オリカは各話のあとがきに効果等を載せておきます。なるべく当時のパワーで作ってはあります。
それは、胸騒ぎというにはあまりに確信を帯びていた。
幼いころからよく、夢を見た。内容ははっきりとは覚えていない。断片的に覚えてるのは砂漠、ピラミッド、王、眼。それらが何を表しているのかはわからない。
でも、誰かが俺に何か伝えたがっているのは何となく、感じていた。
第一話・邂逅 ――千年の記憶に導かれて――
俺の名前は「浜戸朔也」。童実野町で暮らす高校生だ。無論、決闘者であり、先日開催れることが分かった「バトルシティ」の登録情報によればデュエリストレベルは6らしい。
そして俺は今日、幼いころから見る、いや、見せられているといっても過言ではない夢、幻その正体を掴むために、俺は、ここへ来た。
―――――童実野町博物館
俺が断片的に覚えている記憶と、展示されているものにはあまりに共通点が多すぎたからだ。
いざ、博物館に足を踏み入れようとしたとき、目の前に黒いローブを羽織った男が立ちはだかった。
「………?」
「浜戸朔也だな」
「それがどうかしたか」
「今ここで、貴様にデュエルを申し込む」
急な話な上に相手の素性もわからない。無視して一旦立ちさろうとすると、同じような格好をした男二人に行く手を阻まれる。
「なんだお前ら」
「レア・ハンター貴様のデッキのレアカードをいただく」
「レア・ハンター……窃盗団紛いの連中か…。いいぜ。相手になってやる!」
朔也は近くの裏路地まで移動し、たまたま持ち歩いていたデュエルディスクを腕につける。レア・ハンターの男の一人もデュエルディスクをセットして朔也の前に立った。
胸騒ぎはまだ消えていない。
いや、むしろ、さっきよりも強くなっている気がした。
――何かが、始まろうとしている。
朔也はそれを感じていた。
「「決闘!!」」
朔也LP4000
レア・ハンターLP4000
「先攻は俺だ! ドロー!」
男は手札を一瞥すると、早速カードをデュエルディスクに叩きつけた。
「ブラッド・ヴォルスを攻撃表示で召喚!」
路地の中央に光が走り、巨大な斧を握る獣人の戦士が現れる。
「ターンエンドだ!」
(いきなり攻撃力1900か…)
「俺のターン、ドロー!」
朔也引いたカードを確認し、手札から一枚を選ぶ。
「俺は魔導紳士-Jを攻撃表示で召喚!」
地面に魔方陣が描かれ、その中から一つ目の魔導師が出現する。
「その程度の攻撃力でブラッドヴォルスに勝てるものか!」
「まぁ、このままじゃな。バトルだ!魔導紳士-Jでブラッドヴォルスに攻撃!ノーブル・ブラスト!」
「返り討ちだ!ブラッドヴォルス!」
二体のモンスターがぶつかる瞬間、朔也は手札から速攻魔法を発動する。
「速攻魔法発動!突進!!魔導紳士-Jの攻撃力700ポイントアップ!」
魔導紳士-J ATK1500→2200
「ブラッドヴォルス撃破!」
レア・ハンターLP4000→3700
「なるほど、いい手札だったようだな。だが、突進の効力はそのターンのみ」
「…カードを一枚伏せてターンエンド」
レア・ハンターの言う通り、突進の効果が切れ、魔導紳士-Jの攻撃力は元に戻る。まだ相手のデッキの中身がわからない以上、下手に動きすぎるのもまずい。朔也は取り敢えず様子見をすることにした。
「俺のターンドロー!くくく、こいつはいいカードを引いた。手札から、コストダウン発動!手札を捨てることで手札のモンスターのレベルを一つ下げる!これにより、エメラルドドラゴンを召喚!」
元々のレベルが6のエメラルドドラゴンはコストダウンによりレベルが二つ下がり、生け贄なしの通常が可能となった。だが、レア・ハンターの追撃は終わらない。
「さらに!死者蘇生発動!コストダウンの発動のために墓地に送ったデビルゾアを特殊召喚!攻撃だ!」
攻撃力2400と2600の大型モンスターが朔也のモンスターに襲いかかる。デビルゾアの攻撃は直接攻撃となり、致命傷になりかねない。
しかし、朔也は慌てなかった。
「リバースカードオープン!イタクァの暴風!フィールドの相手モンスターの表示形式をすべて変更する!」
「なに!?」
イタクァの暴風の効果でフィールドのエメラルドドラゴンとデビルゾアの表示形式は守備表示に変わる。
「くそっ! 小細工ばかりしやがって!」
「魔法を使うのが小細工なら、魔法使いの立場がないだろ」
「減らず口を……! ターンエンドだ!」
男は苛立たしげに吐き捨てた。再び朔也にターンが回り、デッキからカードをドローする。引いたカードは強欲な壺。朔也は迷わずそのカードを使う。
「強欲な壺を発動。デッキから二枚ドロー!」
さらに引いた二枚のカードを見て、朔也は目を丸くする。
「悪いな。相棒が、このデュエル終わらせろってさ」
「なに?」
ー同時刻ー
童実野美術館の奥、一般客の立ち入りが制限された展示室。一人の女性が、静かに古代の石板を見上げていた。
褐色の肌に、長く艶やかな黒髪。額を飾る黄金の装飾品。
エジプトから来日したイシュタール家の末裔、イシズ・イシュタール。彼女の胸元には、古代エジプトより受け継がれた千年アイテムがあった。
千年タウク。
未来を見通す力を持つ、神秘の首飾り。その黄金の表面が、不意に淡い光を放った。
「……?」
イシズは胸元に手を添えた。千年タウクが、微かに震えている。
「これは……」
次の瞬間、千年タウクが輝き、イシズの脳裏に一つの光景が浮かび上がった。
暗い路地。
デュエルディスクを構える二人の男。片方は青年という感じだ。
だが、奇妙だった。
千年タウクが示す未来の光景に青年の姿が現れた瞬間、突如差し込んだ閃光がそれを遮った。
「……今のは?」
千年タウクは、なおも光を放っている。まるで、彼女をどこかへ導こうとしているかのように。
イシズは静かに席を立った。
ー裏路地ー
「ははは!ハッタリなら寄せ!いくら守備表示とはいえ、俺の場には強力なモンスターが二体!下級モンスターではそうそう越えられまい!このターンお前が生け贄召喚をしたとしても一体を倒すのが関の山だ!」
「いいや、このターンでケリをつける。死者蘇生発動!お前の墓地から、ブラッドヴォルスを特殊召喚!」
「!」
死者蘇生の効果でブラッドヴォルスが朔也のフィールドに特殊召喚された。しかし、レア・ハンターはまだ余裕な顔をしている。
(ブラッドヴォルスの攻撃力ではデビルゾアすら突破出来んだろう)
「そして、二体のモンスターを生け贄に…」
手札の中の一枚を手に取る。それは、ずっと使い続けてきた、自分にとって特別なカード。
なぜ特別なのかと聞かれても、うまく答えられない。
ただ、このカードだけは、絶対に手放してはいけない。
そんな確信があった。
二体のモンスターが光となり、天へ昇っていく。それと同時に、朔也の足元に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
レア・ハンターもその迫力に圧倒される。
「古の魔術を受け継ぎし、漆黒の魔導師よ!今こそ、その力を示せ!」
手札から引き抜いたカードを天高く掲げる。
それと同時に、美術館から出てきたイシズがそこに現着する。
「…あれは」
朔也高く掲げたカードを、デュエルディスクに叩きつける。
「出よ!ブラック・マジシャン!!!」
黒い魔力が渦を巻く。
魔方陣から黒衣の魔導師が出現し、フィールドに降り立つ。
鋭い眼差し。
手にした魔導の杖。
その姿は、どこか古代の戦士を思わせる。
「……ブラック・マジシャン……!」
ソリッドヴィジョンなのはわかっているのに、イシズはその迫力に息を飲む。
次の瞬間、千年タウクが再び強く輝いた。
しかし、未来は映らない。目の前の青年が、この先どこへ向かうのか。何を選び、何を失うのか。何一つ、見通すことができなかった。
イシズは胸元の千年タウクを握りしめる。
「あなたは……一体……」
「さぁ行くぜ!」
「だ、だが、ブラックマジシャンを持ってしても!その攻撃力回数は一回のみ!」
レア・ハンターは冷や汗をかきながらも、状況を冷静に分析する。たとえ最高クラスのマジシャンであっても、デビルゾアの攻撃力には届かない。
しかし、朔也は笑う。
「それはどうかな」
「!」
「俺は手札から、マジックカード発動!黒の魔法槍!魔導師の力!そしてこれが勝利の鍵だ!拡散する波動!!!」
「な、なにぃぃぃぃ!?」
ブラックマジシャンに装備された「黒の魔法槍」は、貫通効果を与え、「魔導師の力」で攻撃力が1000上がり、「拡散する波動」の効果ですべてのモンスターに攻撃が可能となる。
ブラックマジシャンATK2500→3500
「ば、馬鹿な…」
レア・ハンターLP3700
デビルゾアDFE1900
エメラルドドラゴンDFE1400
レア・ハンターの場のモンスターの守備力は合計して3300。攻撃力3500となったブラックマジシャンの二回攻撃による貫通ダメージはぴったり3700だ。
「行け!ブラック・マジシャン!!黒・魔・導(ブラック・マジック)!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
レア・ハンターLP3700→0
レア・ハンターは吹き飛ばされる。まさか仲間が負けるとは思ってなかった。レア・ハンターの仲間が駆け寄ってくる。
「くそ!なんて野郎だ!」
「今度はお前らが相手か?」
朔也は再びデュエルディスクを構える。残り二人のレア・ハンターもデュエルディスクを構えようとした。
その時
「お待ちなさい!」
物陰から見ていたイシズがその姿を現した。
「な、なんだテメェは!」
「あなた方、世界中でカードの強奪を行っているグールズのメンバーですね?おとなしく引き下がりなさい」
「は、女一人で何ができる」
「いたぞ!!」
そこに、さらにスーツを着用しサングラスをかけたSPたちが駆け付けた。タウクで一瞬見えた未来で、グールズの姿を確認していたイシズは、こちらに来る前に応援を呼んでおいたのだ。
「く、くそ!!」
倒された仲間を引きずりながらレア・ハンターたちは逃げていった。SPたちはそれを追っていく。追う理由のない朔也は小さくため息をつき、ディスクからデッキを外した。
現場には朔也とイシズの二人が残された。
「災難でしたね」
「ああ………助かったよ。あんたは?」
「わたくしはイシズ・イシュタール。この美術館で開催されている古代エジプト展の関係者です」
「ああ………ちょうどそこに行こうとしてたんだ」
それを聞いてイシズは少し考える。先ほど起きたタウクが見せる未来が遮られた現象。あんなのは初めてだった。
(少し、気になりますね)
「そうでしたか。おそらく先ほどのレア・ハンターはSPが捕まえてくれるでしょう。よろしければ、展覧会をご案内いたしましょうか?」
イシズはこの青年のことを知るために美術館の案内を提案した。一方で朔也はイシズの現れたときのキリっとしたものいいから一転、物腰の柔らかい声になったことに朔也は少し驚く。
「俺は浜戸朔也だ………よろしく頼む」
続く