間違いなどがあったら個人宛メッセージでご指摘ください。
「作中の○○が分からない」、「○○を解説して欲しい」というものがありましたら、これも個人メッセージなどでお教えください。できるだけ、書き足していきたいと思います。
ライフル砲
ライフリング(旋条)がある砲。反対のものは滑腔砲。
ライフリングは砲身内に掘られた螺旋状の浅い溝のこと。これにより砲弾を回転させることでジャイロ効果により弾道性を高める。
しかし、この回転を与えることは成型炸薬弾(HEAT)などの弾丸にとっては不利に働き、大口径のAPDS(装弾筒付徹甲弾)はジャイロ効果による弾道安定性が見込めなくなったので、現代の戦車砲は滑腔砲が多い。(「雪の駆逐艦」内ではまだライフル砲が多い)
滑腔砲
ライフル砲とは反対にライフリングがない砲。最新の戦車砲や迫撃砲に多い。
HEAT(成型炸薬弾)やAPDS(装弾筒付徹甲弾)の威力を最大限に発揮するために戦車砲などに搭載されることが多い。小口径の迫撃砲などは滑腔砲が多いが、大口径になるとライフル砲になるものも多い。
ロケット砲
ロケット弾の発射に特化した大砲のこと。ロケットランチャーと呼ぶこともある。
ロケット弾は推力を持ち、自力で飛翔する能力を持つ弾のこと。
ロケット砲はレール式のものや薬質や尾栓がある火砲の形式を持ったものなど、様々である。基本的にロケット弾を打ち出すものであれば、大砲に見えなくてもロケット砲である。
命中率は通常の火砲よりも劣るため、同時に多数のロケット弾を発射して一度に大面積を制圧するという用途に使われることが多い。また大砲のように強い衝撃や急激な加速度を与えないため、ガス弾などの化学兵器が弾頭に搭載されることも多い。
ロケット弾はその特性上、発射時に大量の噴射ガスを発生させるため、遠距離でもその発射を確認することが容易である。
無反動砲
名前の通り、無反動の砲である。かといって完全に無反動というわけではない。
発射する砲弾が持つ運動力と同じ運動量を持たせた物体(空気や塩水が多い)を方向部に放出、作用反作用の法則を利用して、発射時の反動を軽減した砲のことをいう。
反動がなく、大口径砲弾を発射できるため、主に歩兵部隊の対戦車兵器として運用される。初速はあまり高くできないため、弾頭には距離で威力の変わらないHEATなどが多い。初速や射程を稼ぐ為、弾体にロケット推進装置を取り付けたものもある。
バックブラストは高温かつ高速であり、浴びた場合は死に至る(のぞき込んで頭が吹き飛んだことも)。
それとRPG-7はロケット砲ではなく、無反動砲である。RPG-7は無反動砲である。(大事なことなので2度言いました)
AP(徹甲弾)
鉄の塊の砲弾。装甲を持っている目標に対して使用される。中に炸薬が入っているものはAPHEと呼ばれる。ちなみに第二次大戦時の日独伊ではAPHE(徹甲榴弾)もAPと呼んでいる。
装甲貫通後は内部で弾体が跳ね回り、内部の人員、機器を損傷させる。
装甲をよりよく貫通させるためにAPC(被帽付徹甲弾)やAPBC(仮帽付徹甲弾)、APCBC(仮帽付被帽付徹甲弾)と発展していく。
系譜図
APC(被帽付徹甲弾)
通常のAPの上に柔らかい金属キャップを付けて、跳弾しにくくした弾丸。
APBC(仮帽付徹甲弾)
通常のAPの上に空気抵抗が少ない形の金属キャップを付け、初速を低下しにくくした弾丸。
APCBC(仮帽付被帽付徹甲弾)
APCとAPBCの両方の金属キャップを組み合わせたもの。
HVAP/APCR(高速徹甲弾または硬芯徹甲弾)
タングステンなどの重金属を弾芯に、その周りをアルミニウムなどの軽合金で覆った装甲貫通に特化した徹甲弾。
全体の質量が軽いため、初速を速くすることができるが、その分、目標距離が離れるにつれ急激に砲弾速度が低下し、ある程度以上の距離では通常の徹甲弾よりも性能が劣る。
APDS(装弾筒付徹甲弾)
弾体を細くすることで空気抵抗を減らし、装甲に当たる面積も小さくすることで、装甲貫通力を高めた徹甲弾。現在の対戦車砲弾の主流はこの砲弾。形状は細長い槍状。
弾体を細くしたことにより、装薬の爆発圧力が受けにくくなるため、装弾筒を付けることにより、それを解消している(このため、弾体自体は細いのに、砲身は大口径の方が良いという矛盾が発生する)。装弾筒(サボ)は砲身から飛び出た後に弾体からは外れる。
砲身が大口径化していくに従って、APDSはジャイロ効果による弾道安定性が低くなったため、APDSに翼を付け、弾道を改善したものがAPFSDSである。
APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)
APDSに安定翼を付けたものがAPFSDSである。弾道安定をライフリングによるジャイロ効果に依存せず、安定翼によって行う。滑腔砲から発射するのが望ましいが、回転を抑制するスリッピング・バンドを付けることでライフル砲からも発射できる。
貫通力はAPDSよりも高い。これは高初速と砲弾の回転の関係で決まるのだが、簡単に言うとAPDSが高速回転しながら高初速で着弾すると侵徹体(砲弾のこと)は前後で千切れるから。
劣化ウラン弾
弾体に劣化ウラン(ウラン235の含有率0.720%以下のウラン)を主原料とする合金を使用した弾丸。
比重が約19(タングステンの比重は19.3、鉄は7.85)と重く、砲弾に加工して発射すれば同サイズ、同速度で高い運動エネルギーを得ることができるため、対戦車砲弾に多い。
タングステン弾に比べ、劣化ウラン弾は目標の装甲板に侵徹する過程において先端部分が先鋭化しながら侵攻する自己先鋭化現象(セルフ・シャープニング現象)が発生し、タングステン弾よりも10%ほど貫通力が高いとされる。また、着弾時に運動エネルギーが熱エネルギーに変換され(先端部は1200℃まで温度上昇する)、その熱エネルギーにより貫通後、溶融した劣化ウランの一部が微粉末状に飛散する。ウランは酸素と結びつきやすいので、飛散した時に激しく燃焼し、焼夷効果も発揮する。
戦争における健康被害などでよく引き合いに出されるが、放射能に関しては劣化ウランは天然ウランの6割程度しか出さず(劣化ウランの放射能:14.8 Bq/mg)、健康被害については飛散した劣化ウランの重金属中毒の方が大きいのでは? と疑問点も多い(どのみち、健康被害は出るんだからやめた方がいいね。なお米軍は健康被害自体を否定している)。
使用後核燃料などの放射線廃棄物から製造されることも多いため、タングステン弾よりも製造コストは安い、と言われることもあるが、劣化ウランは酸素と結びつきやすいので、真空、もしくは不活性ガス中で加工しなければならない。そのため、製造コストは通常のタングステン弾とほぼ同じくらいになる。
HE(榴弾)
中に爆薬が入っている砲弾。APとは違い、対歩兵、非装甲目標向けの砲弾ではあるが、HEの中にも装甲貫通や車両撃破を目的としたものもある。20㎜以上の口径があれば弾体に炸薬を充填するのが容易なため、多くの砲がHEを発射できる。
HEはAPほど弾種は多くなく、HE、HEAT(成型炸薬弾)、HESH/HEP(粘着榴弾)に大別できる。
HESH/HEP(粘着榴弾)
HESH/HEPはホプキンソン効果を利用した砲弾のこと。ホプキンソン効果は鋼板や岩石などに爆薬を密着させた状態で爆破した際、その裏側に剥離が生ずる現象のこと。
HESH/HEPの弾頭はプラスチック爆薬などでできており、命中時に弾頭は潰れ、敵の装甲に密着、起爆する。そしてホプキンソン効果で装甲の裏側が剥離、飛散することで中の乗員や機器を破壊する。ちなみにHESH/HEPは装甲の内側に鋼製ネットや高分子ライナーなどの内張装甲を付けることによって簡単に無効化される。
HEAT(成型炸薬弾)
成型炸薬を用いた砲弾・弾頭のこと。モンロー/ノイマン効果を利用しており、化学エネルギー弾とも言われる。
図のような形状にすることで、爆圧が1箇所に集中する(モンロー効果)。その形状の炸薬の内側に金属板を張り、爆破すると金属板はユゴニオ弾性限界を超え、液体化、超音速で前方へ飛び出す(ノイマン効果)。
この液体化した金属板をメタルジェットといい、これが装甲を貫通し、中の搭乗員や機器を破壊する。
ライフル砲でHEATを撃つと、回転によりメタルジェットが遠心力で集中しないため、貫通力が下がる。
初速がなくても大きな貫通力を見込めるため、低初速砲や低圧砲、無反動砲、ミサイルなどで利用されている。
ちなみに装甲を間隔を開けて二重にする(空間装甲)とメタルジェットが拡散して、効果が薄くなる。西側諸国戦車で見られる爆発反応装甲(弁当箱みたいなヤツ)はこのことを利用したもの。そのため、HEATをタンデム(二重)にするなどいたちごっこである。
対艦HEATとして旧日本海軍の
桜弾は完成しなかった雲龍型空母「阿蘇」で使用実験が行われ、上甲板・中甲板・下甲板・艦底を貫通したものの、浸水区画は限定的で次第に浸水していき、「阿蘇」は着底した。そもそもHEATと隔壁がたくさんある艦艇は相性が悪く、弾薬庫などに直撃すれば1発で艦艇を撃沈できる可能性はあるが、そうでない場合、たちまちダメージコントロールによって回復されてしまうであろう。
その他の砲弾
榴散弾(榴霰弾)・キャニスター弾(ケースショット)
対人用砲弾のこと。おおざっぱに言えば、大砲用のショットガンの弾。散弾をいっぱいばらまける。榴散弾とキャニスター弾は散弾の詰め方、打ち出し方が違うだけで大きな違いはない。
フレシェット弾
矢の形をした弾丸。もしくは榴散弾の散弾が矢のバージョン。
焼夷弾
名前の通り、ものを燃やす弾。砲弾のみならず爆弾でもある。
曳光弾
飛んでいく間に発光することで軌跡がわかるようになっている弾丸のこと。光が出ている、ということは熱、光が出ているということで焼夷効果も少しある。
照明弾
夜を明るく照らす弾。
ミサイル
ミサイルの誘導方式
電波追尾誘導方式
電波を使う。目標から跳ね返ってくるレーダー波を追尾し、追尾する方式。
レーダー波追尾誘導の場合、レーダー波の放射源がどこにあるかで名称が変わる。
パッシブ:目標が発するレーダー波を追いかける(例:AGM-88 HARM対レーダーミサイル)
セミアクティブ:ミサイルの発射母機が発したレーダー波が跳ね返ってくる目標を追いかける(例:AIM-4スパロー中距離ミサイル)
アクティブ:ミサイル自体が発するレーダー波が跳ね返ってくる目標を追いかける(例:AIM-120アムラーム中距離対空ミサイル)
光波追尾誘導方式
光を使う。目標の発する赤外線やレーザーを照射して反射したレーザーを追尾する方式。
基本的に空対空ミサイルの場合はパッシブがほとんどだが、対地ミサイルなどではセミアクティブ方式が多い。最近は画像誘導もある。
パッシブ:目標の発する赤外線を追いかける(例:AIM-9サイドワインダー)
セミアクティブ:ミサイルの発射母機がレーザー光や赤外線を照射して跳ね返ってきたものを追尾する(例:JDAM)
アクティブ:ミサイル自体がレーザー光などを発して跳ね返ってきたものを追尾する(例:R-73L短距離空対空ミサイル)
指令誘導方式
外部の射撃指揮装置の指令に従ってミサイルを操舵・誘導する方式。有線誘導などがこれに当たる。人間がリモコンで誘導したり、発射母機がレーザー光を照射してミサイルとの誤差を検出し、修正して誘導する方式など、結構ややこしい。
プログラム誘導
ミサイルのコンピューターに地図などのデータを読み込ませ、実際の地形とデータを照らし合わせながら、目標まで誘導する方式やGPSによる誘導、加速度検知器やジャイロなどを備え、あらかじめ設定された進路と実際の進路を修正しながら誘導する方式(慣性誘導)など、色々ある。
ミサイルの誘導方式は基本的にどれか1つ、ではなく、複数の方式を兼ね備えている場合が多い。
ガンランチャー
通常の砲弾もミサイルも撃てる砲。
便利に思えるが、ミサイルの大きさが砲身の大きさに制限され、通常のミサイルより威力が低かったり、ミサイルの威力を大きくするために口径を大きくすれば、通常砲弾を撃つときの反動を受け止める設計をするのが大変だったりする。
戦車と自走砲の違い
戦車は機甲部隊、自走砲は砲兵部隊に所属する。
戦車を一言で説明するのは難しいが、自走砲は名前の通り、自分で移動できる砲のことを言う。
最前線で戦うのが戦車、後方から砲弾を前線に送り込むのが自走砲と覚えるのが一番手っ取り早い。