恋愛を書くのは俺には無理だったんだ。
ヒロインとかもう気にしない。全力で皆様に面白いと思ってもらえるギャグを頑張る。
第5話 どうぞ
「は!?北海道にいる!?」
5月17日(水)夜、千桜は食事を終えた後、携帯を片手に素っ頓狂な声をあげた。
「何でそんなとこいんだよ!」
『俺が聞きてえよ!伊澄と一緒に白皇に行こうとしてたらなんか意識が曖昧になってくな~とか思って…そしたらいつの間にか北海道にいたんだよ!』
わけがわからん
千桜はそう思った。
「伊澄さんは相変わらずですね」
「まあまだ国内なだけましなんじゃないか?」
伊澄さん何者だよ
とナギとハヤテの言葉で千桜がこう思ったのはいうまでもない。
「千鶴。帰ってこられるか?」
『まあ伊澄がいるんだし迎えを呼んでもらえば……あれ!?伊澄どこ行った!?伊澄さーん!!』
千鶴の悲痛な声が響く。どうやら伊澄がいなくなったようだ。
「……」
『……』
「千鶴、帰ってこられるか?」
『金がほとんどないから電車を乗り継いで歩いてじゃないと帰れないな』
「それじゃあこっちの終電には間に合わない…か?」
『無理だな。ラーメン代に金は少し取っときたいし』
「それぐらい我慢しろよ!」
『いや折角きたんだから食っときたいじゃん。姉ちゃんも土産いる?』
「いるか!……明日には帰ってこい。いいな?」
『りょーかーい』
プチッという音とともに春風姉弟の話は終了した。
「何事もなかったように話を最後までしたな」
「お二人とも伊澄さんの天然さにまだ慣れていなくて疲れたんでしょう。千桜さん、食後のお茶などはいかがですか?」
「ああ、頼む」
千桜は1つ大きな溜め息をついた。
「ったく、あいつは何やってんだよ」
「お前が迎えに行くという選択肢はなかったのか?」
「あのな、北海道までいくらかかると思ってんだよ」
「知らん。いつも出掛けるときは車や飛行機だったし電車の切符もハヤテが買ってくれているからな」
甘やかしすぎじゃないかな、と思う千桜であった。
「ま、よかったじゃないか。無事で」
「数日くらいあいつだって一人で生きていけるさ」
「あんなに心配していたくせによくそんなことがいえるのだ」
ナギの指摘に千桜は赤面した。なんだかんだで弟想いである。
「なっ……別にそこまで心配してなかったさ!ただ厄介事に巻き込まれてないかとか思ってただけだし!」
「それを世間では心配するというのだ」
「っっ!…し、しゃべってる暇があるならさっさと描けよ!明日足橋先生に持ってくんだろ!?」
「ちゃんと描いておるわ!すぐ終わらすから見ておるがいい!」
そう言うとナギは先程よりもペンのスピードを早めた。千桜は二つ目の溜め息をついた。
そこにハヤテが戻ってきた。
「どうぞ」
「ああ。ありがとう」
ハヤテからティーカップをうけとり、口に運ぶ千桜。
「で、あんなに心配していた千桜さんが千鶴がお一人で数日生きていける根拠は何ですか?」
「ぶっ!」
千桜は思わず飲んでいた紅茶を吹き出した。
「げほっ、げほっ。だ、だから別に心配なんてしてなかったって!」
「はいはい。それで質問の答えは?」
「…はぁ」
千桜は三つ目の溜め息をついた。
「あいつは運が良いんだよ」
「運が良い……ですか?」
「ああ。今頃、知り合いにでも会えてるレベルで運が良いよ」
「急に北海道まで行って知り合いに会えるなんて運良すぎじゃないですか」
「それだけにとどまらず金を使わずに帰ってくるかもしれない」
「……そこまで行くと運が良いというレベルを越えている気が…」
「…ああ」
思わず絶句しかけるハヤテ達であった。
その頃、電話を終えた千鶴は千桜の予想通り、知り合いに会っていた。
□ □ □
姉との通話を終え、俺は携帯をズボンのポケットにしまった。
さて明日の夜には帰るとして(明日帰れと言われただけで時間は言われてない)これからどうしたものか。野宿でもしようかな。後伊澄どこいった。
さすがに残金を考えれば無駄遣いはできないが久しぶりの北海道ということで俺のテンションはあげあげだ。前来た時はルカのミニライブ見て少女とじゃんけんしたくらいだからな。
「とりあえず、さっぽろ駅にでも行ってみるか」
俺はクラーク(像)に手を振りながらスマホの地図アプリを開き駅のほうに向かって歩き始めた。
なみに止まってスマホは開いている。歩きスマホ駄目!絶対!
その後30分ほど止まっては地図を見て確認してから歩くを繰り返していると地図アプリによる誘導経路とまったく違う所に俺はいた。
「…」
さっぽろ駅遠っ!しかもアプリ使いながら迷子とか俺方向音痴にもほどがあるだろ!……伊澄よりはましかな。
「…うん?あそこに誰かいる」
俺は小走りで人がいるほうに向かうとこちらに気づいたのか振り返ってきた。そいつは見たことのある緑の髪にぼーっとした感じの目、そして紺色のブレザーの制服を着ていた。
「剣野…カユラちゃん」
俺は数年ぶりに会う友の名を呼んだ。
「…誰?」
そして友に覚えられていなかった……ゑ?
「ちょっ、俺のこと覚えてない!?」
「…なんか見たことあるような」
「おお!」
「ないような」
「おお?」
「……ないな」
「うおい!もうちょい頑張れよ!春風千鶴だよ!」
「あっ!」
「思い出したか?」
「君僕の…!」
「誰が触覚生えたドイツ人とのハーフだ!つーか俺が生まれたときまだ連載してねー!」
何?チャームポイントは泣きボクロです!ってか?
やかましいわ!
「でも私にはちゃん付けしてくる男の子の記憶なんかないぞ」
「なんかちゃん付けとか言われると恥ずかしいだろうが!次から呼び捨てでいかせてもらいます!」
「で、誰?」
「だ、か、ら、春風千鶴だってば!一緒に水蓮寺ルカのライブ見ただろ?」
「いやライブが終わってからお前と話したから一緒に見たというのは少し語弊がある」
「あ、すまん……って覚えてんじゃねーーか!!」
「てへっ」
「そういうの無表情でやらないでくれませんかね!?」
はぁ…はぁ…なんか超疲れた。
「で、ここ北海道だけど……千鶴は確か東京に住んでたんじゃなかったのか?」
「そうなんだけどな…てか俺のこと結構覚えてんな。なんか恥ずいわ」
「別にたまたま覚えてただけだ」
「さいで……えっとな、ちょっと変わった友達がいてそいつに付いていってたら迷子になっちまって…」
「…」
「心配そうな顔しながら額に手をのせるな!別に熱はねーよ!」
俺だって信じられねーからな!
「その友達は?」
「どっかいった」
「…」
「そんな『お前大丈夫?』みたいな目でみないでくれ。空想の友達とかじゃねーから。それよりタダで泊まれるとこない?」
「…なめてる?」
「うん。まあ普通ないよね…じゃあ金を余り使わずに泊まれるとこない?」
「さっきとあんまり変わって……金払わなければいいの?働いても?」
「別にかまわん…ってあるの!?」
俺の質問にうなづくカユラ。まじかよ!これで野宿しなくてすむぜ!
「うちに来い」
……へ?
「お前ん家に泊まっていいの?」
「帰るまで私の奴隷になるなら」
「ああ、わかっ…奴隷!?」
一泊の対価奴隷ですか!?それ等価交換できてる?
「あの~せめて執事的な感じにしてもらえないっすか?奴隷ってのはちょっと…」
「ふぅ……仕方ない」
なんか腹立つ。
俺が拳を震わしていることなどどうでもいいのかカユラは俺から向きを変え、家があるであろうほうに進みだした。
「じゃ、行こう」
「…ホントにいいのか?こんな久しぶりに会っただけのやつを泊めて…」
「いい。それに…」
カユラは顔だけこちらに向けた。
「私は千鶴のことを久しぶりに会っただけのやつだなんて思ってない」
その顔は俺にとっては輝く笑顔に見えた。
「…そいつはどうも」
ったく、こいつに会ってから恥ずかしがってばっかだぜ
しばらく歩くと俺達はカユラの家に着いた。
ビルだ。ビルがたってる。
「?どうかした?」
「…これ全部お前ん家とかねーよな?」
「さすがにそれはない。下のほうは会社」
ですよね~
俺はカユラに続いて中に入っていく。
エレベーターに乗ってどこかの階でおりてカユラの家にお邪魔した。
「ただいま」
「おじゃまします」
ここでふと疑問に思ったことを口にした。
「そういやお前、俺が泊まるって親に連絡した?」
「してない…けど、だいじょぶ。なんとかなる」
そう言って親指をたてるカユラ。
そこに一人の女性が近づいてきた。
「お帰りなさい、カユラ」
「ただいま、母上殿」
「あら?そちらのかたは…」
「東京に住んでる友達。今日泊めてあげていい?」
「そうねえ~。ここまで連れてきちゃったんだし仕方ないですね」
親から許可をもらえ、またこちらに親指をたててきた。今度はどや顔付きで。
俺はカユラに親指をたて返してカユラの母親の前に立った。
「本日は泊めていただけること、感謝します」
やばい!普通に言ったつもりが変になった!
「ふふっ、いえいえ。ゆっくりしていってください」
な、なんてええ人や!
「お言葉に甘えさせていただきます」
俺は頭をぺこりと下げた。
「でも東京からどうして北海道に?それに明日は平日だし…あなた制服のままだし」
「えっと~、それは…」
「友達についていってたら道に迷ったんだってさ」
俺が口ごもっているとカユラが答えてくれた。また風邪扱いかな
「…病院行きます?」
「別に病に犯されてません」
風邪通り越して病院行くレベルになっちゃったよ!
「まあ、一応家に連絡させてもらってもいい?」
「あ、今両親はハワイでもつ鍋屋をやっているんで姉でも構いませんか?」
「ハワイで…もつ鍋?」
「そこはあまり気にしないでください」
俺にも未だに謎事態ですから
「そ、それではお姉さんに連絡させていただきます」
「じゃあ今から姉にかけたらいいですか?」
「はい」
その後、姉とカユラの母の通話が終わると晩御飯まで時間がありカユラが風呂に入るというので、俺はカユラの部屋で一人になっていた。
「…」
な、ナニヲすればいいんだ?他人の、しかも女子の部屋に放置とか困るんですけど!カユラさん!早く帰ってきて!
特にできることもなく、カユラの部屋をキョロキョロと見回す俺…ちらかってるけど汚くはないな。てかカユラ警戒心なさすぎじゃね?俺がお前の部屋に一人で何もしないとでも?否!ここで何もしないとか男じゃない!
あいつの親は確かゲーム会社だったな。ならなんか面白いゲームがあるはず!見つけてやるぜ!(女子の部屋で一人でやることではない)
「うおおおお「風呂上がったよ」おお!?」
「な、何た!?」
雄叫びをあげながら捜索を始めようとしていたらタオルを肩にかけたカユラが帰ってきた。
雄叫びが驚きの声に変わっちゃったよ。
「な、なんでもないからきにすんな」
「そ、そうか…風呂入ってくるか?」
「じゃ、じゃあ…」
俺は立ち上がると扉に手をかけた。
「あ、そうだ」
「?」
1つ大事なこと言うの忘れてたな
「そういや礼言ってかったなと思って…カユラ、ありがとな」
俺が礼をするとは思っていなかったのか、カユラは少し驚いた顔をしたあと、顔を俺からそむけた。
「……どういたしまして」
そむけた顔は少し火照っていた。風呂上がりだからではないと思っておこう。
「あ、もう1個聞き忘れてた。なんであんな時間にあそこにいたの?制服で」
「あ、忘れてた」
「何を?」
「明日私の学校文化祭があるからそれを手伝ってくれ」
「……へ?」
次回に続く
いかがでしたか?
カユラ初登場。マスターや伊澄さんを凌駕する難しさだった。
次も完全オリジナルが続きます。
次の更新いつになるかわかりませんががんばります。