ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「今回はエンシンさん視点ですよ!原作の可愛らしい彼女たちが登場します。もちろんあの欝エピソードです。多少痛々しい場面もありますね。ではどうぞ!」


「俺の妹は色気ゼロ」

帝都、宮殿内鍛練場にて

 

 

俺とシュラは息を荒くして、倒れ込んだ。

俺たちの目の前には涼しい顔でリンネが服を整えている。

 

……ワイルドハント内で鍛練をやるっつってんで、ただの体を動かす程度だと思ってたら、騙されたぜ……

 

リンネの野郎、全力で俺とシュラを倒しにきやがった。

最初は二人掛かりで優勢だったが、猫だましに足掛けに…ようは搦め手ばっか使ってきたのだ。

シュラは実力で強いが、こいつは策謀・・・違うな、勝つための拘りが強い。

なんでもしてくるあたり、もしも実践なら卑怯な手もいくらでも使いそうだ。

 

「対ナイトレイドを想定したら、搦め手ぐらい当たり前だ」

「くそがっ…!本気でやるんじゃねぇよ!」

「エンシン、お前もシュラと似て慢心しがちだな。隙もあるから奇襲されたら死ぬぞ」

「……また兄貴に勝てなかった。」

「負けてたまるか、かませ犬」

 

リンネの奴はそんな風にシュラへ言い捨ててから、ドロテアたちに俺たちの手当てを任せてその場から立ち去った。

 

 

 

手当された後、すぐにコハルとイゾウ、アオイの4人で帝都の見回りに行くことになった。見回りなんざ面倒だが、悪事を働いてる人間なら誰でも”好きなようにしてもいい”らしいからな。

 

「ほんと、兄貴ったら馬鹿じゃないの?リンネに勝てるわけないのにシュラと二人がかりで挑んで負けるとかかっこわるーい」

 

にやにやと笑いながらコハルが俺の顔を覗いてくる。

ここぞとばかりにマウントとってくるあたり、本当に可愛いげのない妹だ。

 

「うるせぇな貧乳。」

「貧乳言うな!べっ、別に貧乳じゃないし!これから成長するのよ!」

「じゃあまな板か洗濯板だな。良くて壁だ、壁。壁胸だ壁胸。」

「なによこのオカッパヘア!女好き!ファッションセンス最悪のくせに!」

「うるせぇな、動きやすさ重視なんだよ。お前こそなんだよ、スカート短すぎだろ。色気のねぇパンツ見せられる側にもなれよ。はっきり言って萎えるわ」

「サイテー!!まじ最低なんですけど!!」

「何が最低なんだよ、お前の下着色気なさすぎ・・・あ、違うな。お前のほうが色気ないわ。お前の下着のほうがまだマシだな」

「おい!人のこと下着以下って言いたいのか!!このクソ兄貴!表出ろ!」

「バーカ!もう表だろ!」

 

「・・・エンシン殿とコハル殿は仲が良いのだな」

「そうだな。だが少し静かにしないと、周りの人間が引いている」

 

そんなやりとりをしていると、ふと視界にとある店に目が留まった。ガラス越しに見えた店内の様子がおかしい。

 

「・・・おいクソ妹、あの店おかしくないか?」

「はぁ?・・・なんか男がいっぱいいるわね」

「何かにおうな・・・イゾウ」

「承知した」

 

イゾウは前に進み出て、店の扉を江雪で叩き斬る。斬られた扉が音を立てて落ち、中の様子が分かるようになった。

 

複数の護衛に貴族風の男が数人、見目の良い男が一人

そして、羽交い絞めにされた少女が、3人

 

そのうち一人は片足が変な方向に折られており、もう一人は片目が潰れていた。

そして最後の一人はほとんど裸の状態で今まさに猛犬に襲われかかっていた。

 

・・・大方、貴族の男たちが女捕まえて好き勝手してたってことか。そういうのは俺もやってるからかまわねぇな。

とはいえ、殺しができる絶好のチャンスだ。

 

「な、なんだ貴様ら!」

 

貴族風の男の一人が声を荒げる。護衛の男たちもこちらに対して敵意をむき出しにしているようだ。

 

「我々は秘密警察ワイルドハント、この現場を取り押さえる。・・・イゾウ、その出入り口は任せた。私は裏に回る」

「任せた。さぁ、江雪・・・食事の時間だ」

「それじゃあ暴れてやるか。おいコハル、そっちの女ども確保しとけよ」

「はいはい」

 

コハルがそのまま女たちのところに向かうと、さっそく護衛の男たちが襲ってきた。

つっても、コハルの奴も帝具使いだ。

狂戦乙女ヴァルキリア、それがあいつの持っている帝具だ。

ヴァルキリアでコハルが男たちを薙ぎ払うと同時に俺もシャムシールを構えて斬撃を放った。

 

あくまでもヴァルキリアは槍型の帝具、精神エネルギーを纏わせて薙ぎ払いはできるが本来は突くための帝具・・・狭い屋内では向いていない。

だからこそ俺の帝具でとどめを刺すってのが、大体のスタイルだ。

 

さすがにやばい空気に気が付いたのか、貴族風の奴らや護衛の何人かは出入り口や入口へと逃げていく。

・・・あーあ、ほら、イゾウの奴に斬られちまった。くそつまんねぇな。

 

 

 

ほとんど倒れて虫の息か、死んだか・・・店内が静かになったころにアオイが裏口から中に入ってきた。どうやら斬り終わった死体や、まだ生きてるやつらを店内に入れ直したらしい。

 

「おー、お疲れ」

「主犯格は生かしてますのでお好きにどうぞ」

「そりゃどうも」

 

適当に返事をして貴族風の男たちを蹴り上げた。きったねぇうめき声が聞こえたが、遊ぶのにはちょうど良い。

 

「江雪も喜んでいるようだ・・・食事を終えて益々輝いているな」

 

イゾウはイゾウで刀を愛でている。

とうのコハルは女どもの手当をしてるようだが、足折れてるやつと片目潰されたやつだけ怪我をしているようだ。

ひんむかれてた女のほうは、コハルが着ていた上着を着ているらしい。まぁ、ほとんど裸だから仕方ないか

 

「兄貴、この二人は手当が必要だからアオイと二人で詰所に連れていくね」

「シュラ様たちも呼んでまいります」

「おー、そうか」

「・・・こっちの子、まだ怖がってるみたいだし、あたしの服を持ってくる」

「・・・」

「なによ」

 

ひんむかれてる女とコハルを見比べる。

主に胸を。

 

「サイズ合わないだろ、お前の貧乳スタイルに合わせたら服ぱっつぱつじゃねぇか」

「ほんとサイテーー!!!まじ死ねよクソセクハラ兄貴!!」

「どう見てもお前より胸あるじゃねぇか。お前みたいな揉みがいのない壁胸と違ってな」

「あんたほんと殺されたいわけ!?っていうかこの子さっき襲われそうになってたのによくも目の前でそんな台詞言えるのね!!」

「あぁん?知らねぇよ。っつーか行くならさっさと行けよ」

 

適当にそう答えて俺はひんむかれてた女のほうに近づいた。

さっき切り伏せた犬の上に座るか・・・隣に座るぐらいならいいだろう。あわよくばこのままヤりたいところだ。

 

「・・・兄貴、私たちが手を出していいのは、悪人だけよ」

「あぁ?」

「その子に手ぇだしちゃだめだからね」

「・・・」

「・・・だめだから」

「・・・はいよ」

 

そう答えると、コハルは何度かこっちを振り向きながらアオイと共に残りの女連れて外へと向かった。

イゾウはイゾウで入口前にいるから生き残ってるやつらも逃げれないだろう

・・・もっとも、足や腕を斬られて失血死しそうな奴らばっかりだけどな

 

「・・・あ、あの」

 

女がこちらに声をかけてくる。

 

「なんだよ」

「・・・ありがとう、ございました」

「・・・」

 

未だに震えた声で、感謝された。

・・・感謝されるようなことしたか?あぁ、でもこいつらから助けたか。

 

「礼なら体で払ってもらってもいいぜ?」

「・・・」

 

女は何も答えなかったが、俺の腕にしがみついた。

お、これはワンチャンあるか?

 

「・・・すみま、せん・・・まだ、こわくて・・・少し、このままでいいですか」

 

チッ・・・

あー、このままヤリてぇよな。つってもコハルが戻ってきたらうるせぇし、とりあえずこのままにしといて、適当に持ち帰れるか・・・?

・・・どうにかしてコハルを撒かないと無理だな。あいつは口うるせぇ。

 

そう考えてると、気が付いたときには隣の女が泣き始めていた。

自分が助かった安心感で緊張も解けたらしい。

あー、畜生ほんとヤりたいな。だがコハルが・・・いやまてよ。速攻終わらせればいけるんじゃねぇか?よし、いけるな。やるか。

 

「そんなに怖かったか?」

「だ、だって・・・」

「じゃあ俺が安心させてやるよ」

腕にしがみついてる女を離して、改めて両肩を掴んで押し倒した。

「えっ、あ・・・」

 

よっしゃいける。

 

 

「・・・何してるの」

 

 

コハルの声が聞こえた。

 

入口にシュラたちを連れてコハルが仁王立ちで立っていた。

 

「女の子泣かせて抱くのが、そんなに好きなのかしら?」

 

「・・・泣かせたのは違う」

 

「それ以外は?」

 

「・・・」

 

俺が答えないと、そのままコハルがヴァルキリアを構えた。

 

「兄貴、殺す」

 

 

 

これだから俺の妹は可愛げもないし胸も無いんだ、畜生!!

 

(そのまま病室送りにされたのは言うまでもない)




ロッドバルト「エアさん、ファルさん、ルナさんの3人ですね。次回にも・・・出ますかね。出たらいいですね。地味に人気ありますし(出るとは確定していない)。それでは次回をお楽しみに!」

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