雪の駆逐艦-違う世界、同じ海-   作:ベトナム帽子

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第7話「吹雪型のライバル」

 特設敷設艦のレールから機雷が次々と投下される。機雷は防御兵器としてなら、深海棲艦にもかなり有効な兵器だ。

 セントローレンス湾奪還の翌日の朝。吹雪達は湾口に機雷敷設する特設敷設艇の護衛に駆り出されていた。深海棲艦の奪還に備えて、機雷が敷設されることになったのだ。

 この機雷が陸軍の砲台完成と艦娘部隊の充実まで、セントローレンス湾防御の要を担うことになる。

「なあなあ、今日、新しい艦娘が着任する話、知ってる?」

 深雪が吹雪の肩を叩いた。

「そうなの?」

「朝、輸送トラックがゲートにいただろう? あれ、艦娘の艤装は運んできたらしいんだ」

 吹雪は出撃前の基地の様子を思い出す。たしかに軍の輸送トラックがいたが、あれがそうなのだろうか?

「じゃあ、朝にはもういたわけ?」

「そこはわかんないけど」

 どんな艦娘が来るのだろうか? 吹雪の頭の中に想像が広がっていく。また空母? いやまさか戦艦? いやいや無難に駆逐艦か? 髪は金髪? でもウルヴァリンとセーブルの例もあるし、金髪とは限らない。

「どんな艦娘なのかな?」

「まあ、基地に帰れば分かるって」

 

 敷設作業は深海棲艦の襲撃もなく、つつがなく終わった。

 ショートモント基地に帰ってくると、埠頭に整備員達の人だかりができている。

「どうしたんです?」

 吹雪が大声で呼びかけると「通して、通して!」という男の黄土色声ではない、綺麗で良く通る声が聞こえた。

 人をかき分けて、勢いよく出てきたのは金髪セミロングで端正な顔付きをした少女だった。彼女が新しい艦娘? 服装は青い冬期用セーラー服。背丈と全体的に幼いことを見るに駆逐艦娘だろうか?

「わ、わ!?」

「危ない!」

 勢い余って埠頭から落っこちそうになったのを周りの整備員が腕をつかんで助ける。まだ人間の体にあまり慣れていないようだ。

「だ、大丈夫ですか?」

「あんた、吹雪でしょ!?」

「はい?」

 心配の声を無視して、その艦娘は吹雪を指さし、言い放った。

「私はファラガット級1番艦ファラガット。吹雪、あたしと一対一で勝負しなさい!」

 

 吹雪はオンタリア湖の演習用水域でファラガットを待っていた。

 「決闘だ! 決闘だ!」とはやし立てた周りに流されてしまい、ファラガットと本当に勝負することになったのだ。

 そのファラガットがまだ来ていないのは艤装装着や弾薬、燃料を入れるのに時間がかかっているからだ。吹雪は燃料には余裕があり、弾薬を演習用の物に換えるだけなので早くすんだ。

 なんでファラガットは勝負を挑んできたのだろう? 吹雪は考える。日本海軍に対する復讐? いや、それならわざわざ自分を指名してくる理由が分からない。何かしらの因縁? 太平洋戦争時に何度か米駆逐艦と交戦したことがあるが、さてファラガットという駆逐艦と交戦したことがあっただろうか?

「そもそも、ファラガット級駆逐艦ってどんな艦だったかな?」

 米海軍にファラガット級という駆逐艦がいたことは覚えているのだが、どんな装備や形をしていたか、思い出せない。戦前からいる艦だったと思うのだが。

 思い巡らしているうちに、ファラガットがやってきた。

 ファラガットの艤装は駆逐艦娘としてはオーソドックスな造りをしていた。煙突と動力部が一緒になった背部艤装。太ももに四連装魚雷発射管。なぜか脚部艤装は特型駆逐艦のものとよく似ている。

「へえ」

 意外なことに両手に5インチ両用単装砲を持っていた。左手に持っている方は砲塔形式ではなく、砲がむき出しの露天砲架になっている。

 日本の艦娘では2丁持ちは珍しい。日本の艦娘は基本的にしっかり狙いを定めて撃つため、砲を両手で支える。2丁持ちの艦娘も日本にいないことはないが、かなり少数派である。

「さあ、始めようじゃないの」

「演習のルール、分かってるよね?」

「もちろん」

 演習はペイント弾を使用する。当たって色が付いた艤装は損傷したと判断し、機能低下、場所によっては使用不可として扱う決まりになっている。魚雷に関しては炸薬が充填されていないものを使用する。

「負けたって、艤装の整備不良とかなんとか、負け惜しみ言わないでよね」

「言わないよ。整備のみんなはいい仕事してくれるし」

 むしろ整備不良の心配をするべきは着任したばかりのファラガットだと思うのだが。整備員達はマニュアル片手に装着したのだろうし。

「それなら、行くよ!」

 吹雪は砲を構えた。

 先手を打ったのは吹雪。ガンマンなみの早業で12.7㎝連装砲を放った。

「さすが!」

 しかし、砲弾は外れた。先手が取れないのはわかっていたのだろう。ファラガットは横っ飛びで避ける。

 そしていきなり魚雷を4発発射。吹雪はファラガットに突撃。魚雷は最小限の動きで雷跡の間の縫うように回避する。しかし、そこが落とし穴だった。

 雷跡の合間を埋めるように5インチ砲弾が次々と飛んでくる。かなり濃い弾幕だ。激しく回避運動を行えば、魚雷に当たり、かといって回避運動をしなければ砲弾に当たる。かなりいやらしい攻撃だった。

 吹雪は姿勢を低くして、投影面積を小さくする。魚雷に当たったら確実に大破判定だ。ならば砲弾の1発や2発程度は甘んじて受けるしかない。頭の盾代わりにした12.7㎝連装砲に砲弾が命中。蛍光緑のインクが広がる。使用不可と判断。長10㎝連装高角砲に持ち替える。

「それで特型駆逐艦!? ねえ!」

 ファラガットが攻撃をやり過ごした吹雪に叫ぶ。その煽り文句に答える形で、吹雪は高角砲弾を右手の砲塔付き5インチ砲に当ててやった。蛍光青のインクに染まった5インチ砲はもちろん、使用不可判定だ。

「どう!?」

「そう来なくっちゃ!」

 ファラガットが急接近してくる。

 

 日本の艦娘とアメリカの艦娘の対決。なかなか見逃せるものではない。観戦しなければ絶対に損だ。

 白雪達と非番の整備員達はブリーフィングルームで駆け込み、プロジェクターの用意をする。演習水域を見渡せる山には演習撮影用カメラが設置されている。ブリーフィングルームのプロジェクターにはそのカメラの回線が繋がっており、リアルタイムで観戦することができるのだ。

 屋外からくぐもった砲声が聞こえてきた。

「もう始まってる!」

 整備員の一人がリモコン操作に手間取りながらも、なんとか回線を繋げた。

 映し出された映像を見て、白雪達は驚きを隠せなかった。

「吹雪ちゃんが劣勢?」

 すでに高角砲を構えていて、ファラガットの方は特に損傷は見えない。

 深雪達はそう思った。実際には互角な状態なのだが、ファラガットが2丁持ちなことを知らない深雪達は吹雪が劣勢だと勘違いしたのだ。

 改二にまでなった吹雪に後れを取らないファラガットは一体何者だ? 白雪達は画面を見つめた。

 

 吹雪は魚雷を放って、ファラガットが回避している間に距離を取った。

 さっきのいやらしい攻撃で分かったことがある。ファラガットは射撃が下手くそだ。あの攻撃の中では吹雪はまっすぐ進むしかないに、ファラガットは1発しか当てれなかった。やはり人の体に慣れていないのだろう。

 しかし、あの濃密な弾幕は危険だ。白雪ほどではないが、5インチ砲の高い連射力を考えると接近戦は不利といえる。

「33号電探、ちゃんと動いてよ!」

 電探ならば遠距離であっても、敵までの距離が正確に測れる。ただ艦速などを測るのは下手なので、敵の未来位置には、自分の勘で砲弾を送り込む必要がある。

 これくらい? 吹雪は砲撃する。ファラガット後方に着弾。修正。

「ここ!」

 今度は確かな確信を持って、吹雪は引き金を引いた。放たれた10㎝高角砲弾は的確にファラガットに命中。青い蛍光塗料がファラガットの肩を濡らす。

 吹雪は次から次へと砲弾を送り込む。全てが当はしないものの、確実に追い詰めていく。一方ファラガットの砲撃はめちゃくちゃな所に水柱を立てている。

 卑怯かな? 吹雪は撃ちながら思う。あっちは光学側距離、こっちは電探側距離。そして練度の違い。極めて一方的だ。手加減した方が良いのか?

 いや、それは良くない。セントローレンス湾でもリ級flagshipが出てきた。大西洋に出れば、flagshipクラスがごろごろいるだろう。ここで手加減したら、この子含めて、自分さえ沈みかねない。吹雪は撃ち続ける。

 ファラガットが転舵。吹雪に魚雷を放ち、魚雷と共に一直線に向かってくる。

 こちらに回避を強要し、その間に接近戦に持ち込む。なかなかうまい。

 でも接近戦を仕掛けさせはしない! 吹雪は残り全ての魚雷を発射。ところがファラガットは魚雷を回避する様子を見せない。そのまま進めば吹雪の魚雷に直撃するというのに。

 ファラガットは魚雷が走る海面に砲弾を撃ち込んだ。魚雷を迎撃するというのか!? 

 水柱が上がった。

「当たった?」

「まだまだぁー!」

「なっ!」

 水柱の中からずぶ濡れのファラガットがしてやったりという顔で現れた。吹雪は驚きを隠せない。

 ファラガットが5インチ砲を撃ちながら突撃してくる。

「しかし!」

 ファラガットはあちこちに青い塗料が着いている。あの数ならば大破判定に近い。あと数発当てれば沈没判定だ。吹雪は長10㎝連装高角砲を構え直す。

 引き金を絞ろうとしたとき、5インチ砲弾が吹雪の右腕に命中。衝撃で照準がぶれ、砲弾は明後日の方向に飛んでいった。

 ファラガットはその隙に全速力で距離を詰め、吹雪とすれ違った。

「えっ――」

 まさか。

 視界の端に海面から伸びる鎖が見える。錨の鎖だ。

 ファラガットは投錨して、急旋回。いわゆるドリフトをした形で吹雪の後ろに着こうとしているのだ。

 まさか、背部艤装をねらって!?

 背部艤装は動力部であり、攻撃に弱い。そのこともあって、真後ろからの攻撃は数発で沈没判定をもらってしまうのだ。そして人の姿である艦娘は後方には攻撃しにくく、防御も薄い。

 でも、でもね。甘いのよ。

「これで!」

 吹雪はファラガットへと伸びる鎖を大きく蹴り上げる。それによって錨に引っ張られたファラガットは転倒した。

「終わり!」

 吹雪は容赦なく、砲弾を撃ち込んだ。

 

 転倒したファガラットに吹雪が砲弾を撃ち込む。間違いなく沈没判定だ。

「吹雪が勝った!」

「一時はどうなるかと思ったけど……」

「さすが吹雪型1番艦!」

 白雪達はハイタッチをする。

 砲弾と魚雷セットの攻撃。遠距離砲戦に高速接近戦闘。ドリフト旋回となかなか、はらはらどきどきの演習だった。

 吹雪とファラガットを出迎えようぜ。そう深雪が言おうとした時だった。ブリーフィングルームの入り口が勢いい良く開かれ、大きな音を立てた。深雪達は思わず入り口の方を向く。

「えっ……、もう終わったの……」

 入り口に一人の残念そうな顔をした少女が立っていた。ブロンドの髪。ファラガットとよく似たような青いセーラー服。そしてここが軍事基地と言うこと。

 艦娘に違いなかった。

 

 塗料で全身真っ青になったファラガットはしばらくの間、仰向けに倒れたまま、天を仰いでいた。

「負けた……」

 ファラガットが3度目の「負けた」を呟く。負けたことがよほどショックらしい。

「ほら、立とうよ」

 吹雪は手を差し出した。ファラガットは手をつかんで立ち上がる。

「最後のドリフトは良かったよ。もうちょっとタイミングが遅ければやられてたと思う。どこで習ったの?」

「本を読んだのよ」

 本。ああ、なるほど。吹雪は理解する。ファラガットの言う本は日本海軍が優秀な艦娘の助言の下に編纂した「艦娘戦法集」のことだろう。確か、ドリフト旋回もあの本に書いてあったはずだ。あの本、アメリカにも持ち込まれていたのか。

「あんな対処の仕方があるのね。書いてなかったわ」

「あれが配られた時にまねする子が多かったから、対処法は確立しちゃって。鎖を蹴り上げるとか、すれ違う瞬間にラリアットかけるとか」

「使う相手を間違えたわ」

「でも結構上手だったよ。冗談じゃなくて」

「ありがとう。そろそろ帰りましょ。髪が気になってしょうがないわ」

 塗料でべたべたになった髪を触って言う。髪や服に染まりにくいよう改良された塗料だから髪に色が残るということはないはずだ。

「整備棟の隣にシャワー棟あるから、すぐ落とせるよ」

「なら、いいけど」

 吹雪とファラガットは並走する。吹雪としてはなぜ、自分をわざわざ指名したのかを聞きたかった。

 

 初雪達はもう一人のアメリカ艦娘マハン級駆逐艦ショーと早めの昼食を取った。吹雪とファラガットはシャワーを浴びてくるから遅れるそうだ。

「ファラガットちゃんは吹雪ちゃんに妙に固執してたけど、何かあるの? 初雪ちゃん、ドレッシング取って」

 白雪がショーに聞いた。わざわざ吹雪を演習相手に指名したのには、訳があるに違いないのだ。

「ファラガットは、いやファラガット級はあなた達、特型駆逐艦に触発されて建造されたから、対抗意識持ってるんでしょ。まあ、私もそのファラガット級の系譜とも言えるけど。このチキンおいしい」

「じゃあ、ショーも私達、特型駆逐艦はちょっと意識してる? おお、ポテトサラダもなかなかいけるぞ」

「私は別に。ただファラガット級からシムス級まではトップヘビーで、特にファラガットの姉妹艦2隻は台風で沈んでるから、なおさらなんでしょうね。戦前建造のアメリカ駆逐艦は特型駆逐艦と違ってトップヘビーなのよ。本当ね、ポテトサラダもおいしいわ」

「そうでも……ない。第四艦隊事件もあったし」

 初雪はチキンをナイフで切りながら、言った。ショーはポテトサラダを咀嚼しながら、首をかしげている。

「第四艦隊事件って? 知らない」

「そういえば、あれは極秘だったから知らないのも無理はないね。1935年9月に日本の第四艦隊が訓練の一環で台風に突っ込んだ結果、大被害。艦体に亀裂が入るとか、歪むとか、艦橋が圧壊するとか」

「私なんか、艦橋から前、全部なくなったし」

「1935年の9月なら私、進水式すらしてないじゃない。35年10月よ、進水したの。それにしてもひどいわね、その事件。極秘にするのも分かるわ」

「事件の後はバラスト積むなり、艦橋の形変えるなり、改修が大変だったけどね」

「33年には海の底にいた深雪様は話についていけないな」

「事故で沈没でもしたの?」

「ご名答。暁型の電とぶつかっちまってね」

「電っていうと、重巡エセクター乗組員救助の?」

「知ってるの?」

「戦後に噂程度に聞いたわ。それにしても日本海軍は私達の10年先を行ってたのね。近代の1944年にもなって台風で3隻も沈没とかみっともない話よ。あれ以降も改修工事してないのよ」

「知らぬ間に神風が吹いていたわけだ。元寇の時みたいにはいかないけど」

 神風。この言葉を深雪が発したとき、ショーは虚を突かれたように目を見開いた。

「カミカゼ……?」

「神風は……、ええっと、どう説明したらいいかな?」

「神の力によって吹く強い風の意味。数百年前にはそれで日本を侵略しに来たモンゴル帝国を撃退された」

「あ、ああ。そういう意味」

 初雪はショーの『そういう意味』のニュアンスにに少し引っかかったが、会話が次の話題に移ったのもあり、特に深く考えなかった。

 

 吹雪とファラガットは艤装を整備員に任せて、整備棟の南にあるシャワー棟に入った。塗料で汚れたセーラー服は洗濯機に入れて、回しておく。

 シャワーを浴びながら、吹雪は演習の帰り道にファラガットから聞いた話を思い出していた。

『あんたには絶対負けたくなかったのに』

 重武装、高い航行性を誇る特型駆逐艦は世界に衝撃を与え、各国は同じような大型駆逐艦を建造していく。

 その中で生まれたのがファラガット級駆逐艦。5インチ単装両用砲5基、533㎜四連装魚雷発射管2基、37ノット発揮という高性能艦としてできあがった。しかし、性能が良すぎて豪華、贅沢と批判され、「金仕立て」、「金メッキ艦」というあだ名が付けられた。それだけならまだ良いが、特型駆逐艦と同じくトップヘビーであり、1944年には姉妹のハル、モナハンが巨大台風で沈むという大被害を出したという。

 ファラガットは長い間、汚名を返上したいと思っていたらしい。しかし、特型駆逐艦と交戦する機会はなく、戦争も終わり、ファラガット自身も解体されてしまう。

 ところが艦娘として生まれ変わり、アメリカに特型駆逐艦、しかもネームシップである吹雪がいると聞いて、基地に着任するやいなや、着任に関する書類を一緒に来た駆逐艦娘に任せて、吹雪に演習を挑んだそうだ。

「コンプレックスがバネか……」

 ファラガットは艦娘になったばかりだというのに強かった。何年も燃やし続けた対抗意識。生まれ変わったら、かつてのライバルがいる。

「なんだか、物語みたい」

 吹雪は軽く微笑んだ。バルブを閉じて、シャワーを止める。すると背後に気配に気づいた。振り返る。ファラガットがいた。

「なに、ファラガットちゃん?」

「あんたの裸を見に来た」

「はい?」

 ファラガットは吹雪の顔より下にあるものを見つめたのち、自分のものを見て、そして比べた。

 ファラガットはやるせない感じで首を横に振った。

 いや、さほど変わらないでしょ。そう、吹雪は言おうとしたが、真剣な表情で迫ってきたファラガットに気圧されて、声が出なかった。

 吹雪は後ずさったが、すぐに壁にぶつかった。ファラガットが顔を近づける。お互いの息が当たる位まで近づく。

 えっ、なに? えっ? 吹雪は困惑する。そういうことするの? 出会ったばかりでもそういうことするの? それ以前に、私達、艦娘同士と言っても体は女の子よ。ファラガットちゃんがそうでも、私はそういうのじゃないのよ。それ、わかってる? これがアメリカ流なの? ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ。

 吹雪が一人赤面する中、ファラガットが口を開いた。

「能力でも負けて、体でさえ負けてるなんて正直、納得いかないわ」

「は、はあ」

「私、ファラガットはフレッチャーやギアリングだけじゃない。吹雪さえも越えてみせる。誰にも金メッキ艦なんて言わせない! 金そのものに、最強の駆逐艦になってやるんだから!」

 とどめに吹雪の顔を指さし、

「覚悟しときなさいよね!」

 そう言い切ると、シャワー室を出て行った。

 

 シャワー室は静寂に包まれた。

 一人取り残された吹雪。壁に背中を付けたまま固まっている。

――――ぽちゃん。

「はっ」

 水滴が落ちた音で吹雪は気を取り戻し、ファラガットが言ったこと、自分が想像したことを思い出した。

「馬鹿なんじゃないの、私」

 吹雪は温度バルブを「冷」にして、シャワーのバルブを開いた。




 百合とか、そういうのないから。吹雪は現代文化に毒されちゃっただけなのよ。
 さて、今回はアメリカ駆逐艦であるファラガット級駆逐艦ファラガットとマハン級駆逐艦ショーの登場です。2人を日本の艦級でいうと、ファラガットは吹雪型、ショーは白露型と言ったところです。マハン級駆逐艦はファラガット級の改良型です。トップヘビーは改善されてませんけど。

 演習ですが、バトル・シップでもあった戦艦ドリフト、あれずっと書いてみたかったのです。ファラガットは吹雪が鎖を蹴り上げられて、失敗しましたが、実は蹴り上げられなくても、トップヘビーなファラガットはバランス崩して転倒したでしょう。当初はそうする予定だった。書いてて楽しかった。
 え、トップヘビーなら大きいはずだって? 日本海軍にもトップヘビーなのに……な艦娘いるでしょ。そういうことだよ。いや、誰とは言わないけどさ。


 これからどんどん、アメリカ艦娘を出していきたいと思います。それにあたって、皆様が出して欲しいと思うアメリカ艦娘を募集します。
 詳しいことは私、ベトナム帽子の活動報告をご覧ください。以下のURLです。
http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=67657&uid=85043
 
 

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