ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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明らかに不正を働いた悪魔がモブを騙す。
モブのみなさんお疲れ様です。


初めの物語
確実に不正を働いた悪魔がまんまとモブ達を騙して転生させる


【悪魔の勧誘】

 

始めまして、皆々様。私はロッドバルトと申すしがない悪魔でございます。

 

弊社は普段、顧客の方に異世界へのトリップや転生、憑依を特典付きでご提供させていただいております。おかげさまで弊社も開業から30周年となりました。

その記念事業として、無料で転生できる権利を抽選で与えることになったのです。

 

株式会社レイクオブスワンの厳選なる抽選の結果、貴方達6人にアカメが斬る!の世界への転生権利を与えることとなりました。

おめでとうございます。

 

・・・おや?なんですか?

夢だと思いますか?では、一睡の夢だと思って参加してみてはいかがでしょうか?

ほらほら、いいでしょう?ねぇ?

 

抽選の結果選ばれた貴方達のデータを拝見させていただいておりますが・・・

 

”偶然ながら6人ともワイルドハントのアンチ・ヘイトファンだそうですね”

”おかしいですねぇ、抽選で選んだというのにこんな奇跡があるんですねぇ”

 

皆様、お互いの顔を見て驚いているそうですね。

あぁ、皆様お知り合いでもないのですか・・・なのに、同じ作品が好きで、同じ登場人物が嫌いだというのは”本当に運命的です”

 

転生には多少の特典を付けることができます。

 

”帝具の適正”と”ワイルドハント近親者及び関係者となり得るポジションでの転生”です。

 

・・・貴方達は、会ったこともないワイルドハントの方々を殺したいほど憎んで嫌っているんでしょう?

なるべく殺しやすいポジションにいたほうがお得ではありませんか?

・・・そうでしょう?幼い頃であれば、いくらでも殺すことは可能です。貴方達の殺しのセンスもあまり関係がありませんしね。

 

さすがにチート能力やハーレムスキル等などは高額商品となりますので、弊社負担ですと赤字になるのですよ。ご了承くださいませ

その代りに帝具の適正がございます。

・・・残念ながら貴方達の望む”原作に出てくる帝具”ではございません

このあたりは実際に転生いただければ、帝具と巡り会うでしょう。運命的に、ね。

 

さて、ここまで説明しました。

この一炊の夢に、胡蝶の夢に、私からすれば現実として・・・この贈り物を、受け取りますか?

 

・・・ふふふっ、そうですか。皆さん了承しますか。

それほどまでに殺したい相手なのですね。分かりました。では、こちらの黒い扉をくぐって控室に移動してください。順番に転生するようにお呼びいたしますので、その間にお互いの自己紹介でもなさっていてください。

 

・・・全員、控室に移動しましたか。

 

・・・私からすれば、彼らのほうがワイルドハントよりも狂っていますよ

 

出会ったことの無い、聞いたことや見たことしかない相手を殺そうとする貴方達のほうが、よほど狂っています。

 

そういう人間の業が、悪魔の好物なんですけれどね

 

・・・そうは思いませんか?

 

さぁ、彼らの物語を見せていただきましょう

 

現実と同じように、あまりにも呆気なく人が死んでいくような、それでも誰しもが可能性を持っているあの世界で、彼らがどうやって現実を知り、その現実に立ち向かうのかを

 

 

***

 

 

時は過ぎ、帝国歴1024年

 

特殊警察イェーガーズ、及び秘密警察ワイルドハントの設立のため、両陣営は謁見の間に招かれていた。

 

イェーガーズはエスデス将軍率いる帝国軍所属組織

 

ワイルドハントは大臣の息子であるリンネ率いる帝国政治班所属組織

 

それぞれに独自の機動性を持ち、帝国の敵を殲滅する組織として設立された。

 

「・・・お前たち、ナイトレイド討伐、及び帝都の治安維持のために頼むぞ」

「必ずやナイトレイドを討ちます」

「・・・陛下と、我が父の名誉のために善処いたします」

 

エスデスとリンネの二人はそう答え、部下たちを引き連れて謁見の間から出ていく

 

「・・・っはー、緊張したぜ」

「皇帝陛下と謁見だなんてびっくりしたよ」

「中々に可愛かったわね」

「あれが皇帝陛下・・・我々の正義を認めてくださるとは、幼いながらに良い皇帝ですね!」

「・・・」

「さて、と・・・おいリンネ」

 

緊張の糸が解けたイェーガーズの面々を一瞥してから、エスデスはすぐに立ち去ろうとするワイルドハントのリーダー、リンネに声を掛けた。

 

「・・・なんだ、エスデス」

「・・・ナイトレイドを狩るのは我々だ。お前たちには渡さんぞ」

「それを言うのはこちらだ。奴らは我々12人で仕留める。貴様らの出番は無いだろうな」

 

一触即発の空気だろうか

互いに殺気を出しながら言葉を交わす

 

「ふっ・・・貴様はただ単に大臣を殺したいだけだろう?」

「貴様こそ、闘争自体が目的の獣だ」

「下剋上しか見えていないお前よりはよっぽど充実した生き方をしているぞ、私は」

「獣のような生き方をしている貴様とは違う」

「・・・ふふっ、貴様が年上でなければ、それなりにお前のことを恋愛対象として見ていたのだがな」

「こちらこそ、貴様が御淑やかな女であれば、手籠めにしたがな」

 

牽制しながらも、リンネは「それではな、戦闘狂」と言い残して、部下たちと共にその場を去った。

 

「隊長、えーっと・・・仲が悪いんですか?」

 

ウェイブがおそるおそるエスデスに尋ねる。

エスデスはあっけらかんと「仲が悪いぞ」とさっくりと答えた。

 

「大臣の息子だが、大臣のことを殺したいほど嫌いだと公言している大馬鹿者だ」

「もう一人、似たような方がいましたが・・・大臣の髪色によく似た人」

「クロメ、それはあの大馬鹿者の双子の弟だ。確か名前はシュラ、だったな。まぁ、リンネはシュラと違って髪を黒く染めているし、シュラのほうは顔に傷があるだろう?区別はつくはずだ」

 

イェーガーズ本部へと戻りながら、エスデスは部下たちに説明をする。

 

「しかし奴と張り合うことになるとはな・・・だが、我々こそがナイトレイドを狩る。お前たち、頑張ってもらうぞ」

 

エスデスはそう言いながら、ランの出している微かな殺気に気が付いていた。

それと同時に・・・ランが見つめていたワイルドハントの一人を思い出して笑いが込み上げる。

 

どうやら何かがあるらしい・・・

これから楽しくなりそうだと、戦闘狂たる彼女は笑った。

 




次回からは各陣営モブたちの半生。ワイルドハントメインとなります。
オリジナル帝具データなどは後々出す予定です。

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