ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「皆さまお久しぶりです。今回はワイルドハントメンバーがメインになります。まだまだ原作の流れ・・・と、言いますか、原作の事件に遭遇していないようです。やれやれ・・・それではどうぞ」


「俺の弟が悪かったな」

 

エンシンがイゾウと共に巡回を終えて詰所に帰ってきた。

詰所ではコスミナとドロテアがイェーガーズからの差し入れであるお菓子を食べており、イェーガーズのランとスタイリッシュの二人が彼女たちと会話をしている。

 

「(チッ、スタイリッシュの奴はともかく・・・あのランって奴は怪しいだろ)」

 

そんなことを思いながらカウンターへと向かう。

巡回から帰ってきて疲れたからか、無性に酒が欲しくなっていたのだ。

カウンターにはチャンプが先に飲んでいるらしい。

 

「よぉ、お前も飲んでるのかピエロ野郎」

「・・・」

 

「んだよ、どうした?」

「・・・エンシン、すまねぇな」

 

カウンターでウィスキーを飲んでいたチャンプが巡回帰りのエンシンに謝罪した。

唐突に謝罪されたエンシンは、自分がチャンプに謝罪されるようなことがあったかを思い出してるらしい。

 

「・・・おい、お前なんかやったのか?」

「いや、俺のところの弟がお前の妹に悪口言ったらしいからな」

 

「はぁ?」

「・・・数日前のやつだよ。お前の妹、泣いてたっぽいだろ。だから俺がエリオットから聞いたんだよ」

 

「あー・・・」

「思い出したか?」

 

ここでエンシンは数日前のことを思い出す。

エンシンがコスミナたちと共に巡回や訓練から帰った時のことである。

 

コハルが泣き腫らした目になっていて、留守を任せていたメンバーの間に気まずい空気が流れていた。

後々事情を聞くと、今後の対ナイトレイドへの作戦方針などでエリオットが言い過ぎてしまったとかなんとか・・・

 

「あんまり気にするなよ。俺の妹も口が悪ィからな・・・多分、腹立つことでも言ったんだろ。お互い様だ」

「それでも、あれだ・・・その、女泣かせてるのに謝らないしよ、あいつ」

 

「あぁん?お前そういうの気にするのかよ。いつもは大人はカスだって言ってるくせによ。」

「俺がやったならともかく・・・その、なんだ・・・俺の弟がやったことだしな。あいつが謝らないなら、俺が頭下げるべきだろ」

 

「そういうとこ真面目かよ。・・・あんまり気にするなよな」

「つってもよぉ・・・あいつはあいつで態度悪いんだよ」

 

そんな会話をしつつ、エンシンはチャンプの隣の席に座る。

イゾウもエンシンの隣に座って清酒の瓶を取り出した。どうやら彼も酒を嗜むつもりらしい。

 

「まぁまぁ、チャンプ殿もエンシン殿もそこまでにしておけばよい。兄同士で和解しても、残りは本人たちの問題だろう?」

「そりゃそうだけどよ・・・エリオットの奴って言っていい事と悪い事の区別がついてないんだ。格下の奴らや敵に言うならまだしも・・・まぁ、なんだ、味方にまで変なこと言いやがるからな」

「あぁん?コハルの奴も相当口悪いし、暴力降るし、貧乳で色気がねぇし、すぐに騙されるし、やさしさの欠片すらねぇからな。俺の妹のほうが厄介だぜ」

 

「・・・ふふっ」

「なんだよイゾウ、ちょっと笑ってよぉ」

「そんなにおかしいか?」

 

「チャンプ殿もエンシン殿も、ご兄弟と中々に仲が良いみたいだな。拙者は独り身ゆえ、少し羨ましい」

「・・・仲良し、ねぇ。俺もエリオットから・・・多分、っつーか、確実に好かれてはねぇからな」

「仲なんて良くないぜ?俺なんて結構疎まれてるぞ」

 

「いやいや、拙者から見ればほほえましい限りだ。まぁ、エリオット殿とコハル殿からは何かの葛藤は見えているがな・・・なに、それも本人たちが解決すべき問題。拙者が何か言うことではござらん」

「・・・」

「・・・」

 

イゾウの言葉にエンシンとチャンプは黙る。

少しの沈黙の後、イゾウは彼らが黙ったままなのを疑問に思った。何かしら彼らが思うところがあるのだろうか、と

 

「どうしたでござるか?」

「いや、つーかお前・・・アオイとはどうなんだよ」

「そうだぜ。あいつってその・・・お前の女とかじゃねぇのか?」

 

「は?」

「だってよぉ、刀工がずっと付いてきてるって中々無いだろ。兄弟姉妹って感じにはあんまり見えないしよ」

「お前の女ってあたりで俺らは見てたけど・・・違うのか?」

 

エンシンとチャンプの言葉にイゾウは少し沈黙して、こう返した。

 

「拙者が愛しているのは江雪だ。アオイ殿は恩人であり天才だと思っているが、そういった対象として見たことは無い」

 

「・・・おー、そうかそうか。お前そうなのか」

「・・・・・・へぇ、そうかいそうかい」

 

ここでエンシンとチャンプ、そしてこっそりと会話を盗み聞きしていたドロテアやコスミナ、スタイリッシュとランは苦笑いを浮かべた。

 

彼らから見れば、アオイはイゾウに対して依存的なまでに尽くしていて・・・時折、愛情すら感じるほどにイゾウを好いている。

イゾウはイゾウでアオイに対してはある程度の尊敬や好意があるにしても、おそらくそれはあくまで”江雪の生みの親”としてのものだろう・・・

 

「(こりゃあ、アオイのやつも大変そうだな・・・エリオットよりも拗らせた性格してやがるのに)」

「(アオイも苦労すんな、これじゃあよ)」

 

「(アオイちゃん、かわいそうです・・・)」

「(イゾウはさすがじゃのう。江雪への愛は本物、といったところか)」

 

「(あらあら、イゾウったら案外酷い男ね。でも面白そうだからシュラにも教えてあげましょうか)」

「(・・・・・・やれやれ、こういった会話を聞いてしまうと、少し情が移ってしまいそうです。ワイルドハントは潰さないといけないというのに)」

 




ロッドバルト「さりげなーく、ドロテアさんたちも会話を聞いていたようですね。さてさて次回は誰がいいでしょうか・・・まぁ、最新刊ネタの”彼ら”を出しても良いかもしれません。私としては楽しい限りですからね」

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