元、転生した死神ですが何か? 作:ブラックコーヒー
その日、私は目覚ましが鳴るよりも早くに目が覚めた。
6月の梅雨の時期にしては蒸し暑く、初夏を思わせるような気候に、じっとりとかいた汗が、首筋に長い髪を張り付かせていた。
気持ちの悪さに体を起こして、Tシャツで汗を拭う。
酷く、非現実的な夢を見ていた気がした。
夢にしては現実味が残っており、何とも奇々怪界な変な夢を見ていた気がする。
自分が真っ黒い袴姿になっていて、顔に動物の骨の面を付けたような化け物に、日本刀1本で立ち向かう夢だ。
おかしな話だ。
どこぞのよく作られた映画のワンシーンのようだった。
化け物に立ち向かった私は、呆気なくも体を呑み込まれ、バキバキと嫌な音をたてて体を噛み砕かれて死んだ···。
そこで、目が覚めた。
胸糞悪い物である。
「···はぁー、···あ、···?」
まだ起きるには早い時間だ。
が、再び眠れるかと言えば眠れないだろう。
あんな奇妙な夢を見た後だ、早く起きてお弁当でも作ろうかと手を動かした瞬間、小指に冷たい物が当たった。
(···は?)
タオルケットを捲ってみれば、そこには黒い刀が転がっていた。
これは、そう、寝惚けているに違いない。
私はタオルケットを再び刀にかけた。
嫌な予感に、ドクドクと鼓動がが跳ねる。
いや、だってあれは夢で···。
現実に起こっていたのでは無いのだから。
恐る恐る、タオルケットを捲って見た。
そこには最初から何も無かったように、刀など存在していなかった。
ほら見ろやっぱり、寝惚けていたのだ。
起きよう。
胸糞悪い夢など忘れてしまえばいい。
私はそそくさと起き上がり、弁当を作る事にした。
*
「おっはよー!!」
「あ、おはよ」
「あれ、どうしたの?何だか元気ない?」
いつものように準備して、いつものように登校した。
「ん、大丈夫。ちょっと変な夢を見ただけだから」
高校に着いて、玄関で声をかけてきたのは幼なじみの井上織姫だった。
「変な夢かぁー。そう言えば夢ってねー···」
「2人共!おはよう」
後ろから声をかけられて振り向けば、そこには有沢竜貴がいた。
織姫と同じく私の幼なじみだ。
「おはよう!竜貴ちゃん」
「おはよう、竜貴」
「···あれ?アンタ顔色悪いけど大丈夫?寝不足?」
「ちょっとね、世にも奇妙な夢を見た」
「夢ってたまに変なの見るもんね!あんま気にしすぎるのも良くないよ!気になるなら話聞くからさ」
「2人共、ありがとう」
登校早々に2人に心配をかけてしまった。
そこまで気にする、···ような事では無いのに。
今日見た夢だけは、何とも忘れられない気がした。
そして、私の運命は今日この日からおかしくなって言ったのだと思う。
*
「おーい、席に着けー!今日は転校生を紹介するぞー!朽木、入って来い」
朝のHR。
私はこの日だけは頬杖をついて、窓の外に視線を投げて、担任の話を聞き流していた。
だから気が付かなかった。
転校生が、私の机の前まで来ていた事に。
「お、お前···なぜ、ここにいるのだ···─」
「···、え?」
小柄の襟足の長いショートカットの、酷く可愛らしい女の子が、深い青いいろの瞳を丸くして、私を見下ろしていたのだ。
まるで、死んだ人間が目の前にいる事に驚いているような、そんな顔をしていた。