〜ファクトリー〜
目を覚ますと、また同じ部屋にいた。今回は足枷が無い代わりに身体中に包帯が巻かれていた。
「負けたのか…」
俺の読みは外れていない筈だ。現にシワちゃんは上段斬りした。
なら、いつ俺の腹を斬った?
そんな疑問が頭を這いずり回る感じがして気持ち悪くなる。
やはり第三者で見ていたブランに聞いてみるか。
俺は起き上がり包帯を外す。傷も綺麗さっぱり無くなっていた。
「やっぱり人間止めているな俺…」
これもシェアクリスタルの恩恵なのか?しかし俺のシェアクリスタルはいつ無くなってしまうのか。怪我する度に減り続けるのか?それとも今この瞬間も消費し続けるのか?
「まぁ良いか。それよりブランの元に行こう」
俺は部屋を出た。
〜ブラン〜
ドアからノックする音が聞こえた。
「よぉ入るぜ」
ドアの前に立っていたのは彼だった。
「傷は大丈夫…?」
「あぁバッチリだ。ほら、この通り」
彼はシャツの袖を捲り上げ私に見せる。治るのが早い気がするが彼が元気そうにしているから良しとする。
「そう…良かった」
「お、おう。………ありがとう」
「…?」
最後の言葉がボソッと言われたせいで聞こえずらかった。
「オホン!…それより俺が斬られた瞬間を見ていたよな?」
「えぇ…」
「じゃあシワちゃんはどうやって俺を斬ったんだ?」
「…どうやって説明すれば良いのか分からないけど。そうね…縦に斬っている最中に、あなたが横に避けたから刀の方向を縦から横に変えたって感じね」
「なるほど。後出しみたいな感じだな。どおりで読みが効かないはずだ」
「読み?」
「あぁ俺は周りの状況、相手の立ち位置、姿勢から相手がとる行動を予測し、自分のするべき行動を即座に考えることが出来る」
まるで名探偵ね…
「いや簡単なことだよ。例えば、この安っぽいラノベの主人公がヒロインを助ける。そしたらヒロインが惚れる。しかし主人公は鈍感すぎて思いが実らないって風な展開が先分かり出来る様な感じだ」
「……。」
「どうした?」
彼が今手にしている原稿用紙…それは私が2ヶ月前からコミケ用に書いているモノだ。
「しかし誰が書いたんだろうな?このラノベ」
「……。」
「しかも何だよ、この無限を超えた無限って。限りが無いから無限なんだぜ?」
「……。」
「書いている最中に恥ずかしくならないのかよ。俺だったらなるね」
「……。」
「という訳で書き直した方が良いぞブラン」
「私が書いたって分かってんじゃねーか‼︎」
「ぐふぉ⁉︎」
彼の足先を思っ切り踏み潰した。
「何するんだ⁉︎」
「どこで見つけた?」
「たまたま廊下に…」
「あぁん?」
「いや部屋間違えて寝室に入っちゃって…」
「それでコレを見つけたと…」
「はい…」
「とんだ不届き者だな」
「悪かったって!でも凄く面白くないんだよ」
「……どこが」
「だって主人公が能力任せだし…」
「いや…主人公は裏設定で第二、第三の姿が…」
「はぁ?第二、第三の姿ぁ〜?フリーザ様じゃねぇんだから…は⁉︎」
「どうしたの?」
「いい事思いついた…」
彼は鞘に納まっている日本刀を取り出した。
「何するの…?」
「秘密だ」
「秘密…?」
「あぁ。それとブランお前にも戦って貰う」
「無理よ…一回斧を振るだけで限界…」
「上出来だ。」
「でも…」
「頼む、お前の力が必要なんだ」
今の私が左手だけでアレに勝つなんて無理。だけど彼の目には自信に満ちていた。
「分かったわ…」
〜三人称視点〜
雪で覆われた道、そこの真ん中にサイボーグが番人の如く立っている。それに向かいあっているのはブランとファクトリー。
「さぁリベンジ戦…始まりだ」
ファクトリーは鞘から抜刀し、刃の先端を相手に突き立てる。そして白い地面を蹴り、前方へ加速する。
「牙突…壱式!」
白い雪風を纏いながら刀はサイボーグの方へ迫る。奴も刀を上段に構え、迎え撃つ準備をする。
「なんてな…」
突きの構えを止め、空中へ跳躍し上から刀を振りかざすが意図も簡単に受け止められる。
「今回は俺だけじゃねーぞ」
「‼︎」
サイボーグの腹部に風穴が開く。その先には片手にハンドガンを構えているブランがいた。
そしてファクトリーが地面に足を着け、再び斬りつけ、ブランを空きを付いて弾丸を放つ。その繰り返しが続く。
「これで終わりだ」
刀を振りかざし、刃が機械の体にめり込む。
「‼︎。やばい抜けない!」
サイボーグはファクトリーを腕の袖を掴み取り刀ごと彼を投げ飛ばす。その空きを突いてブランは弾丸を放つが見事に弾き返される。
サイボーグはファクトリーからブランに標的を変えたのか彼女の方へ歩を進める。
「させるかよ」
ファクトリーが奴の背後から袈裟斬りをするが奴は下にしゃがみ、攻撃を避ける。そして体を彼の方へ向きを変え腹部を一閃する。ファクトリーは何とか体勢を維持し後ろに下がり間合いをとる。
「おい!大丈夫か?」
ファクトリーが奴の後ろにいるブランに話しかける。
「えぇ…けど、もう弾切れ」
「そうか、ならココで決める…頼むぜ」
刀を鞘に戻し、柄を握り締め、抜刀術の構えをとる。それと同時にサイボーグも刃の先端をファクトリーに突き立てる。
「おいおい。パクリのパクリはもう別物だぜ」
「……。」
「無視かよ。まぁ良いや…来いよ」
地面に降り積もっていた雪が空中へ舞い上がり、サイボーグの刃先がファクトリーに迫り来る。
(今だ…!)
ファクトリーは鞘から刀を抜刀しサイボーグに向かって振り放つ。それに反応したのかサイボーグは突きから横に薙ぎ払いファクトリーの腕を切断し、彼の右手は右腕から分離する。
「バーカ。よく見ろ」
「…‼︎」
切断された右手は何も握っておらず、持っていたはずの刀はファクトリーの足元の地面に突き刺さっていた。それを好機と思ったのかサイボーグは刀を振りかざす。
「終わりだ」
突き刺ささっている刀を足で蹴り上げ、刀はサイボーグの顔に刃先を向けながら飛んでいく。だが素早く顔を横に反らして避けて、刀は後ろに素通りして行く。そして再びサイボーグはファクトリーの胴体を一閃する。
(一振りぐらいは出来るんだろ…頼むぜ3秒先)
サイボーグの背後からホワイトハートに変身したブランが斧を構えていた。
「行くぜ…オラァ‼︎」
そして身丈を超える巨大な斧をサイボーグの頭へと振りかざす。それに反応したのか刀を斧の前に構え防御しようとしたが…
「関係ねぇ‼︎」
斧は刀ごと粉砕し、サイボーグの頭を叩きつける。そして、サイボーグは糸が切れた操り人形の様に倒れた。
〜ファクトリー〜
シワちゃんの頭が斧でめり込まれた。
「はは…結局力任せかよ」
確かに先を読んでもシワちゃんは脅威の反応速度で対応してしまう。つまり俺にとって最悪の相手だ。ならいっそゴリ押しの方が良いかもな。
「だが…成功したな第二、第三のフェイク」
第一のフェイクは抜刀術で刀を抜刀し、シワちゃんを斬ると思わせて刀を離した。
第二のフェイクは刀を地面に突き刺し、無防備だと思わせる事。
第三のフェイクはブランに銃を使わせ、相手に銃しか使えないと思わせて、斧で仕留めること。
見事に作戦成功だな。
だが右手をやってしまったな。
「おい!テメェ大丈夫か!」
ブランがホワイトハートの姿でこっちに駆けつける。
「本当に性格が丸変わりだな」
「うるせぇ!そんな事よりも右手が…」
「あぁ大丈夫だ」
〜ブラン〜
「あぁ大丈夫だ」
そんな事を言っているが手があったはずの所から大量に出血している。
「んな訳無いだろうが!もう右手は…」
使えない。
「だから大丈夫だって、いくぞ?」
「えっ?」
彼は左手で鼻をつまみ、フッと息を吐くと同時に右手がズボッと生えてきた。
「なっ?」
「なっ?って言われても…」
ピッコロかってツッコム元気が無い。それどころか拍子が抜けて変身を解いてしまった。
「とにかく。良かった…」
「おう」
そして生えてきた右手をグーにして私の前に差し出す。
「勝ったな…俺達」
「えぇ」
私も左手をグーにして彼の手に添えた。