建てたってこと?」
「うん、そうだよ!ゴールドもちらほらいるけど、閑古鳥が鳴いてるね。基本的には高難易度の依頼はアダマンタイトとタングステンに依頼されるから、まぁしょうがないよねぇ」
「なるほどな...ねぇ、俺も依頼受けてみたいんだけど、すぐ受けれる?」
「え?う~ん、受けれると思うけど...冒険者登録はまだでしょ?来たばっかりって言ってたし」
「冒険者登録...まだだね、じゃあしてみよっかな。」
「じゃあ、ご飯食べ終わったら一緒にいこっか!」
「え、ついてきてくれるの?ありがと!」
この辺のギルドの仕組みは思ったより単純でよかった。
自身が見たことのあるようなものばかりで、なじむのはそう難しいことではなさそうだ。
しかし、あの少女が言っていた能力というのはいつどこでわかるのだろうか。
期待するとすれば冒険者登録の場でだが、その場で書類手続きをすればすぐ終わる可能性もあるし、力を測るということもないかもしれない。
だが、あの少女は、誰しも能力を持っていると言っていた。自身が持っているのは間違いなさそうだ。
とりあえず腹ごしらえをして、後々の行動の糧としよう。
駄文あざす!!!