「…あれ」
不意に、携帯がポケットの中で震えた。 僕は、咄嗟に食べかけのパンを置く。
携帯を抜き取って画面を見る。
…足利先輩…
その名前を見てため息をついた。
「…もしもし?」
≪よう!大牙!≫
怒鳴るように大きく低い声が、午前の授業が終わって昼飯時の眠く活動の鈍い
頭を駆け巡り、停止しかけていた思考が一瞬のうちに覚醒する。
すると同時に、全身を何とも言えない虫唾が走った。
このタイミングの電話ってことは…まさか…
「ま…また臨時の防衛任務ですか…?」
≪今日はさすがにねえよ。健全な身体には、十分な休養も必要だからな!≫
―――ハぁ…。よく言うよ…。
そう内心思いながらも、ほっと一安心する。
たいてい昼休みの時の電話と言ったら、午後からの急な
9割方であったからだ。
おかげで午後の授業は欠席しなければならず、勉強は遅れて大変になる一方で
疲れの抜けきらない体は、破壊されていくばかり…とんだ悪循環である。
ともあれ最近となっては、貴重となった≪非番≫の日の安全は守られた。
「よかった…。っで?そうじゃないとしたら、他に何の用ですか?」
≪ああ!忍田本部長から通達があってだな。最近、警戒区域外の
「了解です…。」
普段、三門市における
けど…極まれに警戒区域外…普段市民が暮らしている場所に現れることがある。
そうなった場合、被害は甚大なものになってしまう。
そのことをイレギュラーな
近頃そのイレギュラーな
今月だけでも数件発生していたが、たまたま近くに非番のボーダーがいたので
事なきを得ていた。
≪なんだ?そのうすら返事は??それでもボーダーか?
ったく…お前はいつもどこかやる気がないからな…。
今回ばかりは、市民の安全がかかってるからしっかりしろよ!≫
「はいはい…分かってますって…ってか、もういいですか?」
≪ったく…ツレねぇ奴だな…お前は…。まあ、とにかく
気をつけろよ?時間とって悪かったな。じゃあな≫
プツン。
(とりあえず…何もなくてよかった…。けど、本当に足利隊長のデカすぎる声…
なんとかならないのかな…。)
ヤレヤレ…と思い、携帯をポケットにしまう。
なんとなく、携帯を入れたポケットとは違うポケットに触れてみた。
すると、中に凹凸状の物体が入っているのを感じた。
それをポケットからは出さず感触で確認する。
紛れもない…自分専用の”トリガー”
(基地からもこんなに遠く離れた学校にくる筈もないよな…)
遠くのボーダーの基地を見ながら思いにふける。
(でも…。もし突然、ここに
守れるのは俺一人だけか…。でも、そうなると嫌だな。)
一人で
自分はもうB級ボーダーといっても上位の2位である。
チームの援護がなくても、大型ならまだしも中型、小型
なら一人でも苦戦することなく倒せる。
ただ問題は、クラスメイトに自分が≪ボーダーの人間≫であると”バレ”て
しまうことであった。
なぜなら、後々とても面倒くさいことになってしまうからだ。
今ではもう三門市民にとっては、ボーダーは話題に上らない日はないほど
身近な存在である。
それはここの中学の教室での何気ない会話でも同じことで
ボーダーは、そのインパクトの強さから三門市の青少年にとっては
幼児が正義のヒーローに憧れるのと一緒の存在であった。
よって、もし正体がバレるとなると非常に厄介。
特に、異様にボーダー熱が高いここ三門市立第三中学では。
想像しただけでとんでもないことになるのは必至だろう。
僕が、ボーダーに入ってちょうど一年がたつ。一年もあればいい加減途中で
バレていてもおかしくはないが、そこはうまく調整をしてクラスメイトには
伏せ続けてきた。
無論、全員というわけではないが、防衛任務が授業と重なった時、
臨時で収集が入った時には唯一、実情をしっている先生にお願いして
早退か保健室ということにして上手く口止めをしている。
幸いこの学校には、ボーダーは僕一人だけであるから、バレにくくてすんでいる。
だが、そのことがネックとなり、僕がボーダーに入隊するために遠くから
この中学に転校してきた見慣れない転校生ということと内向的な性格も
あいまって、休みがちな陰キャラというイメージがついてしまって
僕には…その…友達が…少ないというかいない。
簡単に言うと「ぼっち」
おかげで今日の昼飯もパン一個と牛乳を片手に誰もいない教室でぼっち飯。
最初は、張本人である迅さんを恨んだりしたものだ。が、今ではもう慣れて
よくよく考えてみると引っ込み思案な自分にとっては、バレないままで
一人でいる方が気楽で良いんだけど。
(まぁ…いずれはバレる日がくるんだろうな…)
ここでふと我へと返る。
手元の腕時計を見てみると既に昼休み終了まで5分も無い。
「ヤバイ!早く食べて教室戻んないと!」
慌てて、ずっと置いたままであった食べかけのパンを手に取り無我夢中で
口へと押し込む。
時間がないので、流し込もうと牛乳に手をかけた。
―――その時。
急に球体が現れ紫電を放った。ついで、危険を知らせるサイレンが
鳴り始めるとともに襲ってきたのは何かが蠢く感覚。振り返った先に―――
「嘘でしょ...」
ぽっかりと口を開けた暗闇…ゲートから這い出てくる異形の怪物。
≪緊急警報。緊急警報。
窓へと近づき下を覗き込む。
一目散に逃げ惑う生徒達と対比して
自動車くらいの大きさ。口腔のような部位に、単眼のような器官が覗いている。
角ばったダンゴムシのような図体に、四本足と尻尾。
「モールモッド2匹か。」
反射的にポケットに手を突っ込んだ。
≪市民の皆様は速やかに避難してください!≫
右手に黒色の物体を握りつつポケットから手を抜く。
それは…人類が、唯一奴らに対抗できる兵器。
「トリガー
【トリガー起動を確認。戦闘体生成。実体を戦闘体へ換装】
瞬間、生身である身体はトリオンで作られた戦闘体へと移り変わった.
【トリガー起動完了】
ここで前話をひっそりと編集しましたので変更点を説明します。
主人公の所属する架空の≪足利隊≫なのですが、その設定を変更しました。
オペレーター以外全員ガンナーのチームであると設定していたのですが
アタッカーである足利を筆頭に主人公を含むガンナー2、新キャラを追加して
スナイパー1の設定にしました。
当初の設定は、斬新で良いと思ったのですが、これからのストーリーの展開の
仕方で困ってしまいまして泣く泣く変更せざるを得ませんでした。
楽しみにしていただいた読者の皆様には、本当に申し訳ありません。
※この時点では、主人公は三雲たちのことは知っておりません。
次話でようやく絡めて話を展開させようと考えています。